[インデックス 11096] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるgo/scanner
パッケージのドキュメントにおける誤りを修正するものです。具体的には、scanner.Init
関数のmode
パラメータに関する説明から「不正な文字(illegal characters)」の記述を削除し、ドキュメントが実際の挙動と一致するように改善しています。
コミット
- コミットハッシュ:
2b6288113e0582ac323b1d7b28f4298f93dc7480
- 作者: Robert Griesemer gri@golang.org
- コミット日時: 2012年1月10日 火曜日 18:31:27 -0800
- 変更ファイル:
src/pkg/go/scanner/scanner.go
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/2b6288113e0582ac323b1d7b28f4298f93dc7480
元コミット内容
go/scanner: fix documentation
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5528070
変更の背景
この変更は、go/scanner
パッケージのInit
関数のドキュメントが、そのmode
パラメータの実際の機能と一致していなかったために行われました。以前のドキュメントでは、mode
パラメータがコメント、不正な文字、およびセミコロンの扱いを決定すると記述されていました。しかし、mode
パラメータはコメントとセミコロンの処理方法を制御するものの、不正な文字の処理には直接関与しません。不正な文字は、スキャナーが字句解析中に遭遇した際にエラーとして報告されるものであり、mode
設定によってその挙動が変更されるわけではありません。
この不正確な記述は、go/scanner
パッケージを使用する開発者に誤解を与える可能性がありました。そのため、ドキュメントの正確性を向上させ、ユーザーがInit
関数のmode
パラメータの役割を正しく理解できるようにするために、この修正が適用されました。
前提知識の解説
Go言語のgo/scanner
パッケージ
go/scanner
パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、Goのソースコードを字句解析(Lexical Analysis)またはトークン化(Tokenization)するために使用されます。これは、コンパイラやリンター、コードフォーマッターなどのツールがソースコードを処理する際の最初のステップです。スキャナーは、入力されたソースコードの文字列ストリームを読み込み、Go言語の文法規則に従って、意味のある最小単位である「トークン」(例: キーワード、識別子、演算子、リテラルなど)に分解します。
字句解析(Lexical Analysis)とトークン化(Tokenization)
字句解析は、プログラミング言語のソースコードを、コンパイラやインタプリタが理解できる形式に変換するプロセスの第一段階です。この段階では、ソースコードの連続した文字が、特定の意味を持つ「トークン」のシーケンスに変換されます。例えば、var x = 10;
というコードは、var
(キーワード)、x
(識別子)、=
(代入演算子)、10
(整数リテラル)、;
(セミコロン)といったトークンに分解されます。
scanner.Init
関数
go/scanner
パッケージのScanner
構造体は、字句解析を行うための主要なコンポーネントです。Init
関数は、このScanner
インスタンスを初期化するために使用されます。この関数は以下の引数を受け取ります。
file
: スキャン対象のソースコードが属するファイルの位置情報(token.File
型)。エラーメッセージの行番号などを正確に報告するために使用されます。src
: スキャン対象のソースコードのバイトスライス。err
: エラーハンドラ関数。スキャナーが構文エラーに遭遇した場合に呼び出されます。この関数がnil
でない場合、エラーが報告され、Scanner
のErrorCount
フィールドがインクリメントされます。mode
: スキャナーの動作を制御するためのビットマスク。このコミットの修正の中心となるパラメータです。
mode
パラメータの役割
mode
パラメータは、scanner
パッケージ内で定義されているいくつかの定数(フラグ)をビットOR演算子で組み合わせることで、スキャナーの特定の挙動を有効または無効にします。主なフラグには以下のようなものがあります。
ScanComments
: このフラグが設定されている場合、スキャナーはコメントを通常のトークンとして返します。通常、コメントはスキップされます。InsertSemis
: このフラグが設定されている場合、Go言語の自動セミコロン挿入規則に従って、適切な位置にセミコロンが自動的に挿入されます。SkipComments
: このフラグが設定されている場合、スキャナーはコメントをスキップし、トークンとして返しません。
「不正な文字(illegal characters)」の扱い
字句解析において「不正な文字」とは、プログラミング言語の文法規則に合致しない文字や文字シーケンスを指します。例えば、Go言語の識別子に許可されていない記号が含まれていたり、予期しないバイナリデータがソースコード中に存在したりする場合などです。スキャナーは、このような不正な文字に遭遇した場合、それをエラーとして認識し、Init
関数に渡されたエラーハンドラを通じて報告します。mode
パラメータは、これらの不正な文字をどのように「処理するか」を直接制御するものではなく、あくまでスキャナーが特定の字句要素(コメントやセミコロン)をどのように扱うかを調整するためのものです。不正な文字の検出と報告は、スキャナーの基本的なエラー処理メカニズムの一部として行われます。
技術的詳細
go/scanner
パッケージは、Go言語の字句規則に厳密に従って動作します。scanner.Init
関数は、スキャナーのインスタンスを設定し、その後のScan
メソッド呼び出しでトークンを生成する準備をします。
修正前のドキュメントでは、Init
関数のmode
パラメータについて以下のように記述されていました。
// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
この記述は、mode
が「不正な文字」の扱いを決定するという点で不正確でした。mode
パラメータは、ScanComments
やInsertSemis
といったフラグを通じて、コメントのトークン化の有無やセミコロンの自動挿入といった、Go言語の字句規則における特定のオプション挙動を制御します。
しかし、「不正な文字」の処理は、mode
パラメータの範疇ではありません。スキャナーが入力ストリームを処理する際、Go言語の字句規則に違反する文字シーケンス(例えば、予期しない記号や制御文字)に遭遇した場合、それは字句エラーとして扱われます。このエラーは、Init
関数に渡されたエラーハンドラ(err
)がnil
でなければ、そのハンドラを通じて報告され、Scanner
構造体のErrorCount
がインクリメントされます。このエラー報告のメカニズムは、mode
パラメータの設定とは独立して機能します。
したがって、このコミットは、ドキュメントがmode
パラメータの実際の機能範囲を正確に反映するように修正し、開発者がgo/scanner
パッケージの挙動について誤解するのを防ぐことを目的としています。これは、APIドキュメントの正確性を維持し、ライブラリの使いやすさを向上させる上で重要な変更です。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/go/scanner/scanner.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/pkg/go/scanner/scanner.go
+++ b/src/pkg/go/scanner/scanner.go
@@ -104,7 +104,7 @@ const (
// Calls to Scan will use the error handler err if they encounter a
// syntax error and err is not nil. Also, for each error encountered,
// the Scanner field ErrorCount is incremented by one. The mode parameter
-// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
+// determines how comments and semicolons are handled.
//
// Note that Init may call err if there is an error in the first character
// of the file.
コアとなるコードの解説
変更された行は、scanner.Init
関数のmode
パラメータに関するコメントです。
- 変更前:
// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
- 変更後:
// determines how comments and semicolons are handled.
この修正により、コメントから「, illegal characters,
」という部分が削除されました。これは、mode
パラメータが「不正な文字」の処理方法を決定するわけではないという事実を明確に示しています。mode
パラメータは、あくまでコメントの扱い(トークンとして含めるかスキップするか)とセミコロンの自動挿入の有無を制御するものです。この変更は、ドキュメントの正確性を高め、go/scanner
パッケージのInit
関数のmode
パラメータの実際の機能について、より正確な情報を提供します。
関連リンク
- Go CL 5528070: https://golang.org/cl/5528070
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント
go/scanner
パッケージ: https://pkg.go.dev/go/scanner - Go言語公式ドキュメント
go/token
パッケージ: https://pkg.go.dev/go/token (ファイル位置情報に関連するため) - Go言語の字句解析と構文解析に関する一般的な情報 (Go言語のコンパイラ設計に関する書籍や記事など)```markdown
[インデックス 11096] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるgo/scanner
パッケージのドキュメントにおける誤りを修正するものです。具体的には、scanner.Init
関数のmode
パラメータに関する説明から「不正な文字(illegal characters)」の記述を削除し、ドキュメントが実際の挙動と一致するように改善しています。
コミット
- コミットハッシュ:
2b6288113e0582ac323b1d7b28f4298f93dc7480
- 作者: Robert Griesemer gri@golang.org
- コミット日時: 2012年1月10日 火曜日 18:31:27 -0800
- 変更ファイル:
src/pkg/go/scanner/scanner.go
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/2b6288113e0582ac323b1d7b28f4298f93dc7480
元コミット内容
go/scanner: fix documentation
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5528070
変更の背景
この変更は、go/scanner
パッケージのInit
関数のドキュメントが、そのmode
パラメータの実際の機能と一致していなかったために行われました。以前のドキュメントでは、mode
パラメータがコメント、不正な文字、およびセミコロンの扱いを決定すると記述されていました。しかし、mode
パラメータはコメントとセミコロンの処理方法を制御するものの、不正な文字の処理には直接関与しません。不正な文字は、スキャナーが字句解析中に遭遇した際にエラーとして報告されるものであり、mode
設定によってその挙動が変更されるわけではありません。
この不正確な記述は、go/scanner
パッケージを使用する開発者に誤解を与える可能性がありました。そのため、ドキュメントの正確性を向上させ、ユーザーがInit
関数のmode
パラメータの役割を正しく理解できるようにするために、この修正が適用されました。
前提知識の解説
Go言語のgo/scanner
パッケージ
go/scanner
パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、Goのソースコードを字句解析(Lexical Analysis)またはトークン化(Tokenization)するために使用されます。これは、コンパイラやリンター、コードフォーマッターなどのツールがソースコードを処理する際の最初のステップです。スキャナーは、入力されたソースコードの文字列ストリームを読み込み、Go言語の文法規則に従って、意味のある最小単位である「トークン」(例: キーワード、識別子、演算子、リテラルなど)に分解します。
字句解析(Lexical Analysis)とトークン化(Tokenization)
字句解析は、プログラミング言語のソースコードを、コンパイラやインタプリタが理解できる形式に変換するプロセスの第一段階です。この段階では、ソースコードの連続した文字が、特定の意味を持つ「トークン」のシーケンスに変換されます。例えば、var x = 10;
というコードは、var
(キーワード)、x
(識別子)、=
(代入演算子)、10
(整数リテラル)、;
(セミコロン)といったトークンに分解されます。
scanner.Init
関数
go/scanner
パッケージのScanner
構造体は、字句解析を行うための主要なコンポーネントです。Init
関数は、このScanner
インスタンスを初期化するために使用されます。この関数は以下の引数を受け取ります。
file
: スキャン対象のソースコードが属するファイルの位置情報(token.File
型)。エラーメッセージの行番号などを正確に報告するために使用されます。src
: スキャン対象のソースコードのバイトスライス。err
: エラーハンドラ関数。スキャナーが構文エラーに遭遇した場合に呼び出されます。この関数がnil
でない場合、エラーが報告され、Scanner
のErrorCount
フィールドがインクリメントされます。mode
: スキャナーの動作を制御するためのビットマスク。このコミットの修正の中心となるパラメータです。
mode
パラメータの役割
mode
パラメータは、scanner
パッケージ内で定義されているいくつかの定数(フラグ)をビットOR演算子で組み合わせることで、スキャナーの特定の挙動を有効または無効にします。主なフラグには以下のようなものがあります。
ScanComments
: このフラグが設定されている場合、スキャナーはコメントを通常のトークンとして返します。通常、コメントはスキップされます。InsertSemis
: このフラグが設定されている場合、Go言語の自動セミコロン挿入規則に従って、適切な位置にセミコロンが自動的に挿入されます。SkipComments
: このフラグが設定されている場合、スキャナーはコメントをスキップし、トークンとして返しません。
「不正な文字(illegal characters)」の扱い
字句解析において「不正な文字」とは、プログラミング言語の文法規則に合致しない文字や文字シーケンスを指します。例えば、Go言語の識別子に許可されていない記号が含まれていたり、予期しないバイナリデータがソースコード中に存在したりする場合などです。スキャナーは、このような不正な文字に遭遇した場合、それをエラーとして認識し、Init
関数に渡されたエラーハンドラを通じて報告します。mode
パラメータは、これらの不正な文字をどのように「処理するか」を直接制御するものではなく、あくまでスキャナーが特定の字句要素(コメントやセミコロン)をどのように扱うかを調整するためのものです。不正な文字の検出と報告は、スキャナーの基本的なエラー処理メカニズムの一部として行われます。
技術的詳細
go/scanner
パッケージは、Go言語の字句規則に厳密に従って動作します。scanner.Init
関数は、スキャナーのインスタンスを設定し、その後のScan
メソッド呼び出しでトークンを生成する準備をします。
修正前のドキュメントでは、Init
関数のmode
パラメータについて以下のように記述されていました。
// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
この記述は、mode
が「不正な文字」の扱いを決定するという点で不正確でした。mode
パラメータは、ScanComments
やInsertSemis
といったフラグを通じて、コメントのトークン化の有無やセミコロンの自動挿入といった、Go言語の字句規則における特定のオプション挙動を制御します。
しかし、「不正な文字」の処理は、mode
パラメータの範疇ではありません。スキャナーが入力ストリームを処理する際、Go言語の字句規則に違反する文字シーケンス(例えば、予期しない記号や制御文字)に遭遇した場合、それは字句エラーとして扱われます。このエラーは、Init
関数に渡されたエラーハンドラ(err
)がnil
でなければ、そのハンドラを通じて報告され、Scanner
構造体のErrorCount
がインクリメントされます。このエラー報告のメカニズムは、mode
パラメータの設定とは独立して機能します。
したがって、このコミットは、ドキュメントがmode
パラメータの実際の機能範囲を正確に反映するように修正し、開発者がgo/scanner
パッケージの挙動について誤解するのを防ぐことを目的としています。これは、APIドキュメントの正確性を維持し、ライブラリの使いやすさを向上させる上で重要な変更です。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/go/scanner/scanner.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/pkg/go/scanner/scanner.go
+++ b/src/pkg/go/scanner/scanner.go
@@ -104,7 +104,7 @@ const (
// Calls to Scan will use the error handler err if they encounter a
// syntax error and err is not nil. Also, for each error encountered,
// the Scanner field ErrorCount is incremented by one. The mode parameter
-// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
+// determines how comments and semicolons are handled.
//
// Note that Init may call err if there is an error in the first character
// of the file.
コアとなるコードの解説
変更された行は、scanner.Init
関数のmode
パラメータに関するコメントです。
- 変更前:
// determines how comments, illegal characters, and semicolons are handled.
- 変更後:
// determines how comments and semicolons are handled.
この修正により、コメントから「, illegal characters,
」という部分が削除されました。これは、mode
パラメータが「不正な文字」の処理方法を決定するわけではないという事実を明確に示しています。mode
パラメータは、あくまでコメントの扱い(トークンとして含めるかスキップするか)とセミコロンの自動挿入の有無を制御するものです。この変更は、ドキュメントの正確性を高め、go/scanner
パッケージのInit
関数のmode
パラメータの実際の機能について、より正確な情報を提供します。
関連リンク
- Go CL 5528070: https://golang.org/cl/5528070
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント
go/scanner
パッケージ: https://pkg.go.dev/go/scanner - Go言語公式ドキュメント
go/token
パッケージ: https://pkg.go.dev/go/token (ファイル位置情報に関連するため) - Go言語の字句解析と構文解析に関する一般的な情報 (Go言語のコンパイラ設計に関する書籍や記事など)