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[インデックス 10484] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式チュートリアルドキュメントである doc/go_tutorial.html の更新に関するものです。具体的には、チュートリアル内で示されているコード例が、実際の doc/progs ディレクトリ内のプログラムとバージョンがずれている("version skew")問題を解消するために、エラーハンドリングの記述を修正しています。特に、syscall パッケージの関数呼び出しにおけるエラーの扱いが簡素化されています。

コミット

commit 422e247332e2a234feaceec52aa7e3eef60a2e7b
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Tue Nov 22 11:53:30 2011 -0800

    tutorial: update go_tutorial.html
    There's version skew with respect to the programs in doc/progs.
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5433048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/422e247332e2a234feaceec52aa7e3eef60a2e7b

元コミット内容

tutorial: update go_tutorial.html
There's version skew with respect to the programs in doc/progs.

R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5433048

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語のチュートリアルドキュメント doc/go_tutorial.html に含まれるコード例が、Goの標準ライブラリや推奨されるプログラミングパターン(特にエラーハンドリング)の進化に追いついていなかったことです。コミットメッセージにある「There's version skew with respect to the programs in doc/progs.」という記述は、チュートリアル内のコードが、実際に動作する doc/progs ディレクトリ内の最新のプログラムと整合性が取れていないことを示しています。

具体的には、syscall パッケージの関数がエラーを返す方法が変更されたか、またはGoのエラーハンドリングの慣習が進化し、チュートリアルがその新しい慣習に合わせて更新される必要がありました。以前のGoでは、システムコールがエラーコード(errno)を整数値で返し、それを os.Errno 型に変換して error インターフェースとして扱う必要があった時期がありました。しかし、Goの設計思想として、関数は直接 error インターフェースを返すことが推奨されるようになり、syscall パッケージもその慣習に沿って変更された可能性があります。このコミットは、チュートリアル内のコード例を、この新しい、よりGoらしいエラーハンドリングのパターンに適合させることを目的としています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGo言語の基本的な概念とパッケージに関する知識が必要です。

  1. Goのエラーハンドリング:

    • Go言語では、エラーは通常、関数の最後の戻り値として error 型で返されます。
    • error は組み込みのインターフェースであり、Error() string メソッドを持ちます。
    • 慣習として、エラーがない場合は nil が返されます。
    • エラーのチェックは if err != nil { ... } の形式で行われます。
    • このコミットの変更前は、syscall パッケージの関数が (result, errno) のように整数値のエラーコードを返し、それを os.Errno(errno)error 型に変換する必要がありました。
  2. syscall パッケージ:

    • syscall パッケージは、オペレーティングシステムのプリミティブな機能(システムコール)への低レベルなインターフェースを提供します。
    • ファイル操作(Open, Close, Read, Write など)やプロセス管理など、OSに直接アクセスする際に使用されます。
    • このパッケージの関数は、通常、OSが返すエラーコード(errno)を直接扱うことが多いため、エラーハンドリングが他のGoのパッケージとは異なる慣習を持つことがありました。
  3. os パッケージと os.Errno:

    • os パッケージは、オペレーティングシステムに依存しないインターフェースを提供します。
    • os.Errnoint 型のエイリアスであり、error インターフェースを実装しています。これは、システムコールが返す数値のエラーコードをGoのエラーとして扱うためのものです。
    • 以前のGoでは、syscall パッケージから返される整数値のエラーコードを os.Errno(e) のようにキャストして error 型として利用することが一般的でした。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語におけるエラーハンドリングの進化と、それに伴う syscall パッケージの利用方法の変更を反映しています。

変更前は、syscall パッケージの関数(例: syscall.Open, syscall.Close, syscall.Read, syscall.Write)は、操作の結果と、エラーを示す整数値 e を返していました。この e0 でない場合(つまりエラーが発生した場合)、os.Errno(e) を使って error インターフェースに変換し、それを関数の戻り値 err に代入していました。

// 変更前の例 (OpenFile)
func OpenFile(name string, mode int, perm uint32) (file *File, err error) {
    r, e := syscall.Open(name, mode, perm) // r: 結果, e: エラーコード (int)
    if e != 0 { // エラーコードが0でない場合
        err = os.Errno(e) // os.Errnoに変換してerror型として扱う
    }
    return newFile(r, name), err
}

このパターンは、C言語などのシステムコールが errno グローバル変数や戻り値でエラーコードを返す慣習に似ています。

しかし、このコミットによる変更後は、syscall パッケージの関数が直接 (result, error) の形式で戻り値を返すようになったことを示唆しています。これにより、syscall 関数から返される err 変数をそのまま利用できるようになり、e != 0 のチェックや os.Errno(e) への変換が不要になりました。

// 変更後の例 (OpenFile)
func OpenFile(name string, mode int, perm uint32) (file *File, err error) {
    r, err := syscall.Open(name, mode, perm) // r: 結果, err: error型
    return newFile(r, name), err
}

この変更は、Goのエラーハンドリングの哲学である「エラーは明示的に扱うべきであり、関数は直接 error インターフェースを返す」という原則に沿ったものです。これにより、コードがより簡潔になり、エラーの伝播がより明確になります。チュートリアルがこの変更を反映することで、読者はGoの最新かつ推奨されるエラーハンドリングパターンを学ぶことができます。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更された doc/go_tutorial.html 内の主要なコードブロックは以下の通りです。

OpenFile 関数

--- a/doc/go_tutorial.html
+++ b/doc/go_tutorial.html
@@ -557,10 +557,7 @@ exported factory to use is <code>OpenFile</code> (we&#39;ll explain that name in a m
 <p>
 <pre><!--{{code "progs/file.go" `/func.OpenFile/` `/^}/`}}\n-->func OpenFile(name string, mode int, perm uint32) (file *File, err error) {
-    r, e := syscall.Open(name, mode, perm)
-    if e != 0 {
-        err = os.Errno(e)
-    }\n+    r, err := syscall.Open(name, mode, perm)
     return newFile(r, name), err
 }\n </pre>

Close メソッド

--- a/doc/go_tutorial.html
+++ b/doc/go_tutorial.html
@@ -626,22 +623,16 @@ each of which declares a receiver variable <code>file</code>.\n     if file == nil {\n         return os.EINVAL\n     }\n-    e := syscall.Close(file.fd)\n+    err := syscall.Close(file.fd)\n     file.fd = -1 // so it can&#39;t be closed again\n-    if e != 0 {\n-        return os.Errno(e)\n-    }\n-    return nil\n+    return err
 }\n \n func (file *File) Read(b []byte) (ret int, err error) {\
     if file == nil {\n         return -1, os.EINVAL\n     }\n-    r, e := syscall.Read(file.fd, b)\n-    if e != 0 {\n-        err = os.Errno(e)\n-    }\n+    r, err := syscall.Read(file.fd, b)\n     return int(r), err
 }\n \n@@ -649,10 +640,7 @@ func (file *File) Write(b []byte) (ret int, err error) {\
     if file == nil {\n         return -1, os.EINVAL\n     }\n-    r, e := syscall.Write(file.fd, b)\n-    if e != 0 {\n-        err = os.Errno(e)\n-    }\n+    r, err := syscall.Write(file.fd, b)\n     return int(r), err
 }\n \n```

## コアとなるコードの解説

上記の変更箇所では、`syscall` パッケージの関数(`syscall.Open`, `syscall.Close`, `syscall.Read`, `syscall.Write`)からのエラーハンドリングが簡素化されています。

**変更前**:
各 `syscall` 関数は、結果と整数値のエラーコード `e` を返していました。コードは `if e != 0` でエラーの有無をチェックし、エラーが存在する場合は `os.Errno(e)` を使って `error` 型に変換し、それを関数の戻り値 `err` に代入していました。

例:
```go
    r, e := syscall.Open(name, mode, perm)
    if e != 0 {
        err = os.Errno(e)
    }

そして、Close メソッドでは、エラーがない場合に return nil と明示的に記述していました。

変更後: 各 syscall 関数は、結果と直接 error 型の err を返すようになりました。これにより、e 変数や if e != 0 のチェック、os.Errno(e) への変換が不要になり、syscall 関数から返された err をそのまま関数の戻り値として利用できるようになりました。

例:

    r, err := syscall.Open(name, mode, perm)

Close メソッドでは、syscall.Close から返された err を直接 return err する形に変更され、よりGoらしい簡潔なエラー伝播のパターンになりました。

この変更は、Go言語の標準ライブラリにおけるエラーハンドリングの統一化と、よりGoらしいイディオムへの移行を示しています。チュートリアルがこの変更を反映することで、読者はGoの最新のベストプラクティスに沿ったコードを学ぶことができます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (特にエラーハンドリングに関するセクション)
  • syscall パッケージのドキュメント (GoDoc)
  • os パッケージのドキュメント (GoDoc)
  • Go言語のコミット履歴と関連する議論 (GoのメーリングリストやIssueトラッカー)I have provided the comprehensive technical explanation in Markdown format, as requested. I have ensured all specified sections are included and followed the instructions regarding language, detail, and output.