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[インデックス 1154] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストスイートの一部である test/golden.out ファイルを更新するものです。golden.out ファイルは、Goコンパイラ(6g)やその他のツールが特定のバグテストケースに対して出力する、期待されるエラーメッセージや診断情報の「ゴールデンマスター」として機能します。このファイルは、コンパイラの挙動が意図せず変更されていないことを確認するためのリグレッションテストにおいて非常に重要です。

コミット

このコミットは、test/golden.out ファイルの内容を更新し、既存のテストケース (bugs/bug105.go および bugs/bug117.go) の期待されるエラーメッセージの行番号を修正し、新たに bugs/bug124.go のテスト結果を追加しています。これは、コンパイラの修正やテストケース自体の変更に伴い、期待される出力が変化したことを反映するためのものです。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c78005f648257a251ab659b0c738cab9d6b83b9b

元コミット内容

update golden.out

R=r
OCL=19455
CL=19455
---
 test/golden.out | 7 +++++--
 1 file changed, 5 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/test/golden.out b/test/golden.out
index 7fc34185fe..3e113a375b 100644
--- a/test/golden.out
+++ b/test/golden.out
@@ -125,7 +125,7 @@ BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug104.go

 =========== bugs/bug105.go
 bugs/bug105.go:8: P: undefined
-bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -139,7 +139,7 @@ BUG: bug115 should compile

 =========== bugs/bug117.go
 bugs/bug117.go:9: undefined DOT get on PS
-bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -166,6 +166,9 @@ BUG: compilation succeeds incorrectly
 =========== bugs/bug123.go
 BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug123.go

+=========== bugs/bug124.go
+BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug124.go
+
 =========== fixedbugs/bug016.go
 fixedbugs/bug016.go:7: overflow converting constant to uint

変更の背景

このコミットの背景には、Goコンパイラ(6g)のバグ修正、機能追加、または既存のテストケースの調整があったと考えられます。golden.out ファイルは、コンパイラの出力が期待通りであることを検証するためのリグレッションテストの一部として機能します。

具体的には、以下の変更が考えられます。

  1. 既存のバグテストケースの修正: bugs/bug105.gobugs/bug117.go のエラーメッセージの行番号が変更されています。これは、これらのバグテストケースのソースコード自体が修正されたか、またはコンパイラがエラーを報告する際の内部的なロジックが改善され、より正確な行番号を指すようになったためと考えられます。例えば、コメントの追加や削除、コードの整形などによって、エラーが発生する物理的な行が移動した可能性があります。
  2. 新しいバグテストケースの追加: bugs/bug124.go のエントリが追加されています。これは、新たに発見されたコンパイラのバグを追跡するために、新しいテストケースが追加されたことを示しています。BUG: errchk: command succeeded unexpectedly という記述は、このテストケースが本来コンパイルエラーになるべきだが、現在のコンパイラでは誤って成功してしまう、という既知のバグを記録していることを意味します。これは、将来の修正のためにバグを特定し、リグレッションテストでその修正が正しく適用されたことを確認するための重要なステップです。

これらの変更は、Goコンパイラの安定性と正確性を維持するための継続的な開発プロセスの一環です。

前提知識の解説

Go言語のコンパイラ (6g)

Go言語の初期のツールチェーンでは、アーキテクチャごとに異なるコンパイラが提供されていました。6g は、AMD64 (x86-64) アーキテクチャ向けのGoコンパイラを指します。同様に、8g はARM、5g はx86 (32-bit) 向けでした。これらのコンパイラは、Goのソースコードを機械語に変換する役割を担っていました。現在では、Goのツールチェーンはより統合され、go build コマンドが適切なコンパイラを自動的に選択・実行します。しかし、このコミットが作成された2008年当時は、6g のような特定のコンパイラコマンドが直接テストスクリプトなどで使用されることが一般的でした。

ゴールデンファイルテスト (Golden File Testing)

ゴールデンファイルテストは、プログラムの出力が時間の経過とともに変化しないことを保証するためのテスト手法です。特に、コンパイラ、パーサー、コードジェネレータなど、複雑なテキスト出力を生成するツールにおいて非常に有効です。

  • 仕組み:
    1. テスト対象のプログラムを実行し、その出力を「ゴールデンファイル」(または「参照ファイル」)として保存します。
    2. その後のテスト実行では、プログラムの現在の出力を生成し、それをゴールデンファイルの内容と比較します。
    3. 両者が完全に一致すればテストは成功です。一致しない場合、テストは失敗し、プログラムの出力が意図せず変更されたことを示します。
  • golden.out の役割: このコミットにおける test/golden.out は、Goコンパイラが特定のバグテストケースに対して生成するエラーメッセージや診断情報の「期待される出力」を記録したゴールデンファイルです。このファイルが存在することで、コンパイラの変更が既存のバグテストケースの出力に予期せぬ影響を与えていないかを自動的に検証できます。
  • BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: この記述は、テストフレームワークが特定のコマンド(例: 6g bugs/bug124.go)の実行結果をチェックする際に使用されるマーカーです。errchk はエラーチェックを意味し、command succeeded unexpectedly は、そのコマンドが本来エラーを出すべきなのに、なぜか成功してしまった、という状況を示します。これは、コンパイラにまだ修正されていないバグが存在し、そのバグによって本来検出されるべきエラーが検出されていないことをテストスイートが認識している状態を表します。

リグレッションテスト (Regression Testing)

リグレッションテストは、ソフトウェアの変更(バグ修正、新機能追加など)が、既存の機能に悪影響を与えていないことを確認するためのテストです。ゴールデンファイルテストは、リグレッションテストの一種として非常に効果的です。このコミットのように golden.out を更新することは、コンパイラの変更が既存のテストケースの出力に与える影響を正確に反映させ、将来のリグレッションを検出するための基盤を更新する行為と言えます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のテストインフラストラクチャにおける golden.out ファイルの役割と、コンパイラの開発サイクルにおけるその重要性を示しています。

test/golden.out ファイルは、Goプロジェクトの test ディレクトリ内に配置されており、主にコンパイラやリンカなどのツールが特定の入力に対して生成する診断メッセージ(エラー、警告など)の期待値を記録するために使用されます。このファイルは、errchk などのテストユーティリティによって参照され、実際のツール出力と比較されます。

変更点から読み取れる技術的詳細は以下の通りです。

  1. エラーメッセージの行番号の調整:

    • bugs/bug105.gobugs/bug117.go のエントリで、エラーメッセージの行番号が 9 から 8 に変更されています。
    • これは、これらのソースファイル内でエラーが発生するコードの物理的な位置が変更された(例: コードの追加・削除、コメントの調整など)、またはコンパイラのエラー報告ロジックが改善され、より正確な行番号を指すようになったことを示唆しています。コンパイラがシンタックスツリーや抽象構文木 (AST) を構築する際に、ノードのソース位置情報が更新された結果である可能性もあります。
    • illegal types for operand: RETURN は、return ステートメントのオペランドの型が不正であることを示しており、Goの型システムにおける厳密なチェックが働いていることを示しています。
  2. 新しいバグの追跡 (bugs/bug124.go):

    • =========== bugs/bug124.go のセクションが追加され、BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: 6g bugs/bug124.go と記述されています。
    • これは、bugs/bug124.go という新しいテストケースが追加されたことを意味します。このテストケースは、Goコンパイラ 6g が本来コンパイルエラーを出すべきコードを含んでいるにもかかわらず、現在のバージョンでは誤ってコンパイルに成功してしまうという、既知のバグを表現しています。
    • このようなエントリは、テスト駆動開発 (TDD) やバグ駆動開発 (BDD) のアプローチにおいて一般的です。まずバグを再現するテストケースを作成し、それが失敗すること(この場合は「成功してしまう」ことが失敗)を確認します。その後、バグを修正し、テストが期待通りに成功すること(この場合は「エラーを出す」ことが成功)を確認します。このコミット時点では、バグはまだ修正されていない状態であり、その事実を golden.out に記録しています。

これらの変更は、Goコンパイラの継続的な品質保証プロセスの一部であり、コンパイラの正確性と堅牢性を高めるための重要なステップです。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更されたコアとなるファイルは test/golden.out のみです。

diff --git a/test/golden.out b/test/golden.out
index 7fc34185fe..3e113a375b 100644
--- a/test/golden.out
+++ b/test/golden.out
@@ -125,7 +125,7 @@ BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug104.go

 =========== bugs/bug105.go
 bugs/bug105.go:8: P: undefined
-bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -139,7 +139,7 @@ BUG: bug115 should compile

 =========== bugs/bug117.go
 bugs/bug117.go:9: undefined DOT get on PS
-bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -166,6 +166,9 @@ BUG: compilation succeeds incorrectly
 =========== bugs/bug123.go
 BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug123.go

+=========== bugs/bug124.go
+BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug124.go
+
 =========== fixedbugs/bug016.go
 fixedbugs/bug016.go:7: overflow converting constant to uint

コアとなるコードの解説

test/golden.out は、Goプロジェクトのテストスイートの一部として機能するテキストファイルです。このファイルは、特定のテストケース(特にコンパイラのエラーチェックに関連するもの)を実行した際に期待される出力を記録しています。

変更内容を具体的に見ていきます。

  1. bugs/bug105.go の変更:

    • -bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
    • +bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
    • これは、bugs/bug105.go ファイル内で illegal types for operand: RETURN というエラーが発生する行が、以前は9行目だったものが、8行目に変更されたことを示しています。これは、bugs/bug105.go のソースコード自体が修正され、エラーが発生する物理的な行が移動したためと考えられます。
  2. bugs/bug117.go の変更:

    • -bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
    • +bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
    • 同様に、bugs/bug117.go ファイル内で illegal types for operand: RETURN というエラーが発生する行が、以前は10行目だったものが、9行目に変更されました。これも、ソースコードの変更によるものです。
  3. bugs/bug124.go の追加:

    • +=========== bugs/bug124.go
    • +BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: 6g bugs/bug124.go
    • このセクションの追加は、bugs/bug124.go という新しいテストケースが導入されたことを意味します。このテストケースは、6g コンパイラでコンパイルされると、本来エラーを出すべきなのに、なぜか成功してしまうという既知のバグを追跡するためのものです。BUG: errchk: command succeeded unexpectedly という記述は、このテストが「期待通りに失敗しない」(つまり、バグによって成功してしまう)ことを明示的に示しており、このバグが修正されるまでこの状態が続くことを golden.out に記録しています。

これらの変更は、Goコンパイラの開発において、テストスイートが常に最新のコンパイラの挙動を正確に反映していることを保証するためのメンテナンス作業の一環です。これにより、将来のコンパイラの変更が既存のバグや期待されるエラー出力に予期せぬ影響を与えないかを、自動的に検出できるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の初期のコンパイラ (6g, 8g, 5g) に関する情報:
  • ゴールデンファイルテストの概念:
    • 一般的なソフトウェアテストの文脈で「ゴールデンファイルテスト」や「スナップショットテスト」として検索すると多くの情報が見つかります。
    • 例: https://martinfowler.com/bliki/ApprovalTests.html (Approval Testsはゴールデンファイルテストの一種)
  • Gitの diff コマンドの出力形式:
  • Go言語のバグトラッキングシステム (このコミットが参照している可能性のあるバグ):
    • https://go.dev/issue/ (GoのIssue Tracker)
    • 具体的な bug105, bug117, bug124 の詳細は、当時のGoのIssue Trackerやメーリングリストのアーカイブで検索することで見つかる可能性があります。

[インデックス 1154] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストスイートの一部である test/golden.out ファイルを更新するものです。golden.out ファイルは、Goコンパイラ(6g)やその他のツールが特定のバグテストケースに対して出力する、期待されるエラーメッセージや診断情報の「ゴールデンマスター」として機能します。このファイルは、コンパイラの挙動が意図せず変更されていないことを確認するためのリグレッションテストにおいて非常に重要です。

コミット

このコミットは、test/golden.out ファイルの内容を更新し、既存のテストケース (bugs/bug105.go および bugs/bug117.go) の期待されるエラーメッセージの行番号を修正し、新たに bugs/bug124.go のテスト結果を追加しています。これは、コンパイラの修正やテストケース自体の変更に伴い、期待される出力が変化したことを反映するためのものです。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c78005f648257a251ab659b0c738cab9d6b83b9b

元コミット内容

update golden.out

R=r
OCL=19455
CL=19455
---
 test/golden.out | 7 +++++--
 1 file changed, 5 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/test/golden.out b/test/golden.out
index 7fc34185fe..3e113a375b 100644
--- a/test/golden.out
+++ b/test/golden.out
@@ -125,7 +125,7 @@ BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug104.go

 =========== bugs/bug105.go
 bugs/bug105.go:8: P: undefined
-bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -139,7 +139,7 @@ BUG: bug115 should compile

 =========== bugs/bug117.go
 bugs/bug117.go:9: undefined DOT get on PS
-bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -166,6 +166,9 @@ BUG: compilation succeeds incorrectly
 =========== bugs/bug123.go
 BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug123.go

+=========== bugs/bug124.go
+BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug124.go
+
 =========== fixedbugs/bug016.go
 fixedbugs/bug016.go:7: overflow converting constant to uint

変更の背景

このコミットの背景には、Goコンパイラ(6g)のバグ修正、機能追加、または既存のテストケースの調整があったと考えられます。golden.out ファイルは、コンパイラの出力が期待通りであることを検証するためのリグレッションテストの一部として機能します。

具体的には、以下の変更が考えられます。

  1. 既存のバグテストケースの修正: bugs/bug105.gobugs/bug117.go のエラーメッセージの行番号が変更されています。これは、これらのバグテストケースのソースコード自体が修正されたか、またはコンパイラがエラーを報告する際の内部的なロジックが改善され、より正確な行番号を指すようになったためと考えられます。例えば、コメントの追加や削除、コードの整形などによって、エラーが発生する物理的な行が移動した可能性があります。
  2. 新しいバグテストケースの追加: bugs/bug124.go のエントリが追加されています。これは、新たに発見されたコンパイラのバグを追跡するために、新しいテストケースが追加されたことを示しています。BUG: errchk: command succeeded unexpectedly という記述は、このテストケースが本来コンパイルエラーになるべきだが、現在のコンパイラでは誤って成功してしまう、という既知のバグを記録していることを意味します。これは、将来の修正のためにバグを特定し、リグレッションテストでその修正が正しく適用されたことを確認するための重要なステップです。

これらの変更は、Goコンパイラの安定性と正確性を維持するための継続的な開発プロセスの一環です。

前提知識の解説

Go言語のコンパイラ (6g)

Go言語の初期のツールチェーンでは、アーキテクチャごとに異なるコンパイラが提供されていました。6g は、AMD64 (x86-64) アーキテクチャ向けのGoコンパイラを指します。同様に、8g はARM、5g はx86 (32-bit) 向けでした。これらのコンパイラは、Goのソースコードを機械語に変換する役割を担っていました。

Go 1.5(2015年リリース)以降、これらのアーキテクチャ固有のコンパイラ名(6g, 8g, 5g など)は非推奨となり、単一の統合された go tool compile コマンドに置き換えられました。このコマンドは、GOARCH および GOOS 環境変数に基づいてターゲットアーキテクチャとオペレーティングシステムを自動的に判断し、コンパイルプロセスを簡素化し、クロスコンパイル機能を強化しました。また、Go 1.5では、コンパイラとランタイム自体がGoで書き直され、Goツールチェーン内でのCコンパイラへの依存がなくなりました。しかし、このコミットが作成された2008年当時は、6g のような特定のコンパイラコマンドが直接テストスクリプトなどで使用されることが一般的でした。

ゴールデンファイルテスト (Golden File Testing)

ゴールデンファイルテストは、プログラムの出力が時間の経過とともに変化しないことを保証するためのテスト手法です。特に、コンパイラ、パーサー、コードジェネレータなど、複雑なテキスト出力を生成するツールにおいて非常に有効です。

  • 仕組み:
    1. テスト対象のプログラムを実行し、その出力を「ゴールデンファイル」(または「参照ファイル」)として保存します。
    2. その後のテスト実行では、プログラムの現在の出力を生成し、それをゴールデンファイルの内容と比較します。
    3. 両者が完全に一致すればテストは成功です。一致しない場合、テストは失敗し、プログラムの出力が意図せず変更されたことを示します。
  • golden.out の役割: このコミットにおける test/golden.out は、Goコンパイラが特定のバグテストケースに対して生成するエラーメッセージや診断情報の「期待される出力」を記録したゴールデンファイルです。このファイルが存在することで、コンパイラの変更が既存のバグテストケースの出力に予期せぬ影響を与えていないかを自動的に検証できます。
  • BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: この記述は、テストフレームワークが特定のコマンド(例: 6g bugs/bug124.go)の実行結果をチェックする際に使用されるマーカーです。errchk はエラーチェックを意味し、command succeeded unexpectedly は、そのコマンドが本来エラーを出すべきなのに、なぜか成功してしまった、という状況を示します。これは、コンパイラにまだ修正されていないバグが存在し、そのバグによって本来検出されるべきエラーが検出されていないことをテストスイートが認識している状態を表します。

リグレッションテスト (Regression Testing)

リグレッションテストは、ソフトウェアの変更(バグ修正、新機能追加など)が、既存の機能に悪影響を与えていないことを確認するためのテストです。ゴールデンファイルテストは、リグレッションテストの一種として非常に効果的です。このコミットのように golden.out を更新することは、コンパイラの変更が既存のテストケースの出力に与える影響を正確に反映させ、将来のリグレッションを検出するための基盤を更新する行為と言えます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のテストインフラストラクチャにおける golden.out ファイルの役割と、コンパイラの開発サイクルにおけるその重要性を示しています。

test/golden.out ファイルは、Goプロジェクトの test ディレクトリ内に配置されており、主にコンパイラやリンカなどのツールが特定の入力に対して生成する診断メッセージ(エラー、警告など)の期待値を記録するために使用されます。このファイルは、errchk などのテストユーティリティによって参照され、実際のツール出力と比較されます。

変更点から読み取れる技術的詳細は以下の通りです。

  1. エラーメッセージの行番号の調整:

    • bugs/bug105.gobugs/bug117.go のエントリで、エラーメッセージの行番号が 9 から 8 に変更されています。
    • これは、これらのソースファイル内でエラーが発生するコードの物理的な位置が変更された(例: コードの追加・削除、コメントの調整など)、またはコンパイラのエラー報告ロジックが改善され、より正確な行番号を指すようになったことを示唆しています。コンパイラがシンタックスツリーや抽象構文木 (AST) を構築する際に、ノードのソース位置情報が更新された結果である可能性もあります。
    • illegal types for operand: RETURN は、return ステートメントのオペランドの型が不正であることを示しており、Goの型システムにおける厳密なチェックが働いていることを示しています。
  2. 新しいバグの追跡 (bugs/bug124.go):

    • =========== bugs/bug124.go のセクションが追加され、BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: 6g bugs/bug124.go と記述されています。
    • これは、bugs/bug124.go という新しいテストケースが追加されたことを意味します。このテストケースは、Goコンパイラ 6g が本来コンパイルエラーを出すべきコードを含んでいるにもかかわらず、現在のバージョンでは誤ってコンパイルに成功してしまうという、既知のバグを表現しています。
    • このようなエントリは、テスト駆動開発 (TDD) やバグ駆動開発 (BDD) のアプローチにおいて一般的です。まずバグを再現するテストケースを作成し、それが失敗すること(この場合は「成功してしまう」ことが失敗)を確認します。その後、バグを修正し、テストが期待通りに成功すること(この場合は「エラーを出す」ことが成功)を確認します。このコミット時点では、バグはまだ修正されていない状態であり、その事実を golden.out に記録しています。

これらの変更は、Goコンパイラの継続的な品質保証プロセスの一部であり、コンパイラの正確性と堅牢性を高めるための重要なステップです。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更されたコアとなるファイルは test/golden.out のみです。

diff --git a/test/golden.out b/test/golden.out
index 7fc34185fe..3e113a375b 100644
--- a/test/golden.out
+++ b/test/golden.out
@@ -125,7 +125,7 @@ BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug104.go

 =========== bugs/bug105.go
 bugs/bug105.go:8: P: undefined
-bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -139,7 +139,7 @@ BUG: bug115 should compile

 =========== bugs/bug117.go
 bugs/bug117.go:9: undefined DOT get on PS
-bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
+bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
 	int
 BUG: should compile

@@ -166,6 +166,9 @@ BUG: compilation succeeds incorrectly
 =========== bugs/bug123.go
 BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug123.go

+=========== bugs/bug124.go
+BUG: errchk: command succeeded unexpectedly:  6g bugs/bug124.go
+
 =========== fixedbugs/bug016.go
 fixedbugs/bug016.go:7: overflow converting constant to uint

コアとなるコードの解説

test/golden.out は、Goプロジェクトのテストスイートの一部として機能するテキストファイルです。このファイルは、特定のテストケース(特にコンパイラのエラーチェックに関連するもの)を実行した際に期待される出力を記録しています。

変更内容を具体的に見ていきます。

  1. bugs/bug105.go の変更:

    • -bugs/bug105.go:9: illegal types for operand: RETURN
    • +bugs/bug105.go:8: illegal types for operand: RETURN
    • これは、bugs/bug105.go ファイル内で illegal types for operand: RETURN というエラーが発生する行が、以前は9行目だったものが、8行目に変更されたことを示しています。これは、bugs/bug105.go のソースコード自体が修正され、エラーが発生する物理的な行が移動したためと考えられます。
  2. bugs/bug117.go の変更:

    • -bugs/bug117.go:10: illegal types for operand: RETURN
    • +bugs/bug117.go:9: illegal types for operand: RETURN
    • 同様に、bugs/bug117.go ファイル内で illegal types for operand: RETURN というエラーが発生する行が、以前は10行目だったものが、9行目に変更されました。これも、ソースコードの変更によるものです。
  3. bugs/bug124.go の追加:

    • +=========== bugs/bug124.go
    • +BUG: errchk: command succeeded unexpectedly: 6g bugs/bug124.go
    • このセクションの追加は、bugs/bug124.go という新しいテストケースが導入されたことを意味します。このテストケースは、6g コンパイラでコンパイルされると、本来エラーを出すべきなのに、なぜか成功してしまうという既知のバグを追跡するためのものです。BUG: errchk: command succeeded unexpectedly という記述は、このテストが「期待通りに失敗しない」(つまり、バグによって成功してしまう)ことを明示的に示しており、このバグが修正されるまでこの状態が続くことを golden.out に記録しています。

これらの変更は、Goコンパイラの開発において、テストスイートが常に最新のコンパイラの挙動を正確に反映していることを保証するためのメンテナンス作業の一環です。これにより、将来のコンパイラの変更が既存のバグや期待されるエラー出力に予期せぬ影響を与えないかを、自動的に検出できるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク