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[インデックス 11075] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のコマンドラインツールである cmd/go におけるFreeBSD環境でのビルド問題を修正するものです。具体的には、ビルド処理の並列度を制御する変数 par が予期せず 0 になる場合に発生する問題を解決し、ビルドが正常に完了するようにします。

コミット

commit 8cad9251b37606282e5ce8738afd0a5fa1838316
Author: Mikio Hara <mikioh.mikioh@gmail.com>
Date:   Tue Jan 10 14:47:20 2012 +0900

    cmd/go: fix freebsd build
    
    R=golang-dev, adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5530063

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/8cad9251b37606282e5ce8738afd0a5fa1838316

元コミット内容

cmd/go: fix freebsd build

R=golang-dev, adg
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5530063

変更の背景

Go言語のビルドツール cmd/go は、コンパイルやリンクといった処理を効率的に行うために、内部的に並列処理を利用しています。この並列度を制御する変数 par が、特定の条件下、特にFreeBSD環境において 0 になってしまう問題が発生していました。並列度が 0 のまま処理が続行されると、後続の処理でゼロ除算エラーが発生したり、処理が停止したりするなど、ビルドが正常に完了しない原因となっていました。

このコミットは、FreeBSD環境でのビルドの安定性を確保するために、par0 になるというエッジケースを明示的にハンドリングし、最低限の並列度(1)を保証することで、ビルドプロセスが中断することなく進行するように修正されました。

前提知識の解説

  • cmd/go: Go言語の公式ツールチェーンに含まれるコマンドラインツールで、Goプログラムのビルド、テスト、実行、パッケージ管理など、多岐にわたる機能を提供します。Go開発者にとって最も基本的なツールの一つです。
  • 並列処理 (Parallelism): 複数のタスクを同時に実行する計算モデルです。cmd/go のビルドプロセスでは、複数のパッケージのコンパイルや、依存関係のない処理を並行して実行することで、ビルド時間を短縮しています。
  • par 変数: このコミットで修正対象となっている par 変数は、cmd/go の内部でビルド処理の並列度を決定するために使用される変数です。通常、システムのCPUコア数や、go build コマンドに渡されるオプション(例: -p フラグは go test にはありますが、go build には直接的な並列度指定フラグはありません。しかし、内部的には並列処理が行われます)に基づいて値が設定されます。
  • FreeBSD: Unix系オペレーティングシステムの一つで、高性能かつ安定したサーバー環境や組み込みシステムで広く利用されています。Go言語はクロスプラットフォーム対応を重視しており、FreeBSDも公式にサポート対象のOSの一つです。
  • 防御的プログラミング (Defensive Programming): プログラムが予期せぬ入力や状態に遭遇した場合でも、クラッシュしたり誤動作したりすることなく、適切に処理を続行できるようにコードを記述する手法です。このコミットにおける par == 0 のチェックと par = 1 への設定は、防御的プログラミングの一例と言えます。

技術的詳細

cmd/go のビルドプロセスでは、builder 構造体の do メソッドがビルドの実行フローを管理しています。このメソッド内で、ビルドの並列度を決定するために par という変数が使用されます。par の初期値は buildP という別の変数から取得されますが、何らかの理由(特定の環境設定、あるいは初期化の不具合など)で buildP0 となり、結果として par0 になってしまうケースがFreeBSD環境で確認されました。

並列度が 0 の場合、多くの並列処理フレームワークやアルゴリズムでは、タスクのスケジューリングやリソースの割り当てにおいて問題が発生します。例えば、タスクを par で割るような処理がある場合、ゼロ除算エラーが発生します。また、並列処理を管理するゴルーチンやスレッドの数が 0 に設定されると、処理が全く進まなくなる可能性もあります。

このコミットでは、do メソッドの冒頭で par の値が 0 であるかをチェックし、もし 0 であれば強制的に 1 に設定するというシンプルな修正が加えられました。これにより、最低限の並列度(直列実行)が保証され、par0 であることによって引き起こされる潜在的な問題が回避されます。この修正は、FreeBSD環境におけるビルドの堅牢性を向上させることを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/cmd/go/build.go ファイルの builder 構造体の do メソッド内で行われました。

--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -449,6 +449,9 @@ func (b *builder) do(root *action) {
 	// drop the parallelism to 1, both to make the output
 	// deterministic and because there is no real work anyway.
 	par := buildP
+	if par == 0 {
+		par = 1
+	}
 	if buildN {
 		par = 1
 	}

コアとなるコードの解説

変更されたコードは以下の3行です。

if par == 0 {
    par = 1
}

このコードは、builder 構造体の do メソッドの冒頭、並列度 parbuildP から初期化された直後に挿入されています。

  • par := buildP: par 変数に buildP の値が代入され、ビルドの並列度が初期設定されます。buildP は、Goのビルドシステムが決定する推奨される並列度を示す変数です。
  • if par == 0: ここで、初期化された par の値が 0 であるかどうかをチェックします。
  • par = 1: もし par0 であった場合、その値を 1 に上書きします。これにより、並列度が少なくとも 1(つまり、直列実行)であることが保証され、0 による問題が回避されます。

この修正は、buildP0 を返すような予期せぬ状況(特にFreeBSD環境で発生したとされる)に対する防御的な措置であり、ビルドプロセスの安定性と信頼性を高めることに貢献しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク