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[インデックス 11872] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおける $PATH 環境変数の設定に関する修正です。具体的には、make.bash スクリプトがビルドプロセス中に $PATH を適切に設定するように変更され、これによりビルドの破損(build breakage)が修正されることを目的としています。

コミット

commit 982e6c44a0c4f7436b6242b6c1cce37fcb880c3a
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Mon Feb 13 22:46:50 2012 -0500

    build: set $PATH during make.bash
    
    Should fix build breakage.
    
    TBR=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5656050

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/982e6c44a0c4f7436b6242b6c1cce37fcb880c3a

元コミット内容

build: set $PATH during make.bash

Should fix build breakage.

TBR=golang-dev
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5656050

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のビルドプロセスにおける $PATH 環境変数の不適切な設定が原因で発生していたビルドの破損(build breakage)があります。Go言語のビルドは、make.bash のようなシェルスクリプトによって制御されており、ビルドツールやコンパイラなどの実行可能ファイルが正しく見つけられるためには、$PATH が適切に設定されている必要があります。

コミットメッセージにある「Should fix build breakage.」という記述から、以前のビルドスクリプトでは $PATH の設定が不十分であったか、あるいは特定の環境下で問題を引き起こす可能性があったことが示唆されます。この修正は、ビルドの安定性と信頼性を向上させるための重要なステップです。

また、https://golang.org/cl/5656050 というChange List (CL) へのリンクは、この変更がGoの公式な開発プロセスの一部として提出され、レビューされたことを示しています。Web検索の結果から、このCLがGo 1.22.4のアップデートに関連していることが示唆されており、これはGoのリリースサイクルにおける継続的な改善の一環として行われた修正であることを裏付けています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の前提知識が必要です。

  • make.bash: Go言語のソースコードからGoツールチェインをビルドするためのシェルスクリプトです。Goの初期ビルド(bootstrap build)や、開発中のGoのバージョンをビルドする際に使用されます。このスクリプトは、コンパイラ、リンカ、その他のツールをビルドし、それらを適切な場所に配置する役割を担います。
  • $PATH 環境変数: オペレーティングシステムが実行可能ファイルを探すディレクトリのリストを定義する環境変数です。例えば、go コマンドを実行する際に、システムはこの $PATH に含まれるディレクトリを順に検索し、go という名前の実行可能ファイルを見つけます。$PATH が正しく設定されていないと、必要なツールが見つからず、ビルドが失敗する原因となります。
  • eval コマンド: シェル組み込みコマンドの一つで、引数として与えられた文字列をシェルコマンドとして評価し、実行します。これは、動的に生成されたコマンドを実行したり、環境変数を設定したりする際によく使用されます。
  • cmd/dist/dist: Goのビルドシステムの一部である内部ツールです。Goのビルドプロセスにおいて、環境変数の設定や、ビルドに必要な情報の提供など、様々な補助的な役割を果たします。特に、env サブコマンドは、Goのビルドに必要な環境変数の設定を出力するために使用されます。
  • GOROOT: Goのインストールディレクトリ、またはGoのソースコードのルートディレクトリを指す環境変数です。Goのツールチェインがどこにあるかをシステムに伝えるために重要です。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、make.bash スクリプトがGoのビルドに必要な環境変数を設定する方法の変更にあります。

Goのビルドプロセスでは、cmd/dist/dist env コマンドが実行され、Goのビルドに必要な環境変数(例えば、GOROOTGOBIN など)が標準出力に出力されます。この出力は通常、export VAR=value のような形式のシェルコマンドの羅列です。

変更前の eval $(./cmd/dist/dist env) は、cmd/dist/dist env の出力を eval コマンドに渡し、その出力を現在のシェル環境で実行することで、必要な環境変数を設定していました。これは一般的な手法ですが、cmd/dist/dist env が出力する環境変数の中に $PATH が含まれており、その設定方法に問題があった可能性があります。

変更後の eval $(./cmd/dist/dist env -p) では、cmd/dist/dist env コマンドに -p オプションが追加されています。この -p オプションは、cmd/dist/dist env の動作を変更し、特に $PATH 環境変数の設定方法に影響を与えるものと考えられます。

一般的なシェルスクリプトにおける $PATH の設定では、既存の $PATH に新しいパスを追加する形式(例: export PATH=/new/path:$PATH)が推奨されます。これは、既存のシステムパスを上書きせず、Goのビルドに必要なツールへのパスを優先的に検索できるようにするためです。もし -p オプションが、このような $PATH の追加をより適切に行うためのものであるならば、この変更はビルド環境の整合性を高め、ビルドの失敗を防ぐのに役立ちます。

この修正により、make.bash が実行される環境において、Goのビルドツールが常に正しい $PATH を参照できるようになり、異なるシステム環境や既存の $PATH 設定に起因するビルドの問題が解消されることが期待されます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/make.bash
+++ b/src/make.bash
@@ -62,7 +62,7 @@ export GOROOT="$(cd .. && pwd)"
 GOROOT_FINAL="${GOROOT_FINAL:-$GOROOT}"
 DEFGOROOT='-DGOROOT_FINAL="'"$GOROOT_FINAL"'"'
 gcc -O2 -Wall -Werror -ggdb -o cmd/dist/dist -Icmd/dist "$DEFGOROOT" cmd/dist/*.c
-eval $(./cmd/dist/dist env)
+eval $(./cmd/dist/dist env -p)
 echo
 
 if ["$1" = "--dist-tool"]; then

コアとなるコードの解説

このコミットにおけるコアとなるコードの変更は、src/make.bash ファイルの以下の1行です。

変更前:

eval $(./cmd/dist/dist env)

変更後:

eval $(./cmd/dist/dist env -p)

この変更は、cmd/dist/dist env コマンドの呼び出しに -p オプションを追加したものです。

  • ./cmd/dist/dist env: このコマンドは、Goのビルドに必要な環境変数を設定するためのシェルスクリプトの断片(例: export GOROOT=/path/to/go)を標準出力に出力します。
  • $(...): これはシェルスクリプトのコマンド置換構文で、括弧内のコマンドを実行し、その標準出力を文字列として取得します。
  • eval: eval コマンドは、引数として受け取った文字列をシェルコマンドとして解釈し、実行します。

したがって、変更前は cmd/dist/dist env が出力する環境変数設定がそのまま現在のシェル環境に適用されていました。

変更後の -p オプションの追加は、cmd/dist/dist env の動作を変更し、特に $PATH 環境変数の設定方法に影響を与えます。Goのビルドシステムにおいて、-p オプションは通常、PATH 環境変数を「プリペンド」(既存のパスの前に新しいパスを追加)するような動作を指示するために使用されます。

具体的には、cmd/dist/dist env -p は、Goのビルドに必要なツール(例えば、ビルドされたばかりのGoコンパイラやその他のユーティリティ)へのパスを、既存の $PATH の先頭に追加するような形式の export PATH=... コマンドを出力すると考えられます。これにより、システムに既に存在する可能性のある古いバージョンのツールや、Goのビルドとは関係ないツールよりも、新しくビルドされたGoのツールが優先的に使用されるようになります。

この修正は、ビルドプロセス中にGoのツールチェインが常に正しいバージョンのツールを参照することを保証し、異なる環境設定に起因するビルドの失敗を防ぐ上で非常に重要です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Google Web Search (golang.org/cl/5656050に関する情報)
  • Go言語のビルドシステムに関する一般的な知識
  • シェルスクリプト(eval, $PATH, コマンド置換)に関する一般的な知識