[インデックス 10996] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトの2011年12月22日時点での週次スナップショット(weekly.2011-12-22
)を反映したものです。主な目的は、開発の進捗状況を文書化し、特に新しいビルドツールであるgo
コマンドの導入を含む、様々なパッケージやツールの変更点を開発者向けに公開することにあります。
コミット
commit 1a06b513e758355f769cd894782c34751ba5722d
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date: Fri Dec 23 14:28:01 2011 +1100
weekly.2011-12-22
R=dsymonds, r, r, rsc, adg, mikioh.mikioh
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5498074
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/1a06b513e758355f769cd894782c34751ba5722d
元コミット内容
このコミットのメッセージは簡潔に「weekly.2011-12-22」と記されており、これはGoプロジェクトが当時行っていた週次リリース(またはスナップショット)の一環であることを示しています。レビュー担当者(R=...)とCC(golang-dev)が明記されており、Goのコードレビュープロセスを経て取り込まれた変更であることがわかります。また、関連するGerritのチェンジリストへのリンク(https://golang.org/cl/5498074
)も含まれています。
変更の背景
このコミットは、Go言語がバージョン1.0のリリースに向けて活発に開発が進められていた時期のものです。当時のGoプロジェクトは、開発の進捗をコミュニティに共有するために「週次スナップショット」という形式で定期的に更新内容を公開していました。この週次スナップショットは、Go 1.0の正式リリース前の重要な開発段階における、言語、標準ライブラリ、ツールチェインの進化を反映するものでした。
特に、このコミットで言及されている「go
コマンド」の導入は、Go言語のビルドシステムにおける大きな転換点となります。それまでのGoプロジェクトはMakefileベースのビルドシステムを使用していましたが、Go 1.0に向けて、より統合され、使いやすいビルド・テスト・管理ツールとしてgo
コマンドが開発されていました。この週次スナップショットは、そのgo
コマンドが内部的に利用され始めたことを開発者に知らせる重要なマイルストーンでもあります。
また、.hgtags
ファイルの変更は、当時のGoプロジェクトがバージョン管理システムとしてMercurial(Hg)を使用していたことを示唆しています。後にGoプロジェクトはGitに移行しますが、この時点ではまだMercurialが使われており、タグの管理が行われていたことがわかります。
前提知識の解説
- Go言語の週次スナップショット: Go言語の初期開発段階において、プロジェクトは「週次スナップショット」という形で、毎週の変更内容をまとめた開発版を公開していました。これは、Go 1.0の安定版リリースに向けて、開発の透明性を高め、コミュニティからのフィードバックを早期に得るための仕組みでした。現在では、Goはより正式なリリースサイクル(半年ごとのメジャーリリースとパッチリリース)を採用しており、週次スナップショットの形式は廃止されています。
go
コマンド: Go言語の公式ツールチェインの中核をなすコマンドラインツールです。ソースコードのビルド(go build
)、テスト(go test
)、パッケージの管理(go get
)、ドキュメントの表示(go doc
)など、Go開発におけるほとんどのタスクをこのコマンド一つで実行できます。このコミットの時点ではまだ開発途上であり、Go 1.0でMakefileベースのビルドシステムを置き換えることが計画されていました。image/ycbcr
パッケージ: Goの標準ライブラリに含まれるimage
パッケージ群の一部で、Y'CbCrカラーモデルの画像を扱うための型と関数を提供します。Y'CbCrは、輝度(Y')と2つの色差成分(Cb、Cr)で色を表現するカラーモデルで、JPEGなどの画像フォーマットやビデオ処理で広く利用されます。testing
パッケージの*testing.B
型: Goの標準ライブラリtesting
パッケージは、ユニットテストとベンチマークテストを記述するための機能を提供します。*testing.T
型は通常のテスト関数(TestXxx
)に渡され、テストの実行制御や結果報告を行います。一方、*testing.B
型はベンチマークテスト関数(BenchmarkXxx
)に渡され、コードのパフォーマンス測定に特化した機能を提供します。このコミットでは、*testing.B
型が*testing.T
型と同様のメソッド(Print
,Error
,Fatal
など)を持つように拡張されたことが言及されており、ベンチマークテストの記述における利便性と一貫性が向上しました。- Mercurial (
hg
): Goプロジェクトは、初期には分散型バージョン管理システムであるMercurialを使用していました。.hgtags
ファイルはMercurialのリポジトリでタグを管理するために使用されるファイルです。後にGoプロジェクトはGitに移行しました。
技術的詳細
このコミットの主要な変更は、doc/devel/weekly.html
ファイルに2011年12月22日付けの週次スナップショットのリリースノートを追加したことです。このリリースノートには、以下の重要な変更点が含まれています。
-
image/ycbcr
パッケージの変更:- Y'CbCr画像を管理するための型が、より汎用的な
image
およびimage/color
パッケージに移動されました。これは、Goの画像処理ライブラリの設計をより一貫性のあるものにし、カラーモデルの抽象化を改善するためのリファクタリングです。既存のコードへの影響を軽減するため、gofix
ツールによる自動書き換えが提供されることが示唆されています。
- Y'CbCr画像を管理するための型が、より汎用的な
-
testing
パッケージの改善:- ベンチマーク実行時に使用される
testing.B
型が、通常のテストで使用されるtesting.T
型と同じメソッド(Print
,Error
,Fatal
など)を持つようになりました。これにより、ベンチマークテストの記述がより直感的になり、テストとベンチマークの間で一貫したエラー報告やログ出力のメカニズムが提供されます。
- ベンチマーク実行時に使用される
-
go
コマンドの導入:- Goプログラムのビルドとテストのための新しいコマンド「
go
」が追加されました。これは、Go 1.0で既存のMakefileベースのアプローチを置き換えることを目的とした、Goのビルドシステムにおける画期的な変更です。この時点ではまだ一般利用には推奨されていませんが、all.bash
スクリプト(Goプロジェクト全体のビルドスクリプト)では既に利用が開始されています。ユーザーが問題に遭遇した場合に備え、USE_GO_TOOL=false
環境変数を設定することでMakefileベースのビルドにフォールバックできるオプションも提供されています。
- Goプログラムのビルドとテストのための新しいコマンド「
-
その他の広範な変更:
- リリースノートには、上記以外にもGoの様々なパッケージやツールに対する多数の変更がリストアップされています。これには、
archive/zip
、build
、bytes
、cgo
、cmd/go
(go
コマンド自体への改善)、crypto
、doc
、encoding
、exp/ssh
、fmt
、gc
(Goコンパイラ)、go/ast
、go/build
(新しいビルドタグcgo
とnocgo
の追加)、go/doc
、go/printer
、go/scanner
、gob
、godoc
、goinstall
、govet
、html
、json
、ld
(リンカ)、math/big
、misc
、net
、os
、path
、runtime
、spec
、sql
、strconv
、syscall
、test/bench/go1
(Go 1ベンチマークスイートの最初のドラフト)、text/template
、time
など、多岐にわたる改善、バグ修正、新機能が含まれています。これらの変更は、Go言語の安定性、パフォーマンス、機能性を向上させるための継続的な取り組みを反映しています。
- リリースノートには、上記以外にもGoの様々なパッケージやツールに対する多数の変更がリストアップされています。これには、
コアとなるコードの変更箇所
このコミットの主要な変更は、以下のファイルに集中しています。
.hgtags
: Mercurialのタグ情報が更新されています。具体的には、weekly.2011-12-14
のタグが削除され、新しい週次スナップショットの準備が行われたことを示唆しています。doc/devel/weekly.html
: このファイルに、2011年12月22日付けの週次スナップショットに関する詳細なリリースノートが追加されています。このHTMLファイルは、Goプロジェクトの週ごとの開発進捗を開発者コミュニティに伝えるための主要なドキュメントです。
コアとなるコードの解説
doc/devel/weekly.html
は、Go言語プロジェクトの公式ドキュメントの一部であり、開発者向けの週次更新情報を提供するために使用されていました。このファイルはHTML形式で記述されており、各週のスナップショットで導入された主要な変更点、新機能、バグ修正、APIの変更などが箇条書きでまとめられています。
このコミットでは、既存の週次スナップショットのリストに新しいエントリ(2011-12-22
)が追加され、その週に行われた重要な変更(image/ycbcr
とtesting
パッケージの変更、go
コマンドの導入、その他多数のパッケージの更新)が詳細に記述されています。これにより、開発者はGoプロジェクトの最新の開発状況を容易に把握し、自身のコードを適応させることができました。
.hgtags
ファイルは、Mercurialリポジトリにおけるタグの管理に使用されるメタデータファイルです。このファイルへの変更は、新しい週次スナップショットのリリースに伴い、リポジトリの特定のコミットにタグが付けられたり、既存のタグが更新されたりしたことを示しています。
関連リンク
- Gerrit チェンジリスト: https://golang.org/cl/5498074
参考にした情報源リンク
- Go言語のリリース履歴に関する情報: https://go.dev/doc/devel/release
- Go言語の
testing
パッケージに関するドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語の
image/ycbcr
パッケージに関するドキュメント: https://pkg.go.dev/image/ycbcr - Go言語の
go
コマンドに関するドキュメント: https://go.dev/cmd/go/ - GoプロジェクトのMercurialからGitへの移行に関する情報 (一般的な情報源):