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[インデックス 11545] ファイルの概要

この解説は、Go言語のgo/buildパッケージにおけるMakefilesyslist.goの変更に関するコミット(インデックス11545)について、その背景、技術的詳細、および影響を包括的に説明します。

コミット

  • コミットハッシュ: 55779917f35b4a6c85ad4d750719cffb53299849
  • 作者: Andrew Gerrand adg@golang.org
  • 日付: 2012年2月2日 木曜日 08:52:22 +1100
  • コミットメッセージ:
    go/build: put a space between 'generated by make' and package statement
    
    This prevents the message from showing up in godoc.
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5610046
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/55779917f35b4a6c85ad4d750719cffb53299849

元コミット内容

commit 55779917f35b4a6c85ad4d750719cffb53299849
Author: Andrew Gerrand <adg@golang.org>
Date:   Thu Feb 2 08:52:22 2012 +1100

    go/build: put a space between 'generated by make' and package statement
    
    This prevents the message from showing up in godoc.
    
    R=rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5610046
---
 src/pkg/go/build/Makefile   | 1 +
 src/pkg/go/build/syslist.go | 4 +---
 2 files changed, 2 insertions(+), 3 deletions(-)

diff --git a/src/pkg/go/build/Makefile b/src/pkg/go/build/Makefile
index c7ef6542e5..3bb3912cbb 100644
--- a/src/pkg/go/build/Makefile
+++ b/src/pkg/go/build/Makefile
@@ -4,6 +4,7 @@
 
 syslist.go: ../../../Make.inc Makefile
 	echo '// Generated automatically by make.' >$@
+	echo >>$@
 	echo 'package build' >>$@
 	echo >>$@
 	echo 'const goosList = "$(GOOS_LIST)"' >>$@
diff --git a/src/pkg/go/build/syslist.go b/src/pkg/go/build/syslist.go
index ea21f3c74b..8a2db8fa33 100644
--- a/src/pkg/go/build/syslist.go
+++ b/src/pkg/go/build/syslist.go
@@ -1,6 +1,4 @@
-// Copyright 2011 The Go Authors.  All rights reserved.\n-// Use of this source code is governed by a BSD-style\n-// license that can be found in the LICENSE file.\n+// Generated automatically by make.\n \n package build\n \n```

## 変更の背景

このコミットの主な目的は、`go/build/syslist.go`ファイルに自動生成されたコメント「`// Generated automatically by make.`」がGoのドキュメンテーションツールである`godoc`によって表示されないようにすることです。

`godoc`はGoのソースコードを解析し、コメントからドキュメンテーションを生成します。この際、特定のルールに従ってコメントを解釈します。特に、パッケージ宣言の直前にあるコメントは、そのパッケージのドキュメンテーションとして扱われる傾向があります。

`syslist.go`は`Makefile`によって自動生成されるファイルであり、その冒頭には生成元を示すコメントが含まれていました。このコメントが`godoc`によってパッケージドキュメンテーションの一部として誤って解釈されることを防ぐため、コメントとパッケージ宣言の間に空白行を挿入する変更が行われました。これにより、`godoc`がコメントをパッケージドキュメンテーションとして認識しなくなり、生成されたドキュメントの品質が向上します。

## 前提知識の解説

### `godoc`

`godoc`はGo言語の公式ドキュメンテーションツールです。Goのソースコードからドキュメンテーションを抽出し、HTML形式で表示したり、コマンドラインで参照したりすることができます。`godoc`は、コメントの配置や書式に厳密なルールを適用し、それに基づいてドキュメントを生成します。

*   **パッケージレベルのドキュメンテーション**: `package`キーワードの直前にあるコメントは、そのパッケージ全体のドキュメンテーションとして扱われます。
*   **宣言レベルのドキュメンテーション**: 関数、変数、定数、型などの宣言の直前にあるコメントは、その宣言のドキュメンテーションとして扱われます。
*   **空白行の重要性**: `godoc`は、コメントブロックとコードの間に空白行があるかどうかを重要な要素として認識します。空白行がある場合、コメントはコードとは独立した「フリーコメント」として扱われ、ドキュメンテーションには含まれないことがあります。

### `go/build`パッケージ

`go/build`パッケージは、Goのビルドシステムの中核をなすパッケージの一つです。Goのソースファイルやパッケージに関する情報を収集し、ビルドプロセスを管理するために使用されます。具体的には、Goのソースファイルの解析、依存関係の解決、ビルド制約(`//go:build`タグなど)の処理などを行います。

### `syslist.go`ファイル

`src/pkg/go/build/syslist.go`ファイルは、Goがサポートするオペレーティングシステム(GOOS)とアーキテクチャ(GOARCH)のリストを定義するGoソースファイルです。これらのリストは、Goのクロスコンパイル機能やビルド制約の解決に不可欠です。このファイルは通常、Goのビルドプロセスの一部として`Makefile`によって自動生成されます。

### `Makefile`

`Makefile`は、`make`ユーティリティによって実行されるビルド自動化スクリプトです。Goプロジェクトでは、コンパイル、テスト、クリーンアップ、コード生成など、様々な開発タスクを自動化するために広く使用されています。`Makefile`は、コマンドの実行順序や依存関係を定義し、プロジェクトのビルドプロセスを効率化します。

## 技術的詳細

この変更の核心は、`godoc`がコメントをドキュメンテーションとして認識する際の挙動にあります。`godoc`は、Goのソースコードを解析する際に、特定のコメントがどのコード要素に関連付けられているかを判断します。

以前の`syslist.go`では、自動生成コメント「`// Generated automatically by make.`」が`package build`宣言の直前に配置されていました。

```go
// Copyright 2011 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.
// Generated automatically by make.

package build

この配置では、godocは「// Generated automatically by make.」というコメントをbuildパッケージのドキュメンテーションの一部として解釈する可能性がありました。これは、パッケージの本来の目的や機能とは関係のない、内部的な生成情報が公開ドキュメントに表示されてしまうことを意味します。

この問題を解決するため、コミットではMakefileを変更し、// Generated automatically by make.コメントとpackage build宣言の間に意図的に空白行を挿入するようにしました。

// Generated automatically by make.

package build

godocの解析ルールでは、コメントブロックとそれに続くコード要素の間に空白行が存在する場合、そのコメントはコード要素のドキュメンテーションとは見なされません。これにより、「// Generated automatically by make.」というコメントはgodocによって無視され、最終的なドキュメンテーションには含まれなくなります。

また、このコミットでは、syslist.goの冒頭にあった既存の著作権表示コメントが削除され、自動生成コメントのみが残るように変更されています。これは、自動生成されるファイルには簡潔な生成情報のみを含めるという方針に沿ったものと考えられます。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/go/build/Makefile

--- a/src/pkg/go/build/Makefile
+++ b/src/pkg/go/build/Makefile
@@ -4,6 +4,7 @@
 
 syslist.go: ../../../Make.inc Makefile
 	echo '// Generated automatically by make.' >$@
+	echo >>$@
 	echo 'package build' >>$@
 	echo >>$@
 	echo 'const goosList = "$(GOOS_LIST)"' >>$@

src/pkg/go/build/syslist.go

--- a/src/pkg/go/build/syslist.go
+++ b/src/pkg/go/build/syslist.go
@@ -1,6 +1,4 @@
-// Copyright 2011 The Go Authors.  All rights reserved.
-// Use of this source code is governed by a BSD-style
-// license that can be found in the LICENSE file.
+// Generated automatically by make.
 
 package build
 

コアとなるコードの解説

src/pkg/go/build/Makefileの変更

Makefileの変更は、syslist.goを生成する際のコマンドにecho >>$@という行を追加しています。

  • echo '// Generated automatically by make.' >$@: これは、syslist.goファイル($@はターゲットファイル名を表す)の先頭に「// Generated automatically by make.」というコメントを書き込みます。>はファイルを上書きします。
  • echo >>$@: この行が追加された変更点です。echoコマンドはデフォルトで改行を出力します。>>はファイルを追記モードで開くため、これによりsyslist.goファイルに新しい空行が追加されます。
  • echo 'package build' >>$@: その後、「package build」という行が追記されます。

この変更により、生成されるsyslist.goファイルでは、自動生成コメントとpackage build宣言の間に空白行が挿入されるようになります。

src/pkg/go/build/syslist.goの変更

syslist.goの変更は、主に既存の著作権表示コメントを削除し、自動生成コメントのみを残すようにしています。

  • - // Copyright 2011 The Go Authors. All rights reserved.
  • - // Use of this source code is governed by a BSD-style
  • - // license that can be found in the LICENSE file.
    • これらの行は削除されました。これは、自動生成されるファイルには必要最低限の情報のみを含めるという方針によるものと考えられます。
  • + // Generated automatically by make.
    • この行は、Makefileによって生成されるコメントです。

この結果、syslist.goの冒頭は以下のようになります(Makefileの変更が適用された後):

// Generated automatically by make.

package build

// ... (rest of the file content)

この空白行の挿入が、godocが自動生成コメントをパッケージドキュメンテーションとして認識しないようにするための重要な変更点です。

関連リンク

参考にした情報源リンク