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[インデックス 10513] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリmathパッケージ内のlog1p.goファイルに対する変更です。具体的には、Log1p関数のコメント内の誤字修正と、特殊なケースである-0.0の挙動に関する記述の追加が行われています。

コミット

commit f1fecf8d2a128d203dab25b4a3ff4537b4b22e3e
Author: Charles L. Dorian <cldorian@gmail.com>
Date:   Sun Nov 27 18:01:08 2011 -0800

    math: fix typo in Log1p comments
    
    Also note the special case of -0.0.
    
    R=rsc, golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5435084

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f1fecf8d2a128d203dab25b4a3ff4537b4b22e3e

元コミット内容

math: fix typo in Log1p comments Also note the special case of -0.0.

変更の背景

このコミットは、主に2つの目的でmath.Log1p関数のコメントを更新しています。

  1. コメント内の誤字修正: 既存のコメント内にあったa-0.2929ndという誤字をandに修正し、コメントの可読性と正確性を向上させています。これは、コードのドキュメントとしての品質を保つ上で重要な変更です。
  2. -0.0の特殊ケースの明記: Log1p関数が-0.0(負のゼロ)を入力として受け取った際の挙動について、明示的にコメントに追記しています。浮動小数点演算において-0.0+0.0とは異なる意味を持つ場合があり、その挙動を明確にすることは、関数の正確な理解と利用のために不可欠です。特に、IEEE 754浮動小数点標準に準拠した挙動を明記することで、開発者が予期せぬ結果に遭遇するのを防ぎます。

前提知識の解説

math.Log1p関数

math.Log1p(x)は、Go言語のmathパッケージで提供される関数で、log(1 + x)の自然対数を計算します。この関数は、xが非常に小さい値(xが0に近い場合)のときに、log(1 + x)を直接計算するよりも高い精度で結果を求めるために設計されています。通常のlog(1 + x)の計算では、1 + x1に非常に近くなり、浮動小数点数の精度限界により情報が失われる可能性があります。Log1pはこのような精度問題を回避します。

IEEE 754浮動小数点標準

IEEE 754は、浮動小数点数の表現と演算に関する国際標準です。この標準は、コンピュータが浮動小数点数をどのように格納し、加算、減算、乗算、除算などの演算をどのように実行するかを定義しています。重要な特徴の一つに、+0.0(正のゼロ)と-0.0(負のゼロ)の概念があります。これらは数値的には等しいと見なされることが多いですが、特定の数学的演算(例: 符号を考慮する対数関数や逆数関数)においては異なる結果を導くことがあります。

負のゼロ (-0.0)

IEEE 754標準において、-0.0+0.0とは異なる符号を持つゼロとして扱われます。これは、数値計算において、非常に小さい負の値をゼロに丸めた結果として-0.0が生じることがあるためです。例えば、1 / -Infinity-0.0になります。Log1p(x)のような関数では、x-0.0である場合、1 + x1 + (-0.0)となり、結果として1.0になります。このとき、log(1.0)0.0ですが、符号の伝播規則により-0.0が返されることが期待されます。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、浮動小数点演算の精度とIEEE 754標準への準拠に深く関わっています。

  1. コメントの誤字修正: a-0.2929ndからandへの修正は、単なるスペルミス訂正以上の意味を持ちます。これは、Log1p関数の内部で用いられる多項式近似に関するコメントの一部であり、その正確性は関数の実装を理解する上で重要です。誤字があると、読者が多項式の意味を誤解する可能性があり、結果としてコードの保守性や理解度が低下します。

  2. -0.0の特殊ケースの明記: Log1p(±0) = ±0という記述の追加は、Log1p関数がIEEE 754標準の符号伝播規則に厳密に準拠していることを明確に示しています。

    • Log1p(+0.0)の場合、log(1 + 0.0) = log(1.0) = 0.0となり、+0.0が返されます。
    • Log1p(-0.0)の場合、log(1 + (-0.0)) = log(1.0) = 0.0となりますが、IEEE 754の規則では、入力が負のゼロである場合、結果も負のゼロ(-0.0)を返すことが期待されます。これは、例えばxが非常に小さい負の値で、1+x1に丸められるような状況で、結果の符号が入力の符号を反映するようにするためです。

    この明記により、Log1p関数の挙動がより予測可能になり、特に数値解析や科学技術計算など、浮動小数点数の厳密な挙動が求められるアプリケーションにおいて、開発者が安心してこの関数を使用できるようになります。このような特殊ケースのドキュメント化は、ライブラリの堅牢性と信頼性を高める上で不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/math/log1p.go b/src/pkg/math/log1p.go
index c25d73b664..e8914a1d05 100644
--- a/src/pkg/math/log1p.go
+++ b/src/pkg/math/log1p.go
@@ -44,7 +44,7 @@ package math
 //                      2      4      6      8      10      12      14
 //          R(z) ~ Lp1*s +Lp2*s +Lp3*s +Lp4*s +Lp5*s  +Lp6*s  +Lp7*s
 //      (the values of Lp1 to Lp7 are listed in the program)
-//      a-0.2929nd
+//      and
 //          |      2          14          |     -58.45
 //          | Lp1*s +...+Lp7*s    -  R(z) | <= 2
 //          |                             |\n
@@ -88,6 +88,7 @@ package math
 //
 // Special cases are:\n
 //	Log1p(+Inf) = +Inf
+//	Log1p(±0) = ±0
 //	Log1p(-1) = -Inf
 //	Log1p(x < -1) = NaN
 //	Log1p(NaN) = NaN

コアとなるコードの解説

変更はsrc/pkg/math/log1p.goファイル内のコメントに集中しています。

  1. 行44の変更: - // a-0.2929nd + // and この変更は、Log1p関数の内部で用いられる多項式近似に関する説明コメント内の誤字a-0.2929ndandに修正しています。これにより、コメントの文法的な正確性が向上し、多項式の説明がより明確になります。

  2. 行88の追加: + // Log1p(±0) = ±0 この行は、Log1p関数の特殊ケースのリストにLog1p(±0) = ±0という記述を追加しています。これは、入力が正のゼロ(+0.0)または負のゼロ(-0.0)である場合に、関数がそれぞれ+0.0または-0.0を返すことを明示しています。特に-0.0のケースは、IEEE 754浮動小数点標準における符号伝播の規則に準拠した挙動であり、関数の正確な仕様を開発者に伝える上で非常に重要です。

これらの変更は、コードの動作自体を変更するものではなく、関数のドキュメントとしての品質と正確性を向上させることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク