[インデックス 11790] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである image/png
パッケージ内のテストファイル reader_test.go
を修正し、ビルドエラーを解消することを目的としています。具体的には、zlib
ライブラリが返すエラーメッセージの文字列が変更されたことに対応し、テストが期待するエラーメッセージを更新しています。これにより、テストが正しくパスし、ビルドが成功するようになります。
コミット
- コミットハッシュ:
21a3aceb4a960cffdd0f1b85f2c3718635526108
- 作者: Robert Griesemer gri@golang.org
- コミット日時: 2012年2月10日 金曜日 17:26:40 -0800
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/21a3aceb4a960cffdd0f1b85f2c3718635526108
元コミット内容
fix build: update image/png test
R=nigeltao
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5649062
変更の背景
このコミットの背景には、Go言語の image/png
パッケージが依存している zlib
ライブラリ、またはそのGo言語バインディングにおける内部的な変更があります。zlib
はデータ圧縮・伸長に使われるライブラリであり、PNG画像フォーマットの内部でも画像データの圧縮に利用されています。
以前のバージョンでは、zlib
のチェックサムエラーが発生した場合に "zlib checksum error"
というエラーメッセージが返されていました。しかし、何らかの変更(おそらく zlib
ライブラリ自体のアップデート、またはGo言語の compress/zlib
パッケージの実装変更)により、同じエラー条件で返されるメッセージが "zlib: invalid checksum"
に変更されました。
image/png
パッケージのテストスイートには、意図的に不正なPNGファイルを読み込ませて、期待されるエラーが返されることを確認するテストが含まれています。reader_test.go
内の readerErrors
変数は、特定の不正なファイル名とそのファイルから期待されるエラーメッセージのペアを定義しています。invalid-zlib.png
というファイルは、zlib
のチェックサムが不正なPNGファイルであり、このファイルに対するテストは "zlib checksum error"
が返されることを期待していました。
エラーメッセージの変更により、既存のテストは新しいエラーメッセージと一致しなくなり、テストが失敗するようになりました。これは、GoのCI/CDパイプラインにおいてビルドエラーとして報告され、開発者がこの問題を修正する必要が生じました。このコミットは、このビルドエラーを解消し、テストスイートが最新の zlib
の挙動に適合するように更新するために行われました。
前提知識の解説
PNG (Portable Network Graphics)
PNGは、可逆圧縮を特徴とするラスターグラフィックスファイルフォーマットです。ウェブ上で広く利用されており、透明度(アルファチャンネル)をサポートします。PNGファイルは、画像データを圧縮するために DEFLATE
圧縮アルゴリズムを使用しており、このアルゴリズムは zlib
ライブラリによって実装されています。
zlib
zlib
は、データ圧縮のためのオープンソースのソフトウェアライブラリです。RFC 1950 (zlib format)、RFC 1951 (DEFLATE compressed data format)、RFC 1952 (gzip format) で定義された圧縮アルゴリズムを実装しています。PNGファイル内の画像データは zlib
形式で圧縮されており、PNGデコーダは zlib
を使用してそのデータを伸長します。
チェックサム (Checksum)
チェックサムは、データの整合性を検証するために使用される小さなデータブロックです。データが転送または保存される際に、そのデータからチェックサムが計算され、データと共に送信または保存されます。受信側または読み出し側で再度チェックサムを計算し、元のチェックサムと比較することで、データが破損していないか、改ざんされていないかを確認できます。zlib
ストリームには、データの整合性を保証するためのチェックサムが含まれています。
Go言語の image/png
パッケージ
Go言語の標準ライブラリには、image
パッケージとそのサブパッケージとして image/png
が含まれています。image/png
パッケージは、PNG形式の画像をエンコード(書き込み)およびデコード(読み込み)するための機能を提供します。このパッケージは、内部でGo言語の compress/zlib
パッケージを利用してPNGデータの圧縮・伸長を行っています。
Go言語のテスト
Go言語では、テストは非常に重要な開発プラクティスです。テストファイルは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに _test.go
というサフィックスを付けて配置されます。テスト関数は Test
で始まり、testing
パッケージを使用します。このコミットで変更された reader_test.go
は、image/png
パッケージのPNGデコーダの挙動を検証するためのテストファイルです。特に、不正な入力に対するエラーハンドリングが正しく行われるかを検証しています。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、Go言語の compress/zlib
パッケージが返すエラーメッセージの変更に image/png
パッケージのテストが追従する必要があった点です。
src/pkg/image/png/reader_test.go
ファイルには、readerErrors
という名前の構造体スライスが定義されています。このスライスは、テストケースとして、特定の不正なPNGファイル名と、そのファイルをデコードしようとした際に期待されるエラーメッセージのペアを保持しています。
var readerErrors = []struct {
file string
err string
}{
{"invalid-zlib.png", "zlib checksum error"}, // 変更前
// ...
}
invalid-zlib.png
は、意図的に zlib
のチェックサムが不正になるように作成されたテスト用のPNGファイルです。このテストの目的は、image/png
デコーダがこのような不正な zlib
データに遭遇した際に、適切なエラー(この場合はチェックサムエラー)を返すことを確認することです。
以前の zlib
の実装では、チェックサムエラーが発生した場合に "zlib checksum error"
という文字列がエラーとして返されていました。しかし、zlib
ライブラリまたはGoの compress/zlib
パッケージの内部実装が更新され、同じエラー条件で返されるエラーメッセージが "zlib: invalid checksum"
に変更されました。
この変更により、reader_test.go
内の readerErrors
スライスに定義されていた期待値 "zlib checksum error"
が、実際に image/png
デコーダが返す "zlib: invalid checksum"
と一致しなくなり、テストが失敗するようになりました。
このコミットは、この不一致を解消するために、readerErrors
スライス内の invalid-zlib.png
に対応する期待エラーメッセージを、新しいメッセージである "zlib: invalid checksum"
に更新しています。これにより、テストは再びパスするようになり、ビルドが正常に完了するようになります。
この種の変更は、ライブラリの依存関係が更新された際に、そのライブラリの挙動(特にエラーメッセージのような外部から観測可能な挙動)が変わった場合に発生しがちです。テストはこのような変更を検出し、コードの整合性を保つ上で重要な役割を果たします。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/image/png/reader_test.go
ファイルの1箇所のみです。
--- a/src/pkg/image/png/reader_test.go
+++ b/src/pkg/image/png/reader_test.go
@@ -246,7 +246,7 @@ var readerErrors = []struct {
file string
err string
}{
- {"invalid-zlib.png", "zlib checksum error"},
+ {"invalid-zlib.png", "zlib: invalid checksum"},
{"invalid-crc32.png", "invalid checksum"},
{"invalid-noend.png", "unexpected EOF"},
{"invalid-trunc.png", "unexpected EOF"},
具体的には、readerErrors
スライス内の invalid-zlib.png
に対応する err
フィールドの値が、"zlib checksum error"
から "zlib: invalid checksum"
に変更されています。
コアとなるコードの解説
変更された行は、Go言語のテストコードの一部であり、image/png
パッケージのデコーダが特定の不正なPNGファイルを処理した際に、期待されるエラーメッセージを定義しています。
readerErrors
は、struct
のスライスであり、各要素は file
(テストに使用する不正なPNGファイルのパス) と err
(そのファイルから期待されるエラーメッセージの文字列) の2つのフィールドを持っています。
元のコード:
{"invalid-zlib.png", "zlib checksum error"},
この行は、「invalid-zlib.png
というファイルが与えられた場合、デコーダは "zlib checksum error"
というエラー文字列を返すことを期待する」というテスト条件を定義していました。
変更後のコード:
{"invalid-zlib.png", "zlib: invalid checksum"},
この行は、上記と同じテストファイルに対して、「デコーダは "zlib: invalid checksum"
というエラー文字列を返すことを期待する」という新しいテスト条件を定義しています。
この変更は、image/png
パッケージが内部的に使用している zlib
ライブラリ(またはGoの compress/zlib
パッケージ)が、チェックサムエラー発生時に返すエラーメッセージのフォーマットを変更したことに対応するものです。テストは、実際のコードの挙動に合わせて更新される必要があり、このコミットはその調整を行っています。これにより、テストが最新のライブラリの挙動と一致し、ビルドが正常に完了するようになります。
関連リンク
- Gerrit Change-ID:
https://golang.org/cl/5649062
これは、Goプロジェクトがコードレビューに利用しているGerritシステムにおける変更セットのIDです。Goのコミットメッセージには、関連するGerritの変更へのリンクがよく含まれています。このリンクを辿ることで、このコミットに至るまでのコードレビューの議論や、関連する他の変更を確認することができます。
参考にした情報源リンク
特になし。この解説は、提供されたコミット情報と一般的なプログラミングおよびGo言語の知識に基づいて作成されました。