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[インデックス 11786] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のブートストラッププロセスにおいて、cmd/distツールがGoのバージョン情報を適切にリセットするように修正するものです。具体的には、ブートストラップ中にgoversion変数をfindgoversion()関数の結果で更新することで、古いバージョン情報が残ってしまう問題を解決しています。

コミット

commit dbac863ed89e824c458d8dacb3860513cf648468
Author: Gustavo Niemeyer <gustavo@niemeyer.net>
Date:   Fri Feb 10 22:26:36 2012 -0200

    cmd/dist: reset version during bootstrap
    
    Fixes #2927.
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5651062

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/dbac863ed89e824c458d8dacb3860513cf648468

元コミット内容

cmd/dist: reset version during bootstrap

このコミットは、Goのビルドシステムの一部であるcmd/distツールが、ブートストラップ(自己コンパイル)プロセス中にGoのバージョン情報をリセットするように修正します。これにより、以前のビルドからの古いバージョン情報が誤って引き継がれることを防ぎます。

変更の背景

この変更は、GoのIssue 2927(Fixes #2927)に対応するものです。Issue 2927は、Goのブートストラップビルドにおいて、goversionが正しく設定されないという問題が報告されていました。具体的には、goversionが古い値のままになってしまい、新しいビルドで期待されるバージョン情報が反映されないというバグです。

Goのビルドプロセスでは、cmd/distツールが重要な役割を担っています。これはGoのソースコードからGoツールチェイン自体をビルドするためのツールであり、特にGoの新しいバージョンを開発する際には、既存のGoコンパイラを使って新しいコンパイラをビルドする「ブートストラップ」というプロセスが頻繁に行われます。このブートストラップ中にバージョン情報が適切に更新されないと、ビルドされたGoツールチェインが誤ったバージョンを報告したり、依存関係の解決に問題が生じたりする可能性がありました。

このコミットは、ブートストラップの初期段階でgoversionを明示的にリセットすることで、この問題を解決しようとしています。

前提知識の解説

Goのブートストラップビルド

Go言語は、そのコンパイラやツールチェイン自体がGo言語で書かれています。そのため、Goの新しいバージョンをビルドする際には、既存のGoコンパイラ(またはCコンパイラなど、初期のブートストラップコンパイラ)を使用して、新しいGoコンパイラをコンパイルするという「ブートストラップ」プロセスが必要になります。これは、コンパイラが自身の言語で書かれている場合に一般的な手法です。

このプロセスは通常、以下のステップを含みます:

  1. 既存のGoコンパイラ(または初期のCコンパイラ)を使用して、Goのランタイムと基本的なツール(cmd/distなど)をビルドします。
  2. ビルドされたcmd/distツールを使用して、Goの標準ライブラリや残りのツールチェイン(新しいGoコンパイラを含む)をビルドします。

このブートストラッププロセス中に、Goのバージョン情報が正しく伝播・更新されることが重要です。

cmd/dist

cmd/distは、Goのソースツリーのルートにあるsrc/cmd/distディレクトリに存在するGoのビルドツールです。これはGoのビルドシステムの中核をなし、GoのソースコードからGoのツールチェイン全体をビルド、テスト、インストールするための様々なコマンドを提供します。例えば、all.bashスクリプト(Goのビルドスクリプト)は内部的にcmd/distを呼び出してビルドプロセスを管理しています。

goversion変数

Goのビルドシステムでは、ビルドされるGoのバージョンを示す文字列が内部的に管理されています。このバージョン情報は、コンパイルされたバイナリに埋め込まれたり、go versionコマンドで表示されたりします。goversionは、このバージョン情報を保持する変数の一つです。

findgoversion()関数

findgoversion()関数は、Goのソースツリーから現在のGoのバージョン情報を決定するためのロジックをカプセル化した関数です。これは、Gitリポジトリのタグ情報や、特定のファイル(例: VERSIONファイル)の内容などを読み取って、適切なバージョン文字列を生成します。

技術的詳細

このコミットの変更は、src/cmd/dist/build.cファイル内のcmdbootstrap関数にあります。

cmdbootstrap関数は、cmd/distツールがブートストラップビルドを実行する際に呼び出される主要な関数です。この関数は、Goのビルド環境をクリーンアップし、セットアップし、そして実際のビルドプロセスを開始する役割を担っています。

変更前は、cmdbootstrap関数内でclean()が呼び出された後、すぐにsetup()が呼び出されていました。clean()はビルドアーティファクトを削除しますが、goversionのようなグローバルな状態変数を必ずしもリセットするわけではありませんでした。そのため、以前のビルドからのgoversionの値が残ってしまう可能性がありました。

このコミットでは、clean()setup()の間にgoversion = findgoversion();という行が追加されています。

@@ -1247,6 +1247,7 @@ cmdbootstrap(int argc, char **argv)
 		usage();
 
 	clean();
+	goversion = findgoversion();
 	setup();
 	
 	binit(&b);

この変更により、ブートストラッププロセスの初期段階で、findgoversion()関数が呼び出され、現在のソースツリーに基づいて正しいGoのバージョン情報が取得され、それがgoversion変数に明示的に割り当てられるようになりました。これにより、ブートストラップビルドが開始される前に、goversionが常に最新かつ正しい値にリセットされることが保証されます。

この修正は、Goのビルドシステムの堅牢性を高め、特に開発者が頻繁にGoのソースコードを変更し、ブートストラップビルドを実行するようなシナリオにおいて、バージョン情報の不整合による問題を回避するために重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/dist/build.c
+++ b/src/cmd/dist/build.c
@@ -1247,6 +1247,7 @@ cmdbootstrap(int argc, char **argv)
 		usage();
 
 	clean();
+	goversion = findgoversion();
 	setup();
 	
 	binit(&b);

コアとなるコードの解説

追加された行 goversion = findgoversion(); は、cmdbootstrap関数内で、ビルド環境のクリーンアップ(clean())が完了した後、かつビルドのセットアップ(setup())が始まる前に実行されます。

  • clean(): 以前のビルドによって生成されたファイルやディレクトリを削除し、クリーンな状態に戻します。
  • goversion = findgoversion();: この行が追加されたことで、clean()によって古いビルドの痕跡が取り除かれた直後に、findgoversion()が呼び出されます。findgoversion()は、現在のGoのソースツリー(例えば、Gitリポジトリのタグや特定のバージョンファイル)から、その時点での正確なGoのバージョン文字列を決定します。その結果がグローバル変数goversionに代入されます。これにより、ブートストラップビルドの残りの部分が、常に最新かつ正しいバージョン情報を使用することが保証されます。
  • setup(): ビルドに必要な環境変数を設定したり、ディレクトリ構造を準備したりします。この段階でgoversionが既に正しく設定されているため、setup()以降のビルドプロセスは正しいバージョン情報に基づいて進行できます。

この修正は、ブートストラップビルドにおけるバージョン情報の信頼性を向上させ、Issue 2927で報告されたような、古いバージョン情報が誤って使用される問題を根本的に解決します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go Issue 2927の議論内容
  • Goのソースコード(src/cmd/dist/build.c)の構造と関連関数の役割
  • Goのビルドプロセスに関する一般的な知識(ブートストラップ、cmd/distの役割など)
  • Goのバージョン管理に関する情報
  • Goの公式ドキュメントやブログ記事(Goのビルドシステムに関するもの)
  • Gerrit (Go Code Review) の利用方法とCL (Change List) の概念# [インデックス 11786] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のブートストラッププロセスにおいて、cmd/distツールがGoのバージョン情報を適切にリセットするように修正するものです。具体的には、ブートストラップ中にgoversion変数をfindgoversion()関数の結果で更新することで、古いバージョン情報が残ってしまう問題を解決しています。

コミット

commit dbac863ed89e824c458d8dacb3860513cf648468
Author: Gustavo Niemeyer <gustavo@niemeyer.net>
Date:   Fri Feb 10 22:26:36 2012 -0200

    cmd/dist: reset version during bootstrap
    
    Fixes #2927.
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5651062

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/dbac863ed89e824c458d8dacb3860513cf648468

元コミット内容

cmd/dist: reset version during bootstrap

このコミットは、Goのビルドシステムの一部であるcmd/distツールが、ブートストラップ(自己コンパイル)プロセス中にGoのバージョン情報をリセットするように修正します。これにより、以前のビルドからの古いバージョン情報が誤って引き継がれることを防ぎます。

変更の背景

この変更は、GoのIssue 2927(Fixes #2927)に対応するものです。Issue 2927は、Goのブートストラップビルドにおいて、goversionが正しく設定されないという問題が報告されていました。具体的には、goversionが古い値のままになってしまい、新しいビルドで期待されるバージョン情報が反映されないというバグです。

Goのビルドプロセスでは、cmd/distツールが重要な役割を担っています。これはGoのソースコードからGoツールチェイン自体をビルドするためのツールであり、特にGoの新しいバージョンを開発する際には、既存のGoコンパイラを使って新しいコンパイラをビルドする「ブートストラップ」というプロセスが頻繁に行われます。このブートストラップ中にバージョン情報が適切に更新されないと、ビルドされたGoツールチェインが誤ったバージョンを報告したり、依存関係の解決に問題が生じたりする可能性がありました。

このコミットは、ブートストラップの初期段階でgoversionを明示的にリセットすることで、この問題を解決しようとしています。

前提知識の解説

Goのブートストラップビルド

Go言語は、そのコンパイラやツールチェイン自体がGo言語で書かれています。そのため、Goの新しいバージョンをビルドする際には、既存のGoコンパイラ(またはCコンパイラなど、初期のブートストラップコンパイラ)を使用して、新しいGoコンパイラをコンパイルするという「ブートストラップ」プロセスが必要になります。これは、コンパイラが自身の言語で書かれている場合に一般的な手法です。

このプロセスは通常、以下のステップを含みます:

  1. 既存のGoコンパイラ(または初期のCコンパイラ)を使用して、Goのランタイムと基本的なツール(cmd/distなど)をビルドします。
  2. ビルドされたcmd/distツールを使用して、Goの標準ライブラリや残りのツールチェイン(新しいGoコンパイラを含む)をビルドします。

このブートストラッププロセス中に、Goのバージョン情報が正しく伝播・更新されることが重要です。

cmd/dist

cmd/distは、Goのソースツリーのルートにあるsrc/cmd/distディレクトリに存在するGoのビルドツールです。これはGoのビルドシステムの中核をなし、GoのソースコードからGoのツールチェイン全体をビルド、テスト、インストールするための様々なコマンドを提供します。例えば、all.bashスクリプト(Goのビルドスクリプト)は内部的にcmd/distを呼び出してビルドプロセスを管理しています。

goversion変数

Goのビルドシステムでは、ビルドされるGoのバージョンを示す文字列が内部的に管理されています。このバージョン情報は、コンパイルされたバイナリに埋め込まれたり、go versionコマンドで表示されたりします。goversionは、このバージョン情報を保持する変数の一つです。

findgoversion()関数

findgoversion()関数は、Goのソースツリーから現在のGoのバージョン情報を決定するためのロジックをカプセル化した関数です。これは、Gitリポジトリのタグ情報や、特定のファイル(例: VERSIONファイル)の内容などを読み取って、適切なバージョン文字列を生成します。

技術的詳細

このコミットの変更は、src/cmd/dist/build.cファイル内のcmdbootstrap関数にあります。

cmdbootstrap関数は、cmd/distツールがブートストラップビルドを実行する際に呼び出される主要な関数です。この関数は、Goのビルド環境をクリーンアップし、セットアップし、そして実際のビルドプロセスを開始する役割を担っています。

変更前は、cmdbootstrap関数内でclean()が呼び出された後、すぐにsetup()が呼び出されていました。clean()はビルドアーティファクトを削除しますが、goversionのようなグローバルな状態変数を必ずしもリセットするわけではありませんでした。そのため、以前のビルドからのgoversionの値が残ってしまう可能性がありました。

このコミットでは、clean()setup()の間にgoversion = findgoversion();という行が追加されています。

@@ -1247,6 +1247,7 @@ cmdbootstrap(int argc, char **argv)
 		usage();
 
 	clean();
+	goversion = findgoversion();
 	setup();
 	
 	binit(&b);

この変更により、ブートストラッププロセスの初期段階で、findgoversion()関数が呼び出され、現在のソースツリーに基づいて正しいGoのバージョン情報が取得され、それがgoversion変数に明示的に割り当てられるようになりました。これにより、ブートストラップビルドが開始される前に、goversionが常に最新かつ正しい値にリセットされることが保証されます。

この修正は、Goのビルドシステムの堅牢性を高め、特に開発者が頻繁にGoのソースコードを変更し、ブートストラップビルドを実行するようなシナリオにおいて、バージョン情報の不整合による問題を回避するために重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/dist/build.c
+++ b/src/cmd/dist/build.c
@@ -1247,6 +1247,7 @@ cmdbootstrap(int argc, char **argv)
 		usage();
 
 	clean();
+	goversion = findgoversion();
 	setup();
 	
 	binit(&b);

コアとなるコードの解説

追加された行 goversion = findgoversion(); は、cmdbootstrap関数内で、ビルド環境のクリーンアップ(clean())が完了した後、かつビルドのセットアップ(setup())が始まる前に実行されます。

  • clean(): 以前のビルドによって生成されたファイルやディレクトリを削除し、クリーンな状態に戻します。
  • goversion = findgoversion();: この行が追加されたことで、clean()によって古いビルドの痕跡が取り除かれた直後に、findgoversion()が呼び出されます。findgoversion()は、現在のGoのソースツリー(例えば、Gitリポジトリのタグや特定のバージョンファイル)から、その時点での正確なGoのバージョン文字列を決定します。その結果がグローバル変数goversionに代入されます。これにより、ブートストラップビルドの残りの部分が、常に最新かつ正しいバージョン情報を使用することが保証されます。
  • setup(): ビルドに必要な環境変数を設定したり、ディレクトリ構造を準備したりします。この段階でgoversionが既に正しく設定されているため、setup()以降のビルドプロセスは正しいバージョン情報に基づいて進行できます。

この修正は、ブートストラップビルドにおけるバージョン情報の信頼性を向上させ、Issue 2927で報告されたような、古いバージョン情報が誤って使用される問題を根本的に解決します。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go CL 5651062の議論内容
  • Goのソースコード(src/cmd/dist/build.c)の構造と関連関数の役割
  • Goのビルドプロセスに関する一般的な知識(ブートストラップ、cmd/distの役割など)
  • Goのバージョン管理に関する情報
  • Goの公式ドキュメントやブログ記事(Goのビルドシステムに関するもの)
  • Gerrit (Go Code Review) の利用方法とCL (Change List) の概念