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[インデックス 11037] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメントに「Slices: usage and internals」という新しい記事を追加するものです。この記事は、Go言語におけるスライスの利用方法と内部構造について詳細に解説しており、元々は2011年1月5日にGo公式ブログで公開されたものです。Go言語の重要なデータ構造であるスライスについて、その基本的な概念から、配列との関係、内部表現、そしてcopyappendといった組み込み関数を使った操作、さらには潜在的な「落とし穴」とその回避策までを網羅しています。

コミット

commit 94439492077c16876c1243221923f51cb237627c
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Fri Jan 6 09:21:43 2012 +1100

    doc: add Slices: usage and internals article
    
    Originally published on the Go blog on 5 Jan 2011:
    http://blog.golang.org/2011/01/go-slices-usage-and-internals.html
    
    R=golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5516046

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/94439492077c16876c1243221923f51cb237627c

元コミット内容

doc: add Slices: usage and internals article

Originally published on the Go blog on 5 Jan 2011:
http://blog.golang.org/2011/01/go-slices-usage-and-internals.html

R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5516046

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語におけるスライスの重要性と、その理解を深める必要性がありました。スライスはGo言語で非常に頻繁に使用されるデータ構造であり、他の言語の配列とは異なる独自の特性を持っています。そのため、開発者がスライスを効果的かつ安全に利用するためには、その動作原理と内部構造を深く理解することが不可欠です。

元々Go公式ブログで公開されていた記事を公式ドキュメントに含めることで、Go言語の学習者がよりアクセスしやすい形で、スライスに関する包括的な情報を提供することが目的です。これにより、Go言語の普及と、より堅牢なアプリケーション開発の促進に貢献します。

前提知識の解説

このコミットで追加される記事を理解するためには、以下のGo言語に関する基本的な知識が前提となります。

  • Go言語の基本的な構文: 変数宣言、関数定義、制御構造(forループ、if文など)。
  • 配列 (Arrays): Go言語における配列は、固定長で型が指定された要素のシーケンスです。配列の長さは型の一部であり、一度宣言されると変更できません。配列は値型であり、代入や関数への引数として渡される際には内容がコピーされます。
  • ポインタ: Go言語におけるポインタの基本的な概念。スライスが内部的に配列へのポインタを持つため、その動作を理解する上で重要です。
  • 組み込み関数: len (長さの取得)、cap (容量の取得)、make (スライスの作成)、copy (スライスのコピー)、append (スライスへの要素追加) といったGo言語の組み込み関数の基本的な使い方。
  • ガベージコレクション: Go言語のメモリ管理メカニズム。スライスが参照する基底配列がガベージコレクタによって解放されるタイミングを理解する上で、スライスの「落とし穴」のセクションで関連します。

技術的詳細

追加された記事「Slices: usage and internals」は、Go言語のスライスについて以下の技術的側面を詳細に解説しています。

  1. 配列との関係:

    • スライスはGoの配列型の上に構築された抽象化であると説明されています。
    • 配列が固定長であるのに対し、スライスは長さが指定されない型 ([]T) である点が強調されています。
    • スライスは既存の配列や他のスライスを「スライス」することで作成できることが示されています。
  2. スライスの内部構造:

    • スライスは、基底配列へのポインタ、スライスの長さ (length)、そして容量 (capacity) の3つの要素からなるディスクリプタ(構造体)として表現されます。
    • 長さ (Length): スライスが参照する要素の数。
    • 容量 (Capacity): 基底配列の、スライスのポインタが指す要素から始まる残りの要素の数。スライスが拡張できる最大値を示します。
    • スライスのスライス操作は、データのコピーを伴わず、新しいスライス値が元の配列を指すようにポインタと長さ、容量を調整するだけであるため、非常に効率的です。
  3. スライスの成長 (Growing Slices):

    • スライスは容量を超えて直接成長させることはできません。容量を増やすには、より大きな新しいスライスを作成し、元のスライスの内容をコピーする必要があります。
    • copy 関数: ソーススライスからデスティネーションスライスへデータをコピーするための組み込み関数。異なる長さのスライス間でも機能し、オーバーラップするスライスも正しく処理します。
    • append 関数: スライスに要素を追加するための組み込み関数。必要に応じてスライスの容量を自動的に増やし、新しいスライスを返します。複数の要素や他のスライスを結合する際にも使用できます。
  4. スライスの「落とし穴」:

    • スライスのスライス操作がデータのコピーを行わないため、元の大きな配列全体がメモリに保持され続ける可能性があるという「落とし穴」が指摘されています。これは、元の配列の一部だけが必要な場合でも、ガベージコレクタが配列全体を解放できない原因となることがあります。
    • この問題を解決するためには、必要なデータのみを新しいスライスにコピーしてから返す方法が推奨されています。
  5. コード例:

    • 配列の宣言と初期化、スライスの作成 (make、スライスリテラル、スライス操作)、copy関数の使用例、append関数の使用例など、具体的なGoコード例が豊富に提供されています。
    • 特に、AppendByteFilterFindDigitsCopyDigitsといったカスタム関数の実装例を通じて、スライスの操作やメモリ管理の考慮事項が示されています。

このコミットは、Go言語のコアなデータ構造であるスライスに関する深い理解を促進するための、非常に価値のあるドキュメントを追加しています。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットは主にドキュメントの追加であり、Go言語のランタイムやコンパイラといったコアなコードベースそのものに直接的な変更を加えるものではありません。しかし、ドキュメントの追加という観点では、以下のファイルがコアな変更箇所となります。

  • doc/Makefile: 新しい記事 (slices_usage_and_internals.html) をビルドプロセスに含めるための変更。
  • doc/articles/slices_usage_and_internals.html: スライスに関する記事のHTML形式の最終出力ファイル。
  • doc/articles/slices_usage_and_internals.tmpl: スライスに関する記事のテンプレートファイル。このファイルからHTMLが生成されます。
  • doc/articles/slice-*.png: 記事内で使用されるスライスの内部構造や操作を視覚的に説明するための画像ファイル群。
  • doc/progs/slices.go: 記事内で解説されるGoコード例を含むプログラムファイル。
  • doc/progs/run: slices.go のようなプログラム例を実行可能にするためのスクリプトへの変更。

これらの変更は、Go言語のドキュメント体系に新しいコンテンツを統合し、学習者がスライスについて学ぶためのリソースを拡充することを目的としています。

コアとなるコードの解説

このコミットにおける「コアとなるコード」は、Go言語のドキュメントシステムに組み込まれる新しい記事と、その記事内で使用されるGo言語のサンプルコードを指します。

  • doc/articles/slices_usage_and_internals.tmpl: このファイルは、Go言語のテンプレートエンジンによって処理され、最終的なHTMLドキュメント (.html ファイル) を生成するためのソースです。記事のテキストコンテンツ、コードブロック、画像への参照などが含まれています。Go言語のドキュメントは通常、このようなテンプレート形式で管理されており、一貫したスタイルと構造を保ちながらコンテンツを生成します。

  • doc/progs/slices.go: このGoファイルには、記事中でスライスの概念を説明するために用いられる具体的なコード例が含まれています。例えば、AppendByte関数(スライスの手動での拡張)、Filter関数(スライスからの要素のフィルタリング)、FindDigits関数とCopyDigits関数(スライスの「落とし穴」とその回避策)などが定義されています。これらのコード例は、読者がスライスの動作を実際に確認し、理解を深めるための実践的なリソースとなります。

    特に注目すべきは、AppendByte関数で示されるスライスの容量が不足した場合の再割り当てロジックです。これは、Goの組み込みappend関数が内部的に行っている処理の簡略化された例であり、スライスの効率的な成長メカニズムを理解する上で重要です。また、FindDigitsCopyDigitsの例は、スライスが基底配列を参照するという特性から生じるメモリリークの可能性と、それをcopy関数を使って回避する方法を具体的に示しており、Goプログラミングにおける重要なベストプラクティスを提示しています。

これらのファイルは、Go言語のドキュメントの品質と網羅性を向上させ、開発者がスライスという重要な概念をより深く理解するための基盤を提供します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • http://blog.golang.org/2011/01/go-slices-usage-and-internals.html (このコミットで追加された記事の元となったGo公式ブログの記事)
  • Go言語の公式ドキュメント (スライス、配列、組み込み関数に関する一般的な情報)
  • Go言語の仕様書 (スライスの型、長さと容量、組み込み関数の定義に関する詳細)
  • Go言語のソースコード (コミット内容の解析のため)