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[インデックス 12037] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のAPIチェッカーツールである cmd/api において、特定の定数型表現を ideal-bool から bool へと変更するものです。これは、Go言語の型システムにおける「型なし真偽値定数」の扱いをより正確に反映するための修正であり、APIの安定性と一貫性を保つ上で重要な意味を持ちます。

コミット

  • コミットハッシュ: 95b0fe141c29e9188dbffd27db6e228e22f61c0c
  • Author: Russ Cox rsc@golang.org
  • Date: Sat Feb 18 20:31:19 2012 -0500

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/95b0fe141c29e9188dbffd27db6e228e22f61c0c

元コミット内容

cmd/api: s/ideal-bool/bool/

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5674105

変更の背景

この変更は、Go言語のAPIチェッカーツール cmd/api が、Go言語の型システムにおける「型なし真偽値定数(untyped boolean constants)」の表現をより正確に扱うために行われました。

Go言語では、truefalse といった真偽値リテラルは、特定の型を持たない「型なし定数(untyped constants)」として扱われます。これらの定数は、文脈に応じて適切な型(例えば bool)に暗黙的に変換されます。cmd/api ツールは、Goの標準ライブラリのAPIが互換性を保っているかをチェックするために使用されます。このツールがAPIの型情報を解析する際、これまでの実装では真偽値定数を ideal-bool という内部的な表現で扱っていました。

しかし、Go言語の設計思想において、真偽値定数は最終的には bool 型として扱われるべきであり、ideal-bool という中間的な概念をAPIの型情報として公開することは、ツールの出力や内部ロジックの整合性の観点から適切ではないと判断されました。この修正は、cmd/api がAPIの型情報を生成する際に、真偽値定数を直接 bool 型として表現するように変更することで、より正確で一貫性のあるAPI定義を保証することを目的としています。

前提知識の解説

cmd/api ツール

cmd/api は、Go言語の標準ライブラリのAPIの変更を追跡し、互換性をチェックするためのツールです。Go言語は後方互換性を非常に重視しており、新しいバージョンがリリースされる際にも既存のコードが動作し続けることを保証しています。cmd/api は、Goのソースコードを解析し、公開されている関数、メソッド、型、定数などのAPIシグネチャを抽出します。そして、以前のバージョンのAPIシグネチャと比較することで、互換性のない変更(例えば、関数の引数の変更、型の削除など)が導入されていないかを検出します。これにより、Go言語の進化と安定性の両立が図られています。

Go言語における「型なし定数(Untyped Constants)」と「理想型(Ideal Types)」

Go言語の定数には、型を持つ定数(typed constants)と型を持たない定数(untyped constants)の2種類があります。

  • 型を持つ定数: const x int = 10 のように、明示的に型が指定された定数です。
  • 型なし定数: const x = 10 や、数値リテラル 10、真偽値リテラル true、文字列リテラル "hello" のように、明示的な型が指定されていない定数です。

型なし定数は、その値が表現できる範囲であれば、どのような型にも暗黙的に変換できます。例えば、型なしの数値定数 10 は、intint32float64 など、様々な数値型に代入できます。この柔軟性を実現するために、Goコンパイラの内部では、これらの型なし定数に「理想型(ideal type)」という概念が割り当てられます。

  • 理想型: 型なし定数が持つ「型なし」の状態を示す内部的な概念です。例えば、数値リテラル 10 は「理想整数(ideal-int)」、浮動小数点数リテラル 3.14 は「理想浮動小数点数(ideal-float)」、真偽値リテラル truefalse は「理想真偽値(ideal-bool)」として扱われます。これらの理想型は、コンパイル時に具体的な型に解決されるまで、その定数が持つ値の性質を保持します。

このコミットの文脈では、ideal-booltruefalse といった型なしの真偽値定数を表す cmd/api 内部の表現でした。

技術的詳細

この変更は、cmd/api ツールがAPIの型情報を生成する際の、真偽値定数の表現方法に関するものです。

以前の cmd/api は、Goのソースコードを解析し、truefalse といった真偽値定数に遭遇した場合、その型を ideal-bool として記録していました。これは、Go言語のコンパイラが内部的に型なし定数を扱う際の「理想型」の概念を、APIの型情報にも持ち込んでいたことを意味します。

しかし、APIの定義という観点から見ると、truefalse は最終的には bool 型として扱われるべきであり、ideal-bool という中間的な表現は不要であり、むしろ混乱を招く可能性がありました。APIの公開されたシグネチャにおいて、ideal-bool という型が存在することは、Go言語の外部からAPIを利用する開発者にとっては馴染みのない概念であり、APIの安定性や理解を妨げる可能性があります。

このコミットでは、cmd/api の内部ロジックを変更し、真偽値定数を検出した際に、その型を直接 bool として記録するように修正しました。これにより、cmd/api が生成するAPI定義は、Go言語の型システムにおける真偽値の最終的な型表現と一致し、より正確で一貫性のあるものになります。

具体的には、src/cmd/api/goapi.go ファイル内の、定数の型を決定するロジックが変更されました。hardCodedConstantType 関数と constValueType 関数において、真偽値定数(特に syscall パッケージの darwinAMD64 や、一般的な true/false リテラル)の型を返す際に、これまでの "ideal-bool" ではなく、直接 "bool" を返すように修正されています。

この変更は、APIの互換性チェックの正確性を向上させるとともに、cmd/api の内部実装をGo言語の型システムのセマンティクスにより密接に合わせるための、クリーンアップ作業の一環と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/api/goapi.go
+++ b/src/cmd/api/goapi.go
@@ -209,7 +209,7 @@ func (w *Walker) hardCodedConstantType(name string) (typ string, ok bool) {
 	case "pkg syscall":
 		switch name {
 		case "darwinAMD64":
-			return "ideal-bool", true
+			return "bool", true
 		}
 	}
 	return "", false
@@ -447,7 +447,7 @@ func (w *Walker) constValueType(vi interface{}) (string, error) {
 			return "ideal-int", nil // hack.
 		}
 		if v.Name == "false" || v.Name == "true" {
-			return "ideal-bool", nil
+			return "bool", nil
 		}
 		if v.Name == "intSize" && w.curPackageName == "strconv" {
 			// Hack.

コアとなるコードの解説

このコミットでは、src/cmd/api/goapi.go ファイル内の2つの箇所が変更されています。

  1. hardCodedConstantType 関数内:

    case "pkg syscall":
        switch name {
        case "darwinAMD64":
            return "bool", true // 変更前: "ideal-bool"
        }
    

    この部分は、特定のハードコードされた定数(この場合は syscall パッケージ内の darwinAMD64)の型を決定するロジックです。darwinAMD64 は、Goの内部で特定のプラットフォーム(Darwin/AMD64)がサポートされているかを示す真偽値定数として扱われることがあります。以前は、この定数の型を ideal-bool として返していましたが、この変更により直接 bool として返すようになりました。これは、darwinAMD64 が最終的には bool 型として利用されることを反映しています。

  2. constValueType 関数内:

    if v.Name == "false" || v.Name == "true" {
        return "bool", nil // 変更前: "ideal-bool"
    }
    

    この部分は、一般的な真偽値リテラルである false または true の型を決定するロジックです。Go言語のソースコード内でこれらのリテラルが使用されている場合、cmd/api はその型を解析します。以前は、これらのリテラルを ideal-bool として扱っていましたが、この変更により、直接 bool 型として扱うようになりました。これにより、API定義における真偽値定数の表現が、Go言語のセマンティクスとより一致するようになります。

これらの変更は、cmd/api がGoのAPIを解析し、その型情報を表現する際に、真偽値定数を「型なし」の中間表現である ideal-bool ではなく、最終的な「型あり」の bool として扱うように統一したことを示しています。これにより、APIの型定義がより明確になり、ツールの出力の一貫性が向上します。

関連リンク

  • Go言語の型システムに関する公式ドキュメントやブログ記事(Goの型なし定数や理想型について詳しく解説されているもの)
  • cmd/api ツールの目的や利用方法に関するGoの公式ドキュメント

(注: 特定のURLはWeb検索結果に基づいて追加されますが、ここでは一般的なカテゴリを示します。)

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント (Go Language Specification, Go Blog)
  • Go言語のソースコード (src/cmd/api/goapi.go の関連部分)
  • Go言語の型システムに関するコミュニティの議論や解説記事

(注: 実際のWeb検索で得られた具体的なURLがここにリストされます。)

[インデックス 12037] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のAPIチェッカーツールである cmd/api において、特定の定数型表現を ideal-bool から bool へと変更するものです。これは、Go言語の型システムにおける「型なし真偽値定数」の扱いをより正確に反映するための修正であり、APIの安定性と一貫性を保つ上で重要な意味を持ちます。

コミット

  • コミットハッシュ: 95b0fe141c29e9188dbffd27db6e228e22f61c0c
  • Author: Russ Cox rsc@golang.org
  • Date: Sat Feb 18 20:31:19 2012 -0500

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/95b0fe141c29e9188dbffd27db6e228e22f61c0c

元コミット内容

cmd/api: s/ideal-bool/bool/

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/5674105

変更の背景

この変更は、Go言語のAPIチェッカーツール cmd/api が、Go言語の型システムにおける「型なし真偽値定数(untyped boolean constants)」の表現をより正確に扱うために行われました。

Go言語では、truefalse といった真偽値リテラルは、特定の型を持たない「型なし定数(untyped constants)」として扱われます。これらの定数は、文脈に応じて適切な型(例えば bool)に暗黙的に変換されます。cmd/api ツールは、Goの標準ライブラリのAPIが互換性を保っているかをチェックするために使用されます。このツールがAPIの型情報を解析する際、これまでの実装では真偽値定数を ideal-bool という内部的な表現で扱っていました。

しかし、Go言語の設計思想において、真偽値定数は最終的には bool 型として扱われるべきであり、ideal-bool という中間的な概念をAPIの型情報として公開することは、ツールの出力や内部ロジックの整合性の観点から適切ではないと判断されました。この修正は、cmd/api がAPIの型情報を生成する際に、真偽値定数を直接 bool 型として表現するように変更することで、より正確で一貫性のあるAPI定義を保証することを目的としています。

前提知識の解説

cmd/api ツール

cmd/api は、Go言語の標準ライブラリのAPIの変更を追跡し、互換性をチェックするためのツールです。Go言語は後方互換性を非常に重視しており、新しいバージョンがリリースされる際にも既存のコードが動作し続けることを保証しています。cmd/api は、Goのソースコードを解析し、公開されている関数、メソッド、型、定数などのAPIシグネチャを抽出します。そして、以前のバージョンのAPIシグネチャと比較することで、互換性のない変更(例えば、関数の引数の変更、型の削除など)が導入されていないかを検出します。これにより、Go言語の進化と安定性の両立が図られています。

Go言語における「型なし定数(Untyped Constants)」と「理想型(Ideal Types)」

Go言語の定数には、型を持つ定数(typed constants)と型を持たない定数(untyped constants)の2種類があります。

  • 型を持つ定数: const x int = 10 のように、明示的に型が指定された定数です。
  • 型なし定数: const x = 10 や、数値リテラル 10、真偽値リテラル true、文字列リテラル "hello" のように、明示的な型が指定されていない定数です。

型なし定数は、その値が表現できる範囲であれば、どのような型にも暗黙的に変換できます。例えば、型なしの数値定数 10 は、intint32float64 など、様々な数値型に代入できます。この柔軟性を実現するために、Goコンパイラの内部では、これらの型なし定数に「理想型(ideal type)」という概念が割り当てられます。

  • 理想型: 型なし定数が持つ「型なし」の状態を示す概念です。これは具体的なGoの型ではありません。例えば、数値リテラル 10 は「理想整数(ideal-integer)」、浮動小数点数リテラル 3.14 は「理想浮動小数点数(ideal-floating-point)」、真偽値リテラル truefalse は「理想真偽値(ideal-boolean)」として扱われます。これらの理想型は、コンパイル時に具体的な型に解決されるまで、その定数が持つ値の性質を保持します。

このコミットの文脈では、ideal-booltruefalse といった型なしの真偽値定数を表す cmd/api 内部の表現でした。型なし定数が変数に代入されたり、型を持つ値と演算されたりする際に、Goは自動的にその定数を適切な型に変換します。もし明示的な型が与えられない場合、Goは理想型に基づいてデフォルトの型を割り当てます(例: 理想整数は int、理想真偽値は bool)。

技術的詳細

この変更は、cmd/api ツールがAPIの型情報を生成する際の、真偽値定数の表現方法に関するものです。

以前の cmd/api は、Goのソースコードを解析し、truefalse といった真偽値定数に遭遇した場合、その型を ideal-bool として記録していました。これは、Go言語のコンパイラが内部的に型なし定数を扱う際の「理想型」の概念を、APIの型情報にも持ち込んでいたことを意味します。

しかし、APIの定義という観点から見ると、truefalse は最終的には bool 型として扱われるべきであり、ideal-bool という中間的な表現は不要であり、むしろ混乱を招く可能性がありました。APIの公開されたシグネチャにおいて、ideal-bool という型が存在することは、Go言語の外部からAPIを利用する開発者にとっては馴染みのない概念であり、APIの安定性や理解を妨げる可能性があります。

このコミットでは、cmd/api の内部ロジックを変更し、真偽値定数を検出した際に、その型を直接 bool として記録するように修正しました。これにより、cmd/api が生成するAPI定義は、Go言語の型システムにおける真偽値の最終的な型表現と一致し、より正確で一貫性のあるものになります。

具体的には、src/cmd/api/goapi.go ファイル内の、定数の型を決定するロジックが変更されました。hardCodedConstantType 関数と constValueType 関数において、真偽値定数(特に syscall パッケージの darwinAMD64 や、一般的な true/false リテラル)の型を返す際に、これまでの "ideal-bool" ではなく、直接 "bool" を返すように修正されています。

この変更は、APIの互換性チェックの正確性を向上させるとともに、cmd/api の内部実装をGo言語の型システムのセマンティクスにより密接に合わせるための、クリーンアップ作業の一環と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/api/goapi.go
+++ b/src/cmd/api/goapi.go
@@ -209,7 +209,7 @@ func (w *Walker) hardCodedConstantType(name string) (typ string, ok bool) {
 	case "pkg syscall":
 		switch name {
 		case "darwinAMD64":
-			return "ideal-bool", true
+			return "bool", true
 		}
 	}
 	return "", false
@@ -447,7 +447,7 @@ func (w *Walker) constValueType(vi interface{}) (string, error) {\n 			return "ideal-int", nil // hack.\n 		}\n 		if v.Name == "false" || v.Name == "true" {\n-			return "ideal-bool", nil
+			return "bool", nil
 		}\n 		if v.Name == "intSize" && w.curPackageName == "strconv" {\n 			// Hack.

コアとなるコードの解説

このコミットでは、src/cmd/api/goapi.go ファイル内の2つの箇所が変更されています。

  1. hardCodedConstantType 関数内:

    case "pkg syscall":
        switch name {
        case "darwinAMD64":
            return "bool", true // 変更前: "ideal-bool", 変更後: "bool"
        }
    

    この部分は、特定のハードコードされた定数(この場合は syscall パッケージ内の darwinAMD64)の型を決定するロジックです。darwinAMD64 は、Goの内部で特定のプラットフォーム(Darwin/AMD64)がサポートされているかを示す真偽値定数として扱われることがあります。以前は、この定数の型を ideal-bool として返していましたが、この変更により直接 bool として返すようになりました。これは、darwinAMD64 が最終的には bool 型として利用されることを反映しています。

  2. constValueType 関数内:

    if v.Name == "false" || v.Name == "true" {
        return "bool", nil // 変更前: "ideal-bool", 変更後: "bool"
    }
    

    この部分は、一般的な真偽値リテラルである false または true の型を決定するロジックです。Go言語のソースコード内でこれらのリテラルが使用されている場合、cmd/api はその型を解析します。以前は、これらのリテラルを ideal-bool として扱っていましたが、この変更により、直接 bool 型として扱うようになりました。これにより、API定義における真偽値定数の表現が、Go言語のセマンティクスとより一致するようになります。

これらの変更は、cmd/api がGoのAPIを解析し、その型情報を表現する際に、真偽値定数を「型なし」の中間表現である ideal-bool ではなく、最終的な「型あり」の bool として扱うように統一したことを示しています。これにより、APIの型定義がより明確になり、ツールの出力の一貫性が向上します。

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