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[インデックス 10000] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストツールであるgotestにおける、テスト対象パッケージの名前との衝突を回避するための改善を目的としています。具体的には、生成される_testmain.goファイル内で、テスト対象パッケージの名前が他のインポート、変数、メソッドの名前と衝突する問題を、より汎用的なパッケージ名のリネーム手法で解決しています。

コミット

commit edd1c9111d9e7d140f186124a89d9c47239e27b1
Author: Esko Luontola <esko.luontola@gmail.com>
Date:   Mon Oct 17 14:19:02 2011 +1100

    gotest: avoid conflicts with the name of the tested package
    
    Uses a generic solution of renaming the tested package, instead of
    using cryptic names for all other imports, variables and methods
    in the generated _testmain.go file.
    
    Fixes #2346.
    
    R=golang-dev, r, adg
    CC=golang-dev, rsc
    https://golang.org/cl/5254061

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/edd1c9111d9e7d140f186124a89d9c47239e27b1

元コミット内容

gotest: テスト対象パッケージの名前との衝突を回避する。

生成される_testmain.goファイル内で、他のすべてのインポート、変数、メソッドに対して不可解な名前を使用する代わりに、テスト対象パッケージの名前を変更する汎用的な解決策を使用します。

Issue #2346 を修正します。

レビュー担当者: golang-dev, r, adg CC: golang-dev, rsc Go CL: https://golang.org/cl/5254061

変更の背景

Go言語のテストフレームワークは、テストを実行するために_testmain.goという特殊なファイルを自動生成します。このファイルは、テスト対象のパッケージとテストコードをインポートし、テストランナーを起動する役割を担います。

このコミットが修正しようとしている問題は、テスト対象のパッケージ名が、_testmain.go内で生成される他の識別子(例えば、テストヘルパー関数や変数、あるいは他のインポートされたパッケージのエイリアスなど)と衝突する可能性があったことです。このような名前の衝突が発生すると、コンパイルエラーや予期せぬ動作を引き起こす可能性がありました。

以前のアプローチでは、この衝突を避けるために、衝突しそうな識別子に「不可解な名前」(cryptic names)を付けていた可能性があります。しかし、これはコードの可読性を損ない、デバッグを困難にするという問題がありました。このコミットは、よりクリーンで汎用的な解決策、すなわちテスト対象パッケージ自体をリネームすることで、この問題を根本的に解決しようとしています。これにより、生成されるコードの品質と保守性が向上します。

前提知識の解説

Go言語のパッケージとインポート

Go言語では、コードは「パッケージ」という単位で整理されます。各Goファイルは必ずpackage宣言を持ち、同じディレクトリ内のファイルは通常同じパッケージに属します。他のパッケージのコードを使用するには、import文を使ってそのパッケージをインポートする必要があります。

package main

import (
    "fmt"
    "strings" // stringsパッケージをインポート
)

func main() {
    fmt.Println(strings.ToUpper("hello"))
}

この例では、stringsパッケージをインポートし、その中のToUpper関数を使用しています。

Goのテストとgo testコマンド

Go言語には、標準でテストフレームワークが組み込まれています。テストファイルは、テスト対象のGoファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名が_test.goで終わる必要があります。テスト関数はTestで始まり、*testing.T型の引数を取ります。

go testコマンドを実行すると、Goツールチェーンは以下の処理を行います。

  1. テスト対象のパッケージとテストファイル(_test.goファイル)を特定します。
  2. これらのファイルから、テストを実行するための特別なGoファイルである_testmain.goを自動生成します。このファイルには、すべてのテスト関数を呼び出すためのmain関数が含まれています。
  3. 生成された_testmain.goとテスト対象のコードをコンパイルし、実行可能なテストバイナリを作成します。
  4. そのバイナリを実行し、テスト結果を表示します。

_testmain.goの役割

_testmain.goは、go testコマンドが内部的に生成するファイルであり、ユーザーが直接編集することはありません。このファイルは、テスト対象のパッケージをインポートし、testingパッケージの機能を使ってテストを実行するためのエントリポイントを提供します。

例えば、my_packageというパッケージをテストする場合、_testmain.gomy_packageをインポートし、その中のテスト関数を呼び出すコードを生成します。このとき、_testmain.go内でmy_packageという名前が、他の内部的な変数名や関数名と衝突しないようにする必要があります。

名前空間の衝突

プログラミングにおいて「名前空間の衝突」とは、同じスコープ内で複数の異なるエンティティが同じ名前を持つ場合に発生する問題です。Go言語では、パッケージ名、変数名、関数名などが名前空間を形成します。名前の衝突が発生すると、コンパイラはどのエンティティを参照すべきか判断できなくなり、エラーとなります。

このコミットの文脈では、_testmain.goがテスト対象のパッケージをインポートする際に、そのパッケージ名が_testmain.go内で生成される内部的な識別子と衝突する可能性があった、という問題が指摘されています。

技術的詳細

このコミットの核心は、gotest_testmain.goを生成する際の、テスト対象パッケージのインポート方法の変更にあります。

従来のgotestは、テスト対象パッケージの名前が、生成される_testmain.go内の他の識別子と衝突する可能性を考慮し、衝突を避けるために、衝突しそうな識別子に「不可解な名前」を付けていました。これは、例えば_testmain.go内で_pkg_my_package_varのような、人間には読みにくい、自動生成されたことを示すようなプレフィックスを付けることで衝突を回避するアプローチです。しかし、これはデバッグ時などにコードを追いにくくするという欠点がありました。

このコミットでは、この問題をより洗練された方法で解決しています。それは、「テスト対象パッケージ自体をリネームしてインポートする」という汎用的な解決策です。

Go言語では、インポート時にパッケージにエイリアス(別名)を付けることができます。

import (
    my_pkg "path/to/my_package" // my_packageをmy_pkgという名前でインポート
)

このコミットは、_testmain.goがテスト対象パッケージをインポートする際に、常に一意で衝突しないようなエイリアスを自動的に割り当てるようにgotestのロジックを変更したと考えられます。例えば、テスト対象のパッケージがfooという名前であっても、_testmain.go内ではtest_foo_test_pkg_fooのようなエイリアスでインポートすることで、_testmain.go内の他の変数や関数名との衝突を回避します。

このアプローチの利点は以下の通りです。

  • 汎用性: どのようなパッケージ名に対しても適用可能であり、将来的な名前の衝突の可能性を低減します。
  • 可読性の向上: _testmain.go内で生成される他の識別子に不可解な名前を付ける必要がなくなるため、生成されるコードがよりクリーンになります。
  • 保守性の向上: 衝突回避ロジックがシンプルになり、gotest自体の保守が容易になります。

この変更は、src/cmd/gotest/gotest.goファイルに実装されており、_testmain.goの生成ロジックが修正されたことを示しています。具体的には、28行の追加と21行の削除があり、これは既存の衝突回避ロジックを新しい、より良いアプローチに置き換えるための大幅な変更があったことを示唆しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更されたファイルは以下の通りです。

  • src/cmd/gotest/gotest.go

このファイルは、go testコマンドのバックエンドで動作するgotestツールの主要なロジックを含んでいます。具体的には、テスト対象のGoコードを解析し、テストを実行するための_testmain.goファイルを生成する部分が変更されています。

変更の概要は「28行の追加と21行の削除」であり、これは既存のコードを大幅に修正し、新しいパッケージリネームのロジックを導入したことを示しています。

コアとなるコードの解説

実際のコード差分がないため、具体的なコードの変更を直接示すことはできませんが、コミットメッセージと変更されたファイルから、以下の変更が行われたと推測できます。

src/cmd/gotest/gotest.go内の、_testmain.goを生成する関数(例えば、genTestmainのような名前の関数)において、以下のロジックが変更されたと考えられます。

  1. テスト対象パッケージのインポート方法の変更:

    • 以前は、テスト対象パッケージを直接インポートし、そのパッケージ名が_testmain.go内の他の識別子と衝突しないように、他の識別子に特別なプレフィックスを付けていた可能性があります。
    • 変更後、テスト対象パッケージをインポートする際に、常に一意のエイリアス(例: _test_pkg_tested_packageなど)を付けてインポートするようにロジックが変更されました。これにより、テスト対象パッケージの元の名前が_testmain.go内の他の識別子と衝突する可能性がなくなります。

    例:

    // 変更前 (推測)
    // import "my/package/path" // パッケージ名が "mypackage" の場合
    
    // 変更後 (推測)
    import _test_pkg "my/package/path" // 常にエイリアスを使用
    
  2. テスト関数や変数の参照方法の変更:

    • テスト対象パッケージ内の関数や変数にアクセスする際、以前は元のパッケージ名(例: mypackage.MyFunction()) を使用していたか、あるいは衝突回避のために生成された不可解な名前(例: _mypackage_MyFunction()) を使用していた可能性があります。
    • 変更後、常に新しいエイリアス(例: _test_pkg.MyFunction()) を使用して、テスト対象パッケージ内の要素を参照するようにコードが修正されました。

この変更により、_testmain.goの生成ロジックが簡素化され、より堅牢で保守しやすいものになったと考えられます。特に、テスト対象パッケージ名と_testmain.go内部の識別子の衝突という、Goのテストツールが抱えていた潜在的な問題を、よりクリーンな方法で解決した点が重要です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • 特になし (Web検索で直接的な情報源は見つかりませんでした。)