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[インデックス 11165] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式フォーマッタである gofmt ツール自身のソースコード (src/cmd/gofmt/simplify.go) における、コメントの配置とアライメントに関する軽微な修正です。具体的には、gofmtgofmt 自身のコードに適用した際に発生した、スタイルガイドに沿わないフォーマットを修正しています。

コミット

このコミットは、gofmt ツールの一部である simplify.go ファイル内のコードフォーマットを修正するものです。変更内容は、コメントのアライメント調整であり、コードの振る舞いには影響を与えません。これは、gofmt が自身のコードベースに対しても一貫したフォーマットを適用できるようにするための、自己修正的なコミットと言えます。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c40314821bb0d99c24c516543bcdf01eea231c48

元コミット内容

commit c40314821bb0d99c24c516543bcdf01eea231c48
Author: Olivier Duperray <duperray.olivier@gmail.com>
Date:   Fri Jan 13 18:05:47 2012 -0800

    cmd/gofmt: fix simplify.go by running gofmt on cmd/gofmt

    R=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5539061

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の標準的なコードフォーマッタである gofmt の自己適用性(self-application)と、コードベース全体の一貫したスタイル維持という哲学があります。gofmt は、Go言語のコードを自動的に整形し、Goコミュニティ全体で統一されたコーディングスタイルを強制するために設計されています。

このコミットは、gofmt ツール自体が、その整形ルールに従っていない箇所があったために行われました。具体的には、src/cmd/gofmt/simplify.go ファイル内のコメントが、gofmt が期待するアライメントになっていなかったようです。これは、gofmtgofmt 自身のソースコードに対して実行した際に検出された「不整合」を修正するものです。このような修正は、ツールの信頼性と、その整形ルールが普遍的に適用可能であることを示す上で重要です。

前提知識の解説

gofmt

gofmt は、Go言語のソースコードを自動的に整形(フォーマット)するためのツールです。Go言語のツールチェインに標準で含まれており、Goコミュニティではコードのフォーマットに gofmt を使用することが強く推奨されています。gofmt は、インデント、スペース、改行、コメントの配置など、コードの見た目に関する多くの側面を自動的に調整します。これにより、開発者はコードのスタイルについて議論する時間を減らし、より本質的なロジックに集中できるようになります。また、異なる開発者やチーム間でのコードの一貫性を保つ上でも不可欠なツールです。

Go言語のAST (Abstract Syntax Tree)

Go言語のコンパイラやツール(gofmt など)は、ソースコードを直接操作するのではなく、まずソースコードを抽象構文木(AST: Abstract Syntax Tree)にパースします。ASTは、プログラムの構造を木構造で表現したものです。各ノードは、変数宣言、関数呼び出し、演算子などの言語構造に対応します。gofmt はこのASTを走査し、必要に応じてノードのプロパティを変更したり、ノード間の関係を再構築したりすることで、コードの整形を行います。

このコミットで変更されている simplify.go は、gofmt の内部でASTを走査し、特定のパターンを簡略化するロジックの一部であると推測されます。Visit メソッドは、ASTの各ノードを訪問する際に呼び出される一般的なパターンです。

token.ANDast.UnaryExprast.CompositeLit

Go言語のASTにおいて、token.AND& 演算子を表します。ast.UnaryExpr は単項演算子(例: &x, *p, -a)を表すASTノードです。ast.CompositeLit は複合リテラル(例: T{field: value}[]int{1, 2, 3})を表すASTノードです。

このコードスニペットは、&T{...} のような形式のコードパターンを処理している可能性があります。これは、複合リテラルのアドレスを取得する一般的なGoのイディオムです。gofmt は、このようなパターンをより簡潔な形式に整形する(例えば、&T{}T{} にする、あるいはその逆)ロジックを持っていることがあります。このコミットの変更自体はフォーマットのみですが、その周辺のコードはこのようなAST変換ロジックの一部です。

技術的詳細

このコミットは、gofmtsimplify.go ファイル内の特定のコードブロックにおけるコメントの配置を調整しています。変更前は、inner.Type = nil*px = inner の行に付随するコメントが、コードの右端に揃えられていませんでした。変更後は、これらのコメントがコードの右端に揃えられ、より視覚的に整列された状態になっています。

これは、gofmt がコードの整形を行う際に、コメントのアライメントに関する特定のルールを適用していることを示唆しています。gofmt は、単にインデントを調整するだけでなく、特定の文脈におけるコメントの垂直方向のアライメントも考慮に入れます。この修正は、gofmt 自身がそのルールに完全に準拠していなかった部分を修正したものであり、gofmt の整形ロジックの厳密性を示す一例です。

具体的には、// drop T// drop & というコメントが、それぞれ前のコード行の末尾に続く形で、かつ他の行のコメントと垂直に揃うようにスペースが調整されています。これは、Goのコーディングスタイルガイドにおける「コメントはコードの右側に揃える」という一般的な慣習に従うものです。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gofmt/simplify.go
+++ b/src/cmd/gofmt/simplify.go
@@ -50,8 +50,8 @@ func (s *simplifier) Visit(node ast.Node) ast.Visitor {\
 				if addr, ok := x.(*ast.UnaryExpr); ok && addr.Op == token.AND {
 					if inner, ok := addr.X.(*ast.CompositeLit); ok {
 						if match(nil, reflect.ValueOf(ptr.X), reflect.ValueOf(inner.Type)) {
-							inner.Type = nil  // drop T
-							*px = inner // drop &
+							inner.Type = nil // drop T
+							*px = inner      // drop &
 						}
 					}
 				}

コアとなるコードの解説

変更されたコードブロックは、gofmtsimplifier 型の Visit メソッド内にあります。このメソッドは、ASTを走査する際に各ノードに対して呼び出されます。

この特定のブロックは、以下のようなGoコードパターンを検出して処理していると考えられます。

&SomeStruct{ /* ... */ }

ここで、x&SomeStruct{...} のような ast.UnaryExpr(単項演算子 & を持つ式)であり、そのオペランド addr.Xast.CompositeLit(複合リテラル SomeStruct{...})である場合をチェックしています。

match 関数は、ptr.Xinner.Typereflect.ValueOf を比較しており、これは型の一致や互換性を確認している可能性があります。

もし条件が満たされた場合、以下の2行が実行されます。

  1. inner.Type = nil: これは複合リテラルの型情報を削除する操作です。例えば、var p *T = &T{} のようなコードで、T の部分を省略可能にする(var p *T = &{} のように)ための内部的な処理かもしれません。コメント // drop T が示唆するように、これは型情報を「削除」または「無視」する意図があります。
  2. *px = inner: これはポインタ px が指す値を inner(複合リテラル)に置き換える操作です。コメント // drop & が示唆するように、これは & 演算子を「削除」または「無視」して、複合リテラルそのものを直接使用する形に変換する意図があります。

このコミット自体は、これらのロジックの変更ではなく、これらの行に付随するコメントの整形(スペースの追加)のみを行っています。変更前は inner.Type = nil // drop T のようにスペースが2つあったり、*px = inner // drop & のようにスペースが1つだったりしましたが、変更後は inner.Type = nil // drop T*px = inner // drop & のように、コメントの開始位置が揃うようにスペースが調整されています。これは、gofmt が自身のコードに対しても、その整形ルールを厳密に適用した結果です。

関連リンク

  • Go言語の公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
  • gofmt の詳細に関するGoブログ記事 (もしあれば、一般的な情報源として): https://blog.golang.org/gofmt (これは一般的なリンクであり、このコミットに直接関連するものではありませんが、gofmt の背景を理解するのに役立ちます)
  • Go言語のASTパッケージに関するドキュメント: https://pkg.go.dev/go/ast
  • Go言語のtokenパッケージに関するドキュメント: https://pkg.go.dev/go/token

参考にした情報源リンク