[インデックス 10588] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトのバージョン管理システムであるMercurialの設定ファイル .hgignore を更新するものです。具体的には、特定のファイルの追跡状態を変更し、ビルドプロセスやプロジェクト構造の進化に合わせて無視するファイルを調整しています。
コミット
commit 8bc641083709c33a8173e719d8bcdd6b35ac5925
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date: Fri Dec 2 16:24:12 2011 +1100
build: update .hgignore
R=golang-dev, dsymonds, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5451073
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/8bc641083709c33a8173e719d8bcdd6b35ac5925
元コミット内容
build: update .hgignore
R=golang-dev, dsymonds, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5451073
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語プロジェクトの継続的な開発と進化があります。.hgignore ファイルは、Mercurialという分散型バージョン管理システムにおいて、リポジトリに含めるべきではないファイルやディレクトリを指定するために使用されます。これには、コンパイルによって生成される一時ファイル、ビルド成果物、ログファイル、または開発環境固有の設定ファイルなどが含まれます。
このコミットでは、以下の3つのパスに対する変更が行われています。
src/cmd/goinstall/syslist.goの削除: 以前は無視されていたこのファイルが、.hgignoreから削除されました。これは、goinstallツール(Goパッケージのインストールに使用されていた古いツール)の役割の変化、あるいはsyslist.goがもはや生成されるファイルではなく、バージョン管理下に置かれるべきソースコードの一部となったことを示唆しています。goinstallは後にgo getコマンドに置き換えられており、この変更はその移行期におけるファイル管理の調整の一環である可能性があります。src/pkg/os/signal/unix.goの削除: 同様に、このファイルも以前は無視されていましたが、.hgignoreから削除されました。src/pkg/os/signal/unix.goは、Unix系システムにおけるシグナル処理に関連するコードを含んでいたと考えられます。この変更は、このファイルが一時的な生成物ではなく、os/signalパッケージの不可欠な部分として、バージョン管理システムで追跡されるべきであるという判断が下されたことを意味します。src/pkg/go/doc/headscanの追加: 新たにこのパスが.hgignoreに追加されました。src/pkg/go/docはGoのドキュメント生成に関連するパッケージです。headscanという名前から、これはドキュメント生成プロセス中に一時的に作成されるファイル、あるいは特定のヘッダー情報をスキャンして生成されるファイルである可能性が高いです。このようなファイルは通常、ソースコードの一部ではないため、バージョン管理システムで追跡する必要がなく、無視されるべきです。
これらの変更は、Goプロジェクトのビルドシステム、ツールの構成、および内部パッケージの構造が時間とともに変化する中で、リポジトリの整合性を保ち、不要なファイルを追跡しないようにするための定期的なメンテナンスの一環として行われました。
前提知識の解説
1. Mercurialと.hgignore
- Mercurial (Hg): Gitと同様に、分散型バージョン管理システム(DVCS)の一つです。Go言語プロジェクトは、初期にはMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。しかし、このコミットが作成された2011年時点では、Mercurialが主要なバージョン管理システムとして利用されていました。
- .hgignore: Mercurialにおいて、バージョン管理の対象から除外するファイルやディレクトリのパターンを記述する設定ファイルです。Gitにおける
.gitignoreと同様の役割を果たします。このファイルに記述されたパターンに一致するファイルは、hg statusなどのコマンドで「未追跡」として表示されず、hg addやhg commitの対象になりません。これにより、ビルド生成物、一時ファイル、ログファイル、IDEの設定ファイルなど、リポジトリに含めるべきではないファイルを管理できます。
2. Go言語のビルドシステムとパッケージ構造
- Goのビルドプロセス: Go言語のプロジェクトは、
go buildやgo installといったコマンドを使用してソースコードをコンパイルし、実行可能ファイルやライブラリを生成します。このプロセス中に、中間ファイルやキャッシュファイルが生成されることがあります。 - Goのパッケージ構造: Goのソースコードはパッケージとして組織され、
src/ディレクトリ以下に配置されます。src/cmd/にはコマンドラインツール、src/pkg/には標準ライブラリやその他のパッケージが含まれます。 goinstallとgo get:goinstallはGoの初期に存在したパッケージインストールツールです。これは後に、より強力で柔軟なgo getコマンドに置き換えられました。go getは、リモートリポジトリからパッケージをフェッチし、ビルドしてインストールする機能を提供します。
3. シグナル処理 (os/signal)
- シグナル: オペレーティングシステムがプロセスに送信する非同期通知です。例えば、Ctrl+Cを押すと
SIGINTシグナルがプロセスに送信され、プロセスは通常終了します。 os/signalパッケージ: Goの標準ライブラリの一部で、オペレーティングシステムからのシグナルをプログラムが捕捉し、処理するための機能を提供します。unix.goのようなファイルは、特定のOS(この場合はUnix系)に特化したシグナル処理の実装を含んでいます。
4. ドキュメント生成 (go/doc)
go/docパッケージ: Goの標準ライブラリの一部で、Goのソースコードからドキュメントを生成するための機能を提供します。go docコマンドやgodocツールがこのパッケージを利用して、コードコメントや宣言からAPIドキュメントを生成します。
技術的詳細
.hgignore ファイルは、正規表現またはglobパターンを使用して無視するファイルを指定します。このコミットでは、特定のファイルパスを直接指定することで、それらのファイルの追跡状態を明示的に変更しています。
-
src/cmd/goinstall/syslist.goの削除の技術的意味:- このファイルが
.hgignoreから削除されたということは、Mercurialがこのファイルを追跡対象として認識するようになったことを意味します。 - もしこのファイルが以前はビルドプロセスによって生成される一時的なファイルであったならば、この変更は、その生成プロセスが変更されたか、あるいはこのファイルがもはや生成物ではなく、手動で管理されるべきソースコードの一部になったことを示唆します。
goinstallがgo getに置き換えられる過程で、関連するファイル群の役割が見直され、一部がリポジトリに含められるようになった可能性があります。
- このファイルが
-
src/pkg/os/signal/unix.goの削除の技術的意味:- 同様に、このファイルが
.hgignoreから削除されたことで、Mercurialはこれを追跡対象とします。 unix.goのようなファイルは、通常、特定のOS(Unix)に依存する実装を含みます。もしこれが以前に無視されていたとすれば、それはクロスプラットフォームビルドの過程で生成される一時的なファイルであったか、あるいは特定のビルド環境でのみ関連するファイルであった可能性があります。- この変更は、
os/signalパッケージのUnix固有の実装が、Goの標準ライブラリの一部として常にバージョン管理されるべきコアなソースコードであるという判断が下されたことを示しています。
- 同様に、このファイルが
-
src/pkg/go/doc/headscanの追加の技術的意味:- このファイルが
.hgignoreに追加されたということは、Mercurialがこのファイルを無視するようになったことを意味します。 headscanという名前とgo/docパッケージのコンテキストから、これはドキュメント生成プロセス中に、ソースファイルのヘッダー部分をスキャンして一時的に生成されるファイルである可能性が高いです。- このような生成ファイルは、ソースコードの変更によって内容が変わり、リポジトリの履歴を不必要に汚染する可能性があるため、バージョン管理システムで無視するのが一般的です。これにより、リポジトリのサイズを小さく保ち、クリーンな履歴を維持できます。
- このファイルが
これらの変更は、Goプロジェクトのビルドパイプライン、依存関係、およびコードベースの構造が進化するにつれて、バージョン管理の対象を適切に調整するためのものです。不要なファイルを無視することで、リポジトリの効率性を高め、開発者が本当に重要なソースコードの変更に集中できるようにします。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/.hgignore
+++ b/.hgignore
@@ -41,14 +41,13 @@ src/cmd/gc/opnames.h
src/cmd/gc/y.output
src/cmd/gc/y1.tab.c
src/cmd/gc/yerr.h
-src/cmd/goinstall/syslist.go
src/pkg/Make.deps
src/pkg/exp/norm/maketables
src/pkg/exp/norm/maketesttables
src/pkg/exp/norm/normregtest
src/pkg/ebnflint/ebnflint
src/pkg/go/build/syslist.go
-src/pkg/os/signal/unix.go
+src/pkg/go/doc/headscan
src/pkg/runtime/*/asm.h
src/pkg/runtime/goc2c
src/pkg/runtime/mkversion
コアとなるコードの解説
上記のdiffは、.hgignore ファイルに対する具体的な変更を示しています。
-src/cmd/goinstall/syslist.go: この行の先頭にある-は、この行が元のファイルから削除されたことを意味します。つまり、src/cmd/goinstall/syslist.goというパスが、Mercurialによって無視されるリストから除外されました。これにより、このファイルはMercurialの追跡対象となり、変更があればバージョン管理されるようになります。-src/pkg/os/signal/unix.go: 同様に、この行も削除されたことを示します。src/pkg/os/signal/unix.goも無視リストから除外され、Mercurialの追跡対象となりました。+src/pkg/go/doc/headscan: この行の先頭にある+は、この行が新しいファイルに追加されたことを意味します。つまり、src/pkg/go/doc/headscanというパスが、Mercurialによって無視されるリストに追加されました。これにより、このファイルはMercurialによって無視され、バージョン管理の対象外となります。
これらの変更は、Goプロジェクトのファイル構成やビルドプロセスが変化したことに対応し、バージョン管理システムが適切に機能するように .hgignore を調整したものです。
関連リンク
- https://github.com/golang/go/commit/8bc641083709c33a8173e719d8bcdd6b35ac5925
- https://golang.org/cl/5451073 (Go Code Review System の変更リストへのリンク)
参考にした情報源リンク
- Mercurial Documentation: https://www.mercurial-scm.org/
- Go Language Documentation: https://go.dev/
- Go
os/signalpackage: https://pkg.go.dev/os/signal - Go
go/docpackage: https://pkg.go.dev/go/doc - Go
goinstallvsgo get(historical context): 一般的なGoの歴史に関する情報源やブログ記事。