[インデックス 10880] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリsrc/pkg/os/exec
パッケージ内のテストファイルexec_test.go
に対して行われた変更を記録しています。具体的には、新しく追加されたテストがビルドを妨げていたため、そのテストの一部を一時的に無効化することでビルドが通るように修正しています。
コミット
exec: disable new test to fix build
TBR=bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5494075
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/355ed5da82d5bcf3cafd409c799ac694d69728f4
元コミット内容
commit 355ed5da82d5bcf3cafd409c799ac694d69728f4
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date: Mon Dec 19 14:09:12 2011 -0800
exec: disable new test to fix build
TBR=bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5494075
---
src/pkg/os/exec/exec_test.go | 6 ++++++\
1 file changed, 6 insertions(+)\
diff --git a/src/pkg/os/exec/exec_test.go b/src/pkg/os/exec/exec_test.go
index a015cbe96c..0358441f86 100644
--- a/src/pkg/os/exec/exec_test.go
+++ b/src/pkg/os/exec/exec_test.go
@@ -256,6 +256,12 @@ func TestHelperProcess(*testing.T) {\
fmt.Printf("ReadAll from fd 3: %v", err)\
os.Exit(1)\
}\
+ // TODO(bradfitz,iant): the rest of this test is disabled\
+ // for now. remove this block once we figure out why it fails.\
+ {\
+ os.Stderr.Write(bs)\
+ os.Exit(0)\
+ }\
// Now verify that there are no other open fds.\
var files []*os.File\
for wantfd := os.Stderr.Fd() + 2; wantfd <= 100; wantfd++ {\
変更の背景
このコミットの主な背景は、Go言語の標準ライブラリos/exec
パッケージに新しく追加されたテストが、何らかの理由でビルドプロセスを妨げていた(おそらくテストが失敗し、CI/CDパイプラインやローカルビルドが中断していた)ことです。開発者は、この問題を迅速に解決し、ビルドが正常に完了するようにするために、問題の原因となっているテストコードの一部を一時的に無効化する選択をしました。
コミットメッセージの「disable new test to fix build」という記述と、コード内のTODO
コメント「the rest of this test is disabled for now. remove this block once we figure out why it fails.」から、この変更が暫定的なものであることが明確に示されています。これは、テストの根本的な問題を解決するのではなく、緊急的にビルドを修正するための措置であったことを意味します。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語および一般的なプログラミングの概念に関する知識が必要です。
- Go言語の
os/exec
パッケージ:- 外部コマンドを実行するための機能を提供するパッケージです。例えば、シェルコマンドを実行したり、別のプログラムを起動したりする際に使用されます。
exec.Command
関数でコマンドを定義し、Cmd.Run()
やCmd.Start()
などで実行します。- 標準入力、標準出力、標準エラー出力のリダイレクトもサポートしています。
- Go言語の
testing
パッケージ:- Go言語の組み込みテストフレームワークです。テスト関数は
Test
で始まり、*testing.T
型の引数を取ります。 t.Error()
,t.Fatal()
などのメソッドを使ってテストの失敗を報告します。- ヘルパープロセス (Helper Process):
os/exec
パッケージのテストでは、テスト対象のプログラムが別のプロセスを起動するようなシナリオをテストするために、テストコード自体が「ヘルパープロセス」として動作する場合があります。これは、テスト対象のコードが外部プロセスを起動する際に、その外部プロセスがテストコードの一部として振る舞うように設定することで実現されます。通常、TestHelperProcess
のような関数が定義され、特定の環境変数(例:GO_TEST_HELPER_PROCESS
)が設定されている場合に、その関数が実行されるようにします。
- Go言語の組み込みテストフレームワークです。テスト関数は
- ファイルディスクリプタ (File Descriptors, FDs):
- Unix系OSにおいて、開かれたファイルやI/Oリソース(ソケット、パイプなど)を識別するためにカーネルがプロセスに割り当てる整数値です。
- 標準入力 (stdin) はFD 0、標準出力 (stdout) はFD 1、標準エラー出力 (stderr) はFD 2として予約されています。
os.Stdin
,os.Stdout
,os.Stderr
は、それぞれ標準入力、標準出力、標準エラー出力に対応する*os.File
型の変数です。os.File.Fd()
メソッドは、*os.File
オブジェクトに関連付けられたファイルディスクリプタを返します。
os.Exit(code int)
:- Goプログラムを終了させる関数です。引数
code
は終了ステータスを表し、通常0は成功、0以外はエラーを示します。
- Goプログラムを終了させる関数です。引数
os.Stderr.Write(b []byte)
:- 標準エラー出力にバイトスライス
b
の内容を書き込むメソッドです。
- 標準エラー出力にバイトスライス
TODO
コメント:- コードベースで将来的に対応が必要なタスクや未実装の機能を示すために使われる一般的なコメント規約です。通常、開発者の名前や日付、簡単な説明が含まれます。
- コードレビューの慣習:
TBR
(To Be Reviewed by): コードレビューを依頼する相手を示します。CC
(Carbon Copy): コードレビューの通知を受け取る関係者を示します。golang.org/cl/XXXXXXX
: Goプロジェクトで使われるGerrit Code Reviewシステムにおけるチェンジリスト(変更セット)のURLです。これは、特定の変更が提案され、レビューされた場所を示します。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/os/exec/exec_test.go
ファイル内のTestHelperProcess
関数に焦点を当てています。この関数は、os/exec
パッケージのテストにおいて、外部プロセスとして実行される部分を担っています。
変更前は、TestHelperProcess
内でファイルディスクリプタ3からデータを読み込み、その後の処理で他の開いているファイルディスクリプタを検証するロジックが続いていました。しかし、このコミットでは、ファイルディスクリプタ3からの読み込みが成功した直後に、以下のコードブロックが追加されています。
// TODO(bradfitz,iant): the rest of this test is disabled
// for now. remove this block once we figure out why it fails.
{
os.Stderr.Write(bs)
os.Exit(0)
}
この追加されたコードブロックは、以下の影響をもたらします。
- テストの早期終了:
os.Exit(0)
が呼び出されることで、TestHelperProcess
関数はそこで実行を終了します。これにより、その後に続く「Now verify that there are no other open fds.」というコメントに示されている、他のファイルディスクリプタの検証ロジックは実行されなくなります。 - デバッグ情報の出力:
os.Stderr.Write(bs)
は、ファイルディスクリプタ3から読み込んだバイトスライスbs
の内容を標準エラー出力に書き出します。これは、テストが失敗する原因を特定するためのデバッグ目的で追加されたと考えられます。bs
には、おそらくヘルパープロセスに渡されたデータが含まれており、その内容を確認することで問題の切り分けに役立てようとしたのでしょう。 - 一時的な無効化:
TODO
コメントが示すように、この変更は永続的なものではなく、テストが失敗する原因が特定され、修正された後に削除されるべき一時的な回避策です。これは、テストが特定の環境や条件下で予期せぬ振る舞いをしていた可能性を示唆しています。例えば、ファイルディスクリプタの継承、プロセスのライフサイクル、または並行処理に関する問題が考えられます。
このコミットは、開発プロセスにおける現実的な対応を示しています。つまり、問題の根本原因を特定して修正するまでに時間がかかる場合、一時的に問題のある部分を無効化して、他の開発作業やビルドプロセスが滞らないようにするというアプローチです。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/os/exec/exec_test.go
+++ b/src/pkg/os/exec/exec_test.go
@@ -256,6 +256,12 @@ func TestHelperProcess(*testing.T) {\
fmt.Printf("ReadAll from fd 3: %v", err)\
os.Exit(1)\
}\
+ // TODO(bradfitz,iant): the rest of this test is disabled\
+ // for now. remove this block once we figure out why it fails.\
+ {\
+ os.Stderr.Write(bs)\
+ os.Exit(0)\
+ }\
// Now verify that there are no other open fds.\
var files []*os.File\
for wantfd := os.Stderr.Fd() + 2; wantfd <= 100; wantfd++ {\
コアとなるコードの解説
変更はsrc/pkg/os/exec/exec_test.go
ファイルのTestHelperProcess
関数内、既存のif err != nil
ブロックの直後に追加されています。
// TODO(bradfitz,iant): the rest of this test is disabled
:- これはGoのコメント行です。
TODO
キーワードは、このコードが一時的なものであり、将来的に見直される必要があることを示します。括弧内のbradfitz,iant
は、このタスクを担当する、または関連する開発者の名前です。 - 「the rest of this test is disabled for now. remove this block once we figure out why it fails.」というメッセージは、このブロックがテストの残りの部分を無効化するためのものであり、テストが失敗する原因が判明し次第、このブロックを削除すべきであることを明確に指示しています。
- これはGoのコメント行です。
{ ... }
:- これは単なるコードブロックであり、スコープを区切るために使用されています。この場合は、コメントとそれに続く処理を論理的にグループ化する役割を果たしています。
os.Stderr.Write(bs)
:bs
は、このコードブロックの直前でファイルディスクリプタ3から読み込まれたバイトスライスです。- この行は、
bs
の内容を標準エラー出力に書き出します。これは、テストが失敗する原因をデバッグするために、ヘルパープロセスが受け取ったデータを確認できるようにするためのものです。
os.Exit(0)
:- この行が実行されると、現在のヘルパープロセスは終了コード0(成功)で直ちに終了します。
- これにより、
TestHelperProcess
関数の残りの部分(特に「Now verify that there are no other open fds.」とコメントされているファイルディスクリプタの検証ロジック)は実行されなくなります。これが「disable new test」の具体的な実装方法です。
この変更は、テストが失敗する根本原因を特定し、修正するまでの間、ビルドが中断しないようにするための緊急的な措置として機能しています。
関連リンク
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/355ed5da82d5bcf3cafd409c799ac694d69728f4
- Gerrit チェンジリスト: https://golang.org/cl/5494075
- このリンクは、Goプロジェクトがコードレビューに利用しているGerritシステム上のチェンジリストを示しています。このチェンジリストには、このコミットが作成されるまでの議論や、関連する変更履歴が含まれている可能性があります。
参考にした情報源リンク
- Go言語
os/exec
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/os/exec - Go言語
testing
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語
os
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/os - ファイルディスクリプタに関する一般的な情報 (例: Wikipediaなど)
- Go言語のテストにおけるヘルパープロセスに関する情報 (Goの公式ブログやテストに関する記事など)
- Gerrit Code Review Systemに関する情報 (Goプロジェクトの貢献ガイドなど)
TODO
コメントの慣習に関する一般的なプログラミング情報