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[インデックス 10764] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のリポジトリにおけるベンチマークテストのファイル群を、test/benchディレクトリからtest/bench/shootoutディレクトリへ移動させるものです。この移動は、主にファイル整理と、ベンチマークテストの特定のカテゴリ(The Computer Language Benchmarks Game、通称Shootout)を明確に分離することを目的としています。

コミット

commit bcbb2f93eebcde483291481b9f3d80077959c0be
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Dec 13 17:46:54 2011 -0500

    test/bench: move to test/bench/shootout
    
    R=golang-dev, r, gri, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5487067

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/bcbb2f93eebcde483291481b9f3d80077959c0be

元コミット内容

test/benchディレクトリ内のベンチマークテスト関連ファイルをtest/bench/shootoutディレクトリへ移動。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のベンチマークテストの組織化と、特定のベンチマークスイートである「The Computer Language Benchmarks Game」(通称Shootout)の明確な分離があります。

Go言語の初期段階では、様々なベンチマークテストがtest/benchディレクトリに直接配置されていました。しかし、プロジェクトが成長し、ベンチマークの数が増えるにつれて、より体系的な整理が必要となりました。特に、The Computer Language Benchmarks Gameは、異なるプログラミング言語間のパフォーマンスを比較するための標準的なベンチマークセットであり、Go言語のパフォーマンス特性を評価する上で重要な役割を果たしていました。

このコミットは、これらのShootoutベンチマークを専用のサブディレクトリshootoutに移動することで、以下の目的を達成しようとしています。

  1. 明確な分類: Shootoutベンチマークと、Go言語固有の他のベンチマーク(もしあれば)を区別し、コードベースの可読性と保守性を向上させる。
  2. テスト実行の効率化: 特定のベンチマークセットのみを実行する際に、パスの指定を容易にする。
  3. 将来的な拡張性: test/benchディレクトリが、Shootout以外の新しいベンチマークカテゴリや、より一般的なベンチマークテストのために利用できるようになる。

この変更は、Go言語のテストインフラストラクチャが成熟していく過程の一部であり、コードベースの健全性を維持するための典型的なリファクタリングの一例と言えます。

前提知識の解説

ベンチマークテスト

ベンチマークテストとは、プログラムやシステムの性能を測定し、評価するためのテストです。特定のタスクを実行するのにかかる時間、使用するメモリ量、CPU使用率などを計測し、異なる実装や環境間での比較を可能にします。ソフトウェア開発においては、性能ボトルネックの特定、最適化の効果測定、リグレッション(性能劣化)の検出などに不可欠です。

The Computer Language Benchmarks Game (Shootout)

「The Computer Language Benchmarks Game」は、異なるプログラミング言語の実装が、一連の標準的なアルゴリズム(例: N-bodyシミュレーション、Fannkuch-Redux、Mandelbrot集合など)をどれだけ効率的に実行できるかを比較するためのプロジェクトです。元々は「Great Computer Language Shootout」として知られていました。

このプロジェクトの目的は、特定の言語が「速い」か「遅い」かを単純に判断することではなく、各言語の典型的な実装が、与えられた問題に対してどのようなパフォーマンス特性を示すかを実証することにあります。参加する各言語は、同じ問題に対して複数の実装(例: 並列処理版、最適化版など)を提供することが多く、これにより言語の特性やイディオムがパフォーマンスにどう影響するかが浮き彫りになります。

Go言語もこのベンチマークゲームに参加しており、その結果はGoのパフォーマンス特性を理解する上で重要な情報源となっています。このコミットで移動されたファイル群は、まさにこのThe Computer Language Benchmarks GameのGo言語実装に該当します。

src/run.bash

src/run.bashは、Go言語のビルドシステムやテストスイートの一部として機能するシェルスクリプトです。Go言語のソースコードをコンパイルし、テストを実行し、ベンチマークを走らせるなど、開発プロセスにおける様々な自動化されたタスクを管理するために使用されます。このスクリプトは、Go言語の環境設定、依存関係の解決、そしてテストの実行パスの指定など、Goプロジェクトの全体的な健全性を保証する上で中心的な役割を担っています。

技術的詳細

このコミットの主要な技術的変更は、ファイルシステムの構造変更と、それに伴う参照パスの更新です。

  1. ディレクトリ構造の変更:

    • test/benchディレクトリ直下に存在していた多数のベンチマーク関連ファイル(Goソースコード、Cソースコード、Makefile、テキストファイル、ログファイルなど)が、新しく作成されたtest/bench/shootoutサブディレクトリに移動されました。
    • これは、Gitのrename操作として記録されており、ファイルの内容自体は変更されていないことを示しています(ただし、一部のGoファイルでは後述の軽微な変更があります)。
  2. src/run.bashの更新:

    • ベンチマークテストを実行するためのシェルスクリプトsrc/run.bash内で、test/benchディレクトリを参照していた箇所がtest/bench/shootoutに変更されました。
    • 具体的には、xcd ../test/benchというコマンドがxcd ../test/bench/shootoutに修正されています。これは、スクリプトがベンチマークテストを実行する際に、正しいディレクトリに移動するようにするための必須の変更です。xcdはGoのビルドシステム内で定義されたカスタムのcdコマンドのラッパーである可能性があります。
  3. Goソースコード内の軽微な変更:

    • いくつかのGoファイル(chameneosredux.go, fasta.go, meteor-contest.go, nbody.go, regex-dna-parallel.go, threadring.go)において、ファイル移動とは直接関係のない、主にコードのフォーマットに関する軽微な変更が含まれています。
    • これらの変更は、インデントの調整、空白の追加/削除、または行末のコメントの位置調整など、Goの標準的なフォーマットツール(gofmtなど)によって自動的に適用されるような性質のものです。機能的な変更は含まれていません。これは、ファイル移動の際にgofmtが実行されたか、あるいはコミット作成者が手動でフォーマットを修正した結果と考えられます。

このコミットは、機能的な変更を伴わない純粋なリファクタリングであり、コードベースの整理と保守性の向上に貢献しています。特に、src/run.bashのパス変更は、このファイル移動がビルドおよびテストプロセスに与える影響を最小限に抑えるための重要な調整です。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットのコアとなる変更は、以下の2点に集約されます。

  1. ディレクトリのリネーム:

    • test/bench/以下のほとんどのファイルがtest/bench/shootout/に移動(リネーム)されました。
    • 例: test/bench/Makefile -> test/bench/shootout/Makefile
  2. src/run.bashのパス修正:

    • src/run.bash内のベンチマーク実行パスが変更されました。
    --- a/src/run.bash
    +++ b/src/run.bash
    @@ -101,7 +101,7 @@ do
     done
     
     [ "$GOARCH" == arm ] ||
    -(xcd ../test/bench
    +(xcd ../test/bench/shootout
     ./timing.sh -test
     ) || exit $?
    
  3. Goソースコード内の軽微なフォーマット変更:

    • test/bench/chameneosredux.go (-> test/bench/shootout/chameneosredux.go)
    • test/bench/fasta.go (-> test/bench/shootout/fasta.go)
    • test/bench/meteor-contest.go (-> test/bench/shootout/meteor-contest.go)
    • test/bench/nbody.go (-> test/bench/shootout/nbody.go)
    • test/bench/regex-dna-parallel.go (-> test/bench/shootout/regex-dna-parallel.go)
    • test/bench/threadring.go (-> test/bench/shootout/threadring.go)

コアとなるコードの解説

src/run.bashの変更

この変更は、src/run.bashスクリプトがベンチマークテストを実行する際に、正しいディレクトリに移動するようにするためのものです。

  • - (xcd ../test/bench の行は、以前はtest/benchディレクトリに移動してtiming.sh -testを実行していました。
  • + (xcd ../test/bench/shootout の行は、新しいtest/bench/shootoutディレクトリに移動するように修正されています。

これにより、ファイルが移動された後も、ビルドシステムが正しくベンチマークテストを見つけて実行できるようになります。xcdは、Goのビルドスクリプト内で定義されたカスタム関数で、ディレクトリ変更とエラーチェックを同時に行うためのラッパーであると推測されます。

Goソースコード内のフォーマット変更

これらの変更は、機能的な意味合いを持たず、主にコードの可読性と一貫性を向上させるためのものです。

  • chameneosredux.go: 配列の初期化における要素のインデントが調整され、より整列された形式になっています。これは、Goのgofmtツールが推奨するスタイルに合わせたものと考えられます。

    // 変更前
    var complement = [...]int{
    	red | red<<2: red,
    	red | yellow<<2: blue,
    	red | blue<<2: yellow,
    	yellow | red<<2: blue,
    // ...
    }
    
    // 変更後
    var complement = [...]int{
    	red | red<<2:       red,
    	red | yellow<<2:    blue,
    	red | blue<<2:      yellow,
    	yellow | red<<2:    blue,
    // ...
    }
    
  • fasta.go: 定数宣言のインデントが調整されています。

    // 変更前
    	LookupSize  = 4096
    
    // 変更後
    	LookupSize          = 4096
    
  • meteor-contest.go: 不要な空行の削除や、コメントとコードの間の空白調整が見られます。

    // 変更前
    var max_solutions = flag.Int("n", 2100, "maximum number of solutions")
    
    -
    func boolInt(b bool) int8 {
    // ...
    
  • nbody.go: 構造体の初期化におけるフィールドのインデントが調整され、より読みやすくなっています。

    // 変更前
    	jupiter = Body{
    		x: 4.84143144246472090e+00,
    		y: -1.16032004402742839e+00,
    // ...
    	}
    
    // 変更後
    	jupiter = Body{
    		x:    4.84143144246472090e+00,
    		y:    -1.16032004402742839e+00,
    // ...
    	}
    
  • regex-dna-parallel.go: import文の順序が変更されています。Goのgoimportsツールは、標準ライブラリ、サードパーティライブラリ、プロジェクト内ライブラリの順にインポートをソートする傾向があります。この変更もその自動フォーマットの一部である可能性が高いです。

    // 変更前
    	"runtime"
    	"regexp"
    
    // 変更後
    	"regexp"
    	"runtime"
    
  • threadring.go: 演算子の周りの空白が調整されています。

    // 変更前
    	out <- n-1
    
    // 変更後
    	out <- n - 1
    

これらのGoファイルの変更は、機能に影響を与えるものではなく、コードのスタイルと一貫性を保つための一般的なプラクティスです。

関連リンク

参考にした情報源リンク