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[インデックス 11982] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである path/filepath パッケージ内のテストファイル src/pkg/path/filepath/path_test.go に関連するものです。このファイルは、ファイルパスの操作、特にシンボリックリンクの評価(EvalSymlinks)に関する機能の正確性を検証するためのテストケースを含んでいます。

コミット

commit c560a0742b2b91d6cb7bb890cf33d55beb68680d
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Fri Feb 17 09:56:14 2012 +1100

    path/filepath: fix test on darwin
    /tmp being itself a symlink causes problems for the test, so use / as the absolute path.
    
    R=golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5675070

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c560a0742b2b91d6cb7bb890cf33d55beb68680d

元コミット内容

path/filepath: fix test on darwin /tmp being itself a symlink causes problems for the test, so use / as the absolute path.

このコミットは、path/filepath パッケージのテストがmacOS (Darwin) 環境で失敗する問題を修正するものです。具体的には、/tmp ディレクトリ自体がシンボリックリンクであるというmacOSの特性がテストに問題を引き起こしていたため、絶対パスとして / (ルートディレクトリ) を使用するように変更しています。

変更の背景

この変更の背景には、macOS (Darwin) オペレーティングシステムにおける /tmp ディレクトリの特殊な挙動があります。多くのUnix系システムでは、/tmp は一時ファイルを格納するための通常のディレクトリですが、macOSでは /tmp は実際には /private/tmp へのシンボリックリンクとして実装されています。

path/filepath パッケージの EvalSymlinks 関数は、パス内のシンボリックリンクを解決して正規のパスを返すことを目的としています。テストケース EvalSymlinksTestDirs および EvalSymlinksTests の中で、"test/linkabs" というシンボリックリンクが /tmp を指しているシナリオがテストされていました。

しかし、macOS上でこのテストを実行すると、/tmp がシンボリックリンクであるために、EvalSymlinks の期待される結果が他のUnix系システムと異なってしまう問題が発生しました。テストは、"test/linkabs"/tmp に解決されることを期待していましたが、macOSの /tmp がシンボリックリンクであるという事実が、テストの意図しない挙動を引き起こし、テストが失敗する原因となっていました。

この問題を解決するため、テストの期待値を /tmp から / (ルートディレクトリ) に変更することで、macOS環境でもテストが正しく動作するように修正されました。これは、特定のOSのファイルシステム構造の差異が、パス操作に関するテストのクロスプラットフォーム互換性に影響を与える典型的な例です。

前提知識の解説

Go言語の path/filepath パッケージ

path/filepath パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、ファイルパスの操作に関するユーティリティ関数を提供します。これには、パスの結合、クリーンアップ、ディレクトリとファイル名の抽出、そしてシンボリックリンクの評価などが含まれます。このパッケージは、オペレーティングシステムに依存しないパス操作を提供することを目的としていますが、一部の機能(特にシンボリックリンクの評価)は、基盤となるOSのファイルシステムの実装に影響を受けることがあります。

シンボリックリンク(またはソフトリンク)は、ファイルシステム内の別のファイルやディレクトリへの参照(ポインタ)として機能する特殊な種類のファイルです。シンボリックリンク自体はデータを含まず、単にターゲットのパスを指し示します。プログラムがシンボリックリンクを開こうとすると、通常はリンクが指すターゲットファイルにリダイレクトされます。

path/filepath パッケージの EvalSymlinks 関数は、与えられたパスに含まれるすべてのシンボリックリンクを再帰的に解決し、最終的な物理パスを返します。例えば、A -> BB -> C というシンボリックリンクがある場合、EvalSymlinks("A")C を返します。この関数は、実際のファイルシステム上の場所を特定する際に重要です。

/tmp ディレクトリ

/tmp ディレクトリは、Unix系オペレーティングシステムにおいて一時ファイルを格納するために使用される標準的な場所です。通常、システムが再起動されると、/tmp の内容はクリアされます。

macOS (Darwin) における /tmp の挙動

macOS (Darwin) はBSD Unixをベースとしていますが、ファイルシステムの一部に独自の慣習があります。特に、/tmp/private/tmp へのシンボリックリンクとして実装されています。これは、macOSが /private ディレクトリの下にシステム関連のファイルを整理する設計思想に基づいています。このシンボリックリンクの存在が、パス操作を行うプログラムやテストにおいて、他のUnix系システムとは異なる挙動を引き起こす可能性があります。

技術的詳細

このコミットが修正している問題は、EvalSymlinks 関数のテストがmacOS環境で期待通りに動作しないというものです。テストケースでは、"test/linkabs" というシンボリックリンクが /tmp を指している状況をシミュレートしています。

一般的なUnix系システムでは、/tmp は通常のディレクトリであるため、EvalSymlinks/tmp を解決しても、そのパスは /tmp のままか、あるいはその絶対パスが返されます。しかし、macOSでは /tmp/private/tmp へのシンボリックリンクであるため、EvalSymlinks/tmp を解決する際に /private/tmp を返す可能性があります。

テストコードは、"test/linkabs"/tmp に解決されることを期待していました。しかし、macOSの環境では、EvalSymlinks/tmp を解決した結果が /private/tmp となるため、テストの期待値と実際の値が一致せず、テストが失敗していました。

この問題を解決するために、テストの期待値を /tmp から / (ルートディレクトリ) に変更しました。これは、EvalSymlinks がシンボリックリンクを解決する際に、最終的に到達する絶対パスが / であるという、より一般的なケースをテストするように変更したことを意味します。/ はどのOSでもシンボリックリンクではないため、この変更によりmacOSを含む様々な環境でテストが安定して動作するようになります。

この修正は、特定のOSのファイルシステム構造の差異が、パス操作のテストに与える影響を考慮することの重要性を示しています。クロスプラットフォームなソフトウェア開発においては、このようなOS固有の挙動を考慮したテストケースの設計が不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/path/filepath/path_test.go b/src/pkg/path/filepath/path_test.go
index 6b70aa2cd7..98ff466427 100644
--- a/src/pkg/path/filepath/path_test.go
+++ b/src/pkg/path/filepath/path_test.go
@@ -559,7 +559,7 @@ var EvalSymlinksTestDirs = []EvalSymlinksTest{\
 	{"test/dir/link3", "../../"},
 	{"test/link1", "../test"},
 	{"test/link2", "dir"},
-	{"test/linkabs", "/tmp"},
+	{"test/linkabs", "/"},
 }
 
 var EvalSymlinksTests = []EvalSymlinksTest{\
@@ -572,7 +572,7 @@ var EvalSymlinksTests = []EvalSymlinksTest{\
 	{"test/link2/..", "test"},
 	{"test/dir/link3", "."},
 	{"test/link2/link3/test", "test"},
-	{"test/linkabs", "/tmp"},
+	{"test/linkabs", "/"},
 }
 
 var EvalSymlinksAbsWindowsTests = []EvalSymlinksTest{\

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/path/filepath/path_test.go ファイル内の2箇所で行われています。

  1. EvalSymlinksTestDirs 変数内の変更:

    -	{"test/linkabs", "/tmp"},
    +	{"test/linkabs", "/"},
    

    EvalSymlinksTestDirs は、EvalSymlinks 関数がディレクトリパスを評価する際のテストケースを定義しています。ここでは、"test/linkabs" というシンボリックリンクが指すパスとして、以前は "/tmp" が期待されていましたが、これを "/" に変更しました。これは、"test/linkabs" が絶対パスのシンボリックリンクであり、その解決結果がルートディレクトリになるという、より一般的なケースをテストするためです。macOSで /tmp がシンボリックリンクであるために発生する問題を回避し、テストの安定性を向上させます。

  2. EvalSymlinksTests 変数内の変更:

    -	{"test/linkabs", "/tmp"},
    +	{"test/linkabs", "/"},
    

    EvalSymlinksTests は、EvalSymlinks 関数が様々なパスを評価する際のテストケースを定義しています。ここでも同様に、"test/linkabs" が指すパスの期待値を "/tmp" から "/" に変更しています。この変更も、macOSにおける /tmp のシンボリックリンクとしての挙動に起因するテストの失敗を防ぎ、クロスプラットフォームでのテストの信頼性を確保することを目的としています。

これらの変更により、テストは特定のOSのファイルシステム構造に依存することなく、EvalSymlinks の基本的な機能(絶対パスへのシンボリックリンクの解決)をより堅牢に検証できるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク