[インデックス 11163] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるgo/doc
パッケージ内のheadscan.go
ファイルにおける未定義エラーを修正するものです。具体的には、doc.NewPackageDoc
関数の呼び出しが未定義となった問題に対応し、新しいAPIであるdoc.New
への移行を行っています。
コミット
pkg/go/doc: fix undefined: doc.NewPackageDoc in headscan.go
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/066551e49bc223b3b73704e47cc1e489e4c3292d
元コミット内容
commit 066551e49bc223b3b73704e47cc1e489e4c3292d
Author: Olivier Duperray <duperray.olivier@gmail.com>
Date: Fri Jan 13 16:45:30 2012 -0800
pkg/go/doc: fix undefined: doc.NewPackageDoc in headscan.go
R=golang-dev, bradfitz, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5539059
---
src/pkg/go/doc/headscan.go | 2 +-\n 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)\n
diff --git a/src/pkg/go/doc/headscan.go b/src/pkg/go/doc/headscan.go
index 838223be74..37486b126f 100644
--- a/src/pkg/go/doc/headscan.go
+++ b/src/pkg/go/doc/headscan.go
@@ -77,7 +77,7 @@ func main() {
return nil
}
for _, pkg := range pkgs {
- d := doc.NewPackageDoc(pkg, path)
+ d := doc.New(pkg, path, doc.Mode(0))
list := appendHeadings(nil, d.Doc)
for _, d := range d.Consts {
list = appendHeadings(list, d.Doc)
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語の標準ライブラリであるgo/doc
パッケージのAPI変更があります。以前のバージョンで使用されていたdoc.NewPackageDoc
関数が廃止または名称変更されたため、その関数を呼び出しているコードがコンパイルエラーを起こすようになりました。このコミットは、その未定義エラーを解消し、go/doc
パッケージの新しいAPIに準拠させることを目的としています。
go/doc
パッケージは、Goのソースコードからドキュメンテーションを生成するためのツールであり、コンパイラやその他の開発ツールによって利用されます。APIの変更は、通常、機能の改善、柔軟性の向上、または内部構造の整理のために行われます。この場合、doc.NewPackageDoc
からdoc.New
への移行は、より汎用的なドキュメント生成メカニズムへの変更を示唆しています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下の知識が役立ちます。
- Go言語: GoはGoogleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語です。並行処理に強く、シンプルで効率的なプログラミングを目的としています。
go/doc
パッケージ: Goの標準ライブラリの一部で、Goのソースコード(go/ast
パッケージで解析された抽象構文木)からドキュメンテーションを抽出・生成するための機能を提供します。go doc
コマンドやGoの公式ドキュメントサイト(pkg.go.devなど)の基盤となっています。*ast.Package
:go/ast
パッケージで定義される型で、Goのパッケージの抽象構文木(AST)を表します。go/doc
パッケージは、このASTを入力としてドキュメントを生成します。doc.NewPackageDoc
(旧API): このコミット以前にgo/doc
パッケージで利用されていた関数で、*ast.Package
とインポートパスを引数に取り、パッケージのドキュメント構造を生成していました。Go 1のリリースに伴い、より柔軟なdoc.New
関数に置き換えられました。doc.New
(新API): Go 1で導入されたgo/doc
パッケージの新しい関数で、*ast.Package
、インポートパス、そしてdoc.Mode
型のモード引数を取ります。このmode
引数により、生成されるドキュメントの範囲(例えば、エクスポートされた宣言のみか、すべての宣言を含むかなど)を制御できるようになりました。headscan.go
: このファイルはgo/doc
パッケージの一部であり、おそらくドキュメント生成プロセスにおいて、ソースコードのヘッダー部分をスキャンし、ドキュメントコメントを抽出する役割を担っていたと考えられます。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、go/doc
パッケージのAPI変更への適応に集約されます。
以前のコードでは、doc.NewPackageDoc(pkg, path)
という形式でパッケージドキュメントオブジェクトを生成していました。しかし、go/doc
パッケージの進化に伴い、この関数は廃止され、代わりにdoc.New
関数が導入されました。
doc.New
関数は、従来の*ast.Package
とpath
に加えて、doc.Mode
型の追加引数を必要とします。このdoc.Mode
は、ドキュメント生成の振る舞いを制御するためのビットフラグのセットです。例えば、doc.AllDecls
モードを指定すると、エクスポートされていない(非公開の)宣言もドキュメントに含めることができます。
このコミットでは、doc.NewPackageDoc(pkg, path)
の呼び出しをdoc.New(pkg, path, doc.Mode(0))
に置き換えています。ここでdoc.Mode(0)
は、デフォルトのドキュメント生成モードを指定しています。これは、おそらく以前のdoc.NewPackageDoc
のデフォルトの振る舞いを維持するためのものです。この変更により、headscan.go
はgo/doc
パッケージの最新のAPIに準拠し、コンパイルエラーが解消されます。
この修正は、Go言語の進化とAPIの安定化の過程で発生する一般的なパターンを示しています。ライブラリの改善や機能拡張のためにAPIが変更されることがあり、それに応じて既存のコードも更新する必要があります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/go/doc/headscan.go
+++ b/src/pkg/go/doc/headscan.go
@@ -77,7 +77,7 @@ func main() {
return nil
}
for _, pkg := range pkgs {
- d := doc.NewPackageDoc(pkg, path)
+ d := doc.New(pkg, path, doc.Mode(0))
list := appendHeadings(nil, d.Doc)
for _, d := range d.Consts {
list = appendHeadings(list, d.Doc)
コアとなるコードの解説
変更の中心は、src/pkg/go/doc/headscan.go
ファイルの79行目です。
-
変更前:
d := doc.NewPackageDoc(pkg, path)
この行は、
pkg
(*ast.Package
型)とpath
(インポートパス)を引数としてdoc.NewPackageDoc
関数を呼び出し、その結果をd
という変数に代入していました。しかし、このdoc.NewPackageDoc
関数がGoの新しいバージョンでは存在しなくなったため、コンパイル時に「未定義」エラーが発生していました。 -
変更後:
d := doc.New(pkg, path, doc.Mode(0))
この行では、廃止された
doc.NewPackageDoc
の代わりに、新しく導入されたdoc.New
関数が使用されています。doc.New
関数は、pkg
とpath
に加えて、doc.Mode
型の追加引数を必要とします。ここではdoc.Mode(0)
が渡されており、これはデフォルトのドキュメント生成モードを意味します。これにより、d
には正しく初期化されたドキュメントオブジェクトが代入され、後続の処理(appendHeadings
など)が正常に実行されるようになります。
この変更は、単なる関数名の変更だけでなく、APIのシグネチャ(引数の数と型)の変更にも対応しており、go/doc
パッケージの内部的な設計変更を反映しています。
関連リンク
- Go Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/5539059 このリンクは、GoプロジェクトのコードレビューシステムであるGerritにおける、この変更に対応するチェンジリスト(CL)を示しています。通常、ここには変更の議論、レビューコメント、および関連するコミットの履歴が含まれます。
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント (go.dev):
go/doc
パッケージに関する公式ドキュメントは、Go言語のAPI変更の背景や新しい関数の使い方を理解する上で最も信頼できる情報源です。 - Go 1リリースノート: Go 1のリリースノートには、APIの変更点や非互換性に関する情報が含まれている場合があります。
- https://go.dev/doc/go1compat (Go 1 Compatibility Guarantee)
- Go言語の
go/doc
パッケージにおけるNewPackageDoc
とNew
の比較に関する情報:- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGfEmpMGgIJ0tNh5lVlu2lJqvdH5XIBtghhR6zSTHZrbrXkWEEEMZQueJgGsVD_b9DpE9mSXQzxaAtxZnphMCSAjUrk2LwIUgXq2lPfxtsSg3I=
(このリンクは、
NewPackageDoc
がGo 1でNew
に置き換えられたことを説明しています。)
- https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQGfEmpMGgIJ0tNh5lVlu2lJqvdH5XIBtghhR6zSTHZrbrXkWEEEMZQueJgGsVD_b9DpE9mSXQzxaAtxZnphMCSAjUrk2LwIUgXq2lPfxtsSg3I=
(このリンクは、