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[インデックス 11303] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメント「Go for C++ programmers」におけるタイプミスを修正するものです。具体的には、if 文の条件式に関する記述と、匿名フィールドのメソッド昇格に関する記述の誤字を修正し、ドキュメントの正確性を向上させています。

コミット

commit 14d7e869ebd37d0dbe14c884eb97fec39485aeb0
Author: Stefan Nilsson <snilsson@nada.kth.se>
Date:   Fri Jan 20 14:44:05 2012 -0800

    doc: fix typo in Go for C++ programmers

    R=iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5555062

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/14d7e869ebd37d0dbe14c884eb97fec39485aeb0

元コミット内容

doc: fix typo in Go for C++ programmers

このコミットメッセージは非常に簡潔で、Go言語のC++プログラマー向けドキュメントにおけるタイプミスを修正したことを示しています。R=iant はレビュー担当者 (Ian Lance Taylor) を、CC=golang-dev はメーリングリストへの通知を示し、https://golang.org/cl/5555062 は関連するGo Change List (CL) へのリンクです。

変更の背景

この変更の背景は、Go言語の公式ドキュメント「Go for C++ programmers」内に存在するタイプミスを修正し、ドキュメントの正確性と可読性を向上させることにあります。ドキュメントはプログラマーが新しい言語を学ぶ上で非常に重要なリソースであり、誤字脱字は読者の混乱を招く可能性があります。特に、C++プログラマー向けという性質上、Go言語の構文や概念をC++と比較しながら説明しているため、正確な記述が求められます。

このコミットは、Goのコードレビューシステム(GerritベースのGo CL)を通じて提案され、レビューを経て承認・マージされました。これは、Goプロジェクトにおける継続的なドキュメント品質改善の一環です。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、以下のGo言語の基本的な構文と概念、およびC++との比較に関する知識が役立ちます。

1. Go言語の制御構造(if, for, switch

Go言語の制御構造は、C++とは異なる特徴を持っています。

  • if ステートメント:

    • C++では if (condition) { ... } のように条件式を括弧 () で囲むことが必須です。
    • Goでは if condition { ... } のように条件式を括弧で囲む必要がありません。これは、Goの構文がより簡潔であることを意図しています。
    • しかし、Goでは if ステートメントの本体(ブロック)を波括弧 {} で囲むことは必須です。これは、単一のステートメントであっても省略できないため、C++のように if (condition) statement; のような書き方はできません。
  • for ステートメント:

    • Goの for ループは、C++の forwhiledo-while ループのすべての機能を含んでいます。
    • C++では for (initialization; condition; increment) { ... } のように式を括弧 () で囲みます。
    • Goでは for initialization; condition; increment { ... } のように式を括弧で囲む必要がありません。
    • for ループの本体も波括弧 {} で囲むことが必須です。
  • switch ステートメント:

    • C++では switch (value) { ... } のように値を括弧 () で囲むことが一般的です。
    • Goでは switch value { ... } のように値を括弧で囲む必要がありません。
    • Goの switch は、C++とは異なり、case が一致した場合に自動的に次の case にフォールスルーしません。明示的に fallthrough キーワードを使用する必要があります。

2. Go言語の構造体と匿名フィールド(埋め込み)

Go言語にはC++のようなクラス継承の概念はありませんが、**匿名フィールド(Anonymous Fields)または埋め込み(Embedding)**という強力なメカニズムを通じて、型を「合成」し、コードの再利用性を高めることができます。

  • 構造体(Structs): Goの構造体は、C++の structclass に似ており、関連するデータの集合を定義します。
  • 匿名フィールド: 構造体の中に、フィールド名なしで別の型を宣言することができます。この匿名フィールドは、その型のすべてのメソッドを外側の構造体に「昇格」させます。
    • 例えば、type MyType struct { int }type MyChildType struct { MyType } のように定義した場合、MyChildType のインスタンスは MyType のフィールドやメソッドに直接アクセスできます。これは、C++の継承に似た振る舞いをしますが、実装は異なります。
    • このメカニズムは、Goの「コンポジション(合成)による再利用」の原則を体現しています。

3. C++プログラマーの視点

C++プログラマーは、Go言語を学ぶ際に、C++の構文や概念との違いに戸惑うことがあります。このドキュメントは、そのようなギャップを埋めることを目的としています。

  • 括弧の有無: C++では条件式やループの式を括弧で囲むのが一般的ですが、Goでは不要です。これはGoの構文の簡潔さを示す特徴の一つです。
  • 継承とコンポジション: C++のクラス継承に慣れているプログラマーにとって、Goの匿名フィールドとメソッド昇格は新しいパラダイムであり、理解を深める必要があります。

技術的詳細

このコミットは、doc/go_for_cpp_programmers.html ファイル内の2つの異なる箇所でタイプミスを修正しています。

1. if ステートメントの条件式に関する修正

元の記述では、if ステートメントの条件式に関する説明で冠詞の誤りがありました。

  • 修正前: Go does not require parentheses around the condition of a <code>if</code> statement
  • 修正後: Go does not require parentheses around the condition of an <code>if</code> statement

英語の文法では、母音で始まる単語(この場合は ifi)の前には冠詞 an を使用するのが正しいです。この修正は、ドキュメントの文法的な正確性を高め、読者にとってより自然な英語表現を提供します。

2. 匿名フィールドのメソッド昇格に関する修正

元の記述では、匿名フィールドのメソッド昇格に関する説明で、参照している型名が誤っていました。

  • 修正前: The <code>set</code> method is effectively inherited from <code>myChildType</code>, because methods associated with the anonymous field are promoted to become methods of the enclosing type.
  • 修正後: The <code>set</code> method is effectively inherited from <code>myType</code>, because methods associated with the anonymous field are promoted to become methods of the enclosing type.

この文脈では、set メソッドは匿名フィールドとして埋め込まれている myType から「継承」(Goの文脈では「昇格」)されることを説明しています。しかし、修正前の記述では誤って myChildType から継承されると書かれていました。myChildType は外側の型であり、myType を匿名フィールドとして含んでいます。したがって、myType のメソッドが myChildType に昇格するというのが正しい説明です。この修正により、匿名フィールドとメソッド昇格のメカニズムに関する説明が正確になりました。

これらの修正は、いずれもドキュメントの品質と正確性を向上させるための、細かではあるが重要な変更です。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/doc/go_for_cpp_programmers.html b/doc/go_for_cpp_programmers.html
index 7edb88013f..8e215190fa 100644
--- a/doc/go_for_cpp_programmers.html
+++ b/doc/go_for_cpp_programmers.html
@@ -225,7 +225,7 @@ f(v9.i, p9.i)\n </pre>\n \n <p>\n-Go does not require parentheses around the condition of a <code>if</code>\n+Go does not require parentheses around the condition of an <code>if</code>\n statement, or the expressions of a <code>for</code> statement, or the value of a\n <code>switch</code> statement.  On the other hand, it does require curly braces\n around the body of an <code>if</code> or <code>for</code> statement.\n@@ -538,7 +538,7 @@ func f2() {\n \n <p>\n The <code>set</code> method is effectively inherited from\n-<code>myChildType</code>, because\n+<code>myType</code>, because\n methods associated with the anonymous field are promoted to become methods\n of the enclosing type.  In this case, because <code>myChildType</code> has an\n anonymous field of type <code>myType</code>, the methods of\n```

## コアとなるコードの解説

上記のdiffは、`doc/go_for_cpp_programmers.html` ファイルに対する2つの修正を示しています。

### 1. 最初の変更 (`@@ -225,7 +225,7 @@`)

*   **修正前 (`-` 行)**: `Go does not require parentheses around the condition of a <code>if</code>`
*   **修正後 (`+` 行)**: `Go does not require parentheses around the condition of an <code>if</code>`

この変更は、`if` の前に来る冠詞を `a` から `an` に修正しています。英語の文法規則に従い、母音で始まる単語(`if`)の前には `an` を使用するのが正しいです。これは純粋に文法的な修正であり、ドキュメントの読みやすさと正確性を向上させます。

### 2. 2番目の変更 (`@@ -538,7 +538,7 @@`)

*   **修正前 (`-` 行)**: `The <code>set</code> method is effectively inherited from <code>myChildType</code>, because`
*   **修正後 (`+` 行)**: `The <code>set</code> method is effectively inherited from <code>myType</code>, because`

この変更は、匿名フィールドのメソッド昇格に関する説明の誤りを修正しています。Go言語では、構造体に匿名フィールドとして別の型を埋め込むと、その埋め込まれた型のメソッドが外側の構造体に「昇格」し、あたかも外側の構造体のメソッドであるかのように呼び出せるようになります。

この文脈では、`myChildType` が `myType` を匿名フィールドとして含んでいる場合、`myType` に定義された `set` メソッドが `myChildType` に昇格します。したがって、`set` メソッドは実質的に `myType` から「継承」される(Goの用語では「昇格」する)と表現するのが正しいです。修正前の `myChildType` から継承されるという記述は、文脈上誤解を招く可能性がありました。この修正により、Goの匿名フィールドとメソッド昇格のメカニズムに関する説明がより正確になりました。

両方の変更は、ドキュメントの品質を向上させ、特にC++プログラマーがGoの概念を正確に理解するのに役立ちます。

## 関連リンク

*   Go Change List (CL) 5555062: [https://golang.org/cl/5555062](https://golang.org/cl/5555062)

## 参考にした情報源リンク

*   Go Change List (CL) 5555062: [https://golang.org/cl/5555062](https://golang.org/cl/5555062)
*   Go言語公式ドキュメント (Go for C++ programmers): [https://go.dev/doc/go_for_cpp_programmers.html](https://go.dev/doc/go_for_cpp_programmers.html) (コミット当時のバージョンとは異なる可能性がありますが、概念は共通です)
*   Go言語の仕様 (The Go Programming Language Specification): [https://go.dev/ref/spec](https://go.dev/ref/spec) (特に「Declarations and scope」や「Method declarations」のセクションが関連します)
*   Go言語のブログ記事やチュートリアル(匿名フィールド、メソッド昇格、制御構造に関する一般的な情報源)