[インデックス 11177] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の実験的な exp/terminal パッケージに関連するビルドの問題を解決するためのものです。特に、Linux以外の環境でのビルドが失敗する問題に対処するため、このパッケージのLinux固有のビルドタグとMakefileのエントリを削除しています。これにより、exp/terminal パッケージがGoのビルドプロセスから実質的に除外され、クロスプラットフォームビルドの安定性が向上します。
コミット
commit 1019eda9d84c68368db5ed6d603ed645b6a120db
Author: Adam Langley <agl@golang.org>
Date: Sun Jan 15 10:41:16 2012 -0500
exp/terminal: still trying to unbreak non-Linux builds.
R=golang-dev
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5542050
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/1019eda9d84c68368db5ed6d603ed645b6a120db
元コミット内容
exp/terminal: still trying to unbreak non-Linux builds.
このコミットメッセージは、exp/terminal パッケージがLinux以外の環境でのビルドを妨げている問題に継続的に取り組んでいることを示しています。
変更の背景
Go言語の exp/terminal パッケージは、元々Linux環境でのみビルドされるように設計されていました。しかし、その存在がLinux以外のオペレーティングシステム(WindowsやmacOSなど)でのGoプロジェクト全体のビルドプロセスに予期せぬ問題を引き起こしていました。具体的には、Linux固有の機能に依存するコードが、Linux以外の環境でコンパイルされる際にエラーとなるか、あるいはビルドシステムがその依存関係を正しく解決できないといった状況が発生していたと考えられます。
このコミットは、このようなクロスプラットフォームビルドの「破損」状態を解消するための試みです。exp/terminal パッケージがLinux以外の環境でビルドエラーを引き起こすことを防ぐため、一時的または恒久的にGoのビルドプロセスから除外する方向で変更が加えられました。これにより、Goの標準ライブラリや関連プロジェクトのクロスプラットフォーム互換性を維持し、開発者が様々なOSでGoコードを問題なくビルドできるようにすることが目的です。
前提知識の解説
Go言語のビルドタグ (Build Tags)
Go言語では、ソースファイルの先頭に // +build <tag> の形式で「ビルドタグ」を記述することで、特定の条件が満たされた場合にのみそのファイルをビルドに含めることができます。例えば、// +build linux と記述されたファイルはLinux環境でのみコンパイルされ、他のOSでは無視されます。これにより、OSやアーキテクチャ、Goのバージョンなど、プラットフォーム固有のコードを効率的に管理し、クロスプラットフォーム開発を容易にします。
Makefile
Makefile は、ソフトウェアのビルドプロセスを自動化するためのスクリプトファイルです。make コマンドによって解釈され、ソースコードのコンパイル、リンク、テストの実行など、一連のタスクを定義します。Goプロジェクトにおいても、Goの標準ビルドコマンド (go build, go test など) をラップしたり、追加のビルドステップ(コード生成、リンティング、デプロイなど)を実行したりするために広く利用されます。このコミットでは、Makefile が特定のOS (GOOS=linux) でビルドされるディレクトリのリストを管理するために使用されていました。
exp パッケージ
Goの標準ライブラリには、exp (experimental) というプレフィックスを持つパッケージが存在することがあります。これらは、まだ安定版ではない実験的な機能やAPIを提供します。exp パッケージは、将来的に標準ライブラリに昇格する可能性もありますが、APIの変更、非互換な変更、あるいは削除が行われる可能性があるため、本番環境での使用には注意が必要です。exp/terminal もその一つであり、ターミナル操作に関する実験的な機能を提供していたと考えられます。
クロスプラットフォームビルド
クロスプラットフォームビルドとは、あるオペレーティングシステム(例: Linux)上で、別のオペレーティングシステム(例: Windows)やハードウェアアーキテクチャ(例: ARM)向けの実行可能ファイルを生成するプロセスです。Go言語は、その強力なクロスコンパイル機能により、このプロセスを非常に容易にしますが、OS固有のシステムコールや外部ライブラリに依存する場合には、ビルドタグや条件付きコンパイルなどのメカニズムを用いて、プラットフォームごとのコードパスを適切に管理する必要があります。
技術的詳細
このコミットは、exp/terminal パッケージがLinux以外の環境でビルドエラーを引き起こす問題を解決するために、以下の技術的な変更を加えています。
-
src/pkg/Makefileからのexp/terminalの削除:Makefile内のifeq ($(GOOS),linux)ブロックから、exp/terminalディレクトリがDIRS変数に追加される行が削除されました。 変更前:ifeq ($(GOOS),linux) DIRS+=\ exp/inotify\ exp/terminal\変更後:
ifeq ($(GOOS),linux) DIRS+=\ exp/inotify\この変更は、Linux環境でのGoのビルドプロセスにおいて、
exp/terminalパッケージがビルド対象のディレクトリリストから明示的に除外されることを意味します。これにより、Linux上であってもexp/terminalが標準のビルドプロセスの一部としてコンパイルされなくなります。 -
src/pkg/exp/terminal/terminal.goおよびsrc/pkg/exp/terminal/terminal_test.goからのビルドタグ// +build linuxの削除:exp/terminalパッケージの主要なソースファイル (terminal.go) とテストファイル (terminal_test.go) の冒頭に記述されていた// +build linuxというビルドタグが削除されました。 変更前:// +build linux package terminal変更後:
package terminalこのビルドタグは、これらのファイルがLinux環境でのみコンパイルされるべきであることをGoコンパイラに指示していました。このタグが削除されたことにより、これらのファイルは理論上、どのOS環境でもコンパイルされる可能性が出てきます。しかし、
Makefileからのエントリ削除と組み合わせることで、このパッケージ全体がGoのビルドプロセスから除外されることを意図していると解釈できます。
これらの変更の組み合わせは、exp/terminal パッケージがGoの標準ビルドプロセスから切り離されることを示唆しています。これにより、Linux固有の依存関係を持つこのパッケージが、Linux以外のシステムでビルドエラーを引き起こすことを根本的に防ぐことができます。コミットメッセージの「still trying to unbreak non-Linux builds」という文言から、このパッケージが以前からクロスプラットフォームビルドの問題の原因となっていたことが伺えます。
コアとなるコードの変更箇所
src/pkg/Makefile
--- a/src/pkg/Makefile
+++ b/src/pkg/Makefile
@@ -186,7 +186,6 @@ DIRS=\
ifeq ($(GOOS),linux)
DIRS+=\
exp/inotify\
- exp/terminal\
endif
src/pkg/exp/terminal/terminal.go
--- a/src/pkg/exp/terminal/terminal.go
+++ b/src/pkg/exp/terminal/terminal.go
@@ -2,8 +2,6 @@
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.
-// +build linux
-
package terminal
import (
src/pkg/exp/terminal/terminal_test.go
--- a/src/pkg/exp/terminal/terminal_test.go
+++ b/src/pkg/exp/terminal/terminal_test.go
@@ -2,8 +2,6 @@
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.
-// +build linux
-
package terminal
import (
コアとなるコードの解説
src/pkg/Makefile の変更
Makefile の変更は、GoのビルドシステムがLinux環境でパッケージをビルドする際に参照するディレクトリリスト (DIRS) から exp/terminal を削除しています。これは、exp/terminal がLinux固有の機能に依存しているため、他のOSでのビルドを妨げていた問題を回避するための措置です。この変更により、Linux上であっても exp/terminal はGoの標準ビルドプロセスの一部としてコンパイルされなくなります。
src/pkg/exp/terminal/terminal.go および src/pkg/exp/terminal/terminal_test.go の変更
これらのファイルから // +build linux ビルドタグが削除されました。このタグは、Goコンパイラに対して、これらのファイルがLinux環境でのみコンパイルされるべきであることを指示していました。タグの削除により、これらのファイルは理論上、どのOS環境でもコンパイルされる可能性が出てきます。しかし、Makefile からのエントリ削除と組み合わせることで、このパッケージ全体がGoのビルドプロセスから除外されることを意図していると解釈できます。これにより、exp/terminal パッケージがLinux以外のシステムでビルドエラーを引き起こすことを根本的に防ぎ、「非Linuxビルドを壊さない」という目的が達成されます。
関連リンク
- Go Code Review: https://golang.org/cl/5542050
参考にした情報源リンク
- 特になし (本解説は提供されたコミット情報と一般的なGo言語の知識に基づいて作成されました)