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[インデックス 10591] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである src/pkg/encoding/asn1/asn1_test.go ファイルに対する修正です。encoding/asn1 パッケージは、Abstract Syntax Notation One (ASN.1) 形式のデータをエンコードおよびデコードするための機能を提供します。このテストファイルは、特に UTCTime のパース処理に関するテストケースを含んでいます。

コミット

このコミットは、govet ツールによって検出された asn1 パッケージのテストコード内の不正確な fmt.Errorf (または t.Errorf) の書式指定を修正するものです。具体的には、t.Errorf の呼び出しにおいて、引数の数が書式指定文字列内のプレースホルダーの数と一致しない問題を解決しています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/6f0ef845e6c2e56712ee458a605f08386fe539ee

元コミット内容

asn1: fix incorrect prints found by govet

R=golang-dev
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5449063

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の静的解析ツールである govet の利用があります。govet は、Goのソースコードを検査し、疑わしい構成要素(例えば、書式指定文字列と引数の不一致、到達不能なコード、誤ったタグなど)を報告するツールです。

このコミットでは、govetsrc/pkg/encoding/asn1/asn1_test.go 内の TestUTCTime 関数において、t.Errorf の呼び出しにおける書式指定文字列と引数の不一致を検出しました。具体的には、エラーメッセージの書式指定文字列に %q%s といったプレースホルダーがあるにもかかわらず、対応する引数が不足している、または誤った引数が渡されている箇所がありました。

このような不一致は、テストが失敗した際に表示されるエラーメッセージが意図しないものになったり、プログラムがクラッシュしたりする可能性を秘めています。govet はこのような潜在的なバグを事前に発見し、開発者が修正できるように支援します。このコミットは、govet の指摘に基づいて、テストコードの出力の正確性を向上させるために行われました。

前提知識の解説

ASN.1 (Abstract Syntax Notation One)

ASN.1は、データ構造を記述するための標準的な記法であり、通信プロトコルやデータストレージにおいて、異なるシステム間でデータを交換する際に使用されます。ASN.1は、データの型(整数、文字列、シーケンスなど)とそれらの構造を定義し、その定義に基づいてデータをエンコード(符号化)およびデコード(復号化)することができます。encoding/asn1 パッケージは、Go言語でこのASN.1データを扱うための機能を提供します。

UTCTime

UTCTime は、ASN.1で定義される日付と時刻のデータ型の一つです。通常、協定世界時 (UTC) を基準とした時刻を表し、YYMMDDhhmmssZ の形式で表現されます(例: 991231235959Z は1999年12月31日23時59分59秒UTC)。

govet

govet は、Go言語のソースコードを静的に解析し、潜在的なエラーや疑わしいコード構成を検出するツールです。Go SDKに標準で含まれており、以下のような問題を検出できます。

  • Printf系の書式指定文字列と引数の不一致: fmt.Printf, log.Printf, t.Errorf などの関数で、書式指定文字列のプレースホルダーの数と引数の数が合わない場合。
  • 到達不能なコード: returnpanic の後に続くコードなど、実行されないコード。
  • 構造体タグの誤り: json:"field" のような構造体タグの書式が誤っている場合。
  • ロックの誤用: sync.Mutex などのミューテックスのロック/アンロックの誤用。
  • 変数のシャドーイング: 外部スコープの変数を内部スコープで再定義してしまう場合。

govet は、コンパイルエラーにはならないが、実行時に問題を引き起こす可能性のあるコードを特定するのに役立ち、コードの品質と信頼性を向上させます。

Goのテストフレームワークと t.Errorf

Go言語には、標準でテストフレームワークが組み込まれています。テストファイルは _test.go というサフィックスを持ち、Test で始まる関数がテスト関数として認識されます。

testing パッケージの *testing.T 型は、テストの実行中に状態を管理し、テスト結果を報告するためのメソッドを提供します。t.Errorf はそのメソッドの一つで、テストが失敗したことを報告し、指定された書式でエラーメッセージを出力します。fmt.Errorf と同様に、書式指定文字列とそれに続く引数を取ります。

例: t.Errorf("Expected %d, got %d", expectedValue, actualValue)

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、govet が検出した t.Errorf の引数と書式指定文字列の不一致を修正することにあります。

元のコードでは、t.Errorf の書式指定文字列に複数のプレースホルダー(例: %q, %v, %s)が含まれているにもかかわらず、対応する引数が不足しているか、または意図しない引数が渡されていました。

例えば、以下の元のコードを見てみましょう。

t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, err)

この行では、%d, %q, %v の3つのプレースホルダーがあります。しかし、引数としては ierr の2つしか渡されていません。%q に対応する引数が不足しています。

修正後のコードでは、不足していた引数 test.in が追加されています。

t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, test.in, err)

これにより、%d には i%q には test.in%v には err がそれぞれ正しく対応し、エラーメッセージが意図通りに整形されるようになります。

同様に、他の2つの t.Errorf の呼び出しでも、%q に対応する引数 test.in が追加され、%s に対応する引数 i が追加されています。

これらの修正は、コードのロジック自体を変更するものではなく、テストが失敗した際に開発者に対してより正確で分かりやすいエラーメッセージを提供することを目的としています。これは、デバッグの効率を向上させ、テストの信頼性を高める上で重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/encoding/asn1/asn1_test.go
+++ b/src/pkg/encoding/asn1/asn1_test.go
@@ -225,19 +225,19 @@ func TestUTCTime(t *testing.T) {
 		ret, err := parseUTCTime([]byte(test.in))
 		if err != nil {
 			if test.ok {
-				t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, err)
+				t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, test.in, err)
 			}
 			continue
 		}
 		if !test.ok {
-			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) succeeded, should have failed", i)
+			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) succeeded, should have failed", i, test.in)
 			continue
 		}
 		const format = "Jan _2 15:04:05 -0700 2006" // ignore zone name, just offset
 		have := ret.Format(format)
 		want := test.out.Format(format)
 		if have != want {
-			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = %s, want %s", test.in, have, want)
+			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = %s, want %s", i, test.in, have, want)
 		}
 	}
 }

コアとなるコードの解説

変更はすべて TestUTCTime 関数内で行われています。この関数は、parseUTCTime 関数が UTCTime 文字列を正しくパースできるかをテストします。

  1. 最初の変更点:

    -				t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, err)
    +				t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = error %v", i, test.in, err)
    

    parseUTCTime がエラーを返した際に、test.oktrue (つまり成功を期待していた) の場合にエラーを報告する行です。元のコードでは、書式指定文字列 "#%d: parseUTCTime(%q) = error %v" には3つのプレースホルダー (%d, %q, %v) がありますが、引数として ierr の2つしか渡されていませんでした。これにより、%q に対応する値が欠落していました。修正では、テスト入力文字列である test.in%q の引数として追加し、エラーメッセージが parseUTCTime("入力文字列") = error エラー内容 のように正しく表示されるようにしました。

  2. 二番目の変更点:

    -			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) succeeded, should have failed", i)
    +			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) succeeded, should have failed", i, test.in)
    

    parseUTCTime が成功した際に、test.okfalse (つまり失敗を期待していた) の場合にエラーを報告する行です。ここでも同様に、書式指定文字列 "#%d: parseUTCTime(%q) succeeded, should have failed" には2つのプレースホルダー (%d, %q) がありますが、引数として i の1つしか渡されていませんでした。修正では、test.in%q の引数として追加し、エラーメッセージが parseUTCTime("入力文字列") succeeded, should have failed のように正しく表示されるようにしました。

  3. 三番目の変更点:

    -			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = %s, want %s", test.in, have, want)
    +			t.Errorf("#%d: parseUTCTime(%q) = %s, want %s", i, test.in, have, want)
    

    パース結果の時刻が期待値と異なる場合にエラーを報告する行です。元のコードでは、書式指定文字列 "#%d: parseUTCTime(%q) = %s, want %s" には4つのプレースホルダー (%d, %q, %s, %s) がありますが、引数として test.in, have, want の3つしか渡されていませんでした。さらに、最初の %dtest.in (文字列) が渡されており、型が一致していませんでした。修正では、最初の %d にテストケースのインデックス i を渡し、%qtest.in を渡すことで、エラーメッセージが テストケース番号: parseUTCTime("入力文字列") = 実際の時刻, want 期待する時刻 のように正しく表示されるようにしました。

これらの修正は、govet の指摘に従い、t.Errorf の書式指定文字列と引数の対応を正確にすることで、テスト失敗時のデバッグ情報をより明確にするためのものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (pkg.go.dev)
  • govet の一般的な使用例に関する情報
  • ASN.1 の基本概念に関する情報