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[インデックス 11991] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるosパッケージのドキュメントに、ファイル操作の基本的な例を追加するものです。osパッケージは、オペレーティングシステムが提供する機能(ファイルシステム操作、プロセス管理など)へのプラットフォーム非依存なインターフェースを提供します。file.goは、このパッケージ内でファイル操作に関連する型や関数を定義しているソースファイルです。具体的には、os.File型や、ファイルの読み書きを行うReadWriteメソッドなどが含まれます。この変更は、osパッケージの利用者が、より簡単にファイル操作の基本を理解し、適切なエラーハンドリングやスライス([]byte)の利用方法を学ぶための手助けとなります。

コミット

  • コミットハッシュ: efb28b2ac1808bcbb7df28d12addc6df630353d5
  • 作者: Rob Pike r@golang.org
  • コミット日時: 2012年2月17日 金曜日 14:30:25 +1100
  • コミットメッセージ:
    os: add a simple example to the package doc.
    Shows error handling and slices for Read and Write.
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5676075
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/efb28b2ac1808bcbb7df28d12addc6df630353d5

元コミット内容

os: add a simple example to the package doc.
Shows error handling and slices for Read and Write.

R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5676075

変更の背景

Go言語の標準ライブラリは、その設計思想として「シンプルさ」と「実用性」を重視しています。特にosパッケージのような基本的なパッケージでは、ユーザーがその機能を迅速かつ正確に理解し、利用できるようにすることが重要です。このコミットが行われた2012年当時、Go言語はまだ比較的新しい言語であり、多くの開発者にとってそのイディオムやベストプラクティスは手探りの状態でした。

この変更の背景には、以下の点が挙げられます。

  1. 学習コストの低減: 新しい言語やライブラリを学ぶ際、最も効果的な方法の一つは、実際に動作するコード例を見ることです。特に、ファイル操作のような頻繁に行われるタスクにおいては、簡潔で分かりやすい例が学習の大きな助けとなります。
  2. ベストプラクティスの提示: Go言語では、エラーハンドリングはif err != nilという形式で明示的に行うことが推奨されています。また、ReadWriteのようなI/O操作では、バッファとしてスライスを使用し、実際に読み書きされたバイト数を適切に処理することが重要です。このコミットは、これらのGoらしい(Idiomatic Go)コーディングスタイルを公式ドキュメントで示すことで、開発者が正しい方法を学ぶことを促しています。
  3. ドキュメントの充実: 公式ドキュメントは、ライブラリの「顔」とも言える存在です。単なるAPIリファレンスだけでなく、具体的な使用例を含むことで、ドキュメントの質と有用性が向上します。これにより、開発者は外部のチュートリアルを探す手間を省き、公式情報源から直接、信頼できる情報を得ることができます。
  4. Rob Pike氏の関与: コミットの作者であるRob Pike氏は、Go言語の共同開発者の一人であり、その設計思想に深く関わっています。彼自身がこのような基本的な例を追加することは、Go言語の哲学、特に「シンプルさ」と「明瞭さ」を重視する姿勢を反映していると言えます。

要するに、この変更は、osパッケージの使いやすさを向上させ、Go言語におけるファイルI/Oとエラーハンドリングの標準的なアプローチを開発者に示すことを目的としています。

前提知識の解説

このコミットの変更内容を理解するためには、Go言語における以下の基本的な概念を理解しておく必要があります。

  1. osパッケージ: Go言語の標準ライブラリの一つで、オペレーティングシステムが提供する機能へのプラットフォーム非依存なインターフェースを提供します。ファイル操作(ファイルのオープン、読み書き、ディレクトリの作成など)、プロセス管理、環境変数の取得など、OSレベルの操作を行う際に利用されます。

  2. os.File: osパッケージで定義されている型で、開かれたファイルやディレクトリを表します。ファイルディスクリプタのような低レベルな概念を抽象化し、Goプログラムからファイルシステムを操作するための主要なインターフェースを提供します。

  3. os.Open関数: 指定されたパスのファイルを読み取り専用で開きます。成功した場合は*os.File型のポインタとnilエラーを返します。ファイルが見つからない、アクセス権がないなどのエラーが発生した場合は、nilerror型の値を返します。

  4. errorインターフェースとエラーハンドリング: Go言語では、エラーは組み込みのerrorインターフェースによって表現されます。関数がエラーを返す可能性がある場合、通常は戻り値の最後の要素としてerror型を返します。呼び出し元は、if err != nilというイディオムを使ってエラーの有無をチェックし、適切に処理します。

    • log.Fatal(err): logパッケージの関数で、引数として渡されたエラーメッセージを出力し、プログラムを終了させます。これは、回復不可能なエラーが発生した場合によく使われるパターンです。
    • *PathError型: osパッケージで定義されているエラー型の一つで、ファイルパスに関連する操作(Open, Statなど)でエラーが発生した場合に返されることがあります。エラーが発生したファイル名や操作、元のエラー情報を含みます。
  5. スライス ([]byte): Go言語の組み込み型で、配列の一部を参照する動的なデータ構造です。ReadWriteのようなI/O操作では、バイト列を扱うために[]byte型のスライスがバッファとして頻繁に利用されます。

    • make([]byte, 100): make組み込み関数を使って、byte型の要素を100個格納できるスライスを作成します。このスライスは、初期値としてゼロ値(バイトの場合は0)で埋められます。
    • スライスの長さと容量: スライスには「長さ(len)」と「容量(cap)」という概念があります。make([]byte, 100)の場合、長さも容量も100です。Readメソッドは、スライスの長さを読み込む最大バイト数として利用します。
    • data[:count]: スライスdataの最初のcountバイトだけを切り出すスライス式です。Readメソッドは実際に読み込んだバイト数を返すため、バッファ全体ではなく、読み込んだ部分だけを処理するためにこの表現が使われます。
  6. file.Read(data []byte) (n int, err error)メソッド: os.File型に紐づくメソッドで、ファイルからバイトを読み込み、引数として渡されたdataスライスに格納します。読み込んだバイト数nと、エラーerrを返します。ファイルの終端に達した場合は、io.EOFエラーを返します。

  7. fmt.Printf関数: fmtパッケージの関数で、フォーマットされた文字列を標準出力に出力します。

    • %d: 整数を10進数で出力します。
    • %q: Goの文字列リテラル形式(ダブルクォートで囲まれ、特殊文字はエスケープされる)で出力します。バイトスライスを%qで出力すると、その内容が文字列として解釈され、表示されます。

これらの概念を理解することで、コミットで追加されたコード例がどのように動作し、Go言語のベストプラティクスに沿っているかを深く把握できます。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/os/file.goファイルのパッケージドキュメント(package osの直前にあるコメントブロック)に、ファイルを開いて読み込むシンプルなGoコード例を追加しています。この例は、Go言語におけるファイルI/Oの基本的なパターンと、それに伴うエラーハンドリングの重要性を示しています。

追加されたコード例は以下の2つの主要な部分から構成されています。

  1. ファイルのオープンとエラーハンドリング:

    file, err := os.Open("file.go") // For read access.
    if err != nil {
    	log.Fatal(err)
    }
    
    • os.Open("file.go"): 現在のディレクトリにあるfile.goという名前のファイルを読み取り専用で開こうとします。このfile.goは、このドキュメントが記述されているファイル自身を指しています。
    • file, err := ...: Goの多値返却(multiple return values)のイディオムです。os.Open*os.File型のポインタとerror型の2つの値を返します。
    • if err != nil: Go言語における標準的なエラーチェックのパターンです。errnilでない場合(つまりエラーが発生した場合)、そのエラーを処理します。
    • log.Fatal(err): エラーが発生した場合に、エラーメッセージを標準エラー出力に出力し、プログラムを即座に終了させます。これは、ファイルを開くことができない場合に、それ以上処理を続行しても意味がないため、適切なエラー処理と言えます。
    • コメントで示されているように、ファイルオープンに失敗した場合のエラーメッセージは非常に分かりやすく、例えばopen file.go: no such file or directoryのように、何が問題だったかを具体的に示してくれます。これは、*PathError型のエラーが提供する情報によるものです。
  2. ファイルの読み込みとスライス、結果の表示:

    data := make([]byte, 100)
    count, err := file.Read(data)
    if err != nil {
    	log.Fatal(err)
    }
    fmt.Printf("read %d bytes: %q\n", count, data[:count])
    
    • data := make([]byte, 100): 100バイトの容量を持つバイトスライスdataを作成します。このスライスが、ファイルから読み込んだデータを一時的に保持するバッファとして機能します。
    • count, err := file.Read(data): fileオブジェクトのReadメソッドを呼び出し、dataスライスにファイルの内容を読み込ませます。Readメソッドは、実際に読み込んだバイト数(count)と、エラー(err)を返します。Readは、スライスの長さ(この場合は100)を読み込む最大バイト数として利用します。
    • if err != nil: ここでも同様にエラーチェックを行います。ファイルの読み込み中にエラーが発生した場合も、プログラムを終了させます。
    • fmt.Printf("read %d bytes: %q\n", count, data[:count]): 読み込み結果を標準出力に表示します。
      • %dcount(読み込んだバイト数)を表示します。
      • %qは、data[:count](実際に読み込んだ部分のスライス)をGoの文字列リテラル形式で表示します。data[:count]とすることで、バッファ全体ではなく、実際に読み込まれた有効なデータ部分のみが処理される点が重要です。これにより、バッファの残りの部分にゴミデータが含まれていても、それが表示されることを防ぎます。

この例は、Go言語でファイルI/Oを行う際の基本的な流れと、エラーハンドリング、そしてスライスの効果的な利用方法を簡潔に示しており、Go言語のドキュメントの品質向上に貢献しています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/os/file.go
+++ b/src/pkg/os/file.go
@@ -7,11 +7,33 @@
 // Go-like; failing calls return values of type error rather than error numbers.
 // Often, more information is available within the error. For example,
 // if a call that takes a file name fails, such as Open or Stat, the error
-// will include failing file name when printed and will be of type *PathError,
-// which may be unpacked for more information.\n+// will include the failing file name when printed and will be of type
+// *PathError, which may be unpacked for more information.
 // 
 // The os interface is intended to be uniform across all operating systems.
 // Features not generally available appear in the system-specific package syscall.
+//
+// Here is a simple example, opening a file and reading some of it.
+//
+//
+//	file, err := os.Open("file.go") // For read access.
+//	if err != nil {
+//		log.Fatal(err)
+//	}
+//
+// If the open fails, the error string will be self-explanatory, like
+//
+//
+//	open file.go: no such file or directory
+//
+// The file's data can then be read into a slice of bytes. Read and
+// Write take their byte counts from the length of the artument slice.
+//
+//
+//	data := make([]byte, 100)
+//	count, err := file.Read(data)
+//	if err != nil {
+//		log.Fatal(err)
+//	}
+//	fmt.Printf("read %d bytes: %q\n", count, data[:count])
+//
 package os
 
 import (

コアとなるコードの解説

上記の差分は、src/pkg/os/file.goファイルのパッケージコメントブロックに、Go言語でのファイル操作の基本的な例を追加していることを示しています。

具体的には、以下のコードブロックが追加されています。

  1. 既存のコメントの修正:

    - // will include failing file name when printed and will be of type *PathError,
    - // which may be unpacked for more information.
    + // will include the failing file name when printed and will be of type
    + // *PathError, which may be unpacked for more information.
    

    これは、既存のコメントの改行位置を調整し、より読みやすくするための軽微な修正です。意味的な変更はありません。

  2. ファイルオープンとエラーハンドリングの例の追加:

    // Here is a simple example, opening a file and reading some of it.
    //
    //
    //	file, err := os.Open("file.go") // For read access.
    //	if err != nil {
    //		log.Fatal(err)
    //	}
    //
    // If the open fails, the error string will be self-explanatory, like
    //
    //
    //	open file.go: no such file or directory
    
    • このセクションでは、os.Open関数を使ってfile.goというファイルを読み取り専用で開く方法を示しています。
    • file, err := os.Open("file.go")os.Open*os.Fileerrorの2つの値を返します。
    • if err != nil { log.Fatal(err) }:Go言語における標準的なエラーハンドリングのイディオムです。エラーが発生した場合、log.Fatalを使ってエラーメッセージを出力し、プログラムを終了させます。これは、ファイルを開くことができない場合に、それ以上処理を続行しても意味がないため、適切な対応です。
    • その後のコメントでは、ファイルオープンに失敗した場合にどのようなエラーメッセージが表示されるか(例: open file.go: no such file or directory)を具体的に示しており、*PathError型が提供する情報の有用性を強調しています。
  3. ファイル読み込みとスライス、結果表示の例の追加:

    // The file's data can then be read into a slice of bytes. Read and
    // Write take their byte counts from the length of the artument slice.
    //
    //
    //	data := make([]byte, 100)
    //	count, err := file.Read(data)
    //	if err != nil {
    //		log.Fatal(err)
    //	}
    //	fmt.Printf("read %d bytes: %q\n", count, data[:count])
    
    • このセクションでは、開いたファイルからデータを読み込む方法を示しています。
    • data := make([]byte, 100)make関数を使って、100バイトの容量を持つバイトスライスdataを作成します。これが読み込みバッファとなります。
    • count, err := file.Read(data)fileオブジェクトのReadメソッドを呼び出し、dataスライスにファイルの内容を読み込ませます。Readは実際に読み込んだバイト数(count)とエラーを返します。Readメソッドは、引数として渡されたスライスの長さ(この場合は100)を、読み込む最大バイト数として利用します。
    • if err != nil { log.Fatal(err) }:ここでも同様にエラーチェックを行います。読み込み中にエラーが発生した場合もプログラムを終了させます。
    • fmt.Printf("read %d bytes: %q\n", count, data[:count]):読み込み結果を標準出力に表示します。
      • %dは読み込んだバイト数countを表示します。
      • %qは、data[:count](実際に読み込んだ有効なデータ部分のスライス)をGoの文字列リテラル形式で表示します。data[:count]とすることで、バッファ全体ではなく、実際に読み込まれた部分のみが処理される点が重要です。

これらの追加されたコード例は、Go言語でファイルI/Oを行う際の基本的な流れ、エラーハンドリングの重要性、そしてスライスをバッファとして効果的に利用する方法を、簡潔かつ明瞭に示しています。これにより、osパッケージのドキュメントがより実践的で分かりやすいものになっています。

関連リンク

参考にした情報源リンク