Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 12020] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ crypto/dsa パッケージのパッケージコメントに欠落していたピリオドを追加する、非常に小さな修正です。コードの機能的な変更は一切なく、ドキュメンテーションの軽微な修正に過ぎません。

コミット

commit 3063ff5168d11c88b58e125124f84d8ae5d885db
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri Feb 17 14:48:44 2012 -0800

    crypto/dsa: add missing period in package comment
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/5673087

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/3063ff5168d11c88b58e125124f84d8ae5d885db

元コミット内容

crypto/dsa: add missing period in package comment

このコミットは、crypto/dsa パッケージのコメントに欠落していたピリオドを追加するものです。

変更の背景

この変更は、crypto/dsa パッケージのドキュメンテーションの正確性と一貫性を向上させるためのものです。Go言語のコードベースでは、コメントやドキュメンテーションの品質も重視されており、このような小さな修正もコードの可読性や保守性を高める一環として行われます。特にパッケージコメントは、そのパッケージが何をするものなのかを簡潔に説明する重要な部分であり、文法的な誤りや欠落は避けるべきです。

前提知識の解説

Digital Signature Algorithm (DSA)

DSA(Digital Signature Algorithm)は、デジタル署名のための公開鍵暗号アルゴリズムです。米国標準技術局(NIST)によってFIPS 186(Digital Signature Standard, DSS)の一部として標準化されています。DSAは、メッセージの認証性、完全性、および否認防止を提供するために使用されます。

  • 認証性: 署名が正当な署名者によって作成されたことを確認できます。
  • 完全性: メッセージが転送中に改ざんされていないことを確認できます。
  • 否認防止: 署名者が後から署名を否認することを防ぎます。

DSAは、離散対数問題の困難性に基づいています。署名生成には秘密鍵が、署名検証には公開鍵が使用されます。

FIPS 186-3

FIPS 186-3は、NISTによって発行されたデジタル署名標準の第3版です。この標準は、DSA、RSA、ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)を含むデジタル署名アルゴリズムを規定しています。FIPS 186-3では、DSAの鍵サイズやパラメータ生成に関する要件が定義されており、セキュリティ強度を確保するためのガイドラインが示されています。

ただし、Web検索結果にもあるように、DSAは現在ではレガシーなアルゴリズムと見なされており、FIPS 186-5では署名生成にDSAを使用することは承認されていません。より新しいアルゴリズム(例: Ed25519)の使用が推奨されています。

Go言語の crypto/dsa パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、暗号化関連の機能を提供する crypto パッケージ群が含まれています。crypto/dsa パッケージは、その名の通りDSAアルゴリズムの実装を提供していました。このパッケージは、FIPS 186-3で定義されたDSAを実装していましたが、現在では非推奨(deprecated)となっています。

非推奨の理由としては、DSAが現代の暗号学的要件に対して脆弱であること(特に1024ビット鍵の弱さ)、より大きな鍵サイズが広くサポートされていないこと、そしてタイミング攻撃に対して脆弱な実装である可能性があることなどが挙げられます。Go 1.24以降では、FIPS 140-3準拠を容易にするための「Go Cryptographic Module」が導入され、よりセキュアな暗号アルゴリズムが推奨されています。

技術的詳細

このコミット自体は技術的な機能変更を含まず、単なるコメントの修正です。しかし、このコミットが対象としている crypto/dsa パッケージの背景には、いくつかの重要な技術的詳細と考慮事項があります。

  1. DSAのセキュリティ上の懸念:

    • 鍵サイズの制約: crypto/dsa パッケージは、主に1024ビットの鍵サイズをサポートしていました。しかし、現代の計算能力では1024ビットのDSA鍵は安全とは言えません。より大きな鍵サイズ(例: 2048ビット、3072ビット)が必要ですが、DSAではこれらの大きな鍵サイズが広くサポートされていないという問題があります。
    • タイミング攻撃: Web検索結果によると、crypto/dsa のDSA操作は定数時間アルゴリズムで実装されていない可能性があり、これによりタイミング攻撃(処理時間のわずかな差から秘密情報を推測する攻撃)に対して脆弱になる可能性があります。
    • ハッシュの切り捨て: FIPS 186-3のセクション4.6では、ハッシュ値が部分群のバイト長に切り捨てられるべきだと規定されていますが、crypto/dsaSign および Verify 関数は、この切り捨てを自身で行わないという指摘があります。これは、アプリケーション側で適切なハッシュの切り捨てを行う必要があることを意味し、誤用につながる可能性があります。
  2. Go言語におけるFIPS準拠の進化: Go言語は、特に政府機関や規制の厳しい業界での利用を考慮し、FIPS(Federal Information Processing Standards)準拠への取り組みを進めています。Go 1.24以降では、GoバイナリがFIPS 140-3準拠を容易にするモードで動作できるようになりました。これは、crypto/internal/fips140/... のような内部パッケージでFIPS 140-3承認アルゴリズムを実装し、crypto/ecdsacrypto/rand のような公開APIパッケージが透過的にこれを利用するというアプローチです。これにより、外部ライブラリに依存することなく、Go標準ライブラリ内でFIPS準拠を実現することを目指しています。

このコミットが行われた2012年時点では、DSAはまだ広く使用されており、Goの crypto/dsa パッケージもその一部として提供されていました。しかし、その後の暗号技術の進歩とセキュリティ要件の変化により、DSAは非推奨となり、より強力で安全なアルゴリズムへの移行が推奨されるようになりました。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/crypto/dsa/dsa.go
+++ b/src/pkg/crypto/dsa/dsa.go
@@ -2,7 +2,7 @@
 // Use of this source code is governed by a BSD-style
 // license that can be found in the LICENSE file.
 
-// Package dsa implements the Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3
+// Package dsa implements the Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3.
 package dsa
 
 import (

コアとなるコードの解説

変更は src/pkg/crypto/dsa/dsa.go ファイルの1行のみです。

元のコード: // Package dsa implements the Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3

変更後のコード: // Package dsa implements the Digital Signature Algorithm, as defined in FIPS 186-3.

この変更は、パッケージコメントの末尾にピリオド (.) を追加しただけです。これは、Go言語のドキュメンテーションスタイルガイドラインに沿った修正であり、コメントの文法的な正確性を確保するためのものです。機能的な動作には一切影響を与えません。

関連リンク

参考にした情報源リンク