Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 112] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の初期開発段階におけるテストスイートの一部である test/golden.out ファイルの修正に関するものです。具体的には、特定のバグテストケースの出力形式と配置が調整されています。

コミット

commit 298bafe2b52267d1ec1fdab3eab17d30080c5945
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri Jun 6 17:02:55 2008 -0700

    - fixed golden.out
    
    SVN=121550

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/298bafe2b52267d1ec1fdab3eab17d30080c5945

元コミット内容

このコミットの元々の内容は、golden.out ファイルの修正であり、SVNリビジョン121550に対応しています。コミットメッセージ自体は簡潔に「- fixed golden.out」と述べているのみで、具体的な修正内容は差分から読み取る必要があります。

変更の背景

Go言語の初期開発において、コンパイラやランタイムの挙動を検証するために様々なテストが書かれていました。golden.outのような「ゴールデンファイル」は、テストの期待される出力を記録し、実際の出力と比較することで回帰バグを検出するために使用されます。

このコミットの背景には、おそらく以下のいずれか、または複数の理由が考えられます。

  1. テストケースの整理: bug032.goからbug040.goまでのテストファイルが、test/ディレクトリ直下からtest/bugs/サブディレクトリへ移動された可能性があります。これにより、テストの構造がより整理され、特定の種類のバグテストがまとめて管理されるようになったと考えられます。
  2. エラー報告の改善: 以前は「BUG: compilation succeeds incorrectly」と報告されていたこれらのテストが、ファイルが見つからないことによる「fatal error: cant open」というより具体的なエラーメッセージを出すように変更されています。これは、テストハーネスまたはコンパイラが、存在しないファイルに対するエラーをより正確に報告するようになったことを示唆しています。
  3. テストの意図の変更: これらのテストが、以前は「コンパイルが誤って成功する」というバグを検出するためのものであったのに対し、変更後は「存在しないファイルをコンパイルしようとした際の挙動」をテストする目的になった可能性も考えられます。

Go言語の初期段階では、コンパイラ、ツールチェイン、標準ライブラリの機能が急速に進化しており、それに伴いテストの構造や期待される出力も頻繁に調整されていました。このコミットも、そうした開発プロセスの一環として、テストスイートの正確性と保守性を向上させるために行われたものと推測されます。

前提知識の解説

ゴールデンファイルテスト (Golden File Testing)

ゴールデンファイルテストは、ソフトウェアテストの手法の一つで、プログラムの出力が事前に記録された「ゴールデンファイル」(またはスナップショットファイル)の内容と一致するかどうかを検証します。

  • 仕組み:
    1. テスト対象のプログラムを実行し、その出力を生成します。
    2. 生成された出力を、あらかじめ正しいとされている「ゴールデンファイル」の内容と比較します。
    3. 両者が完全に一致すればテストは成功、一致しなければテストは失敗となります。
  • 利点:
    • 回帰テスト: 過去に正しかった挙動が、コード変更によって意図せず変わってしまった(回帰バグ)ことを容易に検出できます。
    • 複雑な出力のテスト: JSON、HTML、画像、バイナリデータなど、コード内に直接記述するのが困難な、あるいは非常に冗長になるような複雑な出力のテストに適しています。
    • テストの更新が容易: 期待される出力が変更された場合、ゴールデンファイルを更新するだけでテストを適応させることができます。多くのテストフレームワークでは、ゴールデンファイルを自動的に更新する機能(例: go test -update)を提供しています。
  • Go言語におけるゴールデンファイル: Go言語のプロジェクトでは、慣習的にゴールデンファイルはtestdataディレクトリ内に配置されます。Goのビルドツールはtestdataディレクトリの内容を無視するため、これらのテストアセットが最終的なバイナリに含まれることはありません。

test/golden.out

このファイルは、Go言語のコンパイラやツールのテストスイートの一部として使用されていたゴールデンファイルであると推測されます。Go言語の初期開発において、コンパイラの出力やエラーメッセージの形式が安定していなかった時期に、特定のテストケースに対する期待される出力を記録するために用いられていたと考えられます。テスト実行時に、実際の出力がこのgolden.outファイルの内容と一致するかどうかが検証されていたでしょう。

SVN (Subversion)

SVNは、Gitが登場する以前に広く使われていた集中型バージョン管理システムです。Go言語のプロジェクトは、初期にはGoogleの内部SVNリポジトリで管理されており、その後Gitに移行しました。コミットメッセージにあるSVN=121550は、このコミットがSVNリポジトリの121550番目のリビジョンに対応していることを示しています。これは、Go言語の歴史的な開発経緯を物語る記述です。

技術的詳細

このコミットは、test/golden.outという単一のファイルに対する変更です。このファイルは、Go言語のコンパイラテストの出力結果を記録するゴールデンファイルとして機能していました。

差分を見ると、主に以下の2種類の変更が行われています。

  1. エントリの移動とパスの変更:

    • ./bug032.goから./bug040.goまでのエントリが、ファイルの先頭付近から削除されています。
    • これらのエントリは、ファイルの別の場所(bugs/bug030.goの直後)に再挿入されています。
    • 再挿入された際、ファイルパスが./bugXXX.goから./bugs/bugXXX.goに変更されています。これは、これらのテストファイルがtestディレクトリ直下からtest/bugsサブディレクトリに移動されたことを示唆しています。
  2. 期待されるエラーメッセージの変更:

    • 削除されたエントリでは、期待される出力が「BUG: compilation succeeds incorrectly」(バグ: コンパイルが誤って成功する)となっていました。これは、コンパイラが本来エラーを出すべきコードに対して、誤って成功と判断してしまうバグをテストしていたことを意味します。
    • 再挿入されたエントリでは、期待される出力が「bugXXX.go:0: fatal error: cant open: bugXXX.go」(致命的なエラー: bugXXX.goを開けません)となっています。これは、テスト実行時にこれらのファイルが見つからない、または開けないというエラーが発生することを期待していることを示しています。

この変更は、Go言語のコンパイラやテストハーネスが、ファイルが見つからないケースに対するエラー報告の挙動を改善した結果である可能性が高いです。以前は「コンパイルが誤って成功する」という抽象的なバグとして扱われていたものが、より具体的な「ファイルを開けない」というエラーとして捕捉されるようになったと考えられます。また、テストファイルの配置が整理され、bugsディレクトリに移動されたことで、テストスイートの構造がより論理的になったことも示唆されます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は test/golden.out ファイルのみです。

--- a/test/golden.out
+++ b/test/golden.out
@@ -1,31 +1,4 @@
 
-=========== ./bug032.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug033.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug034.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug035.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug036.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug037.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug038.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug039.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
-=========== ./bug040.go
-BUG: compilation succeeds incorrectly
-
 =========== ./bug041.go
 BUG: compilation succeeds incorrectly
 
@@ -266,6 +239,33 @@ BUG: known to succeed incorrectly
 =========== bugs/bug030.go
 BUG: known to succeed incorrectly
 
+=========== bugs/bug032.go
+bug032.go:0: fatal error: cant open: bug032.go
+
+=========== bugs/bug033.go
+bug033.go:0: fatal error: cant open: bug033.go
+
+=========== bugs/bug034.go
+bug034.go:0: fatal error: cant open: bug034.go
+
+=========== bugs/bug035.go
+bug035.go:0: fatal error: cant open: bug035.go
+
+=========== bugs/bug036.go
+bug036.go:0: fatal error: cant open: bug036.go
+
+=========== bugs/bug037.go
+bug037.go:0: fatal error: cant open: bug037.go
+
+=========== bugs/bug038.go
+bug038.go:0: fatal error: cant open: bug038.go
+
+=========== bugs/bug039.go
+bug039.go:0: fatal error: cant open: bug039.go
+
+=========== bugs/bug040.go
+bug040.go:0: fatal error: cant open: bug040.go
+
 =========== fixedbugs/bug000.go
 
 =========== fixedbugs/bug005.go

コアとなるコードの解説

このコミットは、Go言語のコンパイラやツールのテスト結果を記録するgolden.outファイルの内容を更新しています。

具体的には、bug032.goからbug040.goまでの9つのテストケースについて、以下の変更が行われました。

  1. 旧エントリの削除: ファイルの先頭付近にあった、これらのテストケースに関する記述が削除されました。これらの記述は、テストファイルが./bugXXX.goというパスにあり、コンパイルが誤って成功するというバグを報告していました。

    =========== ./bug032.go
    BUG: compilation succeeds incorrectly
    ...
    =========== ./bug040.go
    BUG: compilation succeeds incorrectly
    
  2. 新エントリの追加: ファイルの別の場所(bugs/bug030.goの記述の後)に、同じテストケースに関する新しい記述が追加されました。新しい記述では、テストファイルのパスが./bugs/bugXXX.goに変更され、期待されるエラーメッセージが「fatal error: cant open: bugXXX.go」となっています。

    =========== bugs/bug032.go
    bug032.go:0: fatal error: cant open: bug032.go
    ...
    =========== bugs/bug040.go
    bug040.go:0: fatal error: cant open: bug040.go
    

この変更は、これらのバグテストケースの取り扱いが変更されたことを明確に示しています。以前はコンパイルの誤った成功を検出する目的であったものが、ファイルが見つからない、または開けないというより具体的なエラーを期待するテストに変わったか、あるいはテストファイルの配置変更に伴い、テストハーネスがその変更を正しく反映した結果としてgolden.outが更新されたと考えられます。

これは、Go言語のコンパイラとテストインフラが成熟していく過程で、エラー報告の精度が向上し、テストスイートの構造がより体系化されていったことを示す良い例です。

関連リンク

参考にした情報源リンク