[インデックス 10712] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラのガベージコレクタ(gc)関連のコードにおいて、可変長引数チェック(varargck)に新たなフォーマット指定子 %lN を追加するものです。具体的には、src/cmd/gc/go.h ファイルに #pragma varargck type "lN" Node* という行が追加されています。
コミット
commit d56ca13c03b16eeeb3eb7cd379a2d05b9b9e4a2a
Author: Lucio De Re <lucio.dere@gmail.com>
Date: Mon Dec 12 15:42:02 2011 -0500
gc: add varargck for %lN
R=golang-dev
CC=golang-dev, rsc
https://golang.org/cl/5476049
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d56ca13c03b16eeeb3eb7cd379a2d05b9b9e4a2a
元コミット内容
gc: add varargck for %lN
変更の背景
この変更は、Goコンパイラの内部ツールであるvarargckが、特定のフォーマット文字列と引数の型の一致をチェックする際に、新たなパターン %lN を認識できるようにするためのものです。varargckは、printfのような可変長引数関数において、フォーマット文字列と実際に渡される引数の型が一致しているかをコンパイル時に検証するためのメカニズムです。
Goコンパイラの開発過程において、内部的なデバッグ出力やログ記録の際に、Node* 型のポインタを特定のフォーマット %lN で出力する必要が生じたと考えられます。既存のvarargckのルールではこのパターンが認識されず、コンパイル時に警告やエラーが発生する可能性があったため、これを正しく処理できるようにするための修正です。これにより、コンパイラ開発者はより安全に、かつ意図した通りにNode*型の情報をデバッグ出力できるようになります。
前提知識の解説
Goコンパイラとgc
Go言語の公式コンパイラは、初期にはgc(Go Compiler)という名前で知られていました。これはGo言語自体で書かれており、Goプログラムを機械語に変換する役割を担います。src/cmd/gcディレクトリは、このコンパイラの主要な部分を構成しています。
varargck (可変長引数チェック)
varargckは、C言語のprintfやGo言語のfmt.Printfのような可変長引数関数において、フォーマット文字列と引数の型が一致しているかをコンパイル時にチェックするための仕組みです。これにより、実行時エラー(例えば、整数を期待しているところに文字列を渡してしまうなど)を防ぐことができます。
Goコンパイラのソースコード内では、#pragma varargckディレクティブが使用されています。これは、コンパイラに対する指示であり、特定の関数やフォーマット指定子に対して型チェックのルールを定義するために使われます。
例:
#pragma varargck type "N" Node*
これは、「フォーマット文字列中に%Nが出現した場合、対応する引数はNode*型でなければならない」というルールを定義しています。
フォーマット指定子
フォーマット指定子(Format Specifier)は、printfのような関数で文字列を整形する際に、変数の値をどのように表示するかを指示する記号です。例えば、%dは整数、%sは文字列を表します。
このコミットで追加された%lNは、Goコンパイラ内部で定義されたカスタムのフォーマット指定子であり、特定の型(この場合はNode*)の値を表示するために使われます。lは、おそらく「long」や「large」のような修飾子で、NはNode*型を指す慣習的な記号であると推測されます。
Node*型
Goコンパイラにおいて、Nodeは抽象構文木(Abstract Syntax Tree, AST)のノードを表す構造体である可能性が高いです。ASTは、ソースコードを解析して得られるプログラムの構造を木構造で表現したものです。コンパイラはASTを操作して、型チェック、最適化、コード生成などを行います。Node*はそのノードへのポインタを意味します。
技術的詳細
このコミットは、Goコンパイラのsrc/cmd/gc/go.hファイルに、#pragma varargck type "lN" Node*という新しいpragmaディレクティブを追加しています。
#pragmaディレクティブは、コンパイラに対して特別な指示を与えるためのものです。C言語の標準には含まれていませんが、多くのコンパイラが拡張として提供しています。Goコンパイラも同様に、内部的な型チェックや最適化のヒントを与えるために#pragmaを使用しています。
varargckは、Goコンパイラが内部的に使用する静的解析ツールの一部であり、printfスタイルの関数呼び出しにおける型安全性を保証します。このツールは、#pragma varargckディレクティブで定義されたルールに基づいて、フォーマット文字列と引数の型を照合します。
具体的に追加された#pragma varargck type "lN" Node*は、以下のことを意味します。
type: これは、特定のフォーマット指定子とそれに対応する引数の型を関連付けるルールを定義することを示します。"lN": これは、フォーマット文字列内で使用される新しいフォーマット指定子です。%lNという形で使用されることを想定しています。Node*: これは、%lNフォーマット指定子に対応する引数が、Node構造体へのポインタ型(Node*)でなければならないことを示します。
この変更により、Goコンパイラのソースコード内で、例えばfmt.Printf("debug: node is %lN\n", someNodePtr)のような記述があった場合、varargckはsomeNodePtrがNode*型であることを期待し、もし異なる型が渡された場合にはコンパイル時に警告またはエラーを生成するようになります。これにより、コンパイラ自体のデバッグ出力や内部ログの信頼性と安全性が向上します。
この修正は、Goコンパイラの開発者が、ASTノードの情報をより柔軟かつ安全にデバッグ出力できるようにするための、細かではあるが重要な改善です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/gc/go.h
+++ b/src/cmd/gc/go.h
@@ -1315,6 +1315,7 @@ void zname(Biobuf *b, Sym *s, int t);
#pragma varargck type "L" int
#pragma varargck type "L" uint
#pragma varargck type "N" Node*
+#pragma varargck type "lN" Node*
#pragma varargck type "O" uint
#pragma varargck type "P" Prog*
#pragma varargck type "Q" Bits
コアとなるコードの解説
変更はsrc/cmd/gc/go.hファイルに1行追加されただけです。
src/cmd/gc/go.hは、Goコンパイラのガベージコレクタ(gc)部分で使用されるヘッダーファイルです。このファイルには、コンパイラの内部構造体、関数プロトタイプ、そして#pragmaディレクティブのようなコンパイラ指示が含まれています。
追加された行は以下の通りです。
#pragma varargck type "lN" Node*
この行は、Goコンパイラのvarargckツールに対して、新しい型チェックルールを登録しています。
#pragma varargck:varargckツールに対する指示であることを示します。type: 特定のフォーマット指定子と引数の型を関連付けるルールを定義します。"lN": 新しいフォーマット指定子です。Goコンパイラの内部で、printfのような関数で%lNというフォーマットが使われた場合、このルールが適用されます。Node*:%lNに対応する引数がNode構造体へのポインタ型(Node*)であることを期待します。
これにより、コンパイラの開発者がデバッグやログ出力のためにNode*型の値を%lNフォーマットで出力する際に、コンパイラがその型の一致を静的にチェックできるようになり、誤った型が渡されることによる潜在的なバグを防ぐことができます。
関連リンク
- Go CL 5476049: https://golang.org/cl/5476049
参考にした情報源リンク
- Go言語の
varargckに関する議論(GoのIssueトラッカーなど) - Goコンパイラのソースコード(特に
src/cmd/gcディレクトリ) - C言語の
#pragmaディレクティブに関する一般的な情報 - 抽象構文木(AST)に関する一般的な情報
printfフォーマット指定子に関する一般的な情報- Go言語の
fmtパッケージのドキュメント (Goのフォーマット指定子の理解のため) - Go言語のコンパイラ設計に関する記事やドキュメント```markdown
[インデックス 10712] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラのガベージコレクタ(gc)関連のコードにおいて、可変長引数チェック(varargck)に新たなフォーマット指定子 %lN を追加するものです。具体的には、src/cmd/gc/go.h ファイルに #pragma varargck type "lN" Node* という行が追加されています。
コミット
commit d56ca13c03b16eeeb3eb7cd379a2d05b9b9e4a2a
Author: Lucio De Re <lucio.dere@gmail.com>
Date: Mon Dec 12 15:42:02 2011 -0500
gc: add varargck for %lN
R=golang-dev
CC=golang-dev, rsc
https://golang.org/cl/5476049
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/d56ca13c03b16eeeb3eb7cd379a2d05b9b9e4a2a
元コミット内容
gc: add varargck for %lN
変更の背景
この変更は、Goコンパイラの内部ツールであるvarargckが、特定のフォーマット文字列と引数の型の一致をチェックする際に、新たなパターン %lN を認識できるようにするためのものです。varargckは、printfのような可変長引数関数において、フォーマット文字列と実際に渡される引数の型が一致しているかをコンパイル時に検証するためのメカニズムです。
Goコンパイラの開発過程において、内部的なデバッグ出力やログ記録の際に、Node* 型のポインタを特定のフォーマット %lN で出力する必要が生じたと考えられます。既存のvarargckのルールではこのパターンが認識されず、コンパイル時に警告やエラーが発生する可能性があったため、これを正しく処理できるようにするための修正です。これにより、コンパイラ開発者はより安全に、かつ意図した通りにNode*型の情報をデバッグ出力できるようになります。
前提知識の解説
Goコンパイラとgc
Go言語の公式コンパイラは、初期にはgc(Go Compiler)という名前で知られていました。これはGo言語自体で書かれており、Goプログラムを機械語に変換する役割を担います。src/cmd/gcディレクトリは、このコンパイラの主要な部分を構成しています。
varargck (可変長引数チェック)
varargckは、C言語のprintfやGo言語のfmt.Printfのような可変長引数関数において、フォーマット文字列と引数の型が一致しているかをコンパイル時にチェックするための仕組みです。これにより、実行時エラー(例えば、整数を期待しているところに文字列を渡してしまうなど)を防ぐことができます。
Goコンパイラのソースコード内では、#pragma varargckディレクティブが使用されています。これは、コンパイラに対する指示であり、特定の関数やフォーマット指定子に対して型チェックのルールを定義するために使われます。
例:
#pragma varargck type "N" Node*
これは、「フォーマット文字列中に%Nが出現した場合、対応する引数はNode*型でなければならない」というルールを定義しています。
フォーマット指定子
フォーマット指定子(Format Specifier)は、printfのような関数で文字列を整形する際に、変数の値をどのように表示するかを指示する記号です。例えば、%dは整数、%sは文字列を表します。
このコミットで追加された%lNは、Goコンパイラ内部で定義されたカスタムのフォーマット指定子であり、特定の型(この場合はNode*)の値を表示するために使われます。lは、おそらく「long」や「large」のような修飾子で、NはNode*型を指す慣習的な記号であると推測されます。
Node*型
Goコンパイラにおいて、Nodeは抽象構文木(Abstract Syntax Tree, AST)のノードを表す構造体である可能性が高いです。ASTは、ソースコードを解析して得られるプログラムの構造を木構造で表現したものです。コンパイラはASTを操作して、型チェック、最適化、コード生成などを行います。Node*はそのノードへのポインタを意味します。
技術的詳細
このコミットは、Goコンパイラのsrc/cmd/gc/go.hファイルに、#pragma varargck type "lN" Node*という新しいpragmaディレクティブを追加しています。
#pragmaディレクティブは、コンパイラに対して特別な指示を与えるためのものです。C言語の標準には含まれていませんが、多くのコンパイラが拡張として提供しています。Goコンパイラも同様に、内部的な型チェックや最適化のヒントを与えるために#pragmaを使用しています。
varargckは、Goコンパイラが内部的に使用する静的解析ツールの一部であり、printfスタイルの関数呼び出しにおける型安全性を保証します。このツールは、#pragma varargckディレクティブで定義されたルールに基づいて、フォーマット文字列と引数の型を照合します。
具体的に追加された#pragma varargck type "lN" Node*は、以下のことを意味します。
type: これは、特定のフォーマット指定子とそれに対応する引数の型を関連付けるルールを定義することを示します。"lN": これは、フォーマット文字列内で使用される新しいフォーマット指定子です。%lNという形で使用されることを想定しています。Node*: これは、%lNフォーマット指定子に対応する引数が、Node構造体へのポインタ型(Node*)でなければならないことを示します。
この変更により、Goコンパイラのソースコード内で、例えばfmt.Printf("debug: node is %lN\n", someNodePtr)のような記述があった場合、varargckはsomeNodePtrがNode*型であることを期待し、もし異なる型が渡された場合にはコンパイル時に警告またはエラーを生成するようになります。これにより、コンパイラ自体のデバッグ出力や内部ログの信頼性と安全性が向上します。
この修正は、Goコンパイラの開発者が、ASTノードの情報をより柔軟かつ安全にデバッグ出力できるようにするための、細かではあるが重要な改善です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/gc/go.h
+++ b/src/cmd/gc/go.h
@@ -1315,6 +1315,7 @@ void zname(Biobuf *b, Sym *s, int t);
#pragma varargck type "L" int
#pragma varargck type "L" uint
#pragma varargck type "N" Node*
+#pragma varargck type "lN" Node*
#pragma varargck type "O" uint
#pragma varargck type "P" Prog*
#pragma varargck type "Q" Bits
コアとなるコードの解説
変更はsrc/cmd/gc/go.hファイルに1行追加されただけです。
src/cmd/gc/go.hは、Goコンパイラのガベージコレクタ(gc)部分で使用されるヘッダーファイルです。このファイルには、コンパイラの内部構造体、関数プロトタイプ、そして#pragmaディレクティブのようなコンパイラ指示が含まれています。
追加された行は以下の通りです。
#pragma varargck type "lN" Node*
この行は、Goコンパイラのvarargckツールに対して、新しい型チェックルールを登録しています。
#pragma varargck:varargckツールに対する指示であることを示します。type: 特定のフォーマット指定子と引数の型を関連付けるルールを定義します。"lN": 新しいフォーマット指定子です。Goコンパイラの内部で、printfのような関数で%lNというフォーマットが使われた場合、このルールが適用されます。Node*:%lNに対応する引数がNode構造体へのポインタ型(Node*)であることを期待します。
これにより、コンパイラの開発者がデバッグやログ出力のためにNode*型の値を%lNフォーマットで出力する際に、コンパイラがその型の一致を静的にチェックできるようになり、誤った型が渡されることによる潜在的なバグを防ぐことができます。
関連リンク
- Go CL 5476049: https://golang.org/cl/5476049
参考にした情報源リンク
- Go言語の
varargckに関する議論(GoのIssueトラッカーなど) - Goコンパイラのソースコード(特に
src/cmd/gcディレクトリ) - C言語の
#pragmaディレクティブに関する一般的な情報 - 抽象構文木(AST)に関する一般的な情報
printfフォーマット指定子に関する一般的な情報- Go言語の
fmtパッケージのドキュメント (Goのフォーマット指定子の理解のため) - Go言語のコンパイラ設計に関する記事やドキュメント