[インデックス 11632] ファイルの概要
このコミットは、Go言語プロジェクトのリポジトリにおける.hgignoreファイルの変更を記録しています。具体的には、このファイルから4行の記述が削除されています。.hgignoreファイルは、Mercurialバージョン管理システムにおいて、リポジトリにコミットすべきではないファイルやディレクトリを指定するための設定ファイルです。この変更は、プロジェクトのクリーンアップ、特にMercurialからGitへの移行プロセスの一環として、不要になった無視ルールを削除することを目的としています。
コミット
commit 1d2b19e2a326ea6c078752bb73fb2211718a811f
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Mon Feb 6 11:25:28 2012 +1100
.hgignore: delete more dregs
R=golang-dev, ality
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5636044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/1d2b19e2a326ea6c078752bb73fb2211718a811f
元コミット内容
このコミットの元のメッセージは「.hgignore: delete more dregs」です。これは、.hgignoreファイルから「dregs」(残りかす、不要なもの)をさらに削除するという意図を示しています。具体的には、以下のファイルパスが.hgignoreから削除されました。
src/pkg/runtime/arch_GOARCH.hsrc/pkg/runtime/defs_GOOS_GOARCH.hsrc/pkg/runtime/os_GOOS.hsrc/pkg/runtime/signals_GOOS.h
これらのファイルは、Goのランタイムに関連するヘッダーファイルであり、特定のアーキテクチャ(GOARCH)やオペレーティングシステム(GOOS)に依存する生成ファイルである可能性が高いです。
変更の背景
Go言語プロジェクトは、その歴史の中でバージョン管理システムをMercurialからGitへ移行しました。このコミットは、2012年2月に行われており、GoプロジェクトがMercurialからGitへの移行を進めていた時期と重なります。
.hgignoreファイルはMercurial特有の無視ファイルであり、Gitでは.gitignoreが同等の役割を果たします。プロジェクトがMercurialからGitへ完全に移行する過程で、Mercurial固有の無視ルールや、もはや生成されない、あるいは別の方法で管理されるようになった生成物に対する無視ルールが不要になります。
このコミットは、過去にMercurialで無視されていたが、もはや無視する必要がなくなった、あるいは存在しなくなったファイルパスを.hgignoreから削除することで、設定ファイルをクリーンアップし、プロジェクトのビルドシステムや管理体制の変更に合わせた調整を行っていると考えられます。特に、削除されたファイルがGoのランタイムのアーキテクチャ・OS依存のヘッダーファイルであることから、ビルドプロセスの変更や、これらのファイルがもはや生成物として扱われなくなった可能性が示唆されます。
前提知識の解説
バージョン管理システム (VCS)
バージョン管理システムは、ソフトウェア開発においてソースコードやその他のファイルの変更履歴を管理するためのシステムです。これにより、複数の開発者が同時に作業したり、過去のバージョンに戻したり、変更を追跡したりすることが可能になります。
- Mercurial (Hg): 分散型バージョン管理システムの一つで、Gitと同様に人気があります。リポジトリのクローンが完全な履歴を持つ点が特徴です。
.hgignoreファイルを使用して、バージョン管理の対象外とするファイルを指定します。 - Git: 現在最も広く利用されている分散型バージョン管理システムです。Mercurialと同様に、リポジトリのクローンが完全な履歴を持ちます。
.gitignoreファイルを使用して、バージョン管理の対象外とするファイルを指定します。
無視ファイル (.hgignore と .gitignore)
バージョン管理システムでは、一時ファイル、ビルド生成物、ログファイル、設定ファイルなど、リポジトリに含めるべきではないファイルを指定するメカニズムがあります。
.hgignore: Mercurialで使用される無視ファイルです。このファイルに記述されたパターンに一致するファイルやディレクトリは、Mercurialの管理対象から除外されます。Mercurialは、globパターンと正規表現の両方をサポートします。.gitignore: Gitで使用される無視ファイルです。このファイルに記述されたパターンに一致するファイルやディレクトリは、Gitの管理対象から除外されます。主にglobパターンをサポートします。
Go言語プロジェクトは、初期にはMercurialを使用していましたが、後にGitに移行しました。この移行期間中、両方のバージョン管理システムに対応するために、.hgignoreファイルが残されていた可能性があります。
Go言語のビルドとランタイム
Go言語のソースコードは、go buildコマンドによってコンパイルされ、実行可能なバイナリが生成されます。Goはクロスコンパイルに強く、異なるオペレーティングシステム(GOOS)やアーキテクチャ(GOARCH)向けのバイナリを簡単に生成できます。
GOOS: Goがターゲットとするオペレーティングシステム(例:linux,windows,darwin)。GOARCH: GoがターゲットとするCPUアーキテクチャ(例:amd64,arm,arm64)。
Goのランタイム(runtimeパッケージ)は、ガベージコレクション、スケジューリング、システムコールなど、Goプログラムの実行に必要な低レベルの機能を提供します。これらの機能の一部は、特定のOSやアーキテクチャに依存するため、コンパイル時にそれらに特化したヘッダーファイルやソースファイルが使用されることがあります。削除されたファイル名(arch_GOARCH.h, defs_GOOS_GOARCH.h, os_GOOS.h, signals_GOOS.h)は、まさにこれらのOS/アーキテクチャ依存のランタイム関連ファイルであることを示唆しています。
技術的詳細
このコミットは、Mercurialリポジトリのルートに存在する.hgignoreファイルから、以下の4つのエントリを削除しています。
src/pkg/runtime/arch_GOARCH.hsrc/pkg/runtime/defs_GOOS_GOARCH.hsrc/pkg/runtime/os_GOOS.hsrc/pkg/runtime/signals_GOOS.h
これらのファイルパスは、Go言語のソースツリー内のsrc/pkg/runtimeディレクトリに位置しており、ファイル名にGOARCHやGOOSといったプレースホルダーが含まれていることから、これらが特定のビルドターゲット(アーキテクチャやOS)に応じて生成されるヘッダーファイルであったことを強く示唆しています。
通常、ビルドプロセス中に生成されるファイルは、バージョン管理システムにコミットされるべきではありません。そのため、これらのファイルは以前は.hgignoreによって無視されていました。このコミットでこれらのエントリが削除された理由はいくつか考えられます。
- ビルドプロセスの変更: これらのファイルがもはや生成されなくなった、あるいは生成方法が変更され、別の無視ルールでカバーされるようになった可能性があります。例えば、Goのビルドシステムが進化し、これらのヘッダーファイルがソースコードの一部として直接管理されるようになった、または完全に異なる方法でランタイムが構築されるようになった、などが考えられます。
- MercurialからGitへの移行に伴うクリーンアップ: GoプロジェクトがMercurialからGitへ移行する過程で、Mercurial固有の無視ルールや、もはや関連性のない古いルールを削除する作業が行われた可能性があります。Gitでは
.gitignoreを使用するため、.hgignoreは最終的には不要になりますが、移行期間中は両方が存在し、段階的にクリーンアップが進められたと考えられます。このコミットは、そのクリーンアップの一環として、不要になった「残りかす」を削除する作業を示しています。 - ファイル自体の削除: これらのファイルがGoのソースツリーから完全に削除されたため、それらを無視する必要がなくなった可能性もあります。
この変更は、Goプロジェクトのビルドシステムやリポジトリ管理の成熟度を示すものであり、不要な設定を排除し、リポジトリをよりクリーンに保つための継続的な努力の一環と見なせます。
コアとなるコードの変更箇所
このコミットは、Go言語プロジェクトのルートディレクトリにある.hgignoreファイルのみを変更しています。
--- a/.hgignore
+++ b/.hgignore
@@ -43,12 +43,8 @@ src/pkg/exp/norm/normregtest
src/pkg/exp/ebnflint/ebnflint
src/pkg/go/build/syslist.go
src/pkg/go/doc/headscan
-src/pkg/runtime/arch_GOARCH.h
-src/pkg/runtime/defs_GOOS_GOARCH.h
src/pkg/runtime/goc2c
src/pkg/runtime/mkversion
-src/pkg/runtime/os_GOOS.h
-src/pkg/runtime/signals_GOOS.h
src/pkg/runtime/version.go
src/pkg/runtime/version_*.go
src/pkg/runtime/z*
変更内容は、上記の差分が示す通り、4行の削除のみです。
コアとなるコードの解説
削除された行は、Mercurialが無視すべきファイルパスのパターンです。
src/pkg/runtime/arch_GOARCH.h: 特定のアーキテクチャ(GOARCH)に依存するランタイムのヘッダーファイル。src/pkg/runtime/defs_GOOS_GOARCH.h: 特定のOS(GOOS)とアーキテクチャ(GOARCH)に依存する定義を含むランタイムのヘッダーファイル。src/pkg/runtime/os_GOOS.h: 特定のOS(GOOS)に依存するランタイムのヘッダーファイル。src/pkg/runtime/signals_GOOS.h: 特定のOS(GOOS)に依存するシグナル関連のランタイムヘッダーファイル。
これらのファイルは、Goのビルドプロセスにおいて、ターゲットのOSやアーキテクチャに応じて動的に生成される可能性のあるファイルでした。通常、生成されたファイルはバージョン管理システムに含めるべきではないため、.hgignoreで無視されていました。
このコミットでこれらのエントリが削除されたということは、以下のいずれかの状況が発生したことを意味します。
- これらのファイルがもはや生成されなくなった: ビルドシステムやランタイムの構造が変更され、これらのヘッダーファイルが不要になったか、あるいは別の方法でランタイムが構築されるようになった。
- これらのファイルがもはや一時的な生成物ではなくなった: 例えば、これらのファイルがソースコードの一部として直接リポジトリにコミットされるようになった(可能性は低いが、あり得る)。
- 無視の必要性がなくなった: 例えば、これらのファイルが完全に削除されたか、あるいは別のより広範な無視ルールによってカバーされるようになった。
最も可能性が高いのは、GoプロジェクトがMercurialからGitへの移行を進める中で、Mercurial固有の無視ルールを整理し、不要になったものを削除するクリーンアップ作業の一環であるということです。これにより、リポジトリの設定がよりシンプルになり、将来的なメンテナンスが容易になります。
関連リンク
- Go言語公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Go言語のMercurialからGitへの移行に関する情報(一般的な情報源):
- https://go.dev/blog/git (GoプロジェクトのGit移行に関する公式ブログ記事)
参考にした情報源リンク
- Mercurial
.hgignoreのドキュメント: https://www.mercurial-scm.org/wiki/hgignore - Git
.gitignoreのドキュメント: https://git-scm.com/docs/gitignore - Go言語のビルドとクロスコンパイルに関するドキュメント: https://go.dev/doc/install/source
- Web検索結果: "Go project Mercurial to Git migration .hgignore" (MercurialからGitへの移行における
.hgignoreの扱いに関する一般的な情報)