[インデックス 11108] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ツールチェインの一部である cmd/go
ディレクトリ内の test.go
ファイルに対する変更です。具体的には、go test
コマンドのドキュメンテーションが修正されています。
コミット
cmd/go: fix test documentation
R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5529067
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/c7fdbeb6c1acc842dcbe756950e2773eb2419efc
元コミット内容
cmd/go: fix test documentation
R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5529067
変更の背景
このコミットは、go test
コマンドのドキュメンテーションを修正し、ユーザーに表示されるヘルプメッセージの正確性を向上させることを目的としています。主な変更点は以下の2つです。
go test
の出力例の更新: 以前のgo test
の出力例は、単にtest package/name
の形式でしたが、実際のgo test
コマンドの出力が進化し、テストの成功を示すok
ステータスと、テストにかかった時間(例:0.011s
)を含むようになったため、ドキュメントの例もそれに合わせて更新されました。これにより、ユーザーはより現実的な出力形式を事前に把握できるようになります。go compile
の参照削除:go test
のヘルプメッセージの「See also」(関連項目)セクションからgo compile
が削除されました。これは、go compile
が一般ユーザーが直接実行するコマンドではなく、Goツールチェインの内部で利用される低レベルなコマンドであるという認識を反映しています。ユーザーがGoプログラムをビルドする際には、通常go build
やgo install
を使用するため、ドキュメントからgo compile
を除くことで、ユーザーの混乱を避ける意図があります。
これらの変更は、Go言語のツールチェインが成熟していく過程で、ユーザーエクスペリエンスとドキュメンテーションの正確性を高めるための継続的な改善の一環として行われました。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語の基本的な概念とツールチェインに関する知識が必要です。
-
go test
コマンド:- Go言語に組み込まれているテストフレームワークを実行するためのコマンドです。
- Goのテストは、
_test.go
というサフィックスを持つファイルに記述され、TestXxx
という形式の関数として定義されます。 go test
は、指定されたパッケージ内のテスト関数を自動的に検出し、実行し、その結果(成功/失敗、実行時間など)を標準出力に表示します。- 初期のGoでは、
go test
の出力は比較的シンプルでしたが、時間の経過とともに、より詳細な情報(例: 実行時間)を含むように進化しました。
-
Goツールチェインの主要コマンド:
go build
: ソースコードをコンパイルして実行可能バイナリを生成します。通常、現在のディレクトリにバイナリが出力されます。go install
: ソースコードをコンパイルし、生成されたバイナリを$GOPATH/bin
または$GOBIN
にインストールします。これにより、システムパスを通してコマンドとして実行できるようになります。go vet
: Goソースコードの潜在的なバグや疑わしい構成を報告する静的解析ツールです。go compile
: これはgo tool compile
として内部的に使用されるコマンドであり、Goソースファイルをオブジェクトファイルにコンパイルする役割を担います。一般のGo開発者が直接このコマンドを使用することは稀で、通常はgo build
やgo install
のような高レベルなコマンドが内部でgo compile
を呼び出します。
-
Go言語のドキュメンテーション:
- Go言語は、コード内のコメントから自動的にドキュメントを生成する仕組み(
go doc
コマンドなど)を持っています。 cmd/go
ディレクトリ内の各サブコマンド(例:test
,build
など)は、そのコマンドの機能や使い方を説明するLong
フィールド(または同様のフィールド)を持っており、これがgo help <command>
で表示されるヘルプメッセージの元となります。このコミットは、このヘルプメッセージの内容を修正しています。
- Go言語は、コード内のコメントから自動的にドキュメントを生成する仕組み(
技術的詳細
このコミットの技術的な変更は、src/cmd/go/test.go
ファイル内の cmdTest
変数に定義されている Command
構造体の Long
フィールドの内容を更新することに集約されます。
cmdTest
は、go
コマンドの test
サブコマンドを定義する構造体です。この構造体には、コマンドの名前、短い説明、そして詳細なヘルプメッセージ(Long
フィールド)が含まれています。Long
フィールドは複数行の文字列リテラルで記述されており、go help test
コマンドを実行した際に表示されるテキストとなります。
変更された箇所は以下の通りです。
-
go test
出力例の更新:- 以前のドキュメントでは、
go test
の出力例としてtest archive/tar
のような形式が示されていました。 - このコミットでは、これを
ok archive/tar 0.011s
の形式に修正しています。これは、Goのテスト実行が成功した場合にok
というステータスと、テストにかかった時間(例:0.011s
)を表示するようになったことを反映しています。これにより、ドキュメントが実際のツールの挙動と一致し、ユーザーはより正確な情報を得られるようになりました。この変更は、go test
の出力が単なる成功/失敗の表示から、より詳細なパフォーマンス情報を含むように進化していることを示唆しています。
- 以前のドキュメントでは、
-
go compile
の参照削除:- 以前のドキュメントの「See also」セクションには、
go build
,go compile
,go vet
が含まれていました。 - このコミットでは、
go compile
がこのリストから削除されました。これは、go compile
がGoツールチェインの内部的なコンポーネントであり、一般のGo開発者が直接操作することを意図していないためです。ユーザーがGoプログラムをコンパイルする際には、通常go build
を使用します。この修正により、ドキュメントはユーザーにとってより関連性の高い情報のみを提供するようになりました。
- 以前のドキュメントの「See also」セクションには、
これらの変更は、Go言語のツールチェインのドキュメンテーションが、実際のツールの機能とユーザーの利用パターンに合わせて継続的に改善されていることを示しています。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/go/test.go
+++ b/src/cmd/go/test.go
@@ -35,9 +35,9 @@ var cmdTest = &Command{\n 'Go test' automates testing the packages named by the import paths.\n It prints a summary of the test results in the format:\n \n-\ttest archive/tar\n-\tFAIL archive/zip\n-\ttest compress/gzip
+\tok archive/tar 0.011s\n+\tFAIL archive/zip 0.022s\n+\tok compress/gzip 0.033s\n \t...\n \n followed by detailed output for each failed package.\n@@ -60,7 +60,7 @@ and the test binary.\n \n See 'go help importpath' for more about import paths.\n \n-See also: go build, go compile, go vet.\n+See also: go build, go vet.\n \t`,\n }\
コアとなるコードの解説
上記のコードスニペットは、src/cmd/go/test.go
ファイル内の cmdTest
変数に割り当てられている Command
構造体の Long
フィールドの一部を示しています。この Long
フィールドは、go help test
コマンドを実行した際に表示される詳細なヘルプテキストを定義しています。
-
go test
出力例の修正:-\ttest archive/tar -\tFAIL archive/zip -\ttest compress/gzip +\tok archive/tar 0.011s +\tFAIL archive/zip 0.022s +\tok compress/gzip 0.033s
この部分では、
go test
コマンドの出力例が更新されています。-
で始まる行は削除された古い例です。これらは単にtest package/name
の形式でした。+
で始まる行は追加された新しい例です。これらはok package/name time
の形式で、テストが成功したことを示すok
と、テストにかかった時間(例:0.011s
)が含まれています。FAIL
の行は変更されていませんが、時間表示が追加されています。 この変更により、ユーザーはgo test
の実際の出力形式をより正確に理解できるようになります。
-
go compile
の参照削除:-See also: go build, go compile, go vet. +See also: go build, go vet.
この部分では、「See also」(関連項目)セクションから
go compile
が削除されています。-
で始まる行は削除された古いリストです。+
で始まる行は追加された新しいリストです。 この変更は、go compile
が一般ユーザーが直接使用するコマンドではなく、Goツールチェインの内部的なコンポーネントであるという認識を反映しています。これにより、ユーザーはgo build
やgo vet
のような、より関連性の高いコマンドに焦点を当てることができます。
これらの変更は、Goツールチェインのドキュメンテーションの正確性とユーザーフレンドリーさを向上させるための、細かではあるが重要な改善です。
関連リンク
- Go Change List (CL) 5529067: https://go.dev/cl/5529067
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント (go.dev)
- Go言語の
go test
コマンドに関する情報 - Go言語のツールチェインに関する情報
- Web検索結果 (go test output format change golang 2012, go compile command removed golang)