Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 10580] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ツールであるgofmtを適用した結果の変更を記録しています。具体的には、gofmt -w -s src miscコマンドを実行し、Goプロジェクトのsrcディレクトリとmiscディレクトリ以下のソースコードに対して、標準的なフォーマットと特定のコード簡素化を適用しています。これにより、コードの可読性と一貫性が向上し、Goコミュニティにおけるコーディング規約への準拠が促進されます。

コミット

commit 15a3a5cf6c3ba9ef29f086d20dd41a377428fadb
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Thu Dec 1 14:33:24 2011 -0800

    gofmt: applied gofmt -w -s src misc
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5451070

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/15a3a5cf6c3ba9ef29f086d20dd41a377428fadb

元コミット内容

gofmt: applied gofmt -w -s src misc

変更の背景

Go言語では、コードのフォーマットを自動化し、一貫性を保つためのツールとしてgofmtが提供されています。gofmtは、Goのソースコードを標準的なスタイルに整形するだけでなく、-sフラグを使用することで、より簡潔で慣用的なGoの表現にコードを書き換える機能も持っています。

このコミットの背景には、Go言語の進化と、それに伴うコードベース全体の品質と保守性の向上という目的があります。大規模なプロジェクトでは、複数の開発者が関わるため、コードスタイルの一貫性を保つことが非常に重要です。gofmtを定期的に適用することで、手動でのフォーマット調整の手間を省き、コードレビューの焦点をロジックや設計上の問題に集中させることができます。

特に、-sフラグによる簡素化は、Go言語のイディオム(慣用的な表現)をコードに適用し、冗長な記述を排除することで、コードの理解を深め、将来的なメンテナンスを容易にする効果があります。このコミットは、Go言語の初期段階において、コードベース全体にgofmt -sを適用し、コードの品質と一貫性を高めるための大規模なクリーンアップ作業の一環として行われたと考えられます。

前提知識の解説

gofmtとは

gofmtは、Go言語のソースコードを自動的にフォーマットするツールです。Go言語のツールチェインに標準で含まれており、Goのコードを書く上で不可欠なツールとされています。gofmtの主な目的は以下の通りです。

  1. コードスタイルの一貫性: 開発者間で異なるコーディングスタイルによる差異をなくし、プロジェクト全体のコードベースの見た目を統一します。これにより、コードの可読性が向上し、新しい開発者がプロジェクトに参加した際の学習コストを低減します。
  2. コードレビューの効率化: フォーマットに関する議論を不要にし、コードレビュー担当者がロジックや設計上の問題に集中できるようにします。
  3. Go言語のイディオムの促進: gofmtは、Go言語の設計思想に基づいた特定のフォーマットルールを適用します。これにより、Goらしいコードの書き方を自然と身につけることができます。

gofmtのオプション

  • -w (write): フォーマットされた内容を標準出力に出力するのではなく、元のファイルに直接書き込みます。このコミットでは、実際にファイルを変更しているため、このオプションが使用されています。
  • -s (simplify): コードを簡素化します。これは単なるフォーマット以上の機能で、Go言語のイディオムに沿って冗長な記述をより簡潔な形に書き換えます。このコミットの主要な変更点はこのオプションによるものです。

Go言語のイディオム(慣用的な表現)

Go言語には、その設計思想に基づいた特定の「慣用的な」書き方があります。これらは、コードの可読性、効率性、保守性を高めるために推奨されるパターンです。gofmt -sは、以下のようなイディオムを自動的に適用します。

  • 複合リテラルの簡素化: Type{}のように型名を明示する必要がない場合に、{}と省略する。
  • for ... rangeループでの未使用変数の削除: for key, _ := range mのように値が不要な場合に、_を省略してfor key := range mと記述する。
  • インポートパスのグループ化とソート: 標準ライブラリのインポートとサードパーティライブラリのインポートをグループ化し、それぞれをアルファベット順にソートする。

技術的詳細

このコミットは、gofmt -w -s src miscコマンドの実行結果を反映しています。変更は主に以下の3つのカテゴリに分類できます。

  1. インポート文の整形とソート:

    • misc/cgo/gmp/pi.gomisc/swig/callback/run.goでは、インポート文の順序が変更されています。Goの慣例では、標準ライブラリのパッケージが最初にリストされ、その後にサードパーティのパッケージが続きます。各グループ内では、パッケージ名がアルファベット順にソートされます。これはgofmtの基本的なフォーマット機能の一部です。
    --- a/misc/cgo/gmp/pi.go
    +++ b/misc/cgo/gmp/pi.go
    @@ -38,8 +38,8 @@ POSSIBILITY OF SUCH DAMAGE.
     package main
     
     import (
    -	big "gmp"
     	"fmt"
    +	big "gmp"
     	"runtime"
     )
    

    上記の例では、"fmt"が標準ライブラリ、big "gmp"がサードパーティライブラリと見なされ、"fmt"が先に記述されるように順序が変更されています。

  2. 複合リテラルの簡素化 (-sオプションによる):

    • src/pkg/archive/zip/writer_test.gosrc/pkg/html/render_test.goでは、複合リテラルの型名が省略されています。Goでは、コンテキストから型が推論できる場合、複合リテラルで型名を繰り返す必要はありません。
    --- a/src/pkg/archive/zip/writer_test.go
    +++ b/src/pkg/archive/zip/writer_test.go
    @@ -21,12 +21,12 @@ type WriteTest struct {
     }
     
     var writeTests = []WriteTest{
    -	WriteTest{
    +	{
     		Name:   "foo",
     		Data:   []byte("Rabbits, guinea pigs, gophers, marsupial rats, and quolls."),
     		Method: Store,
     	},
    -	WriteTest{
    +	{
     		Name:   "bar",
     		Data:   nil, // large data set in the test
     		Method: Deflate,
    

    writeTests[]WriteTest型であるため、要素の型がWriteTestであることが明確です。したがって、WriteTest{}{}に簡素化されます。同様に、render_test.goではAttribute{}{}に簡素化されています。

  3. for ... rangeループでの未使用変数の削除 (-sオプションによる):

    • src/pkg/html/template/escape.gosrc/pkg/html/template/escape_test.goでは、for ... rangeループで値が使用されない場合に、ブランク識別子_が削除されています。
    --- a/src/pkg/html/template/escape.go
    +++ b/src/pkg/html/template/escape.go
    @@ -716,7 +716,7 @@ func (e *escaper) editTextNode(n *parse.TextNode, text []byte) {\n // commit applies changes to actions and template calls needed to contextually\n // autoescape content and adds any derived templates to the set.\n func (e *escaper) commit() {\n-	for name, _ := range e.output {\n+	for name := range e.output {\n     	e.template(name).Funcs(funcMap)\n     }\n     for _, t := range e.derived {
    

    この変更は、e.outputマップのキー(name)のみが必要で、値は使用されないことを示しています。Goでは、このような場合に_を明示的に記述する必要はなく、単に値を省略することでコードをより簡潔にすることができます。

  4. その他のフォーマット調整:

    • src/cmd/godoc/httpzip.goでは、コメントのインデントが調整されています。
    • src/cmd/gofix/timefileinfo.goでは、不要な空白行が削除されています。 これらの変更は、gofmtの基本的なフォーマット機能によるもので、コードの視覚的な一貫性を保つためのものです。

これらの変更はすべて、gofmt -w -sコマンドによって自動的に適用されたものであり、手動でコードのロジックを変更したものではありません。これにより、Go言語のコードベース全体で高いレベルのコード品質と一貫性が維持されています。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットは、特定の機能追加やバグ修正ではなく、コードベース全体のフォーマットと簡素化を目的としているため、「コアとなるコードの変更箇所」というよりは、Go言語のイディオムに合わせた広範なコードスタイルの調整が中心です。

しかし、特に注目すべき変更は以下のファイルに見られます。

  • src/pkg/archive/zip/writer_test.go: 複合リテラルの簡素化(WriteTest{}から{}への変更)
  • src/pkg/html/render_test.go: 複合リテラルの簡素化(Attribute{}から{}への変更)
  • src/pkg/html/template/escape.go: for ... rangeループでの未使用変数の削除(for name, _ := rangeからfor name := rangeへの変更)
  • src/pkg/html/template/escape_test.go: for ... rangeループでの未使用変数の削除(for n1, _ := rangeからfor n1 := rangeへの変更)

これらの変更は、gofmt -sオプションの具体的な効果を最もよく示しています。

コアとなるコードの解説

このコミットにおける「コアとなるコードの解説」は、個々のファイルにおけるロジックの変更ではなく、gofmt -sが適用するGo言語のイディオムの解説となります。

複合リテラルの簡素化

Go言語では、配列、スライス、マップ、構造体などの複合型を初期化する際に複合リテラルを使用します。例えば、構造体MyStructを初期化する場合、通常はMyStruct{Field: value}のように記述します。しかし、以下のような状況では、型名を省略して{Field: value}と記述することができます。

  • 配列やスライスの要素として: []MyStruct{{Field: value1}, {Field: value2}}
  • マップの値として: map[KeyType]MyStruct{key: {Field: value}}
  • 関数の引数として: func(s MyStruct){Field: value}を渡す場合

gofmt -sは、コンパイラが型を推論できるこれらのケースで、冗長な型名の記述を自動的に削除し、コードをより簡潔にします。

例: 変更前:

var writeTests = []WriteTest{
	WriteTest{
		Name:   "foo",
		Data:   []byte("..."),
		Method: Store,
	},
}

変更後:

var writeTests = []WriteTest{
	{
		Name:   "foo",
		Data:   []byte("..."),
		Method: Store,
	},
}

この変更は、writeTests[]WriteTest型であるため、各要素がWriteTest型であることが明確であることから行われます。

for ... rangeループでの未使用変数の削除

Go言語のfor ... rangeループは、配列、スライス、文字列、マップ、チャネルをイテレートするために使用されます。マップや配列/スライスをイテレートする場合、通常はインデックス/キーと値の2つの変数を取得します。

for key, value := range myMap {
    // keyとvalueを使用
}

しかし、値のみが必要でキーが不要な場合は、キーの代わりにブランク識別子_を使用します。

for _, value := range mySlice {
    // valueのみを使用
}

さらに、gofmt -sは、キー(またはインデックス)のみが必要で値が不要な場合に、ブランク識別子_すらも省略できることを認識し、自動的に削除します。

例: 変更前:

for name, _ := range e.output {
    // nameのみを使用
}

変更後:

for name := range e.output {
    // nameのみを使用
}

この変更は、e.outputがマップであり、ループ内でname(キー)のみが使用され、値は使用されないため、_が冗長であると判断された結果です。これにより、コードがより簡潔になり、開発者が本当に重要な部分(この場合はname)に集中できるようになります。

これらの変更は、Go言語のコードをより「Goらしい」ものにし、可読性と保守性を向上させるためのものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメントとブログ
  • Go言語のソースコード(特にgofmtの挙動に関する部分)
  • Go言語コミュニティにおける一般的なコーディング規約とイディオムに関する知識