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[インデックス 11309] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)における再帰的なインターフェースのバグに対するテストケースを追加するものです。具体的には、相互に参照し合うインターフェース型が正しく処理されることを検証するための新しいテストファイルが導入されています。

コミット

commit c3eddc4503adce7983ba5e38c6a5b4ad3626edf7
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date:   Sat Jan 21 17:02:54 2012 +1100

    gc: test case for recursive interface bug.
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5555066

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c3eddc4503adce7983ba5e38c6a5b4ad3626edf7

元コミット内容

gc: test case for recursive interface bug.

R=rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5555066

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)が、再帰的に定義されたインターフェース型を正しく処理できないという既知のバグ、または潜在的なバグを特定し、修正するために作成されました。Go言語の型システムでは、インターフェースが他のインターフェースを埋め込む(embed)ことが可能です。この埋め込みが循環参照、すなわち再帰的な構造を形成する場合、コンパイラが型情報を解決する際に無限ループに陥ったり、誤った型情報を生成したりする可能性があります。

この種のバグは、コンパイラの型チェックフェーズや、型のアロケーション、メソッドセットの構築といった内部処理に影響を及ぼします。コンパイラが再帰的な型定義を適切に展開・解決できないと、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • コンパイルエラー: 正しいコードであるにもかかわらず、コンパイラがエラーを報告する。
  • 不正なコード生成: コンパイルは通るものの、実行時に予期せぬ動作やクラッシュを引き起こすバイナリが生成される。
  • コンパイラのクラッシュ: コンパイル中にコンパイラ自体がパニックを起こして終了する。

このコミットは、このような再帰的なインターフェースの定義がGoコンパイラによって正しく扱われることを保証するための、具体的なテストケースを提供することを目的としています。これにより、将来のコンパイラの変更がこの特定のケースを破壊しないように、回帰テストの網羅性を高めています。

前提知識の解説

Go言語のインターフェース

Go言語におけるインターフェースは、メソッドのシグネチャの集合を定義する型です。Goのインターフェースは「暗黙的」に満たされます。つまり、ある型がインターフェースで定義されたすべてのメソッドを実装していれば、その型はそのインターフェースを満たしていると見なされます。implementsキーワードのような明示的な宣言は不要です。

例:

type Greeter interface {
    SayHello() string
}

type Person struct {
    Name string
}

func (p Person) SayHello() string {
    return "Hello, " + p.Name
}

// Person型はGreeterインターフェースを暗黙的に満たす

インターフェースの埋め込み (Embedding)

Goのインターフェースは、他のインターフェースを「埋め込む」ことができます。これにより、埋め込まれたインターフェースのすべてのメソッドシグネチャが、埋め込む側のインターフェースに含まれることになります。これは、インターフェースの合成や拡張に非常に便利な機能です。

例:

type Reader interface {
    Read(p []byte) (n int, err error)
}

type Writer interface {
    Write(p []byte) (n int, err error)
}

// ReadWriterインターフェースはReaderとWriterのメソッドを両方含む
type ReadWriter interface {
    Reader
    Writer
}

再帰的な型定義

プログラミング言語において、型が自分自身を参照する、または複数の型が相互に参照し合う構造を「再帰的な型定義」と呼びます。データ構造では、リンクリストやツリー構造などでよく見られます。

例(Goの構造体における再帰):

type Node struct {
    Value int
    Next  *Node // Node型が自分自身を指す
}

インターフェースにおいても、埋め込みを通じて再帰的な定義が可能です。例えば、I1I2を埋め込み、I2I1を埋め込むといったケースです。このような再帰的な定義は、コンパイラが型の完全な定義を解決する際に、循環参照を検出して適切に処理する必要があります。処理を誤ると、無限ループやスタックオーバーフロー、あるいは不正確な型情報の構築につながる可能性があります。

このコミットで扱われているのは、まさにこのようなインターフェースの再帰的な定義がGoコンパイラによって正しく扱われるかどうかの検証です。

技術的詳細

このコミットは、Goコンパイラが再帰的なインターフェース型をどのように処理するかをテストするために、2つの新しいテストファイル recursive1.gorecursive2.go を追加しています。

recursive1.go の役割

recursive1.go は、相互に再帰的なインターフェース I1I2 を定義しています。

package p

type I1 interface {
	F() I2 // I1のメソッドFはI2を返す
}

type I2 interface {
	I1 // I2はI1を埋め込む
}

ここで注目すべきは、I1I2をメソッドの戻り値として参照し、同時にI2I1を埋め込んでいる点です。これは典型的な相互再帰のパターンです。コンパイラはこれらの型定義を解析する際に、どちらの型が先に完全に定義されるかを決定する必要がありますが、循環参照があるため、単純な順序付けでは解決できません。コンパイラは、このような状況でも型情報を正しく解決し、無限ループに陥ることなく、それぞれのインターフェースが持つべきメソッドセットを正確に構築できる必要があります。

recursive2.go の役割

recursive2.go は、recursive1.go で定義された再帰的なインターフェース型が、実際にGoプログラム内で正しく使用できることを検証します。

package main

import "./recursive1" // recursive1.goで定義された型をインポート

func main() {
	var i1 p.I1
	var i2 p.I2
	i1 = i2      // I2からI1への代入
	i2 = i1      // I1からI2への代入
	i1 = i2.F()  // I2のF()メソッドの呼び出し結果(I1を返す)をI1に代入
	i2 = i1.F()  // I1のF()メソッドの呼び出し結果(I2を返す)をI2に代入
	_, _ = i1, i2 // 変数の使用を保証(未使用変数エラー回避)
}

このテストファイルは、以下の重要な側面を検証しています。

  1. 型推論と代入: i1 = i2i2 = i1 のような代入が正しく行われるか。これは、コンパイラがI1I2の間の型互換性を正しく理解していることを意味します。I2I1を埋め込んでいるため、I2I1のメソッドセットをすべて含みます。したがって、I2の値をI1型の変数に代入することは常に可能です。逆の代入(I1からI2へ)は、I1I2のメソッドセットをすべて含んでいる場合にのみ可能です。このテストケースでは、I1F() I2というメソッドを持ち、I2I1を埋め込んでいるため、I2F() I2メソッドも持ちます。したがって、I1I2は互いに代入可能であるべきです。
  2. メソッド呼び出し: i2.F()i1.F() のようなメソッド呼び出しが正しく解決され、その戻り値が適切な型として扱われるか。これは、コンパイラがインターフェースのメソッドセットを正確に構築し、メソッドのシグネチャ(特に戻り値の型が再帰的なインターフェースである場合)を正しく解決していることを示します。

これらのテストケースがコンパイルエラーなく成功すれば、Goコンパイラが再帰的なインターフェース定義を正しく処理できることが確認できます。もしバグが存在すれば、コンパイルエラーが発生したり、コンパイラがクラッシュしたりするでしょう。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによって追加されたファイルは以下の2つです。

  1. test/interface/recursive1.go
  2. test/interface/recursive2.go

test/interface/recursive1.go

// true  # used by recursive2

// Copyright 2012 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

package p

type I1 interface {
	F() I2
}

type I2 interface {
	I1
}

test/interface/recursive2.go

// $G $D/recursive1.go && $G $D/$F.go

// Copyright 2012 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

// Check that the mutually recursive types in recursive1.go made it
// intact and with the same meaning, by assigning to or using them.

package main

import "./recursive1"

func main() {
	var i1 p.I1
	var i2 p.I2
	i1 = i2
	i2 = i1
	i1 = i2.F()
	i2 = i1.F()
	_, _ = i1, i2
}

コアとなるコードの解説

recursive1.go

このファイルは、Go言語のパッケージ p 内で、相互に再帰的な2つのインターフェース I1I2 を定義しています。

  • type I1 interface { F() I2 }: インターフェース I1 は、F() というメソッドを1つだけ持ちます。このメソッドは、I2 型の値を返します。
  • type I2 interface { I1 }: インターフェース I2 は、I1 インターフェースを埋め込んでいます。これにより、I2I1 が持つすべてのメソッド(この場合は F() I2)を自動的に継承します。

この定義のポイントは、I1I2 を参照し、I2I1 を参照しているという循環構造です。Goコンパイラがこれらの型を正しく解析し、それぞれのインターフェースの完全なメソッドセットを決定できるかどうかが試されます。特に、I2I1 を埋め込むことで F() I2 メソッドを持つことになり、その戻り値の型が再び I2 であるという点が、コンパイラの型解決ロジックにとって挑戦的なケースとなります。

recursive2.go

このファイルは、recursive1.go で定義されたインターフェース型が、実際のGoプログラムで期待通りに動作するかを検証するためのメインパッケージです。

  • import "./recursive1": recursive1.go で定義された p パッケージをインポートしています。これにより、p.I1p.I2 といった型を使用できるようになります。
  • func main():
    • var i1 p.I1var i2 p.I2: それぞれ p.I1 型と p.I2 型の変数を宣言しています。
    • i1 = i2: p.I2 型の値を p.I1 型の変数に代入しています。I2I1 を埋め込んでいるため、I2I1 のメソッドセットをすべて満たします。したがって、この代入は有効であるべきです。
    • i2 = i1: p.I1 型の値を p.I2 型の変数に代入しています。この代入が有効であるためには、I1I2 のメソッドセットをすべて満たす必要があります。I2I1 を埋め込んでいるため、I2 のメソッドセットは I1 のメソッドセットと、I1 が持つ F() I2 メソッドによって定義される I2 のメソッドセットの和集合になります。この特定のケースでは、I1I2 は相互に代入可能であるべきです。
    • i1 = i2.F(): i2p.I2型)の F() メソッドを呼び出し、その戻り値(p.I2型)を i1p.I1型)に代入しています。これは、I2F()メソッドを正しく継承し、その戻り値の型が正しく解決されることをテストします。
    • i2 = i1.F(): i1p.I1型)の F() メソッドを呼び出し、その戻り値(p.I2型)を i2p.I2型)に代入しています。これは、I1F()メソッドが正しく機能し、その戻り値の型が正しく解決されることをテストします。
    • _, _ = i1, i2: 変数 i1i2 が未使用であることによるコンパイルエラーを避けるための慣用的な記述です。

この recursive2.go がコンパイルエラーなく成功することは、Goコンパイラが recursive1.go で定義された再帰的なインターフェース型を完全に理解し、それらの間の型互換性、メソッド解決、および代入規則を正しく適用できることを証明します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のインターフェースに関する公式ドキュメントやチュートリアル (一般的なGoインターフェースの理解のため)
  • Go言語の型システム、特に埋め込みと再帰に関する議論 (Goコンパイラの内部動作に関する深い理解のため)
  • Go言語のテストフレームワークとテストの慣習 (テストケースの構造と目的の理解のため)
  • Go言語のコンパイラ開発に関するメーリングリストやIssueトラッカー (過去の「recursive interface bug」に関する議論や修正履歴を特定するため)
    • 特に、GoのIssueトラッカーで "recursive interface" や "cyclic interface" といったキーワードで検索すると、関連するバグ報告や議論が見つかる可能性があります。
    • 例: https://github.com/golang/go/issues?q=recursive+interface (このコミットの直接的なIssueではないかもしれませんが、関連する議論が見つかる可能性があります)
  • Go言語のソースコード(src/cmd/gc ディレクトリなど) (コンパイラの型チェックやインターフェース処理の具体的な実装を理解するため)
  • Go言語の仕様書 (インターフェースの定義と型互換性の正式な規則を確認するため)
  • Go言語のブログ記事や技術記事 (Goのインターフェースや型システムに関する一般的な解説のため)# [インデックス 11309] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)における再帰的なインターフェースのバグに対するテストケースを追加するものです。具体的には、相互に参照し合うインターフェース型が正しく処理されることを検証するための新しいテストファイルが導入されています。

コミット

commit c3eddc4503adce7983ba5e38c6a5b4ad3626edf7
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date:   Sat Jan 21 17:02:54 2012 +1100

    gc: test case for recursive interface bug.
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5555066

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c3eddc4503adce7983ba5e38c6a5b4ad3626edf7

元コミット内容

gc: test case for recursive interface bug.

R=rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5555066

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラ(gc)が、再帰的に定義されたインターフェース型を正しく処理できないという既知のバグ、または潜在的なバグを特定し、修正するために作成されました。Go言語の型システムでは、インターフェースが他のインターフェースを埋め込む(embed)ことが可能です。この埋め込みが循環参照、すなわち再帰的な構造を形成する場合、コンパイラが型情報を解決する際に無限ループに陥ったり、誤った型情報を生成したりする可能性があります。

この種のバグは、コンパイラの型チェックフェーズや、型のアロケーション、メソッドセットの構築といった内部処理に影響を及ぼします。コンパイラが再帰的な型定義を適切に展開・解決できないと、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • コンパイルエラー: 正しいコードであるにもかかわらず、コンパイラがエラーを報告する。
  • 不正なコード生成: コンパイルは通るものの、実行時に予期せぬ動作やクラッシュを引き起こすバイナリが生成される。
  • コンパイラのクラッシュ: コンパイル中にコンパイラ自体がパニックを起こして終了する。

このコミットは、このような再帰的なインターフェースの定義がGoコンパイラによって正しく扱われることを保証するための、具体的なテストケースを提供することを目的としています。これにより、将来のコンパイラの変更がこの特定のケースを破壊しないように、回帰テストの網羅性を高めています。

前提知識の解説

Go言語のインターフェース

Go言語におけるインターフェースは、メソッドのシグネチャの集合を定義する型です。Goのインターフェースは「暗黙的」に満たされます。つまり、ある型がインターフェースで定義されたすべてのメソッドを実装していれば、その型はそのインターフェースを満たしていると見なされます。implementsキーワードのような明示的な宣言は不要です。

例:

type Greeter interface {
    SayHello() string
}

type Person struct {
    Name string
}

func (p Person) SayHello() string {
    return "Hello, " + p.Name
}

// Person型はGreeterインターフェースを暗黙的に満たす

インターフェースの埋め込み (Embedding)

Goのインターフェースは、他のインターフェースを「埋め込む」ことができます。これにより、埋め込まれたインターフェースのすべてのメソッドシグネチャが、埋め込む側のインターフェースに含まれることになります。これは、インターフェースの合成や拡張に非常に便利な機能です。

例:

type Reader interface {
    Read(p []byte) (n int, err error)
}

type Writer interface {
    Write(p []byte) (n int, err error)
}

// ReadWriterインターフェースはReaderとWriterのメソッドを両方含む
type ReadWriter interface {
    Reader
    Writer
}

再帰的な型定義

プログラミング言語において、型が自分自身を参照する、または複数の型が相互に参照し合う構造を「再帰的な型定義」と呼びます。データ構造では、リンクリストやツリー構造などでよく見られます。

例(Goの構造体における再帰):

type Node struct {
    Value int
    Next  *Node // Node型が自分自身を指す
}

インターフェースにおいても、埋め込みを通じて再帰的な定義が可能です。例えば、I1I2を埋め込み、I2I1を埋め込むといったケースです。このような再帰的な定義は、コンパイラが型の完全な定義を解決する際に、循環参照を検出して適切に処理する必要があります。処理を誤ると、無限ループやスタックオーバーフロー、あるいは不正確な型情報の構築につながる可能性があります。

このコミットで扱われているのは、まさにこのようなインターフェースの再帰的な定義がGoコンパイラによって正しく扱われるかどうかの検証です。

技術的詳細

このコミットは、Goコンパイラが再帰的なインターフェース型をどのように処理するかをテストするために、2つの新しいテストファイル recursive1.gorecursive2.go を追加しています。

recursive1.go の役割

recursive1.go は、相互に再帰的なインターフェース I1I2 を定義しています。

package p

type I1 interface {
	F() I2 // I1のメソッドFはI2を返す
}

type I2 interface {
	I1 // I2はI1を埋め込む
}

ここで注目すべきは、I1I2をメソッドの戻り値として参照し、同時にI2I1を埋め込んでいる点です。これは典型的な相互再帰のパターンです。コンパイラはこれらの型定義を解析する際に、どちらの型が先に完全に定義されるかを決定する必要がありますが、循環参照があるため、単純な順序付けでは解決できません。コンパイラは、このような状況でも型情報を正しく解決し、無限ループに陥ることなく、それぞれのインターフェースが持つべきメソッドセットを正確に構築できる必要があります。

recursive2.go の役割

recursive2.go は、recursive1.go で定義された再帰的なインターフェース型が、実際にGoプログラム内で正しく使用できることを検証します。

package main

import "./recursive1" // recursive1.goで定義された型をインポート

func main() {
	var i1 p.I1
	var i2 p.I2
	i1 = i2      // I2からI1への代入
	i2 = i1      // I1からI2への代入
	i1 = i2.F()  // I2のF()メソッドの呼び出し結果(I1を返す)をI1に代入
	i2 = i1.F()  // I1のF()メソッドの呼び出し結果(I2を返す)をI2に代入
	_, _ = i1, i2 // 変数の使用を保証(未使用変数エラー回避)
}

このテストファイルは、以下の重要な側面を検証しています。

  1. 型推論と代入: i1 = i2i2 = i1 のような代入が正しく行われるか。これは、コンパイラがI1I2の間の型互換性を正しく理解していることを意味します。I2I1を埋め込んでいるため、I2の値をI1型の変数に代入することは常に可能です。逆の代入(I1からI2へ)は、I1I2のメソッドセットをすべて含んでいる場合にのみ可能です。このテストケースでは、I1F() I2というメソッドを持ち、I2I1を埋め込んでいるため、I2F() I2メソッドも持ちます。したがって、I1I2は互いに代入可能であるべきです。
  2. メソッド呼び出し: i2.F()i1.F() のようなメソッド呼び出しが正しく解決され、その戻り値が適切な型として扱われるか。これは、コンパイラがインターフェースのメソッドセットを正確に構築し、メソッドのシグネチャ(特に戻り値の型が再帰的なインターフェースである場合)を正しく解決していることを示します。

これらのテストケースがコンパイルエラーなく成功すれば、Goコンパイラが再帰的なインターフェース定義を正しく処理できることが確認できます。もしバグが存在すれば、コンパイルエラーが発生したり、コンパイラがクラッシュしたりするでしょう。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによって追加されたファイルは以下の2つです。

  1. test/interface/recursive1.go
  2. test/interface/recursive2.go

test/interface/recursive1.go

// true  # used by recursive2

// Copyright 2012 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

package p

type I1 interface {
	F() I2
}

type I2 interface {
	I1
}

test/interface/recursive2.go

// $G $D/recursive1.go && $G $D/$F.go

// Copyright 2012 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

// Check that the mutually recursive types in recursive1.go made it
// intact and with the same meaning, by assigning to or using them.

package main

import "./recursive1"

func main() {
	var i1 p.I1
	var i2 p.I2
	i1 = i2
	i2 = i1
	i1 = i2.F()
	i2 = i1.F()
	_, _ = i1, i2
}

コアとなるコードの解説

recursive1.go

このファイルは、Go言語のパッケージ p 内で、相互に再帰的な2つのインターフェース I1I2 を定義しています。

  • type I1 interface { F() I2 }: インターフェース I1 は、F() というメソッドを1つだけ持ちます。このメソッドは、I2 型の値を返します。
  • type I2 interface { I1 }: インターフェース I2 は、I1 インターフェースを埋め込んでいます。これにより、I2I1 が持つすべてのメソッド(この場合は F() I2`)を自動的に継承します。

この定義のポイントは、I1I2 を参照し、I2I1 を参照しているという循環構造です。Goコンパイラがこれらの型を正しく解析し、それぞれのインターフェースの完全なメソッドセットを決定できるかどうかが試されます。特に、I2I1 を埋め込むことで F() I2 メソッドを持つことになり、その戻り値の型が再び I2 であるという点が、コンパイラの型解決ロジックにとって挑戦的なケースとなります。

recursive2.go

このファイルは、recursive1.go で定義されたインターフェース型が、実際のGoプログラムで期待通りに動作するかを検証するためのメインパッケージです。

  • import "./recursive1": recursive1.go で定義された p パッケージをインポートしています。これにより、p.I1p.I2 といった型を使用できるようになります。
  • func main():
    • var i1 p.I1var i2 p.I2: それぞれ p.I1 型と p.I2 型の変数を宣言しています。
    • i1 = i2: p.I2 型の値を p.I1 型の変数に代入しています。I2I1 を埋め込んでいるため、I2 のメソッドセットをすべて満たします。したがって、この代入は有効であるべきです。
    • i2 = i1: p.I1 型の値を p.I2 型の変数に代入しています。この代入が有効であるためには、I1I2 のメソッドセットをすべて満たす必要があります。I2I1 を埋め込んでいるため、I2 のメソッドセットは I1 のメソッドセットと、I1 が持つ F() I2 メソッドによって定義される I2 のメソッドセットの和集合になります。この特定のケースでは、I1I2 は相互に代入可能であるべきです。
    • i1 = i2.F(): i2p.I2型)の F() メソッドを呼び出し、その戻り値(p.I2型)を i1p.I1型)に代入しています。これは、I2F()メソッドを正しく継承し、その戻り値の型が正しく解決されることをテストします。
    • i2 = i1.F(): i1p.I1型)の F() メソッドを呼び出し、その戻り値(p.I2型)を i2p.I2型)に代入しています。これは、I1F()メソッドが正しく機能し、その戻り値の型が正しく解決されることをテストします。
    • _, _ = i1, i2: 変数 i1i2 が未使用であることによるコンパイルエラーを避けるための慣用的な記述です。

この recursive2.go がコンパイルエラーなく成功することは、Goコンパイラが recursive1.go で定義された再帰的なインターフェース型を完全に理解し、それらの間の型互換性、メソッド解決、および代入規則を正しく適用できることを証明します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のインターフェースに関する公式ドキュメントやチュートリアル (一般的なGoインターフェースの理解のため)
  • Go言語の型システム、特に埋め込みと再帰に関する議論 (Goコンパイラの内部動作に関する深い理解のため)
  • Go言語のテストフレームワークとテストの慣習 (テストケースの構造と目的の理解のため)
  • Go言語のコンパイラ開発に関するメーリングリストやIssueトラッカー (過去の「recursive interface bug」に関する議論や修正履歴を特定するため)
    • 特に、GoのIssueトラッカーで "recursive interface" や "cyclic interface" といったキーワードで検索すると、関連するバグ報告や議論が見つかる可能性があります。
    • 例: https://github.com/golang/go/issues?q=recursive+interface (このコミットの直接的なIssueではないかもしれませんが、関連する議論が見つかる可能性があります)
  • Go言語のソースコード(src/cmd/gc ディレクトリなど) (コンパイラの型チェックやインターフェース処理の具体的な実装を理解するため)
  • Go言語の仕様書 (インターフェースの定義と型互換性の正式な規則を確認するため)
  • Go言語のブログ記事や技術記事 (Goのインターフェースや型システムに関する一般的な解説のため)