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[インデックス 11960] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の実験的なWindowsファイルシステム通知パッケージ exp/winfsnotify におけるテストコードの改善を目的としています。具体的には、テスト中に一時ディレクトリを使用するように変更することで、テストの信頼性と独立性を向上させています。これにより、テストが実行される環境に依存せず、クリーンな状態でテストが実行されるようになります。

コミット

commit 34de45c435b7a59aade947148f666231aa5f3025
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Thu Feb 16 15:34:27 2012 +1100

    exp/winfsnotify: remove reference to _test
    Updates #2573.
    
    R=golang-dev, dsymonds, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5677063

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/34de45c435b7a59aade947148f666231aa5f3025

元コミット内容

このコミットの元の内容は、「exp/winfsnotify: _test への参照を削除する」というものです。これは、exp/winfsnotify パッケージ内のテストコードが、特定のファイル名 _test を直接参照している箇所を修正することを示しています。この変更は、Issue #2573 に関連しています。

変更の背景

この変更の背景には、テストの堅牢性と独立性の向上が挙げられます。元のテストコードでは、watcher.Watch("_test") のように、特定の固定されたファイル名 _test を監視対象としていました。このような固定されたファイル名を使用するテストは、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  1. 環境依存性: テストが実行される環境に _test というファイルやディレクトリが既に存在する場合、テスト結果が不安定になる可能性があります。また、テスト実行後に _test が残ってしまうと、後続のテストや他の操作に影響を与える可能性があります。
  2. 並行実行の問題: 複数のテストが同時に実行される場合、同じ _test というファイル名を使用すると、競合状態が発生し、テストの失敗や予期せぬ動作を引き起こす可能性があります。
  3. クリーンアップの複雑さ: テスト後に作成されたファイルを確実にクリーンアップすることが難しくなります。

これらの問題を解決するため、一時ディレクトリを使用するように変更されました。一時ディレクトリは、テスト実行時に動的に作成され、テスト終了後に自動的に削除されるため、テストの独立性が保たれ、環境への影響を最小限に抑えることができます。コミットメッセージにある "Updates #2573" は、この変更が特定の課題(おそらくテストの不安定性やクリーンアップに関するもの)を解決するために行われたことを示唆しています。ただし、公開されているGoリポジトリのIssue #2573はgolang/vscode-goリポジトリのgoplsインストールに関するものであり、このwinfsnotifyパッケージとは直接関係がないため、このコミットメッセージで言及されているIssue #2573は、Goプロジェクト内部の別のトラッキングシステムにおける課題番号である可能性が高いです。

前提知識の解説

  • exp/winfsnotify パッケージ: Go言語の実験的なパッケージで、Windowsオペレーティングシステムにおけるファイルシステムイベント(ファイルの作成、変更、削除など)を監視するための機能を提供します。これは、LinuxにおけるinotifyやmacOSにおけるFSEventsのような機能に相当します。exp(experimental)というプレフィックスが示す通り、このパッケージはまだ開発段階であり、APIの変更や機能の追加・削除が行われる可能性があります。
  • ioutil.TempDir(dir, pattern string) (name string, err error): Go言語の標準ライブラリ io/ioutil パッケージ(Go 1.16以降は os パッケージに移行)に含まれる関数です。この関数は、指定されたディレクトリ dir 内に、指定されたパターン pattern に基づいて一意な名前を持つ新しい一時ディレクトリを作成します。dir が空文字列の場合、システムの一時ディレクトリ(例: /tmpC:\Users\...\AppData\Local\Temp)が使用されます。この関数は、テストや一時的なファイル操作において、クリーンな作業環境を確保するために非常に有用です。
  • os.RemoveAll(path string) error: Go言語の標準ライブラリ os パッケージに含まれる関数です。この関数は、指定されたパス path にあるファイルまたはディレクトリ、およびその中のすべての内容を再帰的に削除します。一時ディレクトリをクリーンアップする際に頻繁に使用されます。
  • defer ステートメント: Go言語のキーワードで、defer に続く関数呼び出しを、その関数がリターンする直前(またはパニックが発生する直前)に実行するようにスケジュールします。これにより、リソースの解放(ファイルのクローズ、ロックの解除、一時ディレクトリの削除など)を確実に行うことができます。このコミットでは、defer os.RemoveAll(dir) を使用して、テスト関数が終了する際に作成した一時ディレクトリを確実に削除しています。
  • Goのテスト: Go言語では、テストファイルは通常、テスト対象のソースファイルと同じディレクトリに配置され、ファイル名の末尾に _test.go が付きます。テスト関数は Test で始まり、*testing.T 型の引数を取ります。t.Fatal()t.Fatalf() は、テストが失敗したことを報告し、テストの実行を停止するために使用されます。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、テストのセットアップとクリーンアップの改善にあります。

変更前は、watcher.Watch("_test") のように、ハードコードされたパス _test を監視対象としていました。これは、テストが実行される環境に _test という名前のファイルやディレクトリが存在するかどうかに依存し、テストの再現性や独立性を損なう可能性がありました。

変更後は、以下の手順でテスト環境を構築しています。

  1. 一時ディレクトリの作成:

    dir, err := ioutil.TempDir("", "wininotify")
    if err != nil {
        t.Fatalf("TempDir failed: %s", err)
    }
    

    ioutil.TempDir("", "wininotify") を呼び出すことで、システムの一時ディレクトリ内に wininotify というプレフィックスを持つ一意な名前の一時ディレクトリが作成されます。この dir 変数には、作成された一時ディレクトリの絶対パスが格納されます。エラーが発生した場合は、t.Fatalf でテストを失敗させます。

  2. 一時ディレクトリの確実な削除:

    defer os.RemoveAll(dir)
    

    defer ステートメントを使用することで、TestNotifyClose 関数が終了する際に、作成された一時ディレクトリ dir とその内容が os.RemoveAll によって確実に削除されるようにスケジュールされます。これにより、テスト実行後に不要なファイルやディレクトリが残ることがなく、テスト環境がクリーンに保たれます。

  3. 一時ディレクトリの監視:

    err = watcher.Watch(dir)
    

    watcher.Watch メソッドの引数として、固定された "_test" ではなく、動的に作成された一時ディレクトリのパス dir を渡すように変更されました。これにより、テストは常にクリーンで一意な環境で実行されることが保証されます。

この変更により、TestNotifyClose テストは、他のテストやシステムの状態に影響を与えることなく、独立して実行できるようになりました。これは、大規模なテストスイートやCI/CD環境において、テストの信頼性を高める上で非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/exp/winfsnotify/winfsnotify_test.go
+++ b/src/pkg/exp/winfsnotify/winfsnotify_test.go
@@ -115,7 +115,13 @@ func TestNotifyClose(t *testing.T) {
 		t.Fatal("double Close() test failed: second Close() call didn't return")
 	}
 
-	err := watcher.Watch("_test")
+	dir, err := ioutil.TempDir("", "wininotify")
+	if err != nil {
+		t.Fatalf("TempDir failed: %s", err)
+	}
+	defer os.RemoveAll(dir)
+
+	err = watcher.Watch(dir)
 	if err == nil {
 		t.Fatal("expected error on Watch() after Close(), got nil")
 	}

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/exp/winfsnotify/winfsnotify_test.go ファイルの TestNotifyClose 関数内で行われています。

  • - err := watcher.Watch("_test"): この行が削除されました。これは、固定された文字列 "_test" を監視対象としていた古い実装です。このパスは、テストが実行される環境に依存し、テストの信頼性を損なう可能性がありました。

  • + dir, err := ioutil.TempDir("", "wininotify"): 新しく追加された行です。ioutil.TempDir 関数を呼び出して、一時ディレクトリを作成しています。

    • 最初の引数 "" は、システムの一時ディレクトリを使用することを意味します。
    • 二番目の引数 "wininotify" は、作成される一時ディレクトリの名前のプレフィックスとして使用されます。これにより、wininotify で始まる一意なディレクトリ名(例: wininotify123456789)が生成されます。
    • 作成されたディレクトリのパスは dir 変数に格納され、エラーがあれば err に格納されます。
  • + if err != nil {: ioutil.TempDir の呼び出しでエラーが発生した場合のハンドリングです。

    • + t.Fatalf("TempDir failed: %s", err): エラーが発生した場合、t.Fatalf を使用してテストを即座に失敗させ、エラーメッセージを出力します。これは、一時ディレクトリの作成がテストの前提条件であるため、失敗した場合はそれ以上テストを続行しても意味がないためです。
  • + defer os.RemoveAll(dir): 新しく追加された行です。defer ステートメントを使用しています。

    • os.RemoveAll(dir) は、dir で指定された一時ディレクトリとその内容をすべて削除する関数です。
    • defer により、この os.RemoveAll(dir) の呼び出しは、TestNotifyClose 関数が正常に終了するか、パニックが発生する直前に実行されるようにスケジュールされます。これにより、テストが終了した後に一時ディレクトリが確実にクリーンアップされ、システムに不要なファイルが残るのを防ぎます。
  • + err = watcher.Watch(dir): 新しく追加された行です。watcher.Watch メソッドの引数として、動的に作成された一時ディレクトリのパス dir を渡しています。これにより、テストは常にクリーンで予測可能な環境で実行されることが保証されます。

この変更により、テストはより堅牢になり、実行環境に依存しないようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク