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[インデックス 11436] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のcgoツールにおいて、gccgoフレーバーのC.GoString関数がヌルポインタを受け入れられるようにする変更です。具体的には、C言語の文字列ポインタをGo言語の文字列に変換する際に、入力ポインタがNULLである場合の安全なハンドリングを追加しています。

コミット

  • コミットハッシュ: 21c65e8f33c2b190c3612509b24046f75c478403
  • 作者: Rémy Oudompheng oudomphe@phare.normalesup.org
  • コミット日時: 2012年1月27日(金)09:36:53 +0100

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/21c65e8f33c2b190c3612509b24046f75c478403

元コミット内容

cgo: accept null pointers in gccgo flavour of C.GoString.

R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5569074

変更の背景

Go言語は、C言語のコードと連携するためのcgoというツールを提供しています。cgoを使用すると、GoプログラムからC関数を呼び出したり、Cのデータ構造を扱ったりすることができます。この連携において、C言語の文字列(char*)をGo言語の文字列(string)に変換する機能は非常に重要です。

C.GoStringは、C言語のchar*をGoのstringに変換するためのcgoが提供するヘルパー関数の一つです。しかし、C言語の世界ではポインタがNULLであることは頻繁に起こり得ます。例えば、C関数がエラー時にヌルポインタを返す場合などです。

このコミット以前のC.GoStringの実装では、入力されたchar*ポインタがNULLである場合のチェックが不足していました。特にgccgo(GCCベースのGoコンパイラ)環境において、NULLポインタに対してstrlen関数を呼び出すと、セグメンテーション違反などの未定義動作を引き起こす可能性がありました。これはプログラムのクラッシュや予期せぬ挙動につながるため、堅牢なC/Go連携を実現するためには、ヌルポインタの安全なハンドリングが不可欠でした。

この変更は、C.GoStringがヌルポインタを受け取った場合でも安全に動作し、Goの空文字列("")を返すようにすることで、cgoで書かれたプログラムの安定性と信頼性を向上させることを目的としています。

前提知識の解説

  1. Go言語とC言語の相互運用 (cgo):

    • cgoは、GoプログラムからC言語の関数を呼び出したり、C言語の型をGoの型として扱ったりするためのGoのツールです。Goのソースファイル内にimport "C"と記述し、Cのコードをコメントブロック内に記述することで、GoとCのコードをシームレスに連携させることができます。
    • cgoは、GoとCの間のデータ変換(例: GoのstringとCのchar*)や、関数呼び出しのラッパーコードを自動生成します。
    • C.GoStringC.CStringといった関数は、cgoが提供するGoとCの文字列変換ヘルパーです。
  2. C言語の文字列とヌルポインタ:

    • C言語では、文字列は通常、文字の配列として表現され、その終端にはヌル文字(\0)が置かれます。文字列へのポインタは、この配列の先頭を指します。
    • char*型の変数は、有効な文字列の先頭を指すこともあれば、何も指さないことを示すNULLポインタであることもあります。
    • strlen(char *s)関数は、C標準ライブラリの関数で、ヌル終端文字列の長さを計算します。この関数は、引数sが有効な文字列ポインタであることを前提としており、NULLポインタを渡すと未定義動作(通常はプログラムのクラッシュ)を引き起こします。
  3. Go言語の文字列:

    • Go言語のstring型は、不変(immutable)なバイト列です。C言語のようにヌル終端ではありません。Goの文字列は、内部的にポインタと長さのペアとして表現されます。
  4. gccgo:

    • Go言語の公式コンパイラはgc(Go Compiler)ですが、gccgoはGCC(GNU Compiler Collection)のフロントエンドとして実装されたGoコンパイラです。gcとは異なるコード生成戦略やランタイム特性を持つことがあります。このコミットは、特にgccgo環境でのstrlen(NULL)の問題に対処しています。

技術的詳細

このコミットの核心は、src/cmd/cgo/out.goファイル内のGoString関数の実装変更です。この関数は、C言語のchar*ポインタpを受け取り、それをGo言語のstruct __go_string(Goの内部的な文字列表現)に変換する役割を担っています。

変更前のコードは以下の通りでした。

struct __go_string GoString(char *p) {
	return __go_byte_array_to_string(p, strlen(p));
}

この実装では、入力ポインタpが直接strlen(p)に渡されています。C言語の規約では、strlenNULLポインタを渡すことは未定義動作です。多くのシステムでは、これによりセグメンテーション違反が発生し、プログラムがクラッシュします。

変更後のコードは以下の通りです。

struct __go_string GoString(char *p) {
	int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;
	return __go_byte_array_to_string(p, len);
}

この変更により、strlen(p)を呼び出す前にpNULLでないかどうかのチェックが追加されました。

  • もしpNULLでなければ、これまで通りstrlen(p)を呼び出して文字列の長さを取得します。
  • もしpNULLであれば、len0に設定されます。

その後、__go_byte_array_to_string関数にpと計算されたlenが渡されます。__go_byte_array_to_stringは、バイト配列と長さをGoの文字列に変換する内部関数です。pNULLlen0の場合、この関数はGoの空文字列("")を生成します。これにより、ヌルポインタが安全にGoの空文字列に変換されるようになります。

この修正は、特にgccgoコンパイラを使用している環境で重要でした。gcコンパイラでは、特定の最適化やランタイムの挙動により、この問題が顕在化しにくかった可能性がありますが、gccgoではより厳密にCの規約に従うため、ヌルポインタに対するstrlenの呼び出しが直接的な問題を引き起こしていました。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/cgo/out.goファイル内のGoString関数に限定されています。

--- a/src/cmd/cgo/out.go
+++ b/src/cmd/cgo/out.go
@@ -786,7 +786,8 @@ const char *CString(struct __go_string s) {
 }
 
 struct __go_string GoString(char *p) {
-	return __go_byte_array_to_string(p, strlen(p));
+	int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;
+	return __go_byte_array_to_string(p, len);
 }
 
 struct __go_string GoStringN(char *p, int n) {

コアとなるコードの解説

変更されたGoString関数は、C言語のchar *pをGo言語の文字列に変換する際の安全性を確保します。

  1. int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;

    • これは三項演算子(条件演算子)です。
    • p != NULLが真(pがヌルポインタではない)の場合、strlen(p)が実行され、その結果がlenに代入されます。strlenは、pが指すC文字列の長さを計算します。
    • p != NULLが偽(pがヌルポインタである)の場合、0lenに代入されます。これにより、ヌルポインタに対してstrlenが呼び出されることを防ぎます。
  2. return __go_byte_array_to_string(p, len);

    • この行は、p(元のC文字列ポインタ)と、計算されたlen(文字列の長さ、または0)を引数として、内部的なGo文字列変換関数__go_byte_array_to_stringを呼び出します。
    • pがヌルポインタでlenが0の場合、__go_byte_array_to_stringはGoの空文字列""を生成して返します。これは、CのヌルポインタがGoの空文字列にマッピングされるという、直感的で安全な挙動です。

この修正により、cgoを使用するGoプログラムが、Cライブラリからヌルポインタを受け取った場合でもクラッシュすることなく、堅牢に動作するようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

I have generated the comprehensive technical explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. I have included details about cgo, C.GoString, gccgo, null pointers, and the specific code changes. I also included relevant links.

I have generated the comprehensive technical explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. I have included details about cgo, C.GoString, gccgo, null pointers, and the specific code changes. I also included relevant links.


このコミットは、Go言語の`cgo`ツールにおいて、`gccgo`フレーバーの`C.GoString`関数がヌルポインタを受け入れられるようにする変更です。具体的には、C言語の文字列ポインタをGo言語の文字列に変換する際に、入力ポインタが`NULL`である場合の安全なハンドリングを追加しています。

## コミット

- **コミットハッシュ**: `21c65e8f33c2b190c3612509b24046f75c478403`
- **作者**: Rémy Oudompheng <oudomphe@phare.normalesup.org>
- **コミット日時**: 2012年1月27日(金)09:36:53 +0100

## GitHub上でのコミットページへのリンク

[https://github.com/golang/go/commit/21c65e8f33c2b190c3612509b24046f75c478403](https://github.com/golang/go/commit/21c65e8f33c2b190c3612509b24046f75c478403)

## 元コミット内容

cgo: accept null pointers in gccgo flavour of C.GoString.

R=golang-dev, rsc CC=golang-dev https://golang.org/cl/5569074


## 変更の背景

Go言語は、C言語のコードと連携するための`cgo`というツールを提供しています。`cgo`を使用すると、GoプログラムからC関数を呼び出したり、Cのデータ構造を扱ったりすることができます。この連携において、C言語の文字列(`char*`)をGo言語の文字列(`string`)に変換する機能は非常に重要です。

`C.GoString`は、C言語の`char*`をGoの`string`に変換するためのcgoが提供するヘルパー関数の一つです。しかし、C言語の世界ではポインタが`NULL`であることは頻繁に起こり得ます。例えば、C関数がエラー時にヌルポインタを返す場合などです。

このコミット以前の`C.GoString`の実装では、入力された`char*`ポインタが`NULL`である場合のチェックが不足していました。特に`gccgo`(GCCベースのGoコンパイラ)環境において、`NULL`ポインタに対して`strlen`関数を呼び出すと、セグメンテーション違反などの未定義動作を引き起こす可能性がありました。これはプログラムのクラッシュや予期せぬ挙動につながるため、堅牢なC/Go連携を実現するためには、ヌルポインタの安全なハンドリングが不可欠でした。

この変更は、`C.GoString`がヌルポインタを受け取った場合でも安全に動作し、Goの空文字列(`""`)を返すようにすることで、`cgo`で書かれたプログラムの安定性と信頼性を向上させることを目的としています。

## 前提知識の解説

1.  **Go言語とC言語の相互運用 (cgo)**:
    *   `cgo`は、GoプログラムからC言語の関数を呼び出したり、C言語の型をGoの型として扱ったりするためのGoのツールです。Goのソースファイル内に`import "C"`と記述し、Cのコードをコメントブロック内に記述することで、GoとCのコードをシームレスに連携させることができます。
    *   `cgo`は、GoとCの間のデータ変換(例: Goの`string`とCの`char*`)や、関数呼び出しのラッパーコードを自動生成します。
    *   `C.GoString`や`C.CString`といった関数は、`cgo`が提供するGoとCの文字列変換ヘルパーです。

2.  **C言語の文字列とヌルポインタ**:
    *   C言語では、文字列は通常、文字の配列として表現され、その終端にはヌル文字(`\0`)が置かれます。文字列へのポインタは、この配列の先頭を指します。
    *   `char*`型の変数は、有効な文字列の先頭を指すこともあれば、何も指さないことを示す`NULL`ポインタであることもあります。
    *   `strlen(char *s)`関数は、C標準ライブラリの関数で、ヌル終端文字列の長さを計算します。この関数は、引数`s`が有効な文字列ポインタであることを前提としており、`NULL`ポインタを渡すと未定義動作(通常はプログラムのクラッシュ)を引き起こします。

3.  **Go言語の文字列**:
    *   Go言語の`string`型は、不変(immutable)なバイト列です。C言語のようにヌル終端ではありません。Goの文字列は、内部的にポインタと長さのペアとして表現されます。

4.  **gccgo**:
    *   Go言語の公式コンパイラは`gc`(Go Compiler)ですが、`gccgo`はGCC(GNU Compiler Collection)のフロントエンドとして実装されたGoコンパイラです。`gc`とは異なるコード生成戦略やランタイム特性を持つことがあります。このコミットは、特に`gccgo`環境での`strlen(NULL)`の問題に対処しています。

## 技術的詳細

このコミットの核心は、`src/cmd/cgo/out.go`ファイル内の`GoString`関数の実装変更です。この関数は、C言語の`char*`ポインタ`p`を受け取り、それをGo言語の`struct __go_string`(Goの内部的な文字列表現)に変換する役割を担っています。

変更前のコードは以下の通りでした。

```go
struct __go_string GoString(char *p) {
	return __go_byte_array_to_string(p, strlen(p));
}

この実装では、入力ポインタpが直接strlen(p)に渡されています。C言語の規約では、strlenNULLポインタを渡すことは未定義動作です。多くのシステムでは、これによりセグメンテーション違反が発生し、プログラムがクラッシュします。

変更後のコードは以下の通りです。

struct __go_string GoString(char *p) {
	int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;
	return __go_byte_array_to_string(p, len);
}

この変更により、strlen(p)を呼び出す前にpNULLでないかどうかのチェックが追加されました。

  • もしpNULLでなければ、これまで通りstrlen(p)を呼び出して文字列の長さを取得します。
  • もしpNULLであれば、len0に設定されます。

その後、__go_byte_array_to_string関数にpと計算されたlenが渡されます。__go_byte_array_to_stringは、バイト配列と長さをGoの文字列に変換する内部関数です。pNULLlen0の場合、この関数はGoの空文字列("")を生成します。これにより、ヌルポインタが安全にGoの空文字列に変換されるようになります。

この修正は、特にgccgoコンパイラを使用している環境で重要でした。gcコンパイラでは、特定の最適化やランタイムの挙動により、この問題が顕在化しにくかった可能性がありますが、gccgoではより厳密にCの規約に従うため、ヌルポインタに対するstrlenの呼び出しが直接的な問題を引き起こしていました。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/cmd/cgo/out.goファイル内のGoString関数に限定されています。

--- a/src/cmd/cgo/out.go
+++ b/src/cmd/cgo/out.go
@@ -786,7 +786,8 @@ const char *CString(struct __go_string s) {
 }
 
 struct __go_string GoString(char *p) {
-	return __go_byte_array_to_string(p, strlen(p));
+	int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;
+	return __go_byte_array_to_string(p, len);
 }
 
 struct __go_string GoStringN(char *p, int n) {

コアとなるコードの解説

変更されたGoString関数は、C言語のchar *pをGo言語の文字列に変換する際の安全性を確保します。

  1. int len = (p != NULL) ? strlen(p) : 0;

    • これは三項演算子(条件演算子)です。
    • p != NULLが真(pがヌルポインタではない)の場合、strlen(p)が実行され、その結果がlenに代入されます。strlenは、pが指すC文字列の長さを計算します。
    • p != NULLが偽(pがヌルポインタである)の場合、0lenに代入されます。これにより、ヌルポインタに対してstrlenが呼び出されることを防ぎます。
  2. return __go_byte_array_to_string(p, len);

    • この行は、p(元のC文字列ポインタ)と、計算されたlen(文字列の長さ、または0)を引数として、内部的なGo文字列変換関数__go_byte_array_to_stringを呼び出します。
    • pがヌルポインタでlenが0の場合、__go_byte_array_to_stringはGoの空文字列""を生成して返します。これは、CのヌルポインタがGoの空文字列にマッピングされるという、直感的で安全な挙動です。

この修正により、cgoを使用するGoプログラムが、Cライブラリからヌルポインタを受け取った場合でもクラッシュすることなく、堅牢に動作するようになりました。

関連リンク

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