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[インデックス 10551] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるosパッケージ内のstat_windows.goファイルに対する変更です。具体的には、Windows環境におけるpath/filepathパッケージのテストが失敗する問題に対応するための修正が含まれています。

コミット

commit e62622b1b1a51471f85d13119f0dbff76bdac4b0
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Nov 30 13:42:14 2011 -0500

    os: fix path/filepath test on Windows
    
    This is not the right fix, but it is what used to happen
    before the FileInfo conversion, and it should get the
    build working again (at least that part).
    
    TBR=brainman
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5434090

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/e62622b1b1a51471f85d13119f0dbff76bdac4b0

元コミット内容

os: fix path/filepath test on Windows

This is not the right fix, but it is what used to happen
before the FileInfo conversion, and it should get the
build working again (at least that part).

TBR=brainman
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5434090

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のosパッケージにおけるFileInfoの変換処理が関係しています。コミットメッセージによると、この変換処理の導入後、Windows環境でpath/filepathパッケージのテストが失敗する問題が発生していました。

コミットの作者であるRuss Cox氏は、この修正が「正しい修正ではない」と明言しており、以前のFileInfo変換前の挙動に戻すことで、一時的にビルドが通るようにするための応急処置であることを示唆しています。これは、開発プロセスを滞らせないための実用的な判断であり、後でより適切な解決策が導入されることを前提としたものです。

前提知識の解説

osパッケージとFileInfoインターフェース

Go言語のosパッケージは、オペレーティングシステム(OS)の機能へのプラットフォーム非依存なインターフェースを提供します。ファイル操作、プロセス管理、環境変数へのアクセスなどが含まれます。 os.FileInfoインターフェースは、ファイルに関する情報(ファイル名、サイズ、パーミッション、最終更新時刻、ディレクトリかどうかなど)を抽象化して提供します。異なるOS(Windows, Linux, macOSなど)でファイルのメタデータの取得方法が異なるため、osパッケージはこれらの違いを吸収し、統一されたFileInfoインターフェースを通じて情報を提供します。

path/filepathパッケージ

path/filepathパッケージは、ファイルパスを操作するためのユーティリティを提供します。これには、パスの結合、クリーンアップ、ディレクトリとファイル名の分離、パスの評価(シンボリックリンクの解決など)などが含まれます。このパッケージは、OS固有のパス区切り文字(Windowsでは\、Unix系では/)を適切に処理し、クロスプラットフォームなパス操作を可能にします。

sameFile関数

sameFile関数は、2つのファイルが同じ物理的なファイルであるかどうかを判断するために使用されることがあります。Unix系システムでは、ファイルのデバイスID(Dev)とinode番号(Ino)を比較することで、同じファイルシステム上の同じファイルを識別できます。しかし、Windowsのようなシステムでは、これらの概念が直接的に存在しないか、異なる方法で表現されるため、sameFileの実装はOSによって異なります。

Windowsファイルシステムとファイル識別

Windowsのファイルシステム(NTFSなど)では、ファイルはファイルID(File ID)によって一意に識別されます。これはUnix系のinodeに似ていますが、直接的な対応関係はありません。sameFileのような機能は、特にハードリンクやシンボリックリンクが存在する場合に、ファイルが実際に同じ実体を指しているかを判断するために重要になります。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/os/stat_windows.goファイル内のsameFile関数の実装を変更しています。元の実装ではreturn falseとなっており、これは「常に異なるファイルである」と判断する、あるいは「同じファイルであるかどうかの判断をしない」という挙動でした。

コミットメッセージによると、以前のFileInfo変換が行われる前は、sameFileDevIno(どちらも常にゼロだった)を比較するコードパスを通過していたため、結果的にtrueが返されることがあったようです。新しいFileInfo変換の導入により、この挙動が変わり、path/filepathのテストが失敗するようになったと考えられます。

この修正は、sameFile関数が常にtrueを返すように変更することで、以前の(意図しない)挙動を模倣し、テストを通過させることを目的としています。これは、ファイルが実際に同じであるかどうかを正確に判断するものではなく、あくまでテストを一時的にパスさせるための「ハック」です。コミットメッセージの// TODO(rsc): Do better than this, but this matches what // used to happen when code compared .Dev and .Ino, // which were both always zero. Obviously not all files // are the same.というコメントが、この修正が暫定的なものであることを明確に示しています。

この変更の技術的な影響は以下の通りです。

  • テストの通過: path/filepathのテストが、sameFileが常にtrueを返すことを前提としている部分で通過するようになります。
  • 正確性の欠如: sameFileが常にtrueを返すため、異なるファイルであっても同じファイルであると誤って判断される可能性があります。これは、ファイルの同一性を厳密にチェックする必要があるアプリケーションにとっては問題となり得ます。
  • 一時的な解決策: この修正は、根本的な問題(FileInfo変換とpath/filepathテストの間の不整合)を解決するものではなく、ビルドを継続させるための緊急措置です。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/os/stat_windows.goファイル内のsameFile関数にあります。

--- a/src/pkg/os/stat_windows.go
+++ b/src/pkg/os/stat_windows.go
@@ -100,7 +100,11 @@ func toFileInfo(name string, fa, sizehi, sizelo uint32, ctime, atime, mtime sysc
 }
 
 func sameFile(fs1, fs2 *FileStat) bool {
-	return false
+	// TODO(rsc): Do better than this, but this matches what
+	// used to happen when code compared .Dev and .Ino,
+	// which were both always zero.  Obviously not all files
+	// are the same.
+	return true
 }
 
 // For testing.

コアとなるコードの解説

sameFile関数は、2つのFileStat構造体(ファイルに関する統計情報を含む)を受け取り、それらが同じファイルを参照しているかどうかをブール値で返します。

変更前は、この関数は単純にreturn falseとなっていました。これは、Windows環境ではファイルの同一性を正確に判断するメカニズムが実装されていなかったか、あるいは意図的に常に異なるファイルとして扱っていたことを意味します。

変更後、この関数はreturn trueを返すように修正されました。これには、Russ Cox氏による重要なコメントが追加されています。

// TODO(rsc): Do better than this, but this matches what
// used to happen when code compared .Dev and .Ino,
// which were both always zero.  Obviously not all files
// are the same.

このコメントは以下の点を説明しています。

  • 暫定的な修正: 「これよりも良い方法があるはずだ」と明言しており、現在の修正が理想的ではないことを示しています。
  • 過去の挙動の再現: 以前のコードでは、FileStatDev(デバイスID)とIno(inode番号)フィールドを比較していましたが、Windowsではこれらが常にゼロであったため、結果的にtrueが返されることがありました。この変更は、その「意図しないが結果的にそうなっていた」過去の挙動を再現しています。
  • 正確性の問題: 「明らかにすべてのファイルが同じであるわけではない」と述べ、このreturn trueが論理的に誤りであることを認識しています。

したがって、この変更は、特定のテストケース(おそらくpath/filepathパッケージ内の、ファイルの同一性をチェックするが、そのチェックがWindows上で正しく機能しないか、あるいは過去の挙動に依存しているテスト)を通過させるための一時的な回避策として導入されました。

関連リンク

  • Go Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/5434090
    • Goプロジェクトでは、コードレビューと変更管理にGerritを使用しています。このリンクは、このコミットに対応するGerritの変更セット(Change-ID)を示しています。Gerritは、Gitリポジトリへの変更を提案し、レビューし、最終的にマージするためのウェブベースのコードレビューシステムです。
  • Go osパッケージ公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/os
  • Go os.FileInfoインターフェース公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/os#FileInfo
  • Go path/filepathパッケージ公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/path/filepath

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • Gitコミットメッセージの分析
  • Go言語のソースコード (src/pkg/os/stat_windows.go)
  • Gerritの一般的な使用方法に関する知識
  • Windowsファイルシステムの基本的な知識