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[インデックス 11675] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストスイート内の特定のバグテストケース(bug408.go)を無効化するものです。具体的には、test/fixedbugs/bug408.go ファイルのテスト実行方法を変更し、特定の環境(OS X Snow Leopard with Xcode 4.2 and gcc 4.2.1)でCGOが成功してしまう問題に対応しています。

コミット

commit 2cc58e93d6f663af52bcdd4974d319ebe843f764
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Tue Feb 7 15:50:26 2012 -0500

    test: disable bug408
    
    Fixes #2902.
    
    TBR=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5641047

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2cc58e93d6f663af52bcdd4974d319ebe843f764

元コミット内容

このコミットは、test/fixedbugs/bug408.go というテストファイルを修正し、そのテストが特定の環境で意図した通りに失敗しない問題を解決するために、テストの実行方法を変更しています。元々はerrchk cgo $D/$F.goというディレクティブでCGOのエラーチェックを期待していましたが、OS X Snow Leopardの特定のXcode/GCCバージョンでCGOが成功してしまうため、テストを無効化しています。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のCGO(C言語との相互運用機能)に関するテストの環境依存性があります。bug408.goというファイルは、CGOに関連する特定のバグを検出するためのテストケースとして作成されました。しかし、OS X Snow Leopard上のXcode 4.2およびGCC 4.2.1(LLVM build 2336.1.00)という特定の開発環境において、このテストが期待通りに失敗せず、CGOが成功してしまうという問題が発生しました。

Go言語のテストスイートは、様々なプラットフォームやコンパイラ環境で安定して動作することが求められます。特定の環境でのみテストが失敗しない(つまり、バグが検出されない)場合、そのテストは信頼性が低いと判断されます。このコミットは、この環境依存の問題を一時的に回避し、テストスイート全体の安定性を保つために、問題のあるテストケースを無効化する(またはテストの期待値を変更する)ことを目的としています。

コミットメッセージにある「Fixes #2902」は、Goプロジェクトの内部的な課題追跡システムにおける問題番号を示していると考えられます。この問題番号は、この特定のCGOテストの環境依存性に関するバグを指している可能性が高いです。

前提知識の解説

Go言語のテストフレームワークとerrchkディレクティブ

Go言語には標準で強力なテストフレームワークが組み込まれています。go testコマンドを使用してテストを実行し、コードの正確性を検証します。Goのテストファイルは通常、_test.goというサフィックスを持ち、テスト関数はTestで始まります。

Goのテストスイートには、特定のコンパイルエラーや実行時エラーを期待するテストケースを記述するための特別なディレクティブが存在します。errchkはその一つです。errchkディレクティブは、テスト対象のコードが特定のパターンにマッチするエラーを出力することを期待します。例えば、// errchk "expected error message"のように記述することで、コンパイル時または実行時に指定されたエラーメッセージが出力されることをテストします。

このコミットでは、// errchk cgo $D/$F.goという形式でerrchkが使用されています。これは、cgoコマンドの実行結果に対してエラーチェックを行うことを意味します。

CGO

CGOは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すためのGo言語の機能です。Goはシステムプログラミング言語として設計されており、既存のCライブラリやシステムコールと連携する必要がある場面が多くあります。CGOを使用することで、GoとCの間の相互運用が可能になります。

CGOを使用するには、Goのソースコード内にCのコードを記述したり、既存のCライブラリをリンクしたりします。Goコンパイラは、CGOのディレクティブを解釈し、Cコンパイラ(通常はGCCやClang)を呼び出してCコードをコンパイルし、Goの実行可能ファイルにリンクします。

CGOは非常に強力な機能ですが、GoとCの間の型変換、メモリ管理、エラーハンドリングなど、複雑な側面も持ち合わせています。そのため、CGOに関連するバグや環境依存の問題が発生することは珍しくありません。

OS X Snow Leopard, Xcode 4.2, GCC 4.2.1 (LLVM build 2336.1.00)

これらは、このコミットが対処している特定の開発環境のバージョン情報です。

  • OS X Snow Leopard (10.6): 2009年にリリースされたAppleのmacOSのバージョンです。
  • Xcode 4.2: Appleの開発ツールスイートであるXcodeのバージョンです。Xcodeには、C/C++/Objective-Cコンパイラ(GCCやClang)、デバッガ、IDEなどが含まれます。
  • GCC 4.2.1 (Based on Apple Inc. build 5658) (LLVM build 2336.1.00): これは、Appleが提供するGCCのバージョンであり、LLVMプロジェクトのコンポーネント(特にClang)が統合されていることを示唆しています。当時のAppleの開発環境では、GCCとLLVM/Clangが混在していることがよくありました。

この特定の環境でCGOの挙動が異なるということは、GoコンパイラがCコードをコンパイル・リンクする際に使用するCコンパイラ(この場合はGCC 4.2.1)のバージョンや設定、あるいはOSのリンカの挙動が、他の環境と異なっていたことを示しています。これにより、本来エラーとなるべきCGOの呼び出しが、この環境では成功してしまったと考えられます。

技術的詳細

このコミットは、test/fixedbugs/bug408.goというテストファイルの冒頭のコメント行を変更することで、テストの挙動を修正しています。

元のコードでは、以下の行がありました。

// errchk cgo $D/$F.go

この行は、Goのテストフレームワークに対するディレクティブであり、cgoコマンドが$D/$F.go(現在のディレクトリの現在のファイル)を処理する際にエラーが発生することを期待していました。つまり、このテストはCGOの特定の誤用やバグがエラーとして検出されることを検証するものでした。

しかし、コミットメッセージによると、OS X Snow Leopard上の特定のXcode/GCC環境では、このcgoの処理がエラーにならずに成功してしまったとのことです。これは、Goのテストスイートが期待する動作と、実際の環境での動作が乖離していることを意味します。このままでは、この環境でテストを実行すると、本来検出されるべきバグが検出されず、テストがパスしてしまうという誤った結果を招きます。

この問題を解決するために、コミットは以下の変更を加えています。

// true

// WAS: errchk cgo $D/$F.go
// but this fails (cgo succeeds) on OS X Snow Leopard
// with Xcode 4.2 and gcc version 4.2.1 (Based on Apple Inc. build 5658) (LLVM build 2336.1.00).

変更後のコードでは、元の// errchk cgo $D/$F.goの行がコメントアウトされ、その代わりに// trueという行が追加されています。

  • // WAS: errchk cgo $D/$F.go: これは、元のディレクティブを記録として残しつつ、無効化していることを示します。
  • // but this fails (cgo succeeds) on OS X Snow Leopard ...: これは、なぜこの変更が行われたのか、具体的な環境と問題点を説明するコメントです。
  • // true: この行は、Goのテストフレームワークにおいて、テストが常に成功することを期待するディレクティブとして機能します。つまり、このテストはもはやCGOのエラーをチェックするものではなく、単にコンパイルが成功すれば良いという、より緩い条件に変更されています。これにより、特定の環境でのCGOの挙動の違いによるテストの失敗(または誤った成功)を回避し、テストスイート全体の安定性を保っています。

この変更は、根本的なCGOのバグを修正するものではなく、特定の環境でのテストの信頼性を確保するための暫定的な対応であると考えられます。後続のコミットで、この環境依存の問題が解決された際に、元のerrchkディレクティブが復活する可能性があります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/test/fixedbugs/bug408.go
+++ b/test/fixedbugs/bug408.go
@@ -1,4 +1,8 @@
-// errchk cgo $D/$F.go
+// true
+
+// WAS: errchk cgo $D/$F.go
+// but this fails (cgo succeeds) on OS X Snow Leopard
+// with Xcode 4.2 and gcc version 4.2.1 (Based on Apple Inc. build 5658) (LLVM build 2336.1.00).
 
 // Copyright 2012 The Go Authors.  All rights reserved.
 // Use of this source code is governed by a BSD-style

コアとなるコードの解説

変更はtest/fixedbugs/bug408.goファイルの冒頭のコメント行に集中しています。

  1. - // errchk cgo $D/$F.go: この行が削除されました。これは、Goのテストツールがこのファイルに対してCGOのエラーチェックを行うことを期待するディレクティブでした。
  2. + // true: この行が追加されました。これは、Goのテストツールがこのファイルに対して、常に成功することを期待するディレクティブです。これにより、以前のエラーチェックの期待値が上書きされ、テストは常に成功すると見なされるようになります。
  3. + // WAS: errchk cgo $D/$F.go: 元のディレクティブをコメントとして残し、変更履歴を明確にしています。
  4. + // but this fails (cgo succeeds) on OS X Snow Leopard ...: このコメントは、なぜこの変更が行われたのか、その具体的な理由と環境(OS X Snow Leopard with Xcode 4.2 and gcc version 4.2.1)を詳細に説明しています。CGOが本来エラーとなるべきところで成功してしまうという問題が明記されています。

この変更により、bug408.goテストは、特定の環境でのCGOの挙動の違いによるテストの失敗を回避し、テストスイート全体のCI/CDパイプラインの安定性を保つ役割を果たします。これは、バグの根本的な修正ではなく、テストの信頼性を一時的に確保するためのプラットフォーム固有のワークアラウンドです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント(CGOに関する情報)
  • Go言語のテストに関するドキュメント
  • OS X Snow Leopard, Xcode, GCCに関する一般的な情報
  • Goプロジェクトの課題追跡システム(Fixes #2902の具体的な内容については、公開されている情報からは特定できませんでした。これは内部的な課題番号である可能性が高いです。)
  • (注:Web検索で「Go issue 2902」を検索しましたが、このコミットのタイムスタンプ(2012年)とは異なる、より新しいGoプロジェクトの課題が多数ヒットしました。そのため、検索結果は今回のコミットの背景とは直接関連しないと判断しました。)