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[インデックス 10922] ファイルの概要

コミット

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおけるFreeBSDおよびOpenBSD環境での問題を修正するものです。具体的には、src/make.bashスクリプト内でmake installコマンドをgomake installに置き換えることで、これらのオペレーティングシステムでのビルドの安定性と互換性を向上させています。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/a63262b6c0576e11bb45a3ba090b7666ed92d022

元コミット内容

commit a63262b6c0576e11bb45a3ba090b7666ed92d022
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Dec 20 20:37:58 2011 -0500

    build: fix for freebsd, openbsd

    TBR=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5505052

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のビルドプロセスがFreeBSDおよびOpenBSD環境で適切に動作しないという問題がありました。Go言語はクロスプラットフォーム対応を重視しており、様々なオペレーティングシステム上で一貫したビルド体験を提供することを目指しています。しかし、従来のmake installコマンドは、これらの特定のUnix系OSのmakeユーティリティの実装や挙動の違いにより、問題を引き起こしていた可能性があります。

makeユーティリティは、その歴史的経緯から、OSやディストリビューションによって細かな挙動やサポートする機能に差異があることが知られています。Goプロジェクトのビルドスクリプトが、これらの差異に起因する問題を抱えていたため、よりGoのビルドプロセスに特化し、クロスプラットフォームでの互換性を高めるためのgomakeというユーティリティの導入が必要とされました。これにより、FreeBSDやOpenBSDといった環境でも、Goのランタイム関連ファイルのインストールが確実に行われるように修正されました。

前提知識の解説

  • make: makeは、プログラムのコンパイルやインストールなどのビルドプロセスを自動化するためのユーティリティです。Makefileという設定ファイルに基づいて、依存関係を解決し、必要なコマンドを実行します。Unix系システムでは標準的に利用されるツールですが、その実装はOSによって異なる場合があります(例: GNU Make, BSD Make)。
  • gomake: このコミットの文脈におけるgomakeは、Go言語のビルドシステム内で使用される、makeコマンドのGo言語特化版またはラッパーであると推測されます。Goプロジェクトの特定のビルド要件や、異なるOS環境でのmakeの挙動の差異を吸収し、より安定したビルドプロセスを提供するために導入されたと考えられます。これは、Go言語の初期のビルドシステムにおいて、クロスプラットフォーム対応を強化するための内部的な工夫の一つであった可能性が高いです。現代のGoプロジェクトでは、go buildgo installといった公式ツールが主要なビルド手段となっていますが、このコミットが作成された2011年当時は、より低レベルなビルドスクリプトが用いられていました。
  • FreeBSD / OpenBSD: これらは、Unix系オペレーティングシステムの一種であり、特にサーバーや組み込みシステムで利用されます。Linuxとは異なるカーネルやユーザーランドを持っており、システムユーティリティの挙動にも違いがあることがあります。このため、一般的なビルドスクリプトがこれらのOSで問題なく動作するためには、特定の調整が必要となる場合があります。
  • GOROOT: Go言語のインストールディレクトリのルートパスを示す環境変数です。Goのツールチェインや標準ライブラリなどがこのディレクトリ以下に配置されます。ビルドスクリプトは、このGOROOT変数を利用して、Goのソースコードやツールにアクセスします。
  • runtime.h: Go言語のランタイム(実行時システム)に関連するヘッダーファイルです。Goプログラムの実行に必要な低レベルな機能やデータ構造の定義が含まれている可能性があります。このファイルは、GoのコンパイラやリンカがGoプログラムをビルドする際に参照されます。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Go言語のビルドプロセスにおけるmakeコマンドの互換性問題への対処です。

Go言語のビルドスクリプトであるsrc/make.bashは、Goのソースコードをコンパイルし、実行可能なバイナリやライブラリを生成する役割を担っています。このスクリプトの一部で、$GOROOT/src/pkg/runtimeディレクトリに移動し、./autogen.shを実行した後、make installコマンドを使用してruntime.hファイルをパッケージディレクトリにコピーする処理が行われていました。

しかし、FreeBSDやOpenBSDのような特定のUnix系OSでは、標準のmakeユーティリティが、Goのビルドスクリプトが期待する特定の挙動を示さなかったり、必要な機能が不足していたりする可能性がありました。例えば、make installが特定の引数を解釈できなかったり、ファイルコピーのパス解決に問題があったり、あるいは並列ビルドの挙動が異なったりすることが考えられます。

このような問題を回避し、Goのビルドプロセスをより堅牢にするために、Goプロジェクトは内部的にgomakeというユーティリティを導入しました。gomakeは、Goのビルドシステムが意図するmakeの挙動を保証するためのラッパーやカスタム実装であると推測されます。これにより、異なるOS環境下でもruntime.hのような重要なファイルが正しくインストールされ、Goのビルドが成功するようになります。

この変更は、Go言語が初期段階からクロスプラットフォーム対応を真剣に考えており、OSごとの細かな差異を吸収するための工夫を凝らしていたことを示しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/make.bashファイルの一箇所のみです。

--- a/src/make.bash
+++ b/src/make.bash
@@ -89,7 +89,7 @@ echo; echo; echo %%%% making runtime generated files %%%%; echo
 (
 	cd "$GOROOT"/src/pkg/runtime
 	./autogen.sh
-	make install  # copy runtime.h to pkg directory
+	gomake install  # copy runtime.h to pkg directory
 ) || exit 1

 if $USE_GO_TOOL; then

コアとなるコードの解説

変更されたコードブロックは、Goのランタイム関連ファイルを生成・インストールする部分です。

(
	cd "$GOROOT"/src/pkg/runtime
	./autogen.sh
	gomake install  # copy runtime.h to pkg directory
) || exit 1
  1. cd "$GOROOT"/src/pkg/runtime: このコマンドは、現在のディレクトリをGoのランタイムパッケージのソースディレクトリに移動します。GOROOT環境変数はGoのインストールルートを示しており、そこからsrc/pkg/runtimeへの相対パスで目的のディレクトリに到達します。
  2. ./autogen.sh: このスクリプトは、ランタイムパッケージ内で必要な自動生成ファイルを生成するために実行されます。これには、プラットフォーム固有のコードや、ビルド時に決定される定数などが含まれる可能性があります。
  3. gomake install: ここが今回の変更の核心です。以前はmake installが使用されていましたが、FreeBSDやOpenBSDでの互換性問題を解決するためにgomake installに変更されました。このコマンドは、runtime.hのような生成されたファイルを、Goのパッケージディレクトリ(pkgディレクトリ)にコピーする役割を担っています。gomakeを使用することで、Goのビルドシステムが期待する正確なインストール手順が、異なるOS環境下でも確実に実行されるようになります。
  4. ) || exit 1: この部分は、括弧内のコマンドブロック(cd, autogen.sh, gomake install)のいずれかが失敗した場合に、スクリプト全体の実行を終了(exit 1)させるためのシェルスクリプトの慣用句です。これにより、ビルドプロセス中にエラーが発生した場合に、それ以降の処理が不正な状態で続行されるのを防ぎます。

この変更は、Goのビルドシステムが、特定のOS環境におけるmakeコマンドの挙動の差異を吸収し、Goのランタイムが正しくビルド・インストールされることを保証するための重要な修正であったと言えます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (Goのビルドプロセス、環境変数GOROOTに関する一般的な情報)
  • makeユーティリティに関する一般的な情報 (GNU Make, BSD Makeの差異など)
  • FreeBSDおよびOpenBSDのシステムに関する一般的な情報
  • golang gomakeに関するWeb検索結果 (Goのビルドツールに関する一般的な議論)