[インデックス 11227] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のgo/scanner
パッケージにおけるドキュメントの修正に関するものです。具体的には、scanner
パッケージの使用例において、Scanner
型の宣言方法が誤っていた点を修正しています。
コミット
commit 90c38c46af79991245545de47002537414c986a6
Author: Olivier Duperray <duperray.olivier@gmail.com>
Date: Wed Jan 18 09:33:50 2012 -0800
go/scanner: fix example
R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5532085
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/90c38c46af79991245545de47002537414c986a6
元コミット内容
go/scanner: fix example
R=golang-dev, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5532085
変更の背景
このコミットは、Go言語の標準ライブラリの一部であるgo/scanner
パッケージのドキュメント内の誤りを修正することを目的としています。go/scanner
パッケージは、Goのソースコードを字句解析(トークン化)するための機能を提供します。このパッケージのドキュメントには、Scanner
型のインスタンスを宣言する際のコード例が含まれていましたが、その例がパッケージの修飾子を欠いており、そのままではコンパイルエラーとなる可能性がありました。
具体的には、var s Scanner
という記述は、Scanner
型が現在のパッケージで定義されているか、またはインポートされたパッケージのトップレベルで定義されている場合にのみ有効です。しかし、Scanner
型はgo/scanner
パッケージ内で定義されているため、外部から利用する際にはscanner.Scanner
のようにパッケージ名を修飾する必要があります。このコミットは、この誤った例を修正し、ユーザーがgo/scanner
パッケージを正しく利用できるようにするためのものです。
前提知識の解説
Go言語のパッケージとインポート
Go言語では、コードは「パッケージ」という単位で整理されます。パッケージは関連する機能の集合であり、再利用可能なコードのモジュール化を促進します。他のパッケージで定義された型や関数を利用するには、そのパッケージをインポートする必要があります。
例えば、fmt
パッケージのPrintln
関数を使う場合、import "fmt"
と記述し、fmt.Println()
のようにパッケージ名を修飾して呼び出します。同様に、go/scanner
パッケージのScanner
型を使う場合も、import "go/scanner"
(または単にimport "scanner"
、Goモジュールパスによっては異なる)と記述し、scanner.Scanner
のようにアクセスします。
go/scanner
パッケージ
go/scanner
パッケージは、Go言語のコンパイラやツールがGoのソースコードを解析する際に使用する低レベルの字句解析器(lexer/scanner)を提供します。主な機能は以下の通りです。
- 字句解析(Lexical Analysis): ソースコードの文字列を、キーワード、識別子、演算子、リテラルなどの意味のある最小単位(トークン)に分割します。
Scanner
型: 字句解析を行うための主要な型です。ソースコードの入力、エラーハンドリング、トークンの読み取りなどの機能を提供します。token
パッケージとの連携:go/scanner
は、Go言語のトークン定義を提供するgo/token
パッケージと密接に連携します。token.FileSet
はソースコードの位置情報を管理するために使用され、token.Token
は各トークンの種類を表します。
このパッケージは、Goのコードを静的に解析するツール(リンター、フォーマッター、IDEなど)を開発する際に非常に重要です。
技術的詳細
このコミットの技術的な変更は非常にシンプルですが、Go言語のパッケージシステムとドキュメンテーションの正確性という点で重要です。
変更点は、src/pkg/go/scanner/scanner.go
ファイルのコメントブロック内のコード例です。このコメントは、Scanner
型をどのように初期化し、使用するかを示す典型的な利用パターンを説明しています。
元のコード例では、var s Scanner
と記述されていました。これは、Scanner
型が現在のパッケージ(この場合はgo/scanner
パッケージ自体)のスコープ内で直接利用可能であるかのように見えます。しかし、このドキュメントはgo/scanner
パッケージを利用する側の視点から書かれているため、Scanner
型はscanner
パッケージのメンバーとして修飾される必要があります。
修正後のコード例は、var s scanner.Scanner
となっています。これにより、Scanner
型がscanner
というパッケージに属していることが明確に示され、このコード例をコピー&ペーストして利用する開発者が、パッケージのインポートと修飾を正しく行うべきであることを示唆しています。
この修正は、コードの動作に直接的な影響を与えるものではなく、あくまでドキュメンテーションの正確性を向上させるものです。しかし、公式ドキュメントのコード例は、特に初心者にとって学習の重要な手がかりとなるため、その正確性は非常に重要です。誤った例は、開発者の混乱や誤った実装につながる可能性があります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/go/scanner/scanner.go
+++ b/src/pkg/go/scanner/scanner.go
@@ -6,7 +6,7 @@
// source which can then be tokenized through repeated calls to the Scan
// function. Typical use:
//
-// var s Scanner
+// var s scanner.Scanner
// fset := token.NewFileSet() // position information is relative to fset
// file := fset.AddFile(filename, fset.Base(), len(src)) // register file
//\ts.Init(file, src, nil /* no error handler */, 0)
コアとなるコードの解説
変更された行は、src/pkg/go/scanner/scanner.go
ファイルの6行目から7行目にかけてのコメントブロック内にあります。
- // var s Scanner
: 変更前の行です。Scanner
型がパッケージ修飾なしで宣言されています。これは、go/scanner
パッケージの外部からこのコード例を利用する場合、Scanner
型が未定義であるというコンパイルエラーを引き起こす可能性があります。+ // var s scanner.Scanner
: 変更後の行です。Scanner
型がscanner
パッケージによって修飾されています。これにより、このコード例がgo/scanner
パッケージをインポートして利用する一般的なGoプログラムのコンテキストで正しく機能することが保証されます。
この修正は、Go言語のパッケージの命名規則と、外部パッケージの型を参照する際の正しい構文を反映しています。go/scanner
パッケージのドキュメントは、そのパッケージの利用方法を説明するものであるため、利用者が直面するであろう正しい構文を示すことが適切です。
関連リンク
- Go言語公式ドキュメント: https://go.dev/doc/
go/scanner
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/go/scannergo/token
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/go/token- Go言語のパッケージに関する公式ブログ記事 (例: How to Write Go Code): https://go.dev/doc/code
参考にした情報源リンク
- GitHubのコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/90c38c46af79991245545de47002537414c986a6
- Go言語の公式パッケージドキュメント (
go/scanner
,go/token
): https://pkg.go.dev/ - Go言語のパッケージとモジュールに関する一般的な知識