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[インデックス 10424] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリにおけるPlan 9オペレーティングシステム向けのビルド修正に関するものです。具体的には、syscallostimeパッケージにおいて、エラーハンドリングの型定義をsyscall.ErrorからGoの標準エラーインターフェースであるerrorへと変更しています。これにより、Plan 9環境でのコンパイルエラーや互換性の問題を解消し、コードベースの一貫性を向上させています。

コミット

commit 087a34869ae66824ad83e8b160089c8f94f18807
Author: Lucio De Re <lucio.dere@gmail.com>
Date:   Wed Nov 16 17:37:54 2011 -0500

    syscall, os, time: fix Plan 9 build

    R=rsc, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5371092

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/087a34869ae66824ad83e8b160089c8f94f18807

元コミット内容

syscall, os, time: fix Plan 9 build

R=rsc, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5371092

変更の背景

このコミットが行われた2011年11月は、Go言語がまだ比較的新しく、活発に開発が進められていた時期です。Goは当初からクロスプラットフォーム対応を重視しており、Linux、Windows、macOSといった主要なOSだけでなく、Plan 9のようなニッチなOSもサポート対象としていました。

Go言語のエラーハンドリングは、その設計思想の重要な部分を占めています。初期のGoでは、特定のパッケージが独自のエラー型を定義し、それを返すことがありました。しかし、Goの設計哲学は、より汎用的なインターフェースを介したポリモーフィックな振る舞いを推奨します。syscall.Errorのような具体的な型を返すことは、Goの標準的なエラーハンドリングパターンであるerrorインターフェースの使用と矛盾する可能性がありました。

このコミットの背景には、Plan 9環境でのビルドプロセスにおいて、syscall.Error型とGoの標準errorインターフェースとの間の型不一致が原因で発生していたコンパイルエラーが存在したと考えられます。Go言語の開発チームは、エラーハンドリングの一貫性を高め、特定のOSビルドにおける問題を解決するために、syscall.Errorからerrorインターフェースへの移行を進めていたと推測されます。これにより、コードの再利用性、可読性、そして将来的なメンテナンス性が向上します。

前提知識の解説

Plan 9 from Bell Labs

Plan 9 from Bell Labsは、ベル研究所によって開発された分散オペレーティングシステムです。Unixの後継として設計され、ネットワーク透過性、リソースのファイルシステムとしての表現、UTF-8のネイティブサポートなど、革新的な概念を導入しました。Go言語の開発者の一部はPlan 9の開発にも携わっており、Go言語の設計思想にはPlan 9の影響が見られます。Goが初期からPlan 9をサポートしていたのは、このような歴史的背景があるためです。

Go言語のエラーハンドリング

Go言語のエラーハンドリングは、例外処理メカニズム(try-catchなど)を持たず、関数がエラーを返す場合は、戻り値の最後の要素としてerrorインターフェース型の値を返すという慣習に基づいています。 errorインターフェースは非常にシンプルで、Error() stringという単一のメソッドのみを定義しています。

type error interface {
    Error() string
}

これにより、どのような型でもError() stringメソッドを実装していればerrorインターフェースを満たすことができ、Goのコードベース全体で一貫したエラー処理が可能になります。

syscall.Errorerrorインターフェース

このコミット以前、syscallパッケージ(およびそれを利用するosパッケージなど)では、システムコールに関連するエラーを表現するためにsyscall.Errorという具体的な型を使用していた可能性があります。しかし、Goの標準的なエラーハンドリングの慣習では、具体的なエラー型を直接返すのではなく、errorインターフェースを返すことが推奨されます。

syscall.Errorerrorインターフェースを実装していたとしても、関数シグネチャでsyscall.Errorを明示的に指定することは、呼び出し元がその具体的な型に依存することを意味します。これは、より抽象的なerrorインターフェースに依存するよりも柔軟性が低く、将来的な変更に対する脆弱性も高まります。このコミットは、この依存関係を解消し、より汎用的なerrorインターフェースを使用することで、コードの結合度を下げ、Goのエラーハンドリングのベストプラクティスに準拠させることを目的としています。

技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更は、Go言語のossyscalltimeパッケージ内の関数シグネチャにおいて、エラーを返す型をsyscall.Errorから組み込みのerrorインターフェースに変更した点です。

具体的には、以下のパターンで変更が適用されています。

  1. 関数シグネチャの変更:

    • func NewSyscallError(syscall string, err syscall.Error) errorfunc NewSyscallError(syscall string, err error) error に変更。
    • func (f *File) read(b []byte) (n int, err syscall.Error)func (f *File) read(b []byte) (n int, err error) に変更。
    • 同様に、pread, write, pwrite, seek などのファイル操作関連のメソッドや、readdirnames, readdupdevice, forkAndExecInChild, forkExec, StartProcess, Exec などのプロセス実行関連の関数、Read, Write, Getwd, Fd2path, Pipe, Seek, Mkdir, Await, Unmount, Fchdir, DecodeBintime, Gettimeofday, Getgroups などのシステムコール関連の関数で、戻り値のエラー型がsyscall.Errorからerrorに変更されています。
    • syscallパッケージ内のNewError関数も、func NewError(s string) Error から func NewError(s string) error に変更されています。ここでErrorsyscall.Errorのエイリアスか、あるいはその時点でのsyscallパッケージ内のカスタムエラー型を指していたと考えられます。
  2. 変数宣言の変更:

    • var e syscall.Error のようなエラー変数の宣言が var e error に変更されています。これは、エラーを受け取る変数の型も、より汎用的なerrorインターフェースに合わせるためです。
  3. 不要なインポートの削除:

    • src/pkg/time/sys_plan9.go から ossyscall パッケージのインポートが削除されています。これは、エラー型の変更により、これらのパッケージから特定の型(syscall.Errorなど)を直接参照する必要がなくなったためと考えられます。これにより、依存関係が整理され、コードのクリーンアップが図られています。

この変更は、Go言語の型システムにおけるインターフェースの強力な利用例を示しています。syscall.Errorerrorインターフェースを実装している限り、この変更は既存のロジックの破壊を伴わず、より抽象的で柔軟なエラーハンドリングを可能にします。特にPlan 9のような特定の環境に特化したコードにおいて、標準的なerrorインターフェースを使用することで、Go言語全体のコードベースの一貫性と移植性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなる変更は、主に以下のファイル群にわたる関数シグネチャと変数宣言のエラー型変更です。

  • src/pkg/os/error_plan9.go
  • src/pkg/os/file_plan9.go
  • src/pkg/os/stat_plan9.go
  • src/pkg/syscall/exec_plan9.go
  • src/pkg/syscall/syscall_plan9.go
  • src/pkg/syscall/zsyscall_plan9_386.go
  • src/pkg/time/sys_plan9.go

具体的な変更例をいくつか示します。

src/pkg/os/error_plan9.go:

--- a/src/pkg/os/error_plan9.go
+++ b/src/pkg/os/error_plan9.go
@@ -24,7 +24,7 @@ func (e *SyscallError) Error() string { return e.Syscall + ": " + e.Err }
 // NewSyscallError returns, as an error, a new SyscallError
 // with the given system call name and error details.
 // As a convenience, if err is nil, NewSyscallError returns nil.
-func NewSyscallError(syscall string, err syscall.Error) error {
+func NewSyscallError(syscall string, err error) error {
 	if err == nil {
 		return nil
 	}

src/pkg/os/file_plan9.go:

--- a/src/pkg/os/file_plan9.go
+++ b/src/pkg/os/file_plan9.go
@@ -64,7 +64,7 @@ const DevNull = "/dev/null"
 func OpenFile(name string, flag int, perm uint32) (file *File, err error) {
 	var (
 		fd     int
-		e      syscall.Error
+		e      error
 		create bool
 		excl   bool
 		trunc  bool
@@ -93,7 +93,7 @@ func OpenFile(name string, flag int, perm uint32) (file *File, err error) {
 	} else {
 		fd, e = syscall.Open(name, flag)
 		if e != nil && create {
-			var e1 syscall.Error
+			var e1 error
 			fd, e1 = syscall.Create(name, flag, perm)
 			if e1 == nil {
 				e = nil
@@ -199,26 +199,26 @@ func (f *File) Sync() (err error) {

 // read reads up to len(b) bytes from the File.
 // It returns the number of bytes read and an error, if any.
-func (f *File) read(b []byte) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) read(b []byte) (n int, err error) {
 	return syscall.Read(f.fd, b)
 }

 // pread reads len(b) bytes from the File starting at byte offset off.
 // It returns the number of bytes read and the error, if any.
 // EOF is signaled by a zero count with err set to nil.
-func (f *File) pread(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) pread(b []byte, off int64) (n int, err error) {
 	return syscall.Pread(f.fd, b, off)
 }

 // write writes len(b) bytes to the File.
 // It returns the number of bytes written and an error, if any.
-func (f *File) write(b []byte) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) write(b []byte) (n int, err error) {
 	return syscall.Write(f.fd, b)
 }

 // pwrite writes len(b) bytes to the File starting at byte offset off.
 // It returns the number of bytes written and an error, if any.
-func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err error) {
 	return syscall.Pwrite(f.fd, b, off)
 }

@@ -226,7 +226,7 @@ func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
 // according to whence: 0 means relative to the origin of the file, 1 means
 // relative to the current offset, and 2 means relative to the end.
 // It returns the new offset and an error, if any.
-func (f *File) seek(offset int64, whence int) (ret int64, err syscall.Error) {
+func (f *File) seek(offset int64, whence int) (ret int64, err error) {
 	return syscall.Seek(f.fd, offset, whence)
 }

src/pkg/time/sys_plan9.go:

--- a/src/pkg/time/sys_plan9.go
+++ b/src/pkg/time/sys_plan9.go
@@ -4,11 +4,6 @@

 package time

-import (
-	"os"
-	"syscall"
-)
-
 // for testing: whatever interrupts a sleep
 func interrupt() {
 	// cannot predict pid, don't want to kill group

コアとなるコードの解説

これらの変更は、Go言語におけるエラーハンドリングの標準化と、特定のOS(この場合はPlan 9)ビルドの互換性問題を解決するためのものです。

  1. syscall.Errorからerrorインターフェースへの移行:

    • Go言語では、エラーはerrorインターフェースを介して扱われるのが慣例です。syscall.Errorのような具体的な型を直接返すことは、Goの設計思想に反するものではありませんが、より汎用的なerrorインターフェースを使用することで、コードの柔軟性と再利用性が向上します。
    • この変更により、ossyscallパッケージの関数が返すエラーが、Goエコシステム全体で期待されるerrorインターフェースに統一されます。これにより、これらの関数を呼び出す側のコードは、特定のエラー型に依存することなく、標準的なエラー処理ロジックを適用できるようになります。
    • 例えば、NewSyscallError関数は、以前はsyscall.Error型の引数を受け取っていましたが、変更後はerrorインターフェース型の引数を受け取るようになります。これは、この関数がより広範な種類のエラーを処理できるようになったことを意味します。
  2. 変数宣言の統一:

    • 関数シグネチャの変更に伴い、エラーを格納する変数もsyscall.Errorからerrorに変更されています。これは、型の一貫性を保ち、コンパイルエラーを避けるために必要です。
  3. 不要なインポートの削除:

    • src/pkg/time/sys_plan9.goからossyscallパッケージのインポートが削除されたのは、おそらくsyscall.Error型への直接的な参照がなくなったためです。このファイル内のコードが、これらのパッケージから特定の型や関数を必要としなくなったことを示唆しています。これは、コードの依存関係を減らし、ビルド時のオーバーヘッドを削減する良いプラクティスです。

これらの変更は、Go言語が初期段階で、より堅牢で一貫性のあるエラーハンドリングモデルへと進化していく過程の一部を示しています。特に、特定のプラットフォーム(Plan 9)に特化したコードベースにおいても、Goのコアな設計原則(インターフェースによる抽象化)を適用することで、コードの品質と保守性を高めることに貢献しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のコミット履歴 (GitHub): https://github.com/golang/go/commits/master
  • Go言語のコードレビューシステム (Gerrit): https://go-review.googlesource.com/ (コミットメッセージに記載されているgolang.org/cl/5371092は、このGerritシステムへのリンクです)
  • Go言語のエラーハンドリングに関する一般的な情報源 (Stack Overflow, Go言語のチュートリアルなど)
  • Plan 9に関する一般的な情報源 (Wikipedia, 関連する技術記事など)

[インデックス 10424] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリにおけるPlan 9オペレーティングシステム向けのビルド修正に関するものです。具体的には、syscallostimeパッケージにおいて、エラーハンドリングの型定義をsyscall.ErrorからGoの標準エラーインターフェースであるerrorへと変更しています。これにより、Plan 9環境でのコンパイルエラーや互換性の問題を解消し、コードベースの一貫性を向上させています。

コミット

commit 087a34869ae66824ad83e8b160089c8f94f18807
Author: Lucio De Re <lucio.dere@gmail.com>
Date:   Wed Nov 16 17:37:54 2011 -0500

    syscall, os, time: fix Plan 9 build

    R=rsc, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5371092

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/087a34869ae66824ad83e8b160089c8f94f18807

元コミット内容

syscall, os, time: fix Plan 9 build

R=rsc, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5371092

変更の背景

このコミットが行われた2011年11月は、Go言語がまだ比較的新しく、活発に開発が進められていた時期です。Goは当初からクロスプラットフォーム対応を重視しており、Linux、Windows, macOSといった主要なOSだけでなく、Plan 9のようなニッチなOSもサポート対象としていました。

Go言語のエラーハンドリングは、その設計思想の重要な部分を占めています。初期のGoでは、特定のパッケージが独自のエラー型を定義し、それを返すことがありました。しかし、Goの設計哲学は、より汎用的なインターフェースを介したポリモーフィックな振る舞いを推奨します。syscall.Errorのような具体的な型を返すことは、Goの標準的なエラーハンドリングパターンであるerrorインターフェースの使用と矛盾する可能性がありました。

このコミットの背景には、Plan 9環境でのビルドプロセスにおいて、syscall.Error型とGoの標準errorインターフェースとの間の型不一致が原因で発生していたコンパイルエラーが存在したと考えられます。Go言語の開発チームは、エラーハンドリングの一貫性を高め、特定のOSビルドにおける問題を解決するために、syscall.Errorからerrorインターフェースへの移行を進めていたと推測されます。これにより、コードの再利用性、可読性、そして将来的なメンテナンス性が向上します。

前提知識の解説

Plan 9 from Bell Labs

Plan 9 from Bell Labsは、ベル研究所によって開発された分散オペレーティングシステムです。Unixの後継として設計され、ネットワーク透過性、リソースのファイルシステムとしての表現、UTF-8のネイティブサポートなど、革新的な概念を導入しました。Go言語の開発者の一部はPlan 9の開発にも携わっており、Go言語の設計思想にはPlan 9の影響が見られます。Goが初期からPlan 9をサポートしていたのは、このような歴史的背景があるためです。

Go言語のエラーハンドリング

Go言語のエラーハンドリングは、例外処理メカニズム(try-catchなど)を持たず、関数がエラーを返す場合は、戻り値の最後の要素としてerrorインターフェース型の値を返すという慣習に基づいています。 errorインターフェースは非常にシンプルで、Error() stringという単一のメソッドのみを定義しています。

type error interface {
    Error() string
}

これにより、どのような型でもError() stringメソッドを実装していればerrorインターフェースを満たすことができ、Goのコードベース全体で一貫したエラー処理が可能になります。

syscall.Errorerrorインターフェース

このコミット以前、syscallパッケージ(およびそれを利用するosパッケージなど)では、システムコールに関連するエラーを表現するためにsyscall.Errorという具体的な型を使用していた可能性があります。しかし、Goの標準的なエラーハンドリングの慣習では、具体的なエラー型を直接返すのではなく、errorインターフェースを返すことが推奨されます。

syscall.Errorerrorインターフェースを実装していたとしても、関数シグネチャでsyscall.Errorを明示的に指定することは、呼び出し元がその具体的な型に依存することを意味します。これは、より抽象的なerrorインターフェースに依存するよりも柔軟性が低く、将来的な変更に対する脆弱性も高まります。このコミットは、この依存関係を解消し、より汎用的なerrorインターフェースを使用することで、コードの結合度を下げ、Goのエラーハンドリングのベストプラクティスに準拠させることを目的としています。

技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更は、Go言語のossyscalltimeパッケージ内の関数シグネチャにおいて、エラーを返す型をsyscall.Errorから組み込みのerrorインターフェースに変更した点です。

具体的には、以下のパターンで変更が適用されています。

  1. 関数シグネチャの変更:

    • func NewSyscallError(syscall string, err syscall.Error) errorfunc NewSyscallError(syscall string, err error) error に変更。
    • func (f *File) read(b []byte) (n int, err syscall.Error)func (f *File) read(b []byte) (n int, err error) に変更。
    • 同様に、pread, write, pwrite, seek などのファイル操作関連のメソッドや、readdirnames, readdupdevice, forkAndExecInChild, forkExec, StartProcess, Exec などのプロセス実行関連の関数、Read, Write, Getwd, Fd2path, Pipe, Seek, Mkdir, Await, Unmount, Fchdir, DecodeBintime, Gettimeofday, Getgroups などのシステムコール関連の関数で、戻り値のエラー型がsyscall.Errorからerrorに変更されています。
    • syscallパッケージ内のNewError関数も、func NewError(s string) Error から func NewError(s string) error に変更されています。ここでErrorsyscall.Errorのエイリアスか、あるいはその時点でのsyscallパッケージ内のカスタムエラー型を指していたと考えられます。
  2. 変数宣言の変更:

    • var e syscall.Error のようなエラー変数の宣言が var e error に変更されています。これは、エラーを受け取る変数の型も、より汎用的なerrorインターフェースに合わせるためです。
  3. 不要なインポートの削除:

    • src/pkg/time/sys_plan9.go から ossyscall パッケージのインポートが削除されています。これは、エラー型の変更により、これらのパッケージから特定の型(syscall.Errorなど)を直接参照する必要がなくなったためと考えられます。これにより、依存関係が整理され、コードのクリーンアップが図られています。

この変更は、Go言語の型システムにおけるインターフェースの強力な利用例を示しています。syscall.Errorerrorインターフェースを実装している限り、この変更は既存のロジックの破壊を伴わず、より抽象的で柔軟なエラーハンドリングを可能にします。特にPlan 9のような特定の環境に特化したコードにおいて、標準的なerrorインターフェースを使用することで、Go言語全体のコードベースの一貫性と移植性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなる変更は、主に以下のファイル群にわたる関数シグネチャと変数宣言のエラー型変更です。

  • src/pkg/os/error_plan9.go
  • src/pkg/os/file_plan9.go
  • src/pkg/os/stat_plan9.go
  • src/pkg/syscall/exec_plan9.go
  • src/pkg/syscall/syscall_plan9.go
  • src/pkg/syscall/zsyscall_plan9_386.go
  • src/pkg/time/sys_plan9.go

具体的な変更例をいくつか示します。

src/pkg/os/error_plan9.go:

--- a/src/pkg/os/error_plan9.go
+++ b/src/pkg/os/error_plan9.go
@@ -24,7 +24,7 @@ func (e *SyscallError) Error() string { return e.Syscall + ": " + e.Err }
 // NewSyscallError returns, as an error, a new SyscallError
 // with the given system call name and error details.
 // As a convenience, if err is nil, NewSyscallError returns nil.
-func NewSyscallError(syscall string, err syscall.Error) error {
+func NewSyscallError(syscall string, err error) error {
 	if err == nil {
 		return nil
 	}

src/pkg/os/file_plan9.go:

--- a/src/pkg/os/file_plan9.go
+++ b/src/pkg/os/file_plan9.go
@@ -64,7 +64,7 @@ const DevNull = "/dev/null"
 func OpenFile(name string, flag int, perm uint32) (file *File, err error) {
 	var (
 		fd     int
-		e      syscall.Error
+		e      error
 		create bool
 		excl   bool
 		trunc  bool
@@ -93,7 +93,7 @@ func OpenFile(name string, flag int, perm uint32) (file *File, err error) {
 	} else {
 		fd, e = syscall.Open(name, flag)
 		if e != nil && create {
-			var e1 syscall.Error
+			var e1 error
 			fd, e1 = syscall.Create(name, flag, perm)
 			if e1 == nil {
 				e = nil
@@ -199,26 +199,26 @@ func (f *File) Sync() (err error) {

 // read reads up to len(b) bytes from the File.
 // It returns the number of bytes read and an error, if any.
-func (f *File) read(b []byte) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) read(b []byte) (n int, err error) {
 	return syscall.Read(f.fd, b)
 }

 // pread reads len(b) bytes from the File starting at byte offset off.
 // It returns the number of bytes read and the error, if any.
 // EOF is signaled by a zero count with err set to nil.
-func (f *File) pread(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
+func f.pread(b []byte, off int64) (n int, err error) {
 	return syscall.Pread(f.fd, b, off)
 }

 // write writes len(b) bytes to the File.
 // It returns the number of bytes written and an error, if any.
-func (f *File) write(b []byte) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) write(b []byte) (n int, err error) {
 	return syscall.Write(f.fd, b)
 }

 // pwrite writes len(b) bytes to the File starting at byte offset off.
 // It returns the number of bytes written and an error, if any.
-func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
+func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err error) {
 	return syscall.Pwrite(f.fd, b, off)
 }

@@ -226,7 +226,7 @@ func (f *File) pwrite(b []byte, off int64) (n int, err syscall.Error) {
 // according to whence: 0 means relative to the origin of the file, 1 means
 // relative to the current offset, and 2 means relative to the end.
 // It returns the new offset and an error, if any.
-func (f *File) seek(offset int64, whence int) (ret int64, err syscall.Error) {
+func (f *File) seek(offset int64, whence int) (ret int64, err error) {
 	return syscall.Seek(f.fd, offset, whence)
 }

src/pkg/time/sys_plan9.go:

--- a/src/pkg/time/sys_plan9.go
+++ b/src/pkg/time/sys_plan9.go
@@ -4,11 +4,6 @@

 package time

-import (
-	"os"
-	"syscall"
-)
-
 // for testing: whatever interrupts a sleep
 func interrupt() {
 	// cannot predict pid, don't want to kill group

コアとなるコードの解説

これらの変更は、Go言語におけるエラーハンドリングの標準化と、特定のOS(この場合はPlan 9)ビルドの互換性問題を解決するためのものです。

  1. syscall.Errorからerrorインターフェースへの移行:

    • Go言語では、エラーはerrorインターフェースを介して扱われるのが慣例です。syscall.Errorのような具体的な型を直接返すことは、Goの設計思想に反するものではありませんが、より汎用的なerrorインターフェースを使用することで、コードの柔軟性と再利用性が向上します。
    • この変更により、ossyscallパッケージの関数が返すエラーが、Goエコシステム全体で期待されるerrorインターフェースに統一されます。これにより、これらの関数を呼び出す側のコードは、特定のエラー型に依存することなく、標準的なエラー処理ロジックを適用できるようになります。
    • 例えば、NewSyscallError関数は、以前はsyscall.Error型の引数を受け取っていましたが、変更後はerrorインターフェース型の引数を受け取るようになります。これは、この関数がより広範な種類のエラーを処理できるようになったことを意味します。
  2. 変数宣言の統一:

    • 関数シグネチャの変更に伴い、エラーを格納する変数もsyscall.Errorからerrorに変更されています。これは、型の一貫性を保ち、コンパイルエラーを避けるために必要です。
  3. 不要なインポートの削除:

    • src/pkg/time/sys_plan9.goからossyscallパッケージのインポートが削除されたのは、おそらくsyscall.Error型への直接的な参照がなくなったためです。このファイル内のコードが、これらのパッケージから特定の型や関数を必要としなくなったことを示唆しています。これは、コードの依存関係を減らし、ビルド時のオーバーヘッドを削減する良いプラクティスです。

これらの変更は、Go言語が初期段階で、より堅牢で一貫性のあるエラーハンドリングモデルへと進化していく過程の一部を示しています。特に、特定のプラットフォーム(Plan 9)に特化したコードベースにおいても、Goのコアな設計原則(インターフェースによる抽象化)を適用することで、コードの品質と保守性を高めることに貢献しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のコミット履歴 (GitHub): https://github.com/golang/go/commits/master
  • Go言語のコードレビューシステム (Gerrit): https://go-review.googlesource.com/ (コミットメッセージに記載されているgolang.org/cl/5371092は、このGerritシステムへのリンクです)
  • Go言語のエラーハンドリングに関する一般的な情報源 (Stack Overflow, Go言語のチュートリアルなど)
  • Plan 9に関する一般的な情報源 (Wikipedia, 関連する技術記事など)