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[インデックス 1012] ファイルの概要

このドキュメントは、Go言語のコンパイラ(gc)における、文字列リテラル内のバックスラッシュ(\)のエスケープ処理に関するコミット 57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802 について、その技術的な詳細を包括的に解説します。特に、src/cmd/gc/subr.c ファイルへの変更に焦点を当て、なぜこの変更が必要だったのか、そしてそれがGoコンパイラの動作にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げます。

コミット

  • コミットハッシュ: 57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802
  • 作者: Russ Cox rsc@golang.org
  • コミット日時: Thu Oct 30 17:28:33 2008 -0700
  • コミットメッセージ:
    escape \ in %Z
    
    R=ken
    OCL=18202
    CL=18202
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802

元コミット内容

escape \ in %Z

R=ken
OCL=18202
CL=18202

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)が文字列リテラルを処理する際に、バックスラッシュ(\)文字を正しくエスケープできていなかった問題を修正するものです。特に、コミットメッセージにある %Z という特定のコンテキストにおいて、この問題が発生していたと考えられます。

プログラミング言語において、バックスラッシュは通常、エスケープシーケンスの開始文字として機能します。例えば、\n は改行、\t はタブを表します。しかし、文字列リテラル内でバックスラッシュそのものを表現したい場合、そのバックスラッシュもエスケープする必要があります。つまり、\ を表現するには \\ と記述する必要があります。

Goコンパイラは、ソースコードを解析し、機械語に変換する過程で、文字列リテラルを適切に処理する必要があります。この処理の中で、特定の文字(改行や引用符など)は特殊なエスケープ処理を必要とします。このコミット以前は、バックスラッシュ文字自体がこのエスケープ処理の対象に含まれていなかったため、コンパイラが生成するコードや内部表現において、バックスラッシュが意図しない形で解釈される可能性がありました。

この修正は、Go言語の文字列リテラルが正しく解釈され、コンパイルされることを保証するために不可欠でした。

前提知識の解説

Go言語のコンパイラ (gc)

Go言語には、公式のツールチェインに含まれる標準のコンパイラ gc があります。gc は、Goのソースコードを解析し、中間表現を経て、最終的に実行可能なバイナリコードを生成します。このコンパイルプロセスには、字句解析、構文解析、意味解析、最適化、コード生成など、多くの段階が含まれます。src/cmd/gc/subr.c のようなファイルは、このコンパイラのバックエンド部分、特にコード生成やユーティリティ関数に関連する部分を構成しています。

エスケープシーケンスとバックスラッシュのエスケープ

エスケープシーケンスとは、プログラミング言語の文字列リテラル内で、特殊な意味を持つ文字や、直接記述できない文字(例: 改行、タブ、引用符)を表現するために使用される文字の組み合わせです。多くの言語では、バックスラッシュ(\)がエスケープシーケンスの開始文字として使われます。

例:

  • \n: 改行 (newline)
  • \t: タブ (tab)
  • \": 二重引用符 (double quote)
  • \': 一重引用符 (single quote)

ここで重要なのは、バックスラッシュそのものを文字列リテラル内で表現したい場合です。例えば、Windowsのファイルパス C:\Program Files を文字列として扱いたい場合、そのまま C:\Program Files と記述すると、\P\P がエスケープシーケンスとして解釈されてしまいます。これを避けるために、バックスラッシュ自体をエスケープし、C:\\Program Files のように記述する必要があります。これにより、コンパイラやインタプリタは \\ を単一のバックスラッシュ文字として認識します。

%Z の意味 (Goコンパイラの文脈において)

コミットメッセージにある %Z は、一般的なC言語の printf 系のフォーマット指定子(strftime 関数でタイムゾーンを表すなど)とは異なり、Goコンパイラの内部的な文脈で使われる特定の識別子または処理コンテキストを指していると推測されます。

src/cmd/gc/subr.c のようなコンパイラの内部コードでは、文字列の処理やコード生成の際に、様々な内部的なフォーマットやプレースホルダーが使用されることがあります。この %Z は、おそらくGoコンパイラが特定の種類の文字列(例えば、デバッグ情報、内部的なシンボル名、あるいは特定のコード生成パターン)を処理する際に、その文字列が持つべき特性や、適用されるべきエスケープルールを示すための内部的なマーカーであったと考えられます。

このコミットの文脈では、%Z が指す特定の文字列処理フローにおいて、バックスラッシュのエスケープが漏れていた、という問題を示唆しています。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Goコンパイラの src/cmd/gc/subr.c ファイル内の文字エスケープ処理ロジックに、バックスラッシュ文字(\)の処理を追加した点にあります。

subr.c は、Goコンパイラのバックエンドの一部であり、様々な補助的なルーチンやユーティリティ関数を含んでいます。このファイル内の特定の関数は、Goのソースコードから読み取られた文字列リテラルや、コンパイラが内部的に生成する文字列を、最終的なバイナリコードや中間表現に適切に変換する役割を担っています。この変換プロセスには、特殊文字のエスケープ処理が含まれます。

変更が加えられたコード箇所は、switch ステートメントの内部です。この switch ステートメントは、入力された文字 c に応じて、その文字をどのように出力バッファ p に書き込むかを決定します。既存のケースでは、改行文字(\n)と二重引用符(\")が既に処理されており、それぞれ \n\" としてエスケープされていました。

このコミットでは、新たに case '\\\\': が追加されました。これは、入力文字 c がバックスラッシュ文字(\)である場合に実行されるロジックです。このケースが追加されることで、コンパイラはバックスラッシュ文字を検出した際に、それをエスケープされた形式 \\ として出力するようになります。

具体的には、*p++ = '\\\\'; は出力バッファに最初のバックスラッシュを書き込み、*p++ = c; は元の文字(この場合はバックスラッシュ)を書き込みます。結果として、入力の \ は出力では \\ となり、正しくエスケープされた形式で表現されます。

この修正により、Goコンパイラは、文字列リテラル内に含まれるバックスラッシュを、他の特殊文字と同様に適切に処理できるようになり、コンパイルされたプログラムが意図した通りの文字列データを持つことが保証されます。これは、特にファイルパスや正規表現など、バックスラッシュが頻繁に使用される文字列を扱う際に重要となります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/gc/subr.c b/src/cmd/gc/subr.c
index c689386588..d188db60cd 100644
--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -1361,6 +1361,7 @@ loop:
 		*p++ = 'n';
 		break;
 	case '\"':
+	case '\\\\':
 		*p++ = '\\\\';
 		*p++ = c;
 		break;

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、src/cmd/gc/subr.c 内の、文字をエスケープして出力バッファに書き込む処理の一部を示しています。

@@ -1361,6 +1361,7 @@ loop:
 		*p++ = 'n';
 		break;
 	case '\"':
+	case '\\\\':
 		*p++ = '\\\\';
 		*p++ = c;
 		break;
  • case '\"':: これは、入力文字 c が二重引用符(")である場合の処理です。

    • *p++ = '\\\\';: 出力バッファ p にバックスラッシュ文字(\)を書き込み、ポインタ p をインクリメントします。
    • *p++ = c;: 次に、元の文字である二重引用符(")を書き込み、ポインタ p をインクリメントします。
    • これにより、入力の " は出力で \" となり、文字列リテラル内で正しくエスケープされます。
  • + case '\\\\':: この行がこのコミットによって追加された変更点です。これは、入力文字 c がバックスラッシュ文字(\)である場合の新しい処理です。

    • '\\\\' はC言語の文字リテラルで、単一のバックスラッシュ文字を表します。最初の \ はエスケープ文字、次の \ はエスケープされる文字です。
    • このケースが追加されたことで、入力がバックスラッシュの場合も、二重引用符と同様の処理が適用されます。
  • *p++ = '\\\\';: 出力バッファ p にバックスラッシュ文字(\)を書き込みます。

  • *p++ = c;: 次に、元の文字であるバックスラッシュ文字(\)を書き込みます。

  • これにより、入力の \ は出力で \\ となり、文字列リテラル内でバックスラッシュそのものが正しくエスケープされて表現されます。

この変更は、Goコンパイラが文字列リテラルを処理する際の堅牢性を高め、バックスラッシュを含む文字列が常に意図した通りに解釈されることを保証します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード(特に src/cmd/gc/ ディレクトリ内のファイル)
  • C言語のエスケープシーケンスに関する一般的な情報
  • Go言語の文字列リテラルに関する公式ドキュメント
  • GitHubのコミット履歴とdiffビューア

[インデックス 1012] ファイルの概要

このドキュメントは、Go言語のコンパイラ(gc)における、文字列リテラル内のバックスラッシュ(\)のエスケープ処理に関するコミット 57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802 について、その技術的な詳細を包括的に解説します。特に、src/cmd/gc/subr.c ファイルへの変更に焦点を当て、なぜこの変更が必要だったのか、そしてそれがGoコンパイラの動作にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げます。

コミット

  • コミットハッシュ: 57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802
  • 作者: Russ Cox rsc@golang.org
  • コミット日時: Thu Oct 30 17:28:33 2008 -0700
  • コミットメッセージ:
    escape \ in %Z
    
    R=ken
    OCL=18202
    CL=18202
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/57804f1d2d01c0e329b2efc64ad95d0764502802

元コミット内容

escape \ in %Z

R=ken
OCL=18202
CL=18202

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)が文字列リテラルを処理する際に、バックスラッシュ(\)文字を正しくエスケープできていなかった問題を修正するものです。特に、コミットメッセージにある %Z という特定のコンテキストにおいて、この問題が発生していたと考えられます。

プログラミング言語において、バックスラッシュは通常、エスケープシーケンスの開始文字として機能します。例えば、\n は改行、\t はタブを表します。しかし、文字列リテラル内でバックスラッシュそのものを表現したい場合、そのバックスラッシュもエスケープする必要があります。つまり、\ を表現するには \\ と記述する必要があります。

Goコンパイラは、ソースコードを解析し、機械語に変換する過程で、文字列リテラルを適切に処理する必要があります。この処理の中で、特定の文字(改行や引用符など)は特殊なエスケープ処理を必要とします。このコミット以前は、バックスラッシュ文字自体がこのエスケープ処理の対象に含まれていなかったため、コンパイラが生成するコードや内部表現において、バックスラッシュが意図しない形で解釈される可能性がありました。

この修正は、Go言語の文字列リテラルが正しく解釈され、コンパイルされることを保証するために不可欠でした。

前提知識の解説

Go言語のコンパイラ (gc)

Go言語には、公式のツールチェインに含まれる標準のコンパイラ gc があります。gc は、Goのソースコードを解析し、中間表現を経て、最終的に実行可能なバイナリコードを生成します。このコンパイルプロセスには、字句解析、構文解析、意味解析、最適化、コード生成など、多くの段階が含まれます。src/cmd/gc/subr.c のようなファイルは、このコンパイラのバックエンド部分、特にコード生成やユーティリティ関数に関連する部分を構成しています。

エスケープシーケンスとバックスラッシュのエスケープ

エスケープシーケンスとは、プログラミング言語の文字列リテラル内で、特殊な意味を持つ文字や、直接記述できない文字(例: 改行、タブ、引用符)を表現するために使用される文字の組み合わせです。多くの言語では、バックスラッシュ(\)がエスケープシーケンスの開始文字として使われます。

例:

  • \n: 改行 (newline)
  • \t: タブ (tab)
  • \": 二重引用符 (double quote)
  • \': 一重引用符 (single quote)

ここで重要なのは、バックスラッシュそのものを文字列リテラル内で表現したい場合です。例えば、Windowsのファイルパス C:\Program Files を文字列として扱いたい場合、そのまま C:\Program Files と記述すると、\P\P がエスケープシーケンスとして解釈されてしまいます。これを避けるために、バックスラッシュ自体をエスケープし、C:\\Program Files のように記述する必要があります。これにより、コンパイラやインタプリタは \\ を単一のバックスラッシュ文字として認識します。

%Z の意味 (Goコンパイラの文脈において)

コミットメッセージにある %Z は、一般的なC言語の printf 系のフォーマット指定子(strftime 関数でタイムゾーンを表すなど)とは異なり、Goコンパイラの内部的な文脈で使われる特定の識別子または処理コンテキストを指していると推測されます。

src/cmd/gc/subr.c のようなコンパイラの内部コードでは、文字列の処理やコード生成の際に、様々な内部的なフォーマットやプレースホルダーが使用されることがあります。この %Z は、おそらくGoコンパイラが特定の種類の文字列(例えば、デバッグ情報、内部的なシンボル名、あるいは特定のコード生成パターン)を処理する際に、その文字列が持つべき特性や、適用されるべきエスケープルールを示すための内部的なマーカーであったと考えられます。

このコミットの文脈では、%Z が指す特定の文字列処理フローにおいて、バックスラッシュのエスケープが漏れていた、という問題を示唆しています。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Goコンパイラの src/cmd/gc/subr.c ファイル内の文字エスケープ処理ロジックに、バックスラッシュ文字(\)の処理を追加した点にあります。

subr.c は、Goコンパイラのバックエンドの一部であり、様々な補助的なルーチンやユーティリティ関数を含んでいます。このファイル内の特定の関数は、Goのソースコードから読み取られた文字列リテラルや、コンパイラが内部的に生成する文字列を、最終的なバイナリコードや中間表現に適切に変換する役割を担っています。この変換プロセスには、特殊文字のエスケープ処理が含まれます。

変更が加えられたコード箇所は、switch ステートメントの内部です。この switch ステートメントは、入力された文字 c に応じて、その文字をどのように出力バッファ p に書き込むかを決定します。既存のケースでは、改行文字(\n)と二重引用符(\")が既に処理されており、それぞれ \n\" としてエスケープされていました。

このコミットでは、新たに case '\\\\': が追加されました。これは、入力文字 c がバックスラッシュ文字(\)である場合に実行されるロジックです。このケースが追加されることで、コンパイラはバックスラッシュ文字を検出した際に、それをエスケープされた形式 \\ として出力するようになります。

具体的には、*p++ = '\\\\'; は出力バッファに最初のバックスラッシュを書き込み、*p++ = c; は元の文字(この場合はバックスラッシュ)を書き込みます。結果として、入力の \ は出力では \\ となり、正しくエスケープされた形式で表現されます。

この修正により、Goコンパイラは、文字列リテラル内に含まれるバックスラッシュを、他の特殊文字と同様に適切に処理できるようになり、コンパイルされたプログラムが意図した通りの文字列データを持つことが保証されます。これは、特にファイルパスや正規表現など、バックスラッシュが頻繁に使用される文字列を扱う際に重要となります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/gc/subr.c b/src/cmd/gc/subr.c
index c689386588..d188db60cd 100644
--- a/src/cmd/gc/subr.c
+++ b/src/cmd/gc/subr.c
@@ -1361,6 +1361,7 @@ loop:
 		*p++ = 'n';
 		break;
 	case '\"':
+	case '\\\\':
 		*p++ = '\\\\';
 		*p++ = c;
 		break;

コアとなるコードの解説

上記のコードスニペットは、src/cmd/gc/subr.c 内の、文字をエスケープして出力バッファに書き込む処理の一部を示しています。

@@ -1361,6 +1361,7 @@ loop:
 		*p++ = 'n';
 		break;
 	case '\"':
+	case '\\\\':
 		*p++ = '\\\\';
 		*p++ = c;
 		break;
  • case '\"':: これは、入力文字 c が二重引用符(")である場合の処理です。

    • *p++ = '\\\\';: 出力バッファ p にバックスラッシュ文字(\)を書き込み、ポインタ p をインクリメントします。
    • *p++ = c;: 次に、元の文字である二重引用符(")を書き込み、ポインタ p をインクリメントします。
    • これにより、入力の " は出力で \" となり、文字列リテラル内で正しくエスケープされます。
  • + case '\\\\':: この行がこのコミットによって追加された変更点です。これは、入力文字 c がバックスラッシュ文字(\)である場合の新しい処理です。

    • '\\\\' はC言語の文字リテラルで、単一のバックスラッシュ文字を表します。最初の \ はエスケープ文字、次の \ はエスケープされる文字です。
    • このケースが追加されたことで、入力がバックスラッシュの場合も、二重引用符と同様の処理が適用されます。
  • *p++ = '\\\\';: 出力バッファ p にバックスラッシュ文字(\)を書き込みます。

  • *p++ = c;: 次に、元の文字であるバックスラッシュ文字(\)を書き込みます。

  • これにより、入力の \ は出力で \\ となり、文字列リテラル内でバックスラッシュそのものが正しくエスケープされて表現されます。

この変更は、Goコンパイラが文字列リテラルを処理する際の堅牢性を高め、バックスラッシュを含む文字列が常に意図した通りに解釈されることを保証します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード(特に src/cmd/gc/ ディレクトリ内のファイル)
  • C言語のエスケープシーケンスに関する一般的な情報
  • Go言語の文字列リテラルに関する公式ドキュメント
  • GitHubのコミット履歴とdiffビューア
  • Web検索: "Go compiler src/cmd/gc/subr.c string escaping"