Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 10620] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ src/pkg/hash/hash.go 内の Hash インターフェースにおける Sum メソッドのコメントを修正するものです。既存のコメントがメソッドの実際の動作を正確に反映していなかったため、より明確で誤解の余地のない説明に書き換えられました。

コミット

  • コミットハッシュ: ca7d86c4d3e15716ae7aa3d7ba84769218571460
  • Author: Andrew Gerrand adg@golang.org
  • Date: Tue Dec 6 14:12:09 2011 +1100

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ca7d86c4d3e15716ae7aa3d7ba84769218571460

元コミット内容

    hash: rewrite comment on Hash.Sum method

    Fixes #2530.

    R=golang-dev, agl
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5449101

変更の背景

この変更は、Go言語のハッシュパッケージにおける Hash インターフェースの Sum メソッドに関する既存のコメントが、その動作を正確に記述していなかったために行われました。コミットメッセージにある Fixes #2530 は、この変更がGoのIssue 2530を解決するものであることを示しています。通常、このようなコメントの修正は、APIの利用者がメソッドの挙動を誤解する可能性があったり、ドキュメントが実際のコードと乖離している場合に実施されます。特に、Sum メソッドが引数として受け取るバイトスライス b の扱いと、戻り値の性質について、より明確な説明が求められていたと考えられます。

前提知識の解説

Go言語の hash パッケージ

Go言語の hash パッケージは、暗号学的ハッシュ関数(例: SHA-256, MD5)やチェックサム(例: CRC32)を実装するための共通インターフェースを提供します。これにより、具体的なハッシュアルゴリズムに依存しない形でハッシュ計算を行うことができます。

hash.Hash インターフェース

hash.Hash インターフェースは、ハッシュ計算を行うオブジェクトが満たすべきメソッドを定義しています。主要なメソッドは以下の通りです。

  • io.Writer: hash.Hashio.Writer インターフェースを埋め込んでいます。これは、ハッシュ計算の対象となるデータを Write メソッドを通じてストリームとして受け取ることができることを意味します。例えば、h.Write([]byte("hello")) のようにデータを書き込むことで、ハッシュの状態が更新されます。
  • Sum(b []byte) []byte: このメソッドは、現在のハッシュ値を計算し、それを引数 b の末尾に追加した新しいバイトスライスを返します。重要なのは、このメソッドがハッシュオブジェクトの内部状態(これまでに書き込まれたデータ)を変更しないことです。つまり、Sum を呼び出した後も、同じハッシュオブジェクトに対してさらにデータを書き込み、ハッシュ計算を続けることができます。
  • Reset(): ハッシュオブジェクトの内部状態を初期状態に戻します。これにより、同じハッシュオブジェクトを再利用して、新しいハッシュ計算を開始できます。
  • Size(): ハッシュ値のバイト長を返します。
  • BlockSize(): ハッシュ関数のブロックサイズを返します。

append() 関数の挙動

Go言語の組み込み関数 append() は、スライスに要素を追加するために使用されます。append(s []T, elems ...T) []T の形式で、スライス s の末尾に elems を追加した新しいスライスを返します。元のスライスの容量が足りない場合は、より大きな容量を持つ新しい基底配列が割り当てられ、データがコピーされます。この挙動は、Sum メソッドが引数 b をどのように扱うかを理解する上で重要です。

技術的詳細

このコミットの核心は、Hash.Sum メソッドのコメントの精度向上にあります。変更前のコメントは「Sum appends the current hash in the same manner as append(), without changing the underlying hash state.」でした。この表現は、append() のような動作をすることを示唆していますが、具体的に何にアペンドするのか、そして戻り値がどうなるのかが不明瞭でした。特に、append() が新しいスライスを返すというGoのイディオムを理解していない開発者にとっては、誤解を招く可能性がありました。

新しいコメント「Sum appends the current hash to b and returns the resulting slice. It does not change the underlying hash state.」は、以下の点で明確さを向上させています。

  1. アペンドの対象の明示: 「appends the current hash to b」と明記することで、ハッシュ値が引数として渡されたバイトスライス b の末尾に追加されることが明確になりました。これにより、開発者は Sum メソッドの呼び出し時に、b に既存のデータを含めることができることを理解できます。
  2. 戻り値の明確化: 「and returns the resulting slice」と記述することで、Sum メソッドが新しいスライスを返すことが明確になりました。これはGoのスライス操作における一般的なパターンであり、append() 関数と同様に、元のスライス b が変更されるのではなく、新しいスライスが生成されて返されることを示唆しています。
  3. ハッシュ状態の不変性の再確認: 「It does not change the underlying hash state.」という記述は変更されていませんが、これは Sum メソッドの重要な特性であり、ハッシュ計算を継続できることを保証します。

この修正は、Goの標準ライブラリのドキュメントが、そのAPIの挙動を正確かつ簡潔に記述することの重要性を示しています。特に、Sum メソッドのように、引数と戻り値の相互作用が複雑になりがちな関数においては、コメントのわずかなニュアンスが開発者のコードの書き方に大きな影響を与える可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/hash/hash.go
+++ b/src/pkg/hash/hash.go
@@ -13,9 +13,9 @@ type Hash interface {
 	// It never returns an error.
 	io.Writer

-\t// Sum appends the current hash in the same manner as append(), without
-\t// changing the underlying hash state.
-\tSum(in []byte) []byte
+\t// Sum appends the current hash to b and returns the resulting slice.
+\t// It does not change the underlying hash state.
+\tSum(b []byte) []byte

 	// Reset resets the hash to one with zero bytes written.
 	Reset()

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/hash/hash.go ファイルの Hash インターフェース定義内にある Sum メソッドのコメント行に限定されています。

  • 変更前:

    // Sum appends the current hash in the same manner as append(), without
    // changing the underlying hash state.
    Sum(in []byte) []byte
    

    このコメントでは、Sum メソッドが append() と同様に動作すると説明していますが、具体的に何にアペンドするのか、そして戻り値がどうなるのかが不明瞭でした。また、引数名が in となっていましたが、これは b に変更されています。

  • 変更後:

    // Sum appends the current hash to b and returns the resulting slice.
    // It does not change the underlying hash state.
    Sum(b []byte) []byte
    

    新しいコメントでは、以下の点が改善されています。

    1. Sum appends the current hash to b: ハッシュ値が引数 b の末尾に追加されることが明確に示されています。
    2. and returns the resulting slice: Sum メソッドが、ハッシュ値が追加された新しいスライスを返すことが明確に示されています。これにより、呼び出し元は戻り値を使用する必要があることがわかります。
    3. 引数名が in から b に変更されています。これは、Goの標準ライブラリでスライスを引数として受け取り、そのスライスにデータを追加して新しいスライスを返す関数でよく使われる慣習に合わせたものです。例えば、bytes.BufferBytes() メソッドや、fmt.Appendf などでも同様のパターンが見られます。

このコメントの修正は、GoのAPIドキュメントの品質を向上させ、開発者が hash.Hash インターフェースをより正確に理解し、適切に使用できるようにすることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク