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[インデックス 11376] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムにおける NumCPU 関数の宣言を src/pkg/runtime/extern.go から src/pkg/runtime/debug.go へ移動する変更です。これは、関数の論理的な配置を改善し、コードベースの整理を目的としています。

コミット

commit 0ae9d812c850d6acb4f133773c024b3f49d3f034
Author: David Symonds <dsymonds@golang.org>
Date:   Wed Jan 25 14:13:11 2012 +1100

    runtime: move NumCPU declaration into debug.go.
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5574060

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/0ae9d812c850d6acb4f133773c024b3f49d3f034

元コミット内容

runtime: move NumCPU declaration into debug.go.

変更の背景

Go言語のランタイムパッケージは、Goプログラムの実行を管理する低レベルの機能を提供します。NumCPU 関数は、システム上の論理CPUの数を返す重要な関数です。この関数は、Goのスケジューラが並行処理を効率的に管理するために使用する情報の一つです。

初期のGoランタイムでは、NumCPU のような外部から参照される関数や、C言語との連携に関する宣言が extern.go に集約されていました。しかし、Goの進化とともに、ランタイムのデバッグやプロファイリングに関連する機能が debug.go にまとめられるようになりました。

このコミットの背景には、NumCPU がシステムのデバッグ情報やパフォーマンスチューニングに関連する文脈でより適切に位置づけられるという判断があったと考えられます。extern.go はより一般的な外部インターフェースの宣言を扱うのに対し、debug.go はランタイムの内部状態やデバッグ関連の機能に特化しています。NumCPU のようなシステム情報は、デバッグやパフォーマンス分析の際に頻繁に利用されるため、debug.go への移動は論理的な整理の一環と言えます。

前提知識の解説

  • Go言語のランタイム (runtime): Goプログラムの実行を管理する低レベルのシステムです。ガベージコレクション、ゴルーチンのスケジューリング、メモリ管理、システムコールなどが含まれます。Goプログラムは、コンパイル時にランタイムとリンクされ、ランタイムの機能を利用して動作します。
  • NumCPU 関数: Goの runtime パッケージで提供される関数で、現在のシステムが持つ論理CPUの数を返します。論理CPUとは、物理的なCPUコアの数に加えて、ハイパースレッディングなどの技術によって仮想的に利用可能なCPUの数を指します。この値は、Goのスケジューラが同時に実行できるゴルーチンの数を決定する際のヒントとして利用されます。
  • GOMAXPROCS: runtime パッケージの関数で、Goスケジューラが同時に実行できるOSスレッドの最大数を設定または取得します。NumCPU の値は、GOMAXPROCS のデフォルト値に影響を与えることがあります。
  • src/pkg/runtime/extern.go: Goの初期のランタイムパッケージにおいて、外部(C言語など)からGoランタイムの機能を利用するための宣言や、Goランタイムが外部のシステム機能を利用するための宣言が記述されていたファイルです。extern という名前が示す通り、外部とのインターフェースに関する定義が中心でした。
  • src/pkg/runtime/debug.go: Goのランタイムパッケージにおいて、デバッグやプロファイリングに関連する機能や情報を提供する関数が記述されているファイルです。例えば、GOMAXPROCSFreeOSMemoryReadMemStats など、ランタイムの動作を監視したり調整したりするための関数が含まれます。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更は非常にシンプルで、NumCPU 関数の宣言(シグネチャとコメント)をあるファイルから別のファイルへ移動するだけです。実装自体は変更されていません。

具体的には、以下の変更が行われています。

  1. src/pkg/runtime/extern.go からの削除: extern.go ファイルから NumCPU 関数の宣言とそのコメントが削除されました。

    --- a/src/pkg/runtime/extern.go
    +++ b/src/pkg/runtime/extern.go
    @@ -68,9 +68,6 @@ func funcline_go(*Func, uintptr) (string, int)
     // mid returns the current os thread (m) id.
     func mid() uint32
     
    -// NumCPU returns the number of logical CPUs on the local machine.
    -func NumCPU() int
    -
     // Semacquire waits until *s > 0 and then atomically decrements it.
     // It is intended as a simple sleep primitive for use by the synchronization
     // library and should not be used directly.
    
  2. src/pkg/runtime/debug.go への追加: debug.go ファイルに NumCPU 関数の宣言とそのコメントが追加されました。

    --- a/src/pkg/runtime/debug.go
    +++ b/src/pkg/runtime/debug.go
    @@ -23,6 +23,9 @@ func UnlockOSThread()
     // This call will go away when the scheduler improves.
     func GOMAXPROCS(n int) int
     
    +// NumCPU returns the number of logical CPUs on the local machine.
    +func NumCPU() int
    +
     // Cgocalls returns the number of cgo calls made by the current process.
     func Cgocalls() int64
     
    

この変更は、コードの機能には影響を与えません。NumCPU の実際のロジックは、Goランタイムの内部でCまたはアセンブリ言語で実装されており、その実装は変更されていません。このコミットは、Goのコードベースが成長し、機能がより明確なカテゴリに分類されるようになった結果として行われた、純粋なコード整理とリファクタリングです。

このような変更は、大規模なプロジェクトにおいてコードの可読性、保守性、そして新しい開発者がコードベースを理解しやすくするために非常に重要です。NumCPU がデバッグ関連の機能と並んで配置されることで、開発者はシステム情報へのアクセス方法を探す際に debug.go を参照する可能性が高まります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなるコードの変更箇所は、以下の2つのファイルです。

  1. src/pkg/runtime/debug.go: NumCPU 関数の宣言が追加されました。
  2. src/pkg/runtime/extern.go: NumCPU 関数の宣言が削除されました。

コアとなるコードの解説

NumCPU 関数は、Goプログラムが実行されているマシンの論理CPUの数を返します。これは、Goのランタイムスケジューラがゴルーチンを効率的にOSスレッドにマッピングし、並行処理を最適化するために利用する重要な情報です。

debug.go は、Goランタイムのデバッグやプロファイリングに関連する機能を集約する役割を担っています。NumCPU がこのファイルに移動されたのは、システムのリソース情報が、GOMAXPROCS のようなスケジューラ設定や、Cgocalls のようなパフォーマンス監視情報と同様に、デバッグやパフォーマンスチューニングの文脈で利用されることが多いためです。

一方、extern.go は、Goランタイムが外部のCコードなどと連携するためのインターフェース宣言を主に扱っていました。NumCPU はGoランタイムの内部機能であり、外部インターフェースというよりは、システム情報を提供するユーティリティ関数としての側面が強いため、extern.go からの削除は、このファイルの役割をより明確にするための措置と言えます。

この変更は、Goランタイムの内部構造が成熟し、機能がより専門的なファイルに分割される過程を示しています。これにより、開発者は特定の機能を探す際に、より適切なファイルにアクセスできるようになり、コードベース全体の理解が深まります。

関連リンク

参考にした情報源リンク