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[インデックス 11594] ファイルの概要

このコミットは、godoc ツールにおいて、ファイルシステムツリー (FS tree) が空である場合に診断メッセージを出力するように変更を加えるものです。これにより、godoc が期待通りに動作しない原因を特定しやすくなります。

コミット

commit bd41831f66837f59428ae824b33979db9eaaf30c
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri Feb 3 08:33:29 2012 -0800

    godoc: diagnostic for empty FS tree
    
    R=adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5615055

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/bd41831f66837f59428ae824b33979db9eaaf30c

元コミット内容

godoc ツールが、ファイルシステムツリー (FS tree) が空である場合に診断メッセージを出力するように修正されました。これは、godoc がドキュメントを生成するために必要なソースコードを見つけられない場合に、ユーザーにその状況を明確に伝えるための改善です。

変更の背景

godoc はGo言語のソースコードからドキュメントを生成し、HTTPサーバーとして提供するツールです。しかし、godoc が起動してもドキュメントが表示されない、あるいは期待するパッケージが見つからないという問題が発生することがありました。これは、godoc がGoのソースコードを検索する対象となるファイルシステムツリーが、何らかの理由で空になってしまう場合に起こります。

例えば、GOPATHGOROOT の設定が誤っている、あるいはGoのソースコードが期待される場所に存在しないといった状況が考えられます。このような場合、godoc は内部的に空のファイルシステムツリーを構築しようとしますが、その結果としてユーザーには何も表示されないという状況に陥ります。

このコミット以前は、godoc が空のFSツリーで初期化されても、ユーザーにはその旨が明示的に通知されませんでした。そのため、ユーザーはなぜgodocが機能しないのか、その原因を特定するのが困難でした。この変更は、このようなデバッグの困難さを解消し、godocの使いやすさを向上させることを目的としています。

前提知識の解説

  • godoc: Go言語の公式ドキュメンテーションツールです。Goのソースコードを解析し、コメントや関数シグネチャなどから自動的にドキュメントを生成します。通常はHTTPサーバーとして起動し、ウェブブラウザを通じてドキュメントを閲覧できます。
  • FS tree (ファイルシステムツリー): godoc がドキュメントを生成するためにGoのソースコードを探索する対象となる、抽象化されたファイルシステム構造です。godocGOROOTGOPATH で指定されたディレクトリを基にこのツリーを構築します。
  • GOROOT: Goのインストールディレクトリを指す環境変数です。Goの標準ライブラリのソースコードがここに格納されています。
  • GOPATH: Goのワークスペースディレクトリを指す環境変数です。ユーザーが開発するGoのプロジェクトや、go get で取得したサードパーティのパッケージがここに格納されます。godoc はこれらのパスを探索してドキュメントを生成します。
  • newDirectory: godoc 内部でファイルシステムツリーのディレクトリ構造を表現するためのオブジェクトを生成する関数です。この関数が nil を返す場合、指定されたパスに有効なディレクトリ構造が見つからなかったことを意味します。

技術的詳細

godocinitFSTree 関数内で、GOROOTtestDir (テストディレクトリ) を結合したパスを基にファイルシステムツリーを初期化します。この初期化には newDirectory 関数が使用されます。

変更前は、newDirectorynil を返した場合(つまり、有効なディレクトリ構造が見つからなかった場合)、その nil がそのまま fsTree.set に渡され、fsTreenil に設定されていました。この状態では、godoc はドキュメントを生成するためのソースコードを見つけることができず、結果として何も表示されない状態になりますが、ユーザーにはその原因が伝わりませんでした。

このコミットでは、newDirectory の戻り値をチェックする if dir == nil という条件分岐が追加されました。もし dirnil であった場合、つまりファイルシステムツリーの初期化に失敗した場合に、log.Println("Warning: FSTree is nil") という警告メッセージがログに出力されるようになりました。これにより、godoc が正常に動作しない原因が、ファイルシステムツリーの初期化失敗にあることをユーザーが容易に把握できるようになります。

この変更は、godoc の堅牢性を高め、デバッグを容易にするための小さな、しかし重要な改善です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/godoc/godoc.go
+++ b/src/cmd/godoc/godoc.go
@@ -114,7 +114,12 @@ func registerPublicHandlers(mux *http.ServeMux) {
 }
 
 func initFSTree() {
-	fsTree.set(newDirectory(filepath.Join(*goroot, *testDir), nil, -1))
+	dir := newDirectory(filepath.Join(*goroot, *testDir), nil, -1)
+	if dir == nil {
+		log.Println("Warning: FSTree is nil")
+		return
+	}
+	fsTree.set(dir)
 	invalidateIndex()
 }
 

コアとなるコードの解説

変更は src/cmd/godoc/godoc.go ファイルの initFSTree 関数にあります。

  1. 変更前:

    func initFSTree() {
    	fsTree.set(newDirectory(filepath.Join(*goroot, *testDir), nil, -1))
    	invalidateIndex()
    }
    

    newDirectory の戻り値が直接 fsTree.set に渡されていました。newDirectorynil を返した場合、fsTreenil に設定されますが、エラーや警告は出力されませんでした。

  2. 変更後:

    func initFSTree() {
    	dir := newDirectory(filepath.Join(*goroot, *testDir), nil, -1)
    	if dir == nil {
    		log.Println("Warning: FSTree is nil")
    		return
    	}
    	fsTree.set(dir)
    	invalidateIndex()
    }
    
    • まず、newDirectory の戻り値が一時変数 dir に格納されます。
    • 次に、if dir == nil という条件で dirnil であるかどうかがチェックされます。
    • もし dirnil であった場合、つまりファイルシステムツリーの初期化に失敗した場合、log.Println("Warning: FSTree is nil") という警告メッセージが標準エラー出力(または設定されたログ出力先)に表示されます。
    • その後、return ステートメントによって関数が早期に終了し、fsTree.set(dir)invalidateIndex() は実行されません。これにより、無効な fsTree が設定されることを防ぎ、問題発生時に明確なログメッセージを提供します。
    • dirnil でない場合は、これまで通り fsTree.set(dir) が実行され、invalidateIndex() も呼び出されます。

この変更により、godoc がドキュメントを生成できない原因が、ファイルシステムツリーの初期化失敗にある場合に、ユーザーがその問題を迅速に特定できるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク