[インデックス 10447] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の実験的なexp/terminal
パッケージ内のMakefile
に対する変更です。具体的には、Makefile
の書式設定が原因でビルドプロセスの一部であるdeps.bash
スクリプトが正しく解釈できず、結果としてmake.bash
が失敗するという問題を修正しています。
コミット
commit 151bcb11a8fe353530d614adcffa1f3ee2099ba4
Author: Dmitriy Vyukov <dvyukov@google.com>
Date: Fri Nov 18 15:30:36 2011 +0300
exp/terminal: fix Makefile formatting for deps.bash
deps.bash does not understand current format,
so make.bash fails (with MAKEFLAGS=-j20).
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5410046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/151bcb11a8fe353530d614adcffa1f3ee2099ba4
元コミット内容
exp/terminal: fix Makefile formatting for deps.bash
deps.bash does not understand current format,
so make.bash fails (with MAKEFLAGS=-j20).
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5410046
変更の背景
このコミットは、Go言語のビルドシステムにおける特定のMakefile
の書式設定の問題を解決するために行われました。2011年当時のGoのビルドシステムは、主にシェルスクリプトとカスタムビルドツールに依存しており、make.bash
が中心的な役割を担っていました。
問題は、src/pkg/exp/terminal/Makefile
内でGOFILES
変数にutil.go
を追加する際の記述方法にありました。元のMakefile
では、GOFILES+=util.go
という形式で記述されていましたが、ビルドプロセスの一部であるdeps.bash
スクリプトがこの書式を正しく解釈できませんでした。その結果、make.bash
(特にMAKEFLAGS=-j20
のような並列ビルドオプションが指定された場合)が失敗するという事象が発生していました。
この修正は、ビルドの安定性と互換性を確保し、開発者が並列ビルドオプションを使用しても問題なくGoプロジェクトをビルドできるようにするために必要でした。
前提知識の解説
- Makefile:
Makefile
は、make
ユーティリティがプログラムのコンパイルやその他のタスクを自動化するために使用するファイルです。依存関係とそれらを構築するためのルールを定義します。Go言語の初期のビルドシステムでは、Goプログラム自体のビルドだけでなく、ツールチェインのビルドにもMakefile
が利用されていました。 - make.bash: 2011年当時のGoのビルドシステムにおいて、
make.bash
はGoツールチェインをソースからビルドするための中心的なシェルスクリプトでした。これはビルド環境の初期チェック、cmd/dist
ツールのコンパイル、そして全体のビルドプロセスをオーケストレーションする役割を担っていました。 - deps.bash: コミットメッセージに登場する
deps.bash
は、Goのビルドプロセスの一部として、依存関係の解決や生成に関連するタスクを実行するスクリプトであったと推測されます。Web検索ではdeps.bash
に関する詳細な公式ドキュメントは見つかりませんでしたが、コミットメッセージから、Makefile
の特定の書式を解析する役割を持っていたことが示唆されます。 - GOOS: Go言語のクロスコンパイルを制御するための環境変数で、ターゲットとなるオペレーティングシステムを指定します(例:
linux
,windows
,darwin
など)。このコミットでは、GOOS
がwindows
でない場合にのみutil.go
をGOFILES
に追加する条件分岐が使用されています。
技術的詳細
問題の核心は、Makefile
における変数への値の追加方法にありました。
元のコード:
ifneq ($(GOOS),windows)
GOFILES+=util.go
endif
このGOFILES+=util.go
という記述は、make
ユーティリティ自体にとっては有効な構文です。しかし、Goのビルドプロセス内でこのMakefile
を解析するdeps.bash
スクリプトが、この形式を正しく処理できなかったと考えられます。特に、MAKEFLAGS=-j20
のような並列ビルドオプションが指定された場合に問題が顕在化したことから、deps.bash
が並列処理環境下でのMakefile
の解析に脆弱性を持っていたか、あるいは特定の書式に厳密であった可能性が考えられます。
修正は、GOFILES
へのutil.go
の追加を、より明示的な複数行の形式に変更することで行われました。
修正後のコード:
ifneq ($(GOOS),windows)
GOFILES+=\\
util.go
endif
この変更により、util.go
が新しい行でインデントされ、行末にバックスラッシュ\
が追加されています。Makefile
においてバックスラッシュは行の継続を示し、次の行が現在の行の論理的な続きであることを意味します。この形式は、deps.bash
がより確実にGOFILES
変数への追加を認識できるようにするためのものでした。
この修正は、Makefile
の構文規則に則りつつ、特定のスクリプト(deps.bash
)が期待する書式に合わせることで、ビルドプロセスの堅牢性を向上させることを目的としています。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/exp/terminal/Makefile
ファイルに対して行われました。
--- a/src/pkg/exp/terminal/Makefile
+++ b/src/pkg/exp/terminal/Makefile
@@ -9,7 +9,8 @@ GOFILES=\
terminal.go\
ifneq ($(GOOS),windows)
-GOFILES+=util.go
+GOFILES+=\\
+\tutil.go
endif
include ../../../Make.pkg
具体的には、9行目から11行目にかけての変更です。
-GOFILES+=util.go
(削除された行)+GOFILES+=\\
(追加された行)+\tutil.go
(追加された行)
コアとなるコードの解説
この変更の目的は、GOFILES
変数にutil.go
を追加する際のMakefile
の書式を修正し、deps.bash
スクリプトがこれを正しく解析できるようにすることです。
元のGOFILES+=util.go
という記述は、make
にとってはGOFILES
変数にutil.go
を追加するという意味になります。しかし、deps.bash
がこの一行形式を正しく処理できなかったため、ビルドが失敗していました。
修正後のGOFILES+=\\
と\tutil.go
という記述は、GOFILES
変数にutil.go
を追加するという意味は変わりませんが、make
に対してはGOFILES
の定義が次の行に続いていることを明示的に伝えます。この複数行にわたる記述は、deps.bash
が変数の追加をより確実に認識できる形式であったと考えられます。
この修正により、GOFILES
変数の内容がdeps.bash
によって正しく構築され、その後のmake.bash
によるビルドプロセスが正常に完了するようになりました。特に、MAKEFLAGS=-j20
のような並列ビルドオプションが指定された場合でも、deps.bash
がMakefile
を正しく解析できるようになり、ビルドの安定性が向上しました。
関連リンク
- Go CL 5410046: https://golang.org/cl/5410046
参考にした情報源リンク
- Go build system in 2011:
- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQHwoJRkzQ4OJ7Vf3iAaLs9uZd65jnT9-XZIbTL4YdgX4i5TSaJpdwiBSyqCBNg2tHAull_-Qd9VR9UnbXO-gyHqPz4ubzAiD2ZY9bxRWrJVt4kewfETL_A6X4zGqRjK1mmv9q1kEs3O1I375uFGnU5NZonohV4gbGfniLWk
- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQEzhwaNYA69YsgChuD9CmO8QxD2uYVqb6139Un4MH-eeAZXL6-SmyNjkCYpTiE-fMXsTPn3CuC0NswtMdOS4z3isjAvOUa5TSNLuYr3ykm-ia-azZVrVDnOZ7wRENMF3lSDpBJs7UEvPLAo-5ySofy6sWc6J8AmtODK9tI=
- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQHnqBOTT6--4wZ4d9785oyeXffUJo0cBsNXJY7CroHoJxAywwfWLKTOcNs8d15QtxQ7ZyTDxsvhFfoseE0azSXhO6X9iNq5JrXHLgWyD8TYtfTw3Exp6cu4PPRppQzkyy8xQjUqOWNyL4NISRhahmhl7A==
GOPATH
and Go Modules:- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQH_ZmpEcJsQkCaWvKmglyjlvd6BKkmc6Q0559fngKLXH0IIh-2Ts1I_AEuIHh-A37tq-5Cwt6WbTeD3dEXQZwOtLhEA5IWVPwkHbRo2mNQAn-5tkZZvHAdBLUjnA7CIUXJnoHaSlpm82AfpUw==
- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQEIBmGcfSOsJHYw34CnpWmT4erdNu43qXRPYMpDliNLUsat1JD264CEMdXb-N-BZk39A0j8jQrpXscke8GsXfaRd5Sww5v8KDzv9O9GvAVogNo_i7IdsyHJ-O67p0QvlNTMPYlKR6NlA4mxyiS93gEksjGR9bHeVKQplPECLLyyplVeIH4RuSpynnzQM9iiHwFBLPlmBGr0Aw==
go build
command:- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFDrfTLogxxvluy-wQ5vTTtBNd7ttX31CxkriVfwv_0Szz4A2mUkH00auJQW56Gdw9NCm73RHBEJcxwr29zDNi4tBZlmoCk6hg0zMtpTpM7W8vIAfy4l3v7OB4DyC2pl7qmErmeDgQCvGSrbQ==
- Cross-compilation (
GOOS
,GOARCH
):- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGWO1V3FTIX3x240La0viFYNJRMBqDM4uWhptY5YxE03Hv9-xiHvghLy8rRt8ahNhdRSfOfWcxM5BUZD0ePkeQx1qMib81dGO2FSt_QAb2JWWh_k8ByJ_xsuRupyyAZgQl4zdJLam6NQCMHd36aDtKAUS5CXQCT0XCSO5_ZaAyD0mw-Qk7m9sl9EBBBI7rPd4S_cr11g-uWW9wabjgSqs_SgEjKNpIXVEJA1MXEhX3eSm1Un7fNEA==