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[インデックス 12006] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のFAQドキュメント(doc/go_faq.html)におけるgccgoコンパイラのセグメントスタックサポートに関する記述を明確にするものです。特に、gccgoがLinux環境でのみセグメントスタックをサポートし、それがgold linkerの最近の変更によって実現されている点を追記しています。

コミット

commit ebc40077088dcc546824ba2a7b4d5adf3ba33a46
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Fri Feb 17 05:59:15 2012 -0800

    doc: clarify gccgo support for segmented stacks
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5671081

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ebc40077088dcc546824ba2a7b4d5adf3ba33a46

元コミット内容

doc: clarify gccgo support for segmented stacks

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5671081

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のランタイムにおけるスタック管理の進化と、異なるコンパイラ実装(公式のGoコンパイラとgccgo)間での機能サポートの差異があります。

Go言語は、軽量な並行処理を実現するために「goroutine(ゴルーチン)」という独自の概念を導入しています。goroutineは非常に多数生成されることが想定されており、それぞれが独立した実行スタックを持ちます。従来の固定サイズのスタックでは、多数のgoroutineを効率的に管理することが困難でした。なぜなら、スタックサイズを大きく設定するとメモリを浪費し、小さく設定するとスタックオーバーフローのリスクが高まるためです。

この問題を解決するために、Go言語は「セグメントスタック(Segmented Stacks)」という技術を採用していました。セグメントスタックは、必要に応じてスタック領域を動的に拡張・縮小できる仕組みです。これにより、goroutineは最初は小さなスタックで開始し、関数呼び出しが深くなるにつれてスタック領域を自動的に拡張できます。スタックが不要になると、その領域は解放されます。

gccgoは、GCC(GNU Compiler Collection)をベースにしたGo言語のフロントエンドであり、Go言語のコードをGCCのバックエンドを通じてコンパイルします。公式のGoコンパイラ(gc)とは異なる実装であるため、機能サポートや実装の詳細に差異が生じることがあります。

このコミット以前のドキュメントでは、gccgoもセグメントスタックを実装していると記述されていましたが、その詳細、特にどのプラットフォームで、どのようなリンカのサポートが必要かについては不明確でした。このコミットは、gccgoのセグメントスタックサポートが「Linux上でのみ」であり、「gold linkerの最近の変更によってサポートされている」という重要な制約と詳細を明確にするために行われました。これは、ユーザーがgccgoを使用する際に、セグメントスタックの挙動について誤解するのを防ぐための重要な情報更新です。

前提知識の解説

Go言語とGoroutine

Go言語は、Googleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語です。その最大の特徴の一つが、軽量な並行処理モデルである「goroutine」です。goroutineはOSのスレッドよりもはるかに軽量で、数百万個を同時に実行することも可能です。Goランタイムがgoroutineのスケジューリング、スタック管理、通信(チャネル)などを担当します。

セグメントスタック (Segmented Stacks)

セグメントスタックは、プログラムの実行スタックを固定長ではなく、必要に応じて動的に拡張・縮小する技術です。

  • 利点:
    • メモリ効率: 最初は小さなスタックで開始するため、多数のgoroutineを生成してもメモリ消費を抑えられます。
    • スタックオーバーフローの回避: スタックが不足しそうになると自動的に拡張されるため、スタックオーバーフローによるクラッシュを防ぎやすくなります。
  • 仕組み: スタックが特定の閾値を超えて使用されると、新しいより大きなスタックセグメントが割り当てられ、古いセグメントとリンクされます。スタックが縮小すると、不要になったセグメントは解放されます。
  • Goにおける採用: Go言語の初期のバージョンでは、goroutineのスタック管理にセグメントスタックが採用されていました。しかし、後に「連続スタック(Contiguous Stacks)」または「コピーGCスタック(Copying GC Stacks)」と呼ばれる、より効率的なスタック拡張メカニズムに移行しました。これは、セグメントスタックが持ついくつかのパフォーマンス上の課題(スタックの分割・結合に伴うオーバーヘッド、キャッシュ効率の低下など)を解決するためです。このコミットが行われた2012年時点では、まだセグメントスタックが主流でした。

gccgo

gccgoは、Go言語のソースコードをGCCのフロントエンドとしてコンパイルするためのツールチェーンです。Go言語の公式コンパイラ(gc)とは独立して開発されており、GCCの最適化機能や既存のツールチェーンとの統合が可能です。gccgoは、Go言語の仕様に準拠しつつも、GCCのバックエンドを利用することで、異なるアーキテクチャやOSへの対応、C/C++コードとの連携などを容易にします。

glibc

glibc(GNU C Library)は、Linuxシステムで広く使用されている標準Cライブラリです。システムコールへのインターフェース、基本的なI/O操作、メモリ管理、文字列操作、数学関数など、多くの基本的な機能を提供します。Go言語のランタイム、特にgccgoのようなGCCベースの実装は、システムとのやり取りにglibcを利用することがあります。

Plan 9 C コンパイラ

Plan 9は、ベル研究所で開発された分散オペレーティングシステムです。Go言語の設計思想やツールチェーンには、Plan 9の影響が強く見られます。Go言語の公式コンパイラ(gc)は、元々Plan 9のCコンパイラをベースにして開発されました。このコンパイラは、Go言語のランタイムと密接に連携し、セグメントスタックのようなGo特有の機能に対応していました。

Gold リンカ

goldは、GNU Binutilsプロジェクトの一部として開発された、高速なリンカです。従来のldリンカと比較して、大規模なプロジェクトでのリンク時間を大幅に短縮することを目的としています。goldは、特にLinux環境でのELF(Executable and Linkable Format)バイナリの生成に特化しており、その効率性から多くのモダンなLinuxディストリビューションでデフォルトのリンカとして採用されています。セグメントスタックのような動的なスタック管理をサポートするためには、リンカがスタックの拡張メカニズムを理解し、適切にバイナリを生成する能力が必要です。goldリンカの特定の機能や最近の変更が、gccgoがLinux上でセグメントスタックをサポートするために不可欠であったことを示唆しています。

技術的詳細

このコミットは、doc/go_faq.htmlの記述を修正し、gccgoのセグメントスタックサポートに関する重要な技術的制約を明確にしています。

変更前の記述: The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented stacks, supported by recent modifications to its linker.gccgoコンパイラもセグメントスタックを実装しており、そのリンカへの最近の変更によってサポートされています。)

変更後の記述: The <code>gccgo</code> compiler implements segmented stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.gccgoコンパイラはLinux上でのみセグメントスタックを実装しており、gold linkerへの最近の変更によってサポートされています。)

この変更が示唆する技術的ポイントは以下の通りです。

  1. プラットフォーム依存性: gccgoのセグメントスタック実装は、普遍的なものではなく、特定のプラットフォーム、具体的には「Linux」に限定されることが明確になりました。これは、セグメントスタックの実装がOSのメモリ管理やシステムコール、リンカの挙動に深く依存するためです。他のOS(Windows, macOSなど)では、gccgoがセグメントスタックをサポートしないか、異なるメカニズムを使用している可能性があります。

  2. リンカの役割: セグメントスタックのような動的なスタック管理は、コンパイラだけでなく、リンカのサポートも不可欠です。リンカは、実行可能ファイルを生成する際に、スタックの初期サイズ、拡張時の挙動、そしてスタックセグメント間のリンク方法などを適切に設定する必要があります。このコミットは、gccgoがセグメントスタックをサポートするために、特定のリンカである「gold linker」の「最近の変更」が重要であったことを強調しています。これは、gold linkerがセグメントスタックに必要な特定のELFセクションやシンボル、または動的なメモリ割り当てメカニズムをサポートするようになったことを意味します。

  3. gold linkerの重要性: gold linkerは、その高速性と効率性からLinux開発環境で広く採用されています。gccgogold linkerの特定の機能に依存しているということは、gccgoでセグメントスタックを利用するためには、システムにgold linkerがインストールされており、かつそのバージョンがセグメントスタックをサポートするのに十分新しい必要があることを示唆しています。これは、gccgoのビルド環境や実行環境における依存関係の一つとなります。

  4. ドキュメントの正確性: この変更は、Go言語のFAQドキュメントの正確性を高めることを目的としています。ユーザーがgccgoを使用してGoプログラムを開発する際に、セグメントスタックの挙動について誤解を招かないように、具体的な制約と依存関係を明記することは非常に重要です。特に、パフォーマンスやメモリ使用量に影響を与える可能性のあるスタック管理のメカニズムに関する情報は、正確である必要があります。

このコミットは、Go言語の進化の過程で、異なるコンパイラ実装がどのように特定のランタイム機能をサポートし、それがどのようにドキュメントに反映されるかを示す良い例です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_faq.html
+++ b/doc/go_faq.html
@@ -1355,8 +1355,8 @@
 it now. <code>Gccgo</code>\'s run-time support uses <code>glibc</code>.
 control; it is
 compiled with a version of the Plan 9 C compiler that supports
 segmented stacks for goroutines.
-The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented
-stacks, supported by recent modifications to its linker.
+The <code>gccgo</code> compiler implements segmented
+stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.
 </p>
 
 <h3 id=\"Why_is_my_trivial_program_such_a_large_binary\">\n

コアとなるコードの解説

変更は、doc/go_faq.htmlファイル内のGo言語FAQドキュメントの一部です。具体的には、gccgoコンパイラとセグメントスタックに関する記述が修正されています。

元の行: The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented stacks, supported by recent modifications to its linker.

この行は、gccgoがセグメントスタックを実装しており、それがリンカへの最近の変更によってサポートされていると述べていました。しかし、この記述はどのプラットフォームでサポートされているのか、また具体的にどのリンカが関与しているのかが不明確でした。

変更後の行: The <code>gccgo</code> compiler implements segmented stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.

この修正により、以下の2つの重要な情報が追加・明確化されました。

  1. on Linux only: gccgoのセグメントスタックサポートが「Linux上でのみ」有効であることが明記されました。これにより、ユーザーは他のオペレーティングシステムでgccgoを使用する場合、セグメントスタックが期待通りに機能しない可能性があることを理解できます。
  2. the gold linker: セグメントスタックのサポートが、単に「そのリンカ」ではなく、具体的に「gold linker」の最近の変更によって実現されていることが示されました。これは、gccgoがセグメントスタックを適切に機能させるために、特定のリンカ(gold)とその特定の機能に依存していることを明確にしています。

この変更は、技術的な正確性を高め、ユーザーがgccgoのセグメントスタックサポートに関する誤解を避けるための重要なドキュメント更新です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のセグメントスタックに関する議論や歴史:
    • Goのスタック管理の進化に関するブログ記事やドキュメント(例: "Go's work-stealing scheduler" や "Go's new stack implementation" など、Goのスタック実装の変遷を解説しているもの)
  • gccgogcコンパイラの比較に関する情報源
  • gold linkerの機能と利点に関するドキュメントや記事
  • glibcの役割に関する一般的なLinuxシステムプログラミングの資料
  • Plan 9オペレーティングシステムとGo言語の関連性に関する歴史的資料

[インデックス 12006] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のFAQドキュメント(doc/go_faq.html)におけるgccgoコンパイラのセグメントスタックサポートに関する記述を明確にするものです。特に、gccgoがLinux環境でのみセグメントスタックをサポートし、それがgold linkerの最近の変更によって実現されている点を追記しています。

コミット

commit ebc40077088dcc546824ba2a7b4d5adf3ba33a46
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Fri Feb 17 05:59:15 2012 -0800

    doc: clarify gccgo support for segmented stacks
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5671081

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ebc40077088dcc546824ba2a7b4d5adf3ba33a46

元コミット内容

doc: clarify gccgo support for segmented stacks

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5671081

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のランタイムにおけるスタック管理の進化と、異なるコンパイラ実装(公式のGoコンパイラとgccgo)間での機能サポートの差異があります。

Go言語は、軽量な並行処理を実現するために「goroutine(ゴルーチン)」という独自の概念を導入しています。goroutineは非常に多数生成されることが想定されており、それぞれが独立した実行スタックを持ちます。従来の固定サイズのスタックでは、多数のgoroutineを効率的に管理することが困難でした。なぜなら、スタックサイズを大きく設定するとメモリを浪費し、小さく設定するとスタックオーバーフローのリスクが高まるためです。

この問題を解決するために、Go言語は「セグメントスタック(Segmented Stacks)」という技術を採用していました。セグメントスタックは、必要に応じてスタック領域を動的に拡張・縮小できる仕組みです。これにより、goroutineは最初は小さなスタックで開始し、関数呼び出しが深くなるにつれてスタック領域を自動的に拡張できます。スタックが不要になると、その領域は解放されます。

gccgoは、GCC(GNU Compiler Collection)をベースにしたGo言語のフロントエンドであり、Go言語のコードをGCCのバックエンドを通じてコンパイルします。公式のGoコンパイラ(gc)とは異なる実装であるため、機能サポートや実装の詳細に差異が生じることがあります。

このコミット以前のドキュメントでは、gccgoもセグメントスタックを実装していると記述されていましたが、その詳細、特にどのプラットフォームで、どのようなリンカのサポートが必要かについては不明確でした。このコミットは、gccgoのセグメントスタックサポートが「Linux上でのみ」であり、「gold linkerの最近の変更によってサポートされている」という重要な制約と詳細を明確にするために行われました。これは、ユーザーがgccgoを使用する際に、セグメントスタックの挙動について誤解するのを防ぐための重要な情報更新です。

前提知識の解説

Go言語とGoroutine

Go言語は、Googleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語です。その最大の特徴の一つが、軽量な並行処理モデルである「goroutine」です。goroutineはOSのスレッドよりもはるかに軽量で、数百万個を同時に実行することも可能です。Goランタイムがgoroutineのスケジューリング、スタック管理、通信(チャネル)などを担当します。

セグメントスタック (Segmented Stacks)

セグメントスタックは、プログラムの実行スタックを固定長ではなく、必要に応じて動的に拡張・縮小する技術です。

  • 利点:
    • メモリ効率: 最初は小さなスタックで開始するため、多数のgoroutineを生成してもメモリ消費を抑えられます。
    • スタックオーバーフローの回避: スタックが不足しそうになると自動的に拡張されるため、スタックオーバーフローによるクラッシュを防ぎやすくなります。
  • 仕組み: スタックが特定の閾値を超えて使用されると、新しいより大きなスタックセグメントが割り当てられ、古いセグメントとリンクされます。スタックが縮小すると、不要になったセグメントは解放されます。
  • Goにおける採用: Go言語の初期のバージョンでは、goroutineのスタック管理にセグメントスタックが採用されていました。しかし、Go 1.4以降、公式のGoコンパイラ(gc)は「スタックコピー(Stack Copying)」モデルに移行しました。この新しいアプローチでは、スタックを拡張する必要がある場合、新しいより大きな連続したスタックが割り当てられ、古いスタックの内容がコピーされます。これにより、「ホットスプリット問題」など、セグメントスタックが抱えていたパフォーマンス上の課題が解決されました。このコミットが行われた2012年時点では、まだセグメントスタックが主流でした。

gccgo

gccgoは、Go言語のソースコードをGCCのフロントエンドとしてコンパイルするためのツールチェーンです。Go言語の公式コンパイラ(gc)とは独立して開発されており、GCCの最適化機能や既存のツールチェーンとの統合が可能です。gccgoは、Go言語の仕様に準拠しつつも、GCCのバックエンドを利用することで、異なるアーキテクチャやOSへの対応、C/C++コードとの連携などを容易にします。gccgoは歴史的にセグメントスタックを利用していましたが、その完全な機能はリンカ、特にGNU Goldリンカからの特定のサポートに依存していました。

glibc

glibc(GNU C Library)は、Linuxシステムで広く使用されている標準Cライブラリです。システムコールへのインターフェース、基本的なI/O操作、メモリ管理、文字列操作、数学関数など、多くの基本的な機能を提供します。Go言語のランタイム、特にgccgoのようなGCCベースの実装は、システムとのやり取りにglibcを利用することがあります。

Plan 9 C コンパイラ

Plan 9は、ベル研究所で開発された分散オペレーティングシステムです。Go言語の設計思想やツールチェーンには、Plan 9の影響が強く見られます。Go言語の公式コンパイラ(gc)は、元々Plan 9のCコンパイラをベースにして開発されました。このコンパイラは、Go言語のランタイムと密接に連携し、セグメントスタックのようなGo特有の機能に対応していました。

Gold リンカ

goldは、GNU Binutilsプロジェクトの一部として開発された、高速なリンカです。従来のldリンカと比較して、大規模なプロジェクトでのリンク時間を大幅に短縮することを目的としています。goldは、特にLinux環境でのELF(Executable and Linkable Format)バイナリの生成に特化しており、その効率性から多くのモダンなLinuxディストリビューションでデフォルトのリンカとして採用されています。セグメントスタックのような動的なスタック管理をサポートするためには、リンカがスタックの拡張メカニズムを理解し、適切にバイナリを生成する能力が必要です。goldリンカの特定の機能や最近の変更が、gccgoがLinux上でセグメントスタックをサポートするために不可欠であったことを示唆しています。goldリンカの開発者であるIan Lance Taylorは、セグメントスタックのサポート統合にも関与していました。goldリンカは、セグメントスタックをサポートするコードとそうでないコードが相互作用するシナリオを処理するために、関数プロローグを書き換えることで適切なスタック管理を保証していました。

しかし、GNU Goldリンカは現在、公式に非推奨となっています。2025年2月のGNU Binutils 2.44リリース以降、そのソースは別のパッケージに分離され、新しいメンテナが現れない限り削除される可能性があります。これは、Googleや他の組織がLLVMツールチェーンをますます採用しているという焦点のシフトを反映しています。

技術的詳細

このコミットは、doc/go_faq.htmlの記述を修正し、gccgoのセグメントスタックサポートに関する重要な技術的制約を明確にしています。

変更前の記述: The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented stacks, supported by recent modifications to its linker.gccgoコンパイラもセグメントスタックを実装しており、そのリンカへの最近の変更によってサポートされています。)

変更後の記述: The <code>gccgo</code> compiler implements segmented stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.gccgoコンパイラはLinux上でのみセグメントスタックを実装しており、gold linkerへの最近の変更によってサポートされています。)

この変更が示唆する技術的ポイントは以下の通りです。

  1. プラットフォーム依存性: gccgoのセグメントスタック実装は、普遍的なものではなく、特定のプラットフォーム、具体的には「Linux」に限定されることが明確になりました。これは、セグメントスタックの実装がOSのメモリ管理やシステムコール、リンカの挙動に深く依存するためです。他のOS(Windows, macOSなど)では、gccgoがセグメントスタックをサポートしないか、異なるメカニズムを使用している可能性があります。

  2. リンカの役割: セグメントスタックのような動的なスタック管理は、コンパイラだけでなく、リンカのサポートも不可欠です。リンカは、実行可能ファイルを生成する際に、スタックの初期サイズ、拡張時の挙動、そしてスタックセグメント間のリンク方法などを適切に設定する必要があります。このコミットは、gccgoがセグメントスタックをサポートするために、特定のリンカである「gold linker」の「最近の変更」が重要であったことを強調しています。これは、gold linkerがセグメントスタックに必要な特定のELFセクションやシンボル、または動的なメモリ割り当てメカニズムをサポートするようになったことを意味します。

  3. gold linkerの重要性: gold linkerは、その高速性と効率性からLinux開発環境で広く採用されています。gccgogold linkerの特定の機能に依存しているということは、gccgoでセグメントスタックを利用するためには、システムにgold linkerがインストールされており、かつそのバージョンがセグメントスタックをサポートするのに十分新しい必要があることを示唆しています。これは、gccgoのビルド環境や実行環境における依存関係の一つとなります。

  4. ドキュメントの正確性: この変更は、Go言語のFAQドキュメントの正確性を高めることを目的としています。ユーザーがgccgoを使用してGoプログラムを開発する際に、セグメントスタックの挙動について誤解を招かないように、具体的な制約と依存関係を明記することは非常に重要です。特に、パフォーマンスやメモリ使用量に影響を与える可能性のあるスタック管理のメカニズムに関する情報は、正確である必要があります。

このコミットは、Go言語の進化の過程で、異なるコンパイラ実装がどのように特定のランタイム機能をサポートし、それがどのようにドキュメントに反映されるかを示す良い例です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_faq.html
+++ b/doc/go_faq.html
@@ -1355,8 +1355,8 @@
 it now. <code>Gccgo</code>\'s run-time support uses <code>glibc</code>.
 control; it is
 compiled with a version of the Plan 9 C compiler that supports
 segmented stacks for goroutines.
-The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented
-stacks, supported by recent modifications to its linker.
+The <code>gccgo</code> compiler implements segmented
+stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.
 </p>
 
 <h3 id=\"Why_is_my_trivial_program_such_a_large_binary\">\n

コアとなるコードの解説

変更は、doc/go_faq.htmlファイル内のGo言語FAQドキュメントの一部です。具体的には、gccgoコンパイラとセグメントスタックに関する記述が修正されています。

元の行: The <code>gccgo</code> compiler also implements segmented stacks, supported by recent modifications to its linker.

この行は、gccgoがセグメントスタックを実装しており、それがリンカへの最近の変更によってサポートされていると述べていました。しかし、この記述はどのプラットフォームでサポートされているのか、また具体的にどのリンカが関与しているのかが不明確でした。

変更後の行: The <code>gccgo</code> compiler implements segmented stacks on Linux only, supported by recent modifications to the gold linker.

この修正により、以下の2つの重要な情報が追加・明確化されました。

  1. on Linux only: gccgoのセグメントスタックサポートが「Linux上でのみ」有効であることが明記されました。これにより、ユーザーは他のオペレーティングシステムでgccgoを使用する場合、セグメントスタックが期待通りに機能しない可能性があることを理解できます。
  2. the gold linker: セグメントスタックのサポートが、単に「そのリンカ」ではなく、具体的に「gold linker」の最近の変更によって実現されていることが示されました。これは、gccgoがセグメントスタックを適切に機能させるために、特定のリンカ(gold)とその特定の機能に依存していることを明確にしています。

この変更は、技術的な正確性を高め、ユーザーがgccgoのセグメントスタックサポートに関する誤解を避けるための重要なドキュメント更新です。

関連リンク

参考にした情報源リンク