[インデックス 10178] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるnet/http
パッケージ内のテストファイル(src/pkg/http/request_test.go
)における、変数名の誤りを修正するものです。具体的には、parseContentTypeTest
構造体内のフィールド名がerror
からerr
に変更され、それに伴いテストコード内の参照箇所も修正されています。これにより、テストのコンパイルエラーや論理的な不整合が解消され、テストの正確性が向上します。
コミット
- コミットハッシュ:
b4e35629ed7df3e4d0d10be60198b9c365ea7a34
- 作者: Russ Cox rsc@golang.org
- コミット日時: 2011年11月1日 火曜日 21:45:37 -0400
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/b4e35629ed7df3e4d0d10be60198b9c365ea7a34
元コミット内容
http: avoid name error in test
R=adg
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5316070
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語のnet/http
パッケージのテストコードにおける、単純な変数名の不一致が存在していました。parseContentTypeTest
というテスト用の構造体には、エラーの有無を示すブール値のフィールドが定義されていましたが、そのフィールド名がerror
となっていました。しかし、テストコードのロジック内でこのフィールドを参照する際に、誤ってerr
という名前で参照しようとしていたため、コンパイル時または実行時に「名前エラー(name error)」が発生する可能性がありました。
Go言語では、構造体のフィールド名と、そのフィールドを参照する際の変数名が一致している必要があります。この不一致を解消し、テストが正しく機能するようにするために、構造体内のフィールド名をerror
からerr
に修正し、それに合わせてテストコード内の参照もtest.error
からtest.err
へと変更されました。これにより、テストの信頼性と保守性が向上しました。
前提知識の解説
Go言語の構造体 (Struct)
Go言語における構造体は、異なるデータ型のフィールドをひとまとめにした複合データ型です。C言語の構造体や、他の言語におけるクラスのプロパティのようなものと考えることができます。構造体は、関連するデータを論理的にグループ化し、コードの可読性と保守性を高めるために使用されます。
例:
type Person struct {
Name string
Age int
}
この例では、Person
という構造体が定義されており、Name
(文字列型)とAge
(整数型)という2つのフィールドを持っています。構造体のフィールドにアクセスするには、構造体変数.フィールド名
という形式を使用します。
Go言語のテスト (Testing)
Go言語には、標準ライブラリとしてtesting
パッケージが用意されており、ユニットテストやベンチマークテストを簡単に記述できます。テストファイルは、テスト対象のGoファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名の末尾に_test.go
を付けます。テスト関数はTest
で始まり、その後に続く名前の最初の文字は大文字である必要があります(例: func TestFunctionName(t *testing.T)
)。
テスト関数内でエラーを報告するには、*testing.T
型の引数t
のメソッドを使用します。例えば、t.Errorf()
はテスト失敗を報告し、メッセージを出力します。
名前エラー (Name Error)
プログラミングにおける「名前エラー」とは、プログラムが参照しようとしている変数、関数、クラスなどの名前が見つからない場合に発生するエラーです。これは通常、以下のような原因で起こります。
- スペルミス: 変数名や関数名のスペルが間違っている。
- 未定義: 変数や関数が使用される前に定義されていない。
- スコープの問題: 変数や関数が現在のスコープからアクセスできない場所で定義されている。
- リファクタリングの不整合: コードの変更(リファクタリング)によって、ある場所の名前が変更されたにもかかわらず、その名前を参照している別の場所が更新されていない。
今回のコミットでは、4番目の「リファクタリングの不整合」に該当し、構造体のフィールド名と参照するコードの変数名が一致していなかったために発生する可能性のあるエラーを回避しています。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/http/request_test.go
ファイル内のparseContentTypeTest
構造体と、それを使用するテストロジックに焦点を当てています。
元のコードでは、parseContentTypeTest
構造体が以下のように定義されていました。
type parseContentTypeTest struct {
contentType stringMap
error bool // ここが問題
}
そして、この構造体のインスタンスを初期化する際や、テストロジック内でこのフィールドを参照する際に、誤ってerr
という名前でアクセスしようとしていました。
例えば、テストデータの定義部分では:
{
contentType: stringMap{"Content-Type": {"application/unknown"}},
error: true, // ここも問題
},
そして、テストの条件分岐では:
if !test.error && err != nil { // ここも問題
t.Errorf("test %d: Unexpected error: %v", i, err)
}
if test.error && err == nil { // ここも問題
t.Errorf("test %d should have returned error", i)
}
Go言語では、構造体のフィールド名と、そのフィールドにアクセスする際の識別子は厳密に一致している必要があります。error
というフィールド名で定義されているにもかかわらず、コード内でtest.err
としてアクセスしようとすると、コンパイラはerr
というフィールドが見つからないため、コンパイルエラーを報告します。
このコミットでは、この不整合を解消するために、parseContentTypeTest
構造体のerror
フィールドをerr
にリネームしました。
type parseContentTypeTest struct {
contentType stringMap
err bool // 修正後
}
これにより、構造体の定義と、テストコード内の参照(test.err
)が一致するようになり、名前エラーが解消され、テストが意図通りに動作するようになりました。これは、コードの正確性と堅牢性を確保するための、小さくも重要な修正です。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/http/request_test.go
ファイルに集中しています。
--- a/src/pkg/http/request_test.go
+++ b/src/pkg/http/request_test.go
@@ -49,10 +49,10 @@ func TestPostQuery(t *testing.T) {
type stringMap map[string][]string
type parseContentTypeTest struct {
contentType stringMap
- error bool
+ err bool
}
var parseContentTypeTests = []parseContentTypeTest{
{contentType: stringMap{"Content-Type": {"text/plain; boundary="}}},\
{\
contentType: stringMap{"Content-Type": {"application/unknown"}},\
- error: true,\
+ err: true,\
},\
}
@@ -62,9 +62,9 @@ func TestPostContentTypeParsing(t *testing.T) {
\tBody: ioutil.NopCloser(bytes.NewBufferString("body")),\
}\
err := req.ParseForm()\
- if !test.error && err != nil {\
+ if !test.err && err != nil {\
t.Errorf("test %d: Unexpected error: %v", i, err)\
}\
- if test.error && err == nil {\
+ if test.err && err == nil {\
t.Errorf("test %d should have returned error", i)\
}\
}\
具体的には、以下の行が変更されました。
type parseContentTypeTest struct { ... error bool ... }
のerror
がerr
に変更。error: true,
のerror
がerr
に変更。if !test.error && err != nil {
のtest.error
がtest.err
に変更。if test.error && err == nil {
のtest.error
がtest.err
に変更。
コアとなるコードの解説
このコミットのコアとなる変更は、parseContentTypeTest
構造体のフィールド名と、そのフィールドを参照する際の変数名の不一致を解消することです。
-
構造体定義の変更:
- error bool + err bool
parseContentTypeTest
構造体内のブール型フィールドの名前がerror
からerr
に変更されました。これは、テストコード内でこのフィールドがtest.err
として参照されていたため、その参照と一致させるための修正です。 -
テストデータ初期化の変更:
- error: true, + err: true,
parseContentTypeTest
型のテストデータを初期化する際にも、上記構造体定義の変更に合わせて、フィールド名がerror
からerr
に修正されました。 -
テストロジック内の条件分岐の変更:
- if !test.error && err != nil { + if !test.err && err != nil { // ... - if test.error && err == nil { + if test.err && err == nil {
テスト関数
TestPostContentTypeParsing
内で、parseContentTypeTest
構造体のインスタンスtest
のerror
フィールドを参照していた箇所が、新しいフィールド名err
に合わせてtest.err
に変更されました。これにより、コンパイラが正しいフィールドを見つけられるようになり、テストが期待通りに実行されるようになります。
これらの変更は、Go言語の厳密な型チェックと識別子の解決規則に準拠するためのものであり、コードの正確性とテストの信頼性を確保するために不可欠な修正でした。
関連リンク
- Gerrit Code Review: https://golang.org/cl/5316070
- このリンクは、GoプロジェクトのコードレビューシステムであるGerritにおける、このコミットに対応する変更リスト(Change-ID)を示しています。Goプロジェクトでは、GitHubへのコミット前にGerritでコードレビューが行われるのが一般的です。
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (Go Programming Language Documentation)
- Go言語の
testing
パッケージに関するドキュメント - Go言語の構造体に関するドキュメント
- Gitのdiff形式に関する一般的な情報