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[インデックス 10481] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ os パッケージ内の File.ReadAt メソッドに関するコメントの明確化を目的としています。具体的には、ReadAt がバイト数を読み取った際にエラーを返す条件、特にファイル終端 (EOF) の扱いについて、より正確な記述に修正されています。

コミット

commit c69d6345daf277b947341ba958458b0a500effe1
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Nov 22 12:22:28 2011 -0500

    os: make ReadAt comment clearer
    
    Fixes #2486.
    
    R=golang-dev, hanwen
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5417064

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c69d6345daf277b947341ba958458b0a500effe1

元コミット内容

os: make ReadAt comment clearer

変更の背景

この変更は、Go言語のIssue #2486「os.File.ReadAt doc misleading」に対応するものです。os.File.ReadAt メソッドの既存のコメントが、特定の条件下での戻り値、特に n (読み取られたバイト数) と err (エラー) の関係について誤解を招く可能性がありました。

元のコメントでは、「EOFは、errがio.EOFに設定されたゼロカウントによって通知される」と記述されていましたが、これは Read メソッドの一般的な動作を指すものであり、ReadAt の動作とは必ずしも一致しませんでした。また、「ReadAtはn != len(b)の場合、常に非nilエラーを返す」という記述も、ReadAt が len(b) バイトを読み取れなかった場合にエラーを返すという意図は正しいものの、その表現が曖昧でした。

ReadAt は、指定されたオフセットから正確に len(b) バイトを読み取ろうとします。もし len(b) バイトを読み取れなかった場合（例えば、ファイルの終端に達した場合や、I/Oエラーが発生した場合）、n < len(b) となり、このとき ReadAt は非nilのエラーを返すべきです。特に、ファイルの終端に達した場合は io.EOF を返します。この挙動をより正確に反映させるために、コメントの修正が必要とされました。

前提知識の解説

os.File.ReadAt メソッド

Go言語の os パッケージは、オペレーティングシステムとのインタラクションを提供します。os.File はファイルディスクリプタを抽象化したもので、ファイル操作のためのメソッドを提供します。

func (file *File) ReadAt(b []byte, off int64) (n int, err error)

  • b []byte: 読み取ったデータを格納するバイトスライス。ReadAt は len(b) バイトを読み取ろうとします。
  • off int64: ファイルの先頭からのオフセット（バイト単位）。このオフセットから読み取りを開始します。
  • n int: 実際に読み取られたバイト数。
  • err error: 読み取り中に発生したエラー。エラーがない場合は nil。

ReadAt は、ファイルポインタを移動させずに、指定されたオフセットからデータを読み取る「ランダムアクセス読み取り」を提供します。これは、ファイルの特定の部分にアクセスしたい場合に非常に便利です。

io.Reader インターフェースと io.EOF

Go言語では、データの読み取り操作は io.Reader インターフェースによって抽象化されています。

type Reader interface { Read(p []byte) (n int, err error) }

Read メソッドは、p に最大 len(p) バイトを読み込み、読み込んだバイト数 n とエラー err を返します。 Read メソッドの一般的な規約として、ファイルの終端に達し、それ以上読み取るデータがない場合、n はゼロになり、err は io.EOF となります。

しかし、ReadAt は Read とは異なり、指定されたバイト数を読み取ろうとします。そのため、ReadAt のエラー処理のセマンティクスは Read とは少し異なります。ReadAt は、要求されたバイト数 (len(b)) を読み取れなかった場合、たとえ一部のバイトが読み取られたとしても、エラーを返すことが期待されます。ファイルの終端に達したために要求されたバイト数を読み取れなかった場合は、io.EOF が返されます。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、os.File.ReadAt メソッドのドキュメンテーションコメントの修正に集約されます。

元のコメント:

// ReadAt reads len(b) bytes from the File starting at byte offset off.
// It returns the number of bytes read and the error, if any.
// EOF is signaled by a zero count with err set to io.EOF.
// ReadAt always returns a non-nil error when n != len(b).

修正後のコメント:

// ReadAt reads len(b) bytes from the File starting at byte offset off.
// It returns the number of bytes read and the error, if any.
// ReadAt always returns a non-nil error when n < len(b).
// At end of file, that error is io.EOF.

変更点の詳細:

  1. EOF is signaled by a zero count with err set to io.EOF. の削除: この行は io.Reader の Read メソッドの一般的な動作を説明するものであり、ReadAt の動作とは必ずしも一致しません。ReadAt は、たとえ一部のバイトが読み取られたとしても、要求された len(b) バイトを読み取れなかった場合にエラーを返すため、n がゼロでなくても io.EOF を返す可能性があります。この記述は誤解を招くため削除されました。

  2. ReadAt always returns a non-nil error when n != len(b). から ReadAt always returns a non-nil error when n < len(b). への変更: n != len(b) という条件は、n > len(b) の場合も含まれてしまいますが、ReadAt は len(b) を超えて読み取ることはありません。したがって、n < len(b) という条件の方がより正確です。これは、ReadAt が要求されたバイト数 (len(b)) を完全に読み取れなかった場合に、常にエラーを返すという ReadAt の重要なセマンティクスを明確にしています。

  3. At end of file, that error is io.EOF. の追加: これは、n < len(b) となる非nilエラーが返される具体的なケースとして、ファイルの終端に達した場合に io.EOF が返されることを明示しています。これにより、ReadAt のエラー処理の挙動がより明確になります。

この修正により、開発者は ReadAt の戻り値のセマンティクス、特にエラー処理とEOFの検出について、より正確な理解を得ることができます。これは、堅牢なファイルI/O処理を実装する上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/os/file.go
+++ b/src/pkg/os/file.go
@@ -70,8 +70,8 @@ func (file *File) Read(b []byte) (n int, err error) {
 
 // ReadAt reads len(b) bytes from the File starting at byte offset off.
 // It returns the number of bytes read and the error, if any.
-// EOF is signaled by a zero count with err set to io.EOF.
-// ReadAt always returns a non-nil error when n != len(b).
+// ReadAt always returns a non-nil error when n < len(b).
+// At end of file, that error is io.EOF.
 func (file *File) ReadAt(b []byte, off int64) (n int, err error) {
  if file == nil {
  return 0, EINVAL

コアとなるコードの解説

変更されたのは src/pkg/os/file.go ファイル内の File.ReadAt メソッドのドキュメンテーションコメントです。

  • - // EOF is signaled by a zero count with err set to io.EOF. この行が削除されました。これは io.Reader の Read メソッドの一般的な動作であり、ReadAt の特定のセマンティクスには合致しないためです。ReadAt は、要求されたバイト数を読み取れなかった場合、たとえ一部のバイトが読み取られたとしてもエラーを返すため、n がゼロでなくても io.EOF を返す可能性があります。

  • - // ReadAt always returns a non-nil error when n != len(b). この行が変更されました。n != len(b) という条件は n > len(b) の場合も含むため、n < len(b) というより正確な条件に修正されました。ReadAt は len(b) を超えて読み取ることはないため、n < len(b) が正しい条件です。

  • + // ReadAt always returns a non-nil error when n < len(b). 上記の修正された行です。ReadAt が要求されたバイト数 (len(b)) を完全に読み取れなかった場合に、常に非nilのエラーを返すという重要なセマンティクスを明確にしています。

  • + // At end of file, that error is io.EOF. この行が追加されました。n < len(b) となる非nilエラーの具体的なケースとして、ファイルの終端に達した場合に io.EOF が返されることを明示しています。これにより、開発者は ReadAt のエラー処理の挙動をより正確に理解できます。

これらの変更は、ReadAt メソッドの動作に関するドキュメントの正確性を向上させ、開発者がこの関数をより適切に使用できるようにすることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク