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[インデックス 10395] ファイルの概要

コミット

コミットハッシュ: 301701d8a71926e23e0c07c840c96818609f0a42
作成者: Mikio Hara mikioh.mikioh@gmail.com
日付: 2011年11月15日 10:27:43 (JST)
メッセージ: go/build: fix build
レビュー: R=golang-dev, bradfitz

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/301701d8a71926e23e0c07c840c96818609f0a42

元コミット内容

このコミットは、src/pkg/go/build/build_test.goファイルに対する修正を含んでいます。主な変更点は以下の通りです:

  1. フィールドの整列: 構造体リテラルのフィールドを整列させ、可読性を向上
  2. TestImportsフィールドの明示的な追加: 空のスライスを明示的に定義
  3. フォーマットの統一: インデントと構造体フィールドの並びを統一

変更されたファイル:

  • src/pkg/go/build/build_test.go (9行追加、7行削除)

変更の背景

2011年11月は、Go言語の初期開発段階において重要な時期でした。Go 1.0のリリースに向けて、標準ライブラリの安定化と品質向上が急務となっていました。この時期のgo/buildパッケージは、Go言語のビルドシステムの基盤を構築する重要な役割を担っていました。

このコミットは、テストインフラストラクチャの改善の一環として実施されました。具体的には、DirInfo構造体のテストデータにおいて、TestImportsフィールドが欠落していたことを修正しています。コミットメッセージの「empty is already not a nil」という表現は、空のスライスとnilスライスの区別に関する重要な概念を示しています。

前提知識の解説

Go言語のgo/buildパッケージの役割

go/buildパッケージは、Go言語のビルドシステムにおいて中核的な役割を果たします。主な機能は以下の通りです:

  1. パッケージ情報の収集: ソースコードを解析し、パッケージの構造を理解
  2. インポートパスの解決: 依存関係の特定と管理
  3. ビルドタグの処理: 条件付きコンパイレーションの制御
  4. テストファイルの識別: *_test.goファイルの分類と処理

DirInfo構造体の意味

DirInfo構造体は、ディレクトリ内のGoパッケージに関する情報を保持するデータ構造です。主要なフィールドには以下が含まれます:

  • GoFiles: 通常のGoソースファイル
  • CgoFiles: CGOを使用するGoファイル
  • CFiles: Cソースファイル
  • Package: パッケージ名
  • Imports: 通常のインポート
  • TestImports: テストファイルからのインポート

空のスライスとnilスライスの違い

Go言語において、空のスライスとnilスライスは重要な区別があります:

nilスライス

var nilSlice []string
fmt.Println(nilSlice == nil) // true

空のスライス

emptySlice := []string{}
fmt.Println(emptySlice == nil) // false

主な違い

  1. 比較: nilスライスはnilと等しいが、空のスライスは等しくない
  2. JSON エンコーディング: nilスライスはnull、空のスライスは[]にエンコードされる
  3. メモリ使用: nilスライスは基底配列を持たないが、空のスライスは空の非nil配列を持つ
  4. reflect.DeepEqualの挙動: 両者は等しくないと判定される

技術的詳細

テストインフラストラクチャの改善

このコミットは、Go言語の初期開発において重要なテストインフラストラクチャの改善を示しています。2011年当時、Go言語のテストシステムは以下の特徴を持っていました:

  1. *_test.goファイルの自動認識: テストファイルの命名規則
  2. TestXxx関数の自動実行: テスト関数の命名規則
  3. パッケージ内テストと外部テスト: テストの分離とアクセス制御

TestImportsフィールドの重要性

TestImportsフィールドは、テストファイルが使用するインポートパスを追跡するために導入されました。これにより以下が可能になります:

  1. テスト依存関係の管理: テストに必要なパッケージの特定
  2. ビルドプロセスの最適化: 必要なパッケージのみをビルド
  3. 循環依存の検出: パッケージ間の依存関係の検証

構造体リテラルの整列

コードの可読性向上のため、構造体リテラルのフィールドが整列されました:

// 修正前
&DirInfo{
    GoFiles: []string{"main.go"},
    Package: "main",
    Imports: []string{"go/build/pkgtest"},
}

// 修正後
&DirInfo{
    GoFiles:     []string{"main.go"},
    Package:     "main",
    Imports:     []string{"go/build/pkgtest"},
    TestImports: []string{},
}

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/go/build/build_test.goファイルのbuildPkgs変数内の2つのテストケースに集中しています:

1. cmdtestパッケージのテストケース(行21-31)

{
    "go/build/cmdtest",
    &DirInfo{
        GoFiles:     []string{"main.go"},
        Package:     "main", 
        Imports:     []string{"go/build/pkgtest"},
        TestImports: []string{},
    },
},

2. cgotestパッケージのテストケース(行33-46)

{
    "go/build/cgotest",
    &DirInfo{
        CgoFiles:    []string{"cgotest.go"},
        CFiles:      []string{"cgotest.c"},
        Imports:     []string{"C", "unsafe"},
        TestImports: []string{},
        Package:     "cgotest",
    },
},

コアとなるコードの解説

1. フィールドの明示的な初期化

TestImports: []string{}の追加により、以下の利点が得られます:

  • 予測可能な動作: フィールドの値が明示的に定義される
  • テストの堅牢性: 予期しないnil値による問題の回避
  • コードの明確性: 意図が明確に表現される

2. CGOテストケースの特徴

cgotestパッケージのテストケースでは、CGO特有の要素が含まれています:

  • CgoFiles: CGOを使用するGoファイル
  • CFiles: Cソースファイル
  • 特殊インポート: "C""unsafe"パッケージ

これらは、Go言語のC言語との相互運用性を示す重要な要素です。

3. フォーマットの統一

コードフォーマットの統一により、以下の改善が図られました:

  • 可読性の向上: 整列されたフィールドによる視認性の改善
  • 保守性の向上: 一貫したスタイルによる修正の容易さ
  • チーム開発の促進: 統一された記述スタイル

関連リンク

参考にした情報源リンク

このコミットは、Go言語の初期開発における品質向上の取り組みを示す重要な一例であり、現在のGo言語の堅牢性の基盤を築いた改善の一つです。