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[インデックス 10593] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の仕様書である doc/go_spec.html ファイルに変更を加えています。具体的には、スライスリテラルの定義に関する記述を修正し、より正確な表現に更新しています。

コミット

  • コミットハッシュ: 4dfe976d974669e1234fbcd4f95341be41c1e575
  • Author: Russ Cox rsc@golang.org
  • Date: Fri Dec 2 12:30:20 2011 -0500
  • コミットメッセージ:
    spec: avoid slice of array literal
    
    R=gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5451078
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/4dfe976d974669e1234fbcd4f95341be41c1e575

元コミット内容

spec: avoid slice of array literal

R=gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5451078

変更の背景

このコミットは、Go言語の仕様書におけるスライスリテラルの定義を明確化し、より正確な表現に修正することを目的としています。以前の記述では、スライスリテラルが「配列リテラルに適用されるスライス操作のショートカット」であると説明されていましたが、その表現が誤解を招く可能性がありました。特に、[n]T{x1, x2, … xn}[0 : n] という形式で示されていた例が、スライスリテラルの内部的な挙動を正確に反映していないと判断されたようです。

Go言語の設計思想として、言語仕様は厳密かつ曖昧さがないように記述されることが重要です。この変更は、スライスリテラルが一時的な配列を作成し、その配列全体をスライスするという内部的なメカニズムをより正確に表現するために行われました。これにより、Go言語の学習者や実装者がスライスリテラルの挙動をより正確に理解できるようになります。

前提知識の解説

Go言語における配列 (Arrays)

Go言語の配列は、同じ型の要素を固定長で連続して格納するデータ構造です。配列の長さは型の一部であり、コンパイル時に決定されます。

例:

var a [5]int // 5つの整数を格納できる配列

配列リテラルは、配列の要素を初期化するための構文です。

例:

b := [3]int{1, 2, 3} // 長さ3のint型配列を初期化

Go言語におけるスライス (Slices)

スライスは、Go言語で最も頻繁に使用されるデータ構造の一つで、配列の上に構築された動的なビューを提供します。スライスは、基盤となる配列の一部を参照し、長さと容量を持ちます。スライスは参照型であり、複数のスライスが同じ基盤配列を参照することができます。

スライスは以下の3つの要素で構成されます。

  1. ポインタ: 基盤となる配列のどこからスライスが始まるかを示すポインタ。
  2. 長さ (Length): スライスに含まれる要素の数。
  3. 容量 (Capacity): スライスの開始位置から基盤となる配列の終わりまでの要素の数。

スライス操作 (Slice Operations)

スライス操作は、既存の配列やスライスから新しいスライスを作成するために使用されます。a[low : high] の形式で、low から high-1 までの要素を含む新しいスライスを作成します。

例:

arr := [5]int{10, 20, 30, 40, 50}
s := arr[1:4] // arrのインデックス1から3までの要素を含むスライス s = {20, 30, 40}

スライスリテラル (Slice Literals)

スライスリテラルは、スライスを直接初期化するための簡潔な構文です。配列リテラルと似ていますが、角括弧 [] の中に長さを指定しません。

例:

s := []int{1, 2, 3} // int型スライスを初期化

このスライスリテラルは、内部的にはまず適切なサイズの基盤配列が作成され、その配列全体を指すスライスが返されるという挙動をします。このコミットは、この内部的な挙動の記述をより正確にするものです。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Go言語の仕様書におけるスライスリテラルの定義の修正です。以前の仕様では、スライスリテラルが以下のように説明されていました。

and is a shortcut for a slice operation applied to an array literal: [n]T{x1, x2, … xn}[0 : n]

この記述は、スライスリテラルが「配列リテラルに直接スライス操作を適用したもの」であるかのように読める可能性がありました。しかし、これはGo言語の内部的な実装と概念を正確に反映していません。スライスリテラルは、まず一時的な配列を作成し、その一時的な配列全体をスライスするという二段階のプロセスを経て生成されます。

新しい記述では、このプロセスをより明確に表現するために、一時変数 tmp を導入した擬似コードを用いて説明しています。

and is a shortcut for a slice operation applied to an array: tmp := [n]T{x1, x2, … xn} tmp[0 : n]

この変更により、以下の点が明確になります。

  1. 一時的な配列の存在: スライスリテラルが評価される際に、まず [n]T{x1, x2, … xn} という形式で一時的な配列が作成されることが明示されます。この配列は、スライスリテラルの要素を格納するための基盤となります。
  2. 配列へのスライス操作: その後、作成された一時的な配列 tmp に対して tmp[0 : n] というスライス操作が適用され、結果としてスライスリテラルが生成されることが示されます。このスライス操作は、配列の全要素をカバーするスライスを作成します。
  3. 概念的な正確性: この記述は、スライスリテラルが単に配列リテラルの一部を切り取るのではなく、独立した一時的な配列を基盤としてスライスを構築するというGo言語の設計意図をより正確に反映しています。これにより、スライスリテラルがどのようにメモリ上で表現され、どのように動作するかの理解が深まります。

この修正は、Go言語の仕様の厳密性を高め、将来的な言語の進化やコンパイラの実装において、スライスリテラルの挙動に関する曖昧さを排除することを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイル内で行われています。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,5 +1,5 @@
 <!-- title The Go Programming Language Specification -->
-<!-- subtitle Version of November 22, 2011 -->
+<!-- subtitle Version of December 2, 2011 -->
 
 <!--
 TODO
@@ -2106,11 +2106,12 @@ element index plus one. A slice literal has the form
 </pre>
 
 <p>
-and is a shortcut for a slice operation applied to an array literal:
+and is a shortcut for a slice operation applied to an array:
 </p>
 
 <pre>
-[n]T{x1, x2, … xn}[0 : n]\n
+tmp := [n]T{x1, x2, … xn}\n
+tmp[0 : n]\n
 </pre>
 
 <p>

具体的には、以下の2箇所が変更されています。

  1. 仕様書のバージョン日付の更新: -<!-- subtitle Version of November 22, 2011 --> +<!-- subtitle Version of December 2, 2011 --> これは、仕様書が更新された日付を反映するための単純な変更です。

  2. スライスリテラルの説明の修正: -and is a shortcut for a slice operation applied to an array literal: -[n]T{x1, x2, … xn}[0 : n] +and is a shortcut for a slice operation applied to an array: +tmp := [n]T{x1, x2, … xn} +tmp[0 : n] ここが本質的な変更点です。スライスリテラルが「配列リテラルに適用されるスライス操作のショートカット」であるという表現から、「配列に適用されるスライス操作のショートカット」へと変更され、その具体的な挙動が一時変数 tmp を用いた2段階のプロセスとして示されています。

コアとなるコードの解説

このコミットにおけるコアとなるコードの変更は、Go言語の仕様書 doc/go_spec.html 内の、スライスリテラルに関する説明部分です。

変更前は、スライスリテラルが以下のように説明されていました。

<p>
and is a shortcut for a slice operation applied to an array literal:
</p>

<pre>
[n]T{x1, x2, … xn}[0 : n]
</pre>

この記述は、スライスリテラルが [n]T{x1, x2, … xn} という配列リテラルを直接作成し、その直後に [0 : n] というスライス操作を適用する、という一連の操作の「ショートカット」であると示唆していました。しかし、これは概念的に誤解を招く可能性がありました。Go言語では、スライスリテラルはまず内部的に匿名の一時配列を作成し、その配列全体を指すスライスを生成します。

変更後は、この説明が以下のように修正されました。

<p>
and is a shortcut for a slice operation applied to an array:
</p>

<pre>
tmp := [n]T{x1, x2, … xn}
tmp[0 : n]
</pre>

この修正のポイントは以下の通りです。

  1. 「array literal」から「array」への変更: "array literal" という表現が "array" に変更されました。これは、スライスリテラルが直接配列リテラルにスライス操作を適用するのではなく、まず一時的な「配列」が作成され、その配列に対してスライス操作が行われることを明確にしています。この「配列」は、必ずしも明示的な配列リテラルとしてコードに書かれるものではなく、スライスリテラルを評価する過程で内部的に生成される匿名の一時配列を指します。

  2. 一時変数 tmp の導入: [n]T{x1, x2, … xn}[0 : n] という単一の式から、 tmp := [n]T{x1, x2, … xn} tmp[0 : n] という2段階の擬似コードに分割されました。 この tmp は、スライスリテラルが評価される際に、まず要素を格納するための一時的な配列が作成されることを視覚的に示しています。そして、その一時配列 tmp 全体を対象として [0 : n] というスライス操作が行われ、結果としてスライスリテラルが生成されるという、より正確な内部挙動を表現しています。

この変更は、Go言語の仕様の正確性を高め、スライスリテラルの動作に関する曖昧さを排除することを目的としています。これにより、Go言語のコンパイラ実装者や、言語の深い理解を目指す開発者にとって、より正確な情報が提供されることになります。

関連リンク

このコミットに関連する直接的な追加リンクは、今回の分析では見つかりませんでした。

参考にした情報源リンク

今回の分析では、提供されたコミット情報とGo言語の基本的な概念に基づいて解説を生成しました。Web検索で得られた golang.org/cl/5451078 の情報は、日付が大きく異なるため、このコミットとは無関係と判断し、参考にしていません。