[インデックス 10139] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるencoding/xmlパッケージ内のテストコードを簡素化することを目的としています。具体的には、XMLマーシャリング（Goのデータ構造をXML形式に変換する処理）におけるエラーテストの構造と検証ロジックが改善されています。

コミット

commit 29fb5d3e0f3ac82a3f6f9ac97e0b74f4dbf3b5f6
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Oct 27 19:40:41 2011 -0700

    xml: simplify test
    
    R=golang-dev, adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5320051

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/29fb5d3e0f3ac82a3f6f9ac97e0b74f4dbf3b5f6

元コミット内容

xml: simplify test

このコミットは、encoding/xmlパッケージのテストコードを簡素化することを目的としています。

変更の背景

Go言語のencoding/xmlパッケージは、Goのデータ構造とXMLの間で変換を行うための機能を提供します。このパッケージには、Goの特定の型（例えばチャネルやマップ）がXMLにマーシャリングできない場合にエラーを発生させるメカニズムがあります。

このコミットが行われた背景には、テストコードの可読性と保守性の向上が挙げられます。既存のテストコードでは、エラーの期待値と種類を保持する構造体のフィールド名が冗長であり、エラー検証ロジックもやや複雑でした。このコミットは、これらの冗長性を排除し、より簡潔で理解しやすいテストコードにすることを意図しています。特に、テストケースの定義とエラー検証の条件をより直接的にすることで、将来的なテストの追加や変更が容易になります。

前提知識の解説

Go言語の`encoding/xml`パッケージ

encoding/xmlパッケージは、Goの構造体とXMLドキュメントの間でデータをエンコード（マーシャリング）およびデコード（アンマーシャリング）するための機能を提供します。Goの構造体のフィールドにタグを付与することで、XML要素名や属性名を制御できます。

Go言語の`reflect`パッケージと`reflect.Kind`

reflectパッケージは、Goプログラムが実行時に自身の構造を検査（リフレクション）することを可能にします。これにより、変数の型、値、メソッドなどを動的に調べることができます。

reflect.Kindは、Goの型の基本的なカテゴリ（例: Int, String, Struct, Chan, Mapなど）を表す列挙型です。reflect.TypeOf(v).Kind()のように使用することで、任意の変数の基本的な型カテゴリを取得できます。encoding/xmlパッケージでは、マーシャリングできない型を検出するためにreflect.Kindが利用されます。例えば、チャネルやマップはXMLに直接マーシャリングできないため、これらのKindをチェックしてエラーを発生させます。

Go言語のテスト

Go言語には、標準でテストフレームワークが組み込まれています。_test.goで終わるファイルにテストコードを記述し、go testコマンドで実行します。テスト関数はTestで始まり、*testing.T型の引数を取ります。エラーを報告するにはt.Errorf()などを使用します。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/xml/marshal_test.goファイル内のmarshalErrorTests構造体とTestMarshalErrors関数の変更に焦点を当てています。

marshalErrorTests構造体のフィールド名変更:
- ExpectErrフィールドがErrにリネームされました。
- ExpectKindフィールドがKindにリネームされました。この変更により、テストケースの定義がより簡潔になり、意図が明確になります。
marshalErrorTestsの初期化の簡素化: 構造体のフィールド名変更に伴い、テストケースの初期化部分も新しいフィールド名に合わせて修正されています。これにより、テストデータの定義がより直接的になります。
TestMarshalErrors関数のエラー検証ロジックの簡素化: 変更前は、エラーがnilでないことのチェックと、エラー文字列の比較が別々のif文で行われていました。変更後は、if err == nil || err.String() != test.Errという単一の条件で、エラーが存在し、かつ期待されるエラー文字列と一致するかどうかをチェックしています。これにより、エラー検証のロジックがより簡潔で読みやすくなりました。同様に、UnsupportedTypeErrorのKindの検証も、if kind := err.(*UnsupportedTypeError).Type.Kind(); kind != test.Kindという形で、より直接的に比較するようになりました。

これらの変更は、機能的な変更ではなく、既存のテストコードの品質と保守性を向上させるためのリファクタリングです。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/xml/marshal_test.go

--- a/src/pkg/xml/marshal_test.go
+++ b/src/pkg/xml/marshal_test.go
@@ -314,27 +314,27 @@ func TestMarshal(t *testing.T) {
 }
 
 var marshalErrorTests = []struct {
-	Value      interface{}
-	ExpectErr  string
-	ExpectKind reflect.Kind
+	Value interface{}
+	Err   string
+	Kind  reflect.Kind
 }{
 	{
-		Value:      make(chan bool),
-		ExpectErr:  "xml: unsupported type: chan bool",
-		ExpectKind: reflect.Chan,
+		Value: make(chan bool),
+		Err:   "xml: unsupported type: chan bool",
+		Kind:  reflect.Chan,
 	},
 	{
 		Value: map[string]string{
 			"question": "What do you get when you multiply six by nine?",
 			"answer":   "42",
 		},
-		ExpectErr:  "xml: unsupported type: map[string] string",
-		ExpectKind: reflect.Map,
+		Err:  "xml: unsupported type: map[string] string",
+		Kind: reflect.Map,
 	},
 	{
-		Value:      map[*Ship]bool{nil: false},
-		ExpectErr:  "xml: unsupported type: map[*xml.Ship] bool",
-		ExpectKind: reflect.Map,
+		Value: map[*Ship]bool{nil: false},
+		Err:   "xml: unsupported type: map[*xml.Ship] bool",
+		Kind:  reflect.Map,
 	},
 }
 
@@ -342,14 +342,11 @@ func TestMarshalErrors(t *testing.T) {
 	for idx, test := range marshalErrorTests {
 		buf := bytes.NewBuffer(nil)
 		err := Marshal(buf, test.Value)
-		if got, want := err, test.ExpectErr; got == nil {
-			t.Errorf("#%d: want error %s", idx, want)
-			continue
-		} else if got.String() != want {
-			t.Errorf("#%d: marshal(%#v) = [error] %q, want %q", idx, test.Value, got, want)
+		if err == nil || err.String() != test.Err {
+			t.Errorf("#%d: marshal(%#v) = [error] %q, want %q", idx, test.Value, err, test.Err)
 		}
-		if got, want := err.(*UnsupportedTypeError).Type.Kind(), test.ExpectKind; got != want {
-			t.Errorf("#%d: marshal(%#v) = [error kind] %s, want %s", idx, test.Value, got, want)
+		if kind := err.(*UnsupportedTypeError).Type.Kind(); kind != test.Kind {
+			t.Errorf("#%d: marshal(%#v) = [error kind] %s, want %s", idx, test.Value, kind, test.Kind)
 		}
 	}
 }

コアとなるコードの解説

`marshalErrorTests`構造体の変更

変更前:

var marshalErrorTests = []struct {
	Value      interface{}
	ExpectErr  string
	ExpectKind reflect.Kind
}{
	// ...
}

変更後:

var marshalErrorTests = []struct {
	Value interface{}
	Err   string
	Kind  reflect.Kind
}{
	// ...
}

ExpectErrとExpectKindという冗長なフィールド名が、それぞれErrとKindという簡潔な名前に変更されました。これにより、テストケースの定義がより直接的で読みやすくなります。例えば、ExpectErr: "..."と書く代わりにErr: "..."と書くことで、期待されるエラー文字列を直接指定していることが一目でわかります。

`TestMarshalErrors`関数の変更