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[インデックス 10092] ファイルの概要

コミット

commit f4568882eb8d7638031430b8c5b1f248aa2155c0
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Oct 25 22:19:09 2011 -0700

    exp/types: add rune to universe
    
    R=gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5295045

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f4568882eb8d7638031430b8c5b1f248aa2155c0

元コミット内容

exp/types: add rune to universe

このコミットは、Go言語の実験的な型システムパッケージである exp/types において、rune 型を型システムの「ユニバース」(既知の型集合)に追加するものです。

変更の背景

Go言語の型チェッカーは、プログラム内のすべての型を正確に理解し、検証する必要があります。これには、組み込み型(プリミティブ型)も含まれます。exp/types パッケージは、Go言語の型システムを実験的に実装したものであり、Goのコンパイラやツールがコードの型安全性を検証するために使用されます。

このコミットが行われた2011年10月時点では、Go言語の rune 型はまだ exp/types パッケージの型ユニバースに明示的に定義されていませんでした。rune はGoにおいてUnicodeコードポイントを表すために非常に重要な型であり、文字列処理や国際化対応において不可欠です。型チェッカーが rune 型を正しく認識し、その操作を検証できるようにするためには、この型をユニバースに追加する必要がありました。

特に、コミットメッセージ内の TODO(gri) should be an alias for int というコメントは、rune が将来的には int のエイリアスとして扱われるべきであるという開発者の意図を示唆しています。これは、rune が実質的に32ビット整数としてUnicodeコードポイントを表現するというGoの設計思想に基づいています。この変更は、exp/types パッケージが rune 型を適切に処理するための基盤を確立するものです。

前提知識の解説

Go言語の rune

Go言語における rune は、Unicodeコードポイントを表す組み込み型です。これは int32 のエイリアスとして定義されており、1つのUnicode文字(絵文字や特殊文字を含む)を表現するために使用されます。Goの文字列はUTF-8でエンコードされたバイト列ですが、for-range ループで文字列をイテレートすると、各要素は rune としてデコードされます。これにより、多言語対応のアプリケーションで正確な文字処理が可能になります。

exp/types パッケージ

exp/types は、Go言語の標準ライブラリに含まれる go/types パッケージの前身、または実験的なバージョンであったと考えられます。go/types パッケージは、Goプログラムの型チェックを行うためのAPIを提供します。これは、コンパイラ、リンター、IDEなどのツールがGoコードの型安全性を分析するために利用されます。このパッケージは、Goのソースコードを解析し、各識別子や式の型を決定し、型互換性のルールに基づいてエラーを検出する役割を担います。

型システムの「ユニバース」(Universe of Types)

型システムにおける「ユニバース」とは、その型チェッカーが認識し、操作できるすべての型の集合を指します。これには、組み込み型(int, string, bool など)、ユーザー定義型、インターフェース型などが含まれます。型チェッカーは、このユニバース内の型情報に基づいて、プログラムの型が正しいかどうかを判断します。新しい型や既存の型のエイリアスが導入される場合、それらをこのユニバースに登録することで、型チェッカーがそれらを認識し、適切に処理できるようになります。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、exp/types パッケージの universe.go ファイルに rune 型を明示的に追加した点にあります。universe.go は、Goの組み込み型や事前宣言された識別子(true, false, nil など)を型システムの初期状態として定義する役割を担っています。

init() 関数内で defType("rune") を呼び出すことで、rune という名前が型システムに登録され、その型が認識されるようになります。これにより、型チェッカーはGoコード内で rune 型のリテラルや変数、関数引数などが使用された際に、それが有効な型として扱われるようになります。

コメント // TODO(gri) should be an alias for int は、この時点では rune が単に名前としてユニバースに追加されただけであり、その基底型が int であるというエイリアス関係がまだ完全に実装されていないことを示しています。しかし、この defType("rune") の追加は、その後のエイリアス定義や rune 型のより詳細なセマンティクス実装のための第一歩となります。型チェッカーが rune を認識することで、'a' のようなruneリテラルが正しく型付けされ、rune 型の変数に対する演算が適切に検証されるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/exp/types/universe.go ファイルの1行のみです。

--- a/src/pkg/exp/types/universe.go
+++ b/src/pkg/exp/types/universe.go
@@ -54,6 +54,7 @@ func init() {
 
 	Bool = defType("bool")
 	defType("byte") // TODO(gri) should be an alias for uint8
+	defType("rune") // TODO(gri) should be an alias for int
 	defType("complex64")
 	Complex128 = defType("complex128")
 	defType("float32")

具体的には、init() 関数内の defType("byte") の直後に defType("rune") が追加されています。

コアとなるコードの解説

src/pkg/exp/types/universe.go ファイルは、Go言語の型システムが起動時に認識すべき基本的な型や識別子を定義する役割を担っています。

init() 関数はGoプログラムの起動時に自動的に実行される特殊な関数で、パッケージの初期化処理を行います。この init() 関数内で、defType という関数が呼び出されています。

defType(name string) 関数は、指定された name を持つ新しい型を型システムのユニバースに定義(登録)するために使用されます。このコミットでは、defType("rune") が呼び出されており、これにより rune という名前が型システムに既知の型として追加されます。

この行が追加されることで、exp/types パッケージの型チェッカーは、Goのソースコード内で rune というキーワードが型として使用された場合に、それを正しく認識し、その型に関する推論や検証を行うことができるようになります。

コメント // TODO(gri) should be an alias for int は、この時点では rune が単に名前として登録されただけであり、その基底型が int であるというエイリアス関係のセマンティクスがまだ完全に実装されていないことを示しています。これは、今後の開発で rune の型定義がより厳密になることを示唆しています。

関連リンク

  • GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/f4568882eb8d7638031430b8c5b1f248aa2155c0
  • Go CL (Change List): https://golang.org/cl/5295045

参考にした情報源リンク