[インデックス 11804] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式フォーマッタである gofmt
のテストコードにおけるエラーメッセージの修正に関するものです。具体的には、src/cmd/gofmt/long_test.go
ファイル内のテスト関数 testFile
において、gofmt
の冪等性(idempotency)を検証する際に表示されるエラーメッセージが、より具体的で分かりやすいものに変更されています。
コミット
commit 2233942e3c030acffda5952ee3677bedaebf6079
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Fri Feb 10 21:47:18 2012 -0800
gofmt: fix error message in test
R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5652066
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/2233942e3c030acffda5952ee3677bedaebf6079
元コミット内容
gofmt: fix error message in test
このコミットは、gofmt
ツールに関連するテストのエラーメッセージを修正することを目的としています。
変更の背景
ソフトウェア開発において、テストはコードの品質と信頼性を保証するために不可欠です。特に、gofmt
のようなコードフォーマッタは、その出力が一貫しており、複数回適用しても結果が変わらない(冪等性)ことが非常に重要です。この冪等性を検証するテストにおいて、テストが失敗した場合に表示されるエラーメッセージは、開発者が問題の原因を迅速に特定し、デバッグを行う上で極めて重要な情報源となります。
このコミットが行われた背景には、既存のエラーメッセージが「%s: not idempotent
」という形式であり、どのファイルが冪等性テストに失敗したのかは示されるものの、そのメッセージ自体がやや抽象的であったという点が挙げられます。より具体的なエラーメッセージにすることで、テストの失敗が gofmt
ツール自体の問題であることを明確にし、開発者がより効率的にデバッグを進められるようにすることが意図されています。これは、開発者の体験(Developer Experience)を向上させるための細かな改善の一環と言えます。
前提知識の解説
gofmt
gofmt
は、Go言語のソースコードを自動的にフォーマットするためのツールです。Go言語の標準ライブラリの一部として提供されており、Goコミュニティ全体でコードのスタイルと一貫性を維持するために広く利用されています。gofmt
は、インデント、スペース、改行などの書式を統一し、Goのコードを読みやすく、保守しやすくすることを目的としています。その特徴の一つに「冪等性」があります。これは、gofmt
を一度適用したコードに再度 gofmt
を適用しても、コードの書式が変化しないことを意味します。
Goの testing
パッケージ
Go言語には、標準ライブラリとして testing
パッケージが用意されており、ユニットテスト、ベンチマークテスト、サンプルテストなどを記述するためのフレームワークを提供しています。テストファイルは通常、テスト対象のファイルと同じディレクトリに _test.go
というサフィックスを付けて配置されます。テスト関数は Test
で始まり、*testing.T
型の引数を取ります。*testing.T
オブジェクトは、テストの失敗を報告したり、ログを出力したりするためのメソッド(例: t.Errorf
, t.Fatalf
, t.Logf
など)を提供します。
bytes.Compare
関数
bytes.Compare
は、Go言語の bytes
パッケージで提供される関数で、2つのバイトスライス([]byte
)を辞書順に比較します。
- 最初のバイトスライスが2番目のバイトスライスより小さい場合、負の整数を返します。
- 2つのバイトスライスが等しい場合、0を返します。
- 最初のバイトスライスが2番目のバイトスライスより大きい場合、正の整数を返します。
このコミットの文脈では、gofmt
を適用する前と後のバイトスライスを比較し、それらが同一である(つまり、bytes.Compare
が0を返す)ことを確認することで、gofmt
の冪等性を検証しています。
技術的詳細
このコミットは、gofmt
のテストスイートの一部である src/cmd/gofmt/long_test.go
ファイル内の testFile
関数に焦点を当てています。この関数は、gofmt
の冪等性を検証するために設計されています。具体的には、あるファイルの内容を一度 gofmt
でフォーマットし、その結果を b1
に格納します。次に、その b1
の内容を再度 gofmt
でフォーマットし、その結果を b2
に格納します。もし gofmt
が冪等であれば、b1
と b2
の内容は完全に一致するはずです。
変更前は、この比較が失敗した場合(つまり、bytes.Compare(b1.Bytes(), b2.Bytes()) != 0
の場合)、以下のエラーメッセージが出力されていました。
t.Errorf("%s: not idempotent", filename)
ここで %s
にはテスト対象のファイル名が挿入されます。例えば、example.go
というファイルで冪等性が保たれなかった場合、「example.go: not idempotent
」というメッセージが表示されます。
このメッセージは、どのファイルで問題が発生したかは示しますが、何が「冪等ではない」のか、つまり gofmt
ツール自体が期待通りに動作しなかったのか、それともテスト環境や入力ファイルに何か問題があったのか、といったニュアンスが不明瞭でした。
今回の修正では、エラーメッセージが以下のように変更されました。
t.Errorf("gofmt %s not idempotent", filename)
この変更により、エラーメッセージは「gofmt example.go not idempotent
」のようになります。この新しいメッセージは、問題が gofmt
ツール自体、または gofmt
が example.go
に対して行った処理に関連していることをより明確に示唆します。これにより、テストが失敗した際に、開発者が問題の根本原因を特定する際の混乱を減らし、デバッグの効率を向上させることが期待されます。これは、単なる文字列の変更ですが、エラーメッセージの質がデバッグ体験に与える影響は大きいため、重要な改善と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/gofmt/long_test.go
+++ b/src/cmd/gofmt/long_test.go
@@ -83,7 +83,7 @@ func testFile(t *testing.T, b1, b2 *bytes.Buffer, filename string) {
// the first and 2nd result should be identical
if bytes.Compare(b1.Bytes(), b2.Bytes()) != 0 {
- t.Errorf("%s: not idempotent", filename)
+ t.Errorf("gofmt %s not idempotent", filename)
}
}
コアとなるコードの解説
上記の差分は、src/cmd/gofmt/long_test.go
ファイル内の testFile
関数における1行の変更を示しています。
-
- t.Errorf("%s: not idempotent", filename)
: 変更前のコードです。t.Errorf
はGoのtesting
パッケージのメソッドで、テストの失敗を報告し、指定されたフォーマット文字列と引数を使ってエラーメッセージを出力します。ここでは、ファイル名 (filename
) が%s
に挿入され、「[ファイル名]: not idempotent
」という形式のエラーメッセージが生成されていました。 -
+ t.Errorf("gofmt %s not idempotent", filename)
: 変更後のコードです。エラーメッセージのフォーマット文字列が「gofmt %s not idempotent
」に変更されました。これにより、出力されるエラーメッセージは「gofmt [ファイル名] not idempotent
」という形式になります。
この変更の目的は、エラーメッセージの明確性を向上させることです。変更前は、単にファイル名が示されるだけでしたが、変更後は「gofmt
」というツール名が明示的に含まれることで、この冪等性の問題が gofmt
ツール自体の動作に関連していることを、より直感的に理解できるようになります。これは、テストの失敗が報告された際に、開発者が問題の性質を迅速に把握し、適切なデバッグの方向性を定める上で役立ちます。
関連リンク
- Go CL 5652066: https://golang.org/cl/5652066
参考にした情報源リンク
- Go言語公式ドキュメント:
gofmt
(Go tools): https://pkg.go.dev/cmd/gofmt - Go言語公式ドキュメント:
testing
パッケージ: https://pkg.go.dev/testing - Go言語公式ドキュメント:
bytes
パッケージ: https://pkg.go.dev/bytes - Go言語公式ブログ: Go Fmt Your Code: https://go.dev/blog/gofmt